収集
時間というのは気づかぬうちに回っていくのである。奥村は携帯が鳴りだしても無視をしていた。俺の家に来た時の部下であろう。刑事というのは2人1組であるから、たまらないのだろうから。
「電話かかっているけどいいのか?」
「構わないよ。どうせ頭でっかちの考える意見を鵜呑みさせられたりするからさ。無理に切ったりしなければ俺の部下がのこのことやってきて忠告してくる。」
俺も会社を急に休みになってしまってやることがないのだ。会社の責任だといってしまえるのだろうからと。口では簡単に言えることにあふれている。うんざりするほどだ。コーヒーを何杯飲み干した時だろうか。ガラス越しに以前見た若者が急いだ様子で駆け付けた。尋常じゃないというほどだというのに奥村はのんきにしている。
「先輩。ホシが見つかったという話が上がったんですよ。早く戻ってくるように言われたんです。」
「お堅い連中は誰だと思っているんだ?」
「吉沢です。伊丹から理不尽な理由で首を切られたとか言っていた。ですが、アリバイがあるとか言っています。」
「そいつはホシじゃないとでも言ってやれ。どうせ物証もないのに、妄想を早めただけだ。責任をとれるのかといってやれば本性がわかるよ。俺はそんな無責任な行動はできない。人の人生を扱っているんだ。それくらいの覚悟を持て。お前もだ。」
後輩の背中をバンバンと鳴らした。奥村は緑谷の意思を継いだだけじゃないのだと思った。緑谷がやりたかったことはきっとこれだろうと感心もしていた。
「あと物証も疑うときもあるから。自信がある時には来い。俺は無責任な奴らの騒ぎなんて付き合ってられない。まぁ、お前は好きにしろ。」
「そうはいきませんよ。上の人達は興奮して収集がつかないんですから。」
収集がつかないというのはあまりにも無残だとも思った。メンツのために人の人生が狂わせられるのだ。そんなの許せないといっても組織が腐っていて効き目がない薬のようだ。奥村はしょうがないという風に重い腰を上げた。コーヒー代は俺が持つというと最初はそれはいけないといったが、最終的にいずれおごるということで全てがまるく収まった。俺はもう少し喫茶店にいることにした。人の移り変わりを眺めても人を気にしないものなのだ。奥村が出て行ってから腰を浮かせて出て行く用意をした。会計をして出てみるとすることがないというのはいかに時間が減らないかを思ってしまうのだ。人並みに飲まれてしまったのだと。




