飲み込みたいこと
関係のない話を誰もいない空間によってむなしさを大きくしているのだと思うのだが、俺にも知ったことではない。人の心とは複雑なだけかと思ったらシンプルであったりするから皆無な謎を解くことになるのだと思ってならないのだ。皿を洗って風呂に入ってひと段落したとき、思い出したために携帯を取り出した。
「もしもし。」
「珍しいですね。こんな夜にかけてくるなんて。で、なんですか?」
電話をかけてきたということは何かしらの用事があると考えているのでありがたいのである。
「伊丹のことを調べてほしいんだ。会社が全てだとも思えないからな。」
「資料を送ります。茶封筒で偽名で送りますから。」
「わかった。すまないな。夜遅くに電話をかけて・・・。」
「いいですよ。用がある時はどの手段でもいいですよ。私は歓迎します。」
堂安に礼を言って切った。伊丹は巻き込まれただけだとは一概には言えないのは事実。久世グループの幹部候補になったというのはある程度の覚悟があったというのも理解する。新聞やテレビのニュースを見てもろくな対応をしていないので、はっきりしたことが分からないのだ。休憩をしていると玄関からどたどたと音が鳴っている。
「ただいま。」
「おかえり。バイトか。」
「バイトとちょっとした飲み会があってね。俺さ、バイトしていて思うのが、久世グループの御曹司にばれていないかとかね。」
「ばれたらばれそうになったらやめるんだ。そうしないとすり寄ってくる奴はいるから。」
忠告を受けている数多は疲れ切った顔をのぞかせている。バイトをするのにも大変だったなと思っていると数多がコンビニの袋からチューハイを取り出した。
「兄貴、飲もうよ。新商品だと書かれていて気になったんだ。」
2本を買ってきたというのは俺が起きていることを仮定したうえでのことだろう。それか飲み会で気に食わないやつがいたのだろう。
「嫌な奴でもいたのか。」
「まぁ、そんなでくたばっているようじゃダメだから、うまくかわすよ。」
「そうか。」
「兄貴は何かあったのか?」
心配そうな顔を見せているのだ。数多は他人を見捨てられないので、気になるのだろう。
「別にないよ。テレビを見ても政治家は何処までも愚かだと思ったくらいだよ。」
「正常通りならよかった。兄貴、何処か寂しそうな顔していたからさ、気になったんだ。」
数多はすっきりした思いで買ってきたチューハイを飲みだした。数多にばれないようにしないとならない。




