代弁者は・・・
夏目が数多がしゃべりだすと気を使って出て行った。
「緑谷君が言っていたんだ。兄貴を大切にしないといけない。一番、客観的に久世という家を見ているのは兄貴だって熱弁されたんだ。ごめんな。」
「・・・。」
俺は全くもって答えるつもりなんてなかった。ベッドから逃れたい気持ちが先走ってしまう。緑谷と奥村は夏目から連絡が行くだろう。あいつらには何でも伝えてきた。だから、心を許している存在だと認識しているから。数多は寝ている俺を涙目で見つめている。演技だと。
「俺が浮かれていたから、親父の駒になっているのに気づかせてくれたのに・・・。」
懺悔をつらつらといっている。数多の顔を避けるように壁を見た。白く見える壁紙も少し黄色が混じっているのだ。外が騒がしかった。夏目がきっと2人を連れてきたのだろう。親父とおふくろは知っている。俺が金持ちの家庭より普通の家庭の子供のほうが仲が良かったのだ。見下した態度を見ているのは家だけで十分だと思ってしまったのだ。それゆえに普通の生活にあこがれた。金で買えるだけが全てじゃないと教えてくれたのは緑谷であった。兄が問題を起こしてやめてしまって小学校のクラスも担任も色眼鏡をかけて見つめていた。そんなものだと。奥村は普通の家庭だ。共働きであるため、家に帰っても寂しさが募るのだと教えてくれた。だから、俺の家に来て夏目と遊んだ。寂しさが消えるわけでもないが、埋める方法は探せばあるのだと。2人は静かに開けるというより何時ものように騒がしいさとあわただしさを混ぜ込んでいた。
「夏目から事情は聴いた。勝手話しておくからいいよな。場所だけ借りてく。」
気兼ねない態度をする。2人にもかなわない。言わないのだ。それだけの存在なのだろうから。緑谷はきゃきゃとはしゃいでいる。奥村と。数多は困惑している。
「久世はさ、犬飼っていたんだよ。確か捨てられた犬を拾ってきて夏目と一緒に飼っていたんだ。世話はずっとあいつがしてな。庭が広いからさんざん遊ばせていたんだけど・・・。」
「どうしたんですか?」
「こいつの親父がうるさいといってな。殺したらしいんだ。墓もわからないから拝むことができないんだよ。それからだよ、夏目がこいつの親父に反発するようになったのは。」
奥村は無言で携帯から写真を見せた。白い犬だった。俺になついた。夏目にも。だが、親父には吠えてばっかりだった。まるで主の言うことを代弁するかのように。失った命でも・・・。




