道具の人生
俺は奥村が徹夜して作った資料を見つめた。わかりにくいというよりは素人でもわかりやすいのだ。それでいいのかと思ってしまう。
「そういえば、お前が聴いたことである程度仮説は生まれた。」
「そう。警察って大変だよな。」
「何がだよ。権力にうぬぼれてさ、上の権力に押さえつけられるとへこへこ頭下げるんだ。くだらない身内保護なんざ手本になれるのかって話だよ。戯言に巻き込まれるのが嫌だから、ろくに会議に出ないの。西條に頼ったんだ。」
いい道具を見つけたといっているようなものだ。大変な上司とは思っていないのだろう。実力はある。事件の解決経験もある。手放すのも惜しいと捜査一課にいるのだから。俺は資料を見た。高梨は暴力団をやめたふりをして、この会社に入ったのだ。人事に都合のいいカモでもいたのかもしれない。社長はそこに目をつけて横領が始まったのだ。役員にするという名目で・・・。
「まぁ、何処にいても様々なストレスにおかされるんだよ。なんて世の中だよ。」
ぼやくだけしている。奥村は事件を俯瞰で見るのが掟なのだ。さんざん、話して応接室を出た。西條は何処かぐったりしているようだ。そりゃそうだ。俺たちに付き合わされたのだ。幼馴染の世間話に過ぎないことも多い。
「そうだ。今晩、飲まないか?」
「うまい店見つけたんだ。」
奥村は常に外を歩くのが主であるため、お気に入りになりそうな店を見つけていたのだろう。息抜きをしたいといっているのと何ら変わらない。
「いいぞ。何処集合?」
「それは連絡するよ。西條、そういうことだから。」
「先輩、勝手すぎますよ。」
俺はこうだと言いたげな顔をして、俺たちにアイコンタクトをして去っていた。手をプラプラとしていた。自分をわかっている俺たちを感じているのだろうから。俺は経理へと帰った。阿久津は仕事に追われていながら退屈そうな顔をしている。数字を見つけるのが嫌なのだろうから。
「おう、遅かったな。警察を敵に回したら厄介だよ。」
茶化すような言葉を言っておきながら顔は真剣だ。経験があるとでも言いたげだ。まぁ、関係ないのだ。事件を起こしたことで数年間で信頼という文字を取り戻すのに時間がかかるのだ。それも知っている。お人よしだと人から揶揄されたことなんてない。ただ影として生きていくことの大切さを教わったからだ。単純なのだ。人並みに生きて人並みに過ごすと敵なんて生まれない。真実がとか偽りがとか言わない。道具になり切ってしまえば・・・。




