つきが回っている
俺は数多が風呂に入ったのを見計らって奥村に連絡をした。電話がかかっていたのに気づいたからだ。
「夜遅くにすまないな。」
「お前には知ってもらわないと困るからな。大事になってしまっていて、二課の連中をあわてている。」
「あわてている?どうして?」
テレビではあがっていない話であるのは確かのようだ。奥村が話すのを躊躇しているように思えてならなかった。だが、そんなことをしてもらう必要などなかった。すべてを明らかにしないと真実につながらないから。
「高梨が死んだ。他殺だというのが俺の考えだがな。」
刺殺されたのだ。意図的に自殺と認識させるかのような現場であったのは事実なのだと。現場は保釈された高梨はすぐに行きつけのバーに行ってバーテンダーと話したのだ。そのとき、2人の会話をとぎるほどの人物にあったと考えている。
「この事件は暴力団とかかわっているから二課の連中は保釈を嫌がったらしい。けど、一課としてはとか判断がいらなかったんだけどな。上の人たちが暴力団と関係がある人がいて、目をつけられていたからせざる終えなかったのがすべて。」
奥村の声は言い訳をつらつらとする上司に対する怒りなのだろう。新たな事件を引き起こしたのは間違いなく警察だといわれかねない。それでも無駄な抵抗するに決まっている。後手に回ったときに先手を打とうとするとあらぬ間違いを引き起こしかねない。引きこしたとき、きっと取り返しがつかなくなる。
「一応、お前に会って話したいんだ。明日にでも会社に部下連れてさ、行く。」
緑谷と一緒に話を聞くのだ。会社を辞めるにも手段を折らないとならない。その準備をしないとだめだ。
「わかった。お前も無理するなよ。あいつのことを思ってやるのかまわないけどな。体は壊すな。」
「ありがとうな。」
電話を切ってみると数多が心配そうな面をして立っていた。首には赤のもらい物のタオルをかけている。
「どうかしたのか?兄貴。」
隠したところでいずれテレビで流れるかもしれない話だ。
「俺の会社の上司が殺されたって、奥村が。」
「兄貴は大丈夫なのか。だって・・・。」
「まぁ、横領で捕まって保釈したところだったらしいから警察にでも聞かない限り流れない情報だからな。奥村に聞いたのが今日はじめてだから心配することなさ。」
日常に戻ってしまえば非日常がいとおしくなるのが性だ。晴天の霹靂っていうことでもなかった。うらみを買いやすい人だったからそのつきが回ってきたくらいにしか思えなかった。




