変化球
奥村は飄々とした態度は昔から全く変わらない。何処吹く風の状態なので教師の怒り損という感じにして相手にしてもらえないようにしていた。俺はそんな態度がすがすがしいほどの心意気を見ているようでもあった。他人に責任を押し付けるようなことも好まない。自ら負った責任を肩に乗っかったとしても逃げもしなかった。
「ごめん。俺が遅れるなんてな。」
「どうせ、事件が起きたんだろ。それを西條に任せてきたにすぎないんだろう。」
緑谷に痛いところを突かれたため、静かに水を飲んだ。店員を呼んで、おすすめのワインを頼んだ。赤やら白やら言われるが、味については細かく言えない質なので任せるしかないのである。奥村が此処の個室のある店にしたのはきっと聞かれたくない話をするつもりなのだろうから。
「お前の家のところの会社だよ。また、同じ手口での爆破だよ。暴力団関係じゃないかって言われるよ。」
「正しいと思うぞ。案外、暴力団出身ってのが多いんじゃないのか。」
「こんな暗い話をしていても楽しいものですね。」
堂安のえげつない言葉を初めて聞いた。一緒にいて何かをするというのはそれくらいの価値があるといっているのだ。ただタイミングが恐ろしくあっていなかったというだけだ。ワインが来るとすぐに乾杯をした。宴をしている。くだらない話をするだけでいい時間なのだ。堂安の笑みは俺に見せるのと変わりはない。施設の時に問題児だからといわれて大概のところは相手にしなかったのだ。俺の親父はむしろそこを利用して執事にしたのだ。金を渡すうえにある程度の学歴を付け加えるということで。それに乗ったのは施設の主だろうから。関係者には利益を与えている時点で元も子もない話だろうが・・・。堂安にとっては変わる転機をくれたのだといっていた。俺につくといって聞かなかったのは夏目から過去の話を聞いたときに同じような感じがしたとのこと。まぁ、明かすことなんてないだろう。口数の少ないわけでもないが、見守ってくれているやさしさは痛いほど伝わっている。数多のことも知っているだろうから。
「こりゃ暴力団がかかわっているだの上の連中は大騒ぎ。うるさいんだよ。俺は違うといってもろくに聞く耳を持たないんだから。」
「一方通行の道ってとこか?」
緑谷のたとえに彼はうなずいた。口に出してもむなしく感じることの多い世の中になった。誰かの揚げ足取りを好んでしているようで情けない。くだらない大人の論争を聞いて耳が痛くなるだけだ。変わらないことに笑う癖に変わった奴にも笑うのだ。いったいどうしたいのだと。




