刻んだ言葉
奥村は次いでのように今まで一緒にいた部下の苗字だけを言った。西條というのだという。仕事ができるうえに正しいことと間違っていることに関して厳しいことを言うのだ。時々どちらが上司かわからないと嘆きを聞いた。久しぶりの会社というのは億劫でしかない。いた人間が突然いなくなっているのだ。経理に行くと落ち着きがない様子だった。
「お前、警察が家に来なかったか?」
「俺はまだ、来てないですけど・・・。」
阿久津は焦ったように言ってきた。彼は高梨が死んだとわかった時に調べられて早めに聞かれたのだろうから。阿久津は不愉快そうな顔をしてみては笑顔を作るとわけのわからない表情を作り上げていた。俺は嫌な顔をすることせずに仕事をする。部長が死んだという割にはあっけらかんとした空気が漂っている。
「高棚部長は恩がなかったな。だから、こんな感じなのだろうな。」
「まぁ、自業自得って言ったらいいんじゃないんですか?横領した金がろくなことしないのが定番じゃないですか。それに暴力団とかかわりがあったとか言っていたし。」
彼はある一言に反応した。俺は核心することができた。近くにいる人を疑うしかないと。阿久津を気にするふりをして声をかけた。
「どうかしました?」
「何処から手に入れた。その情報。」
「新聞やニュース番組で言ってましたよ。暴力団とかかわりがあって、とてもいい用に使われていなかったから。」
そんな情報が流れているわけではない。奥村の買いかぶりで、阿久津と仲がいいのなら動揺させるくらい簡単だろうといわれたから言ったに過ぎない。まぁ、奥村や緑谷に頼まれるのはそこらの連中と違った意味になる。廊下から聞きなれた声が聞こえた。
「久世、警察だってさ。応接室を使えって。」
「了解。今すぐ行く。」
阿久津から少し離れて様子を見ることもできる。緑谷が廊下で立っていた。
「いいタイミングだったでしょ。お前なら揺さぶりをかけるのがうまいからな。」
「それより奥村は?」
「待ってるよ。情報抱えてな。」
守秘義務だというのだが、裁判官ですら守れなかったのだから言えた口じゃない。それもその裁判官の質の悪さは際立っていた。世界に宣言したのだ。偽善者ぶった悪人に過ぎなかったのだ。緑谷が自販機の前に立った。コーヒーを買った。最近は凝ったコーヒーが多くなっていて飽きることなく、飲むことができる。
「苦いことも甘いことも流せば済むってものじゃないんだよな。入れ墨みたいに刻まれてると考えないと。」




