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前略  作者: 実嵐
33/111

進めた方

応接室に入るのは何時もと何処か見方が違った。豪邸に入り込んでしまったような気分だ。夏目がコーヒーを注いでくれた。

「それで親父のことだけど・・・。」

「理解してます。」

コーヒーをすすっている様子を見ているとただの対話なのだろうから。夏目の対応を堂安はじっと見つめている。執事の歴で見ると夏目のほうが上なのだ。

「旦那様は跡継ぎが必要だといっていました。跡継ぎはたぶん、伊丹様の穴埋めに過ぎないのです。伊丹様のやっていたことが世間にばれた場合、新たな会社を作ってかき消すだの言っていました。」

「屑だな。」

ぼやくと2人はうんうんとうなずく。親父の電話の真相がわかったので、のちの行動を気を付けないとならない。親父は末端の部下を使ってくるときがあるのだ。それに対抗することができないわけじゃない。俺は応接室の悪趣味を眺めた。高値で買った絵だろうか堂々と言うほどの潔さもあったのだ。それも有名じゃない人のがいいらしい。

「夏目、有難う。」

「いいえ、大したことはございません。私は旦那様のお役に立てるより刹那様、数多様のお役に立つほうがよっぽどよいのです。」

夏目は親父の執事をする前は俺たちの教育係でもあったのだ。執事も兼ねていたので大変であったろうに疲れた顔を見せたことはなかったのだ。厳しいというよりは普通の家庭くらいなのだ。夏目は頭ごなしに怒ったりすることはなかった。キチンと理由を問いただすのだ。それからずっと信頼しているのだ。俺が出て行くと知った時、止めはしなかったが、泣いてはいた。けど、此処から離れないのは俺たちとの関係を大切にしているからであろう。

「堂安にとってはいい上司か?」

「えぇ、性格とか知っているのは夏目さんですし、マナーとかも教わりました。」

「私はただ経験を伝えないのは嫌なんですよ。」

夏目の性格は独りよがりとかはもっぱら好まないのだ。夏目と話すだけ話して豪邸を出た。車乗ると嫌な気持ちはなかった。俺が親父が嫌いなのを知っているからきっと出張の時を選んでいたのだろう。頭が上がらないのだ。俺の周りには周りを見すぎるために心配になってしまう人間にあふれている。何処かの誰かのように説明をしない。勝手に納得していく奴らは少ないのだ。権力というのは無限の力ではないのだ。それを知っているのだ。恥というのは人によって作られるというよりは自分で作ってしまうのである。

「寝ていても構いませんよ。」

「いいのか。」

「久しぶりに実家に戻られたんです。緊張するのは当たり前ですから。」

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