心配ごと
仕事を終えて何処かいつも以上に疲れ切った顔をのぞかせたところで誰も見向きもしないことを知っているが、ただ俺の後ろには堂安は不安がっているのは知っている。俺のことを知る人間ではあるのだ。俺はカフェに入った。入ってくるのがわかっているので、セルフのところであるためコーヒーを買って席に着くと堂安が座った。
「どうされました?」
片手にカップに入ったコーヒーを握りしめていた。シロップももっている。甘い味が好きであるから味を変えるのだろう。ストローを吸ったのだ。
「会社の不祥事で明日とあさってが休みになったからさ。」
「そうですか。それは大変な出来事に巻き込まれていますね。」
ストローでコーヒーを吸う音を鳴らしている。俺も同じく鳴らしているのである。会社の不祥事というのはいけないことだとわかっている。看板をつぶしているのだ。自らの手で殴っているのと変わらない。
「数多様には話されるのですか?休みになられることを。心配なされるのをわかってますよ。」
「まぁ、あいつは特殊だからな。俺のことなんて放っておけばよかったのに・・・。俺と同じようにするために家を出るなんて真似をするなんておかしいよ。」
可笑しいとぼやいてみると堂安はそうではないと首を振った。数多は久世家が嫌だったというよりか俺と離れるのが嫌なのか同じ道を行くのがいいと思っているのかもしれない。数多の軽い考えを見せているので俺も口を閉ざすのである。堂安は窓を見た。外では急ぎ歩く人の波で飲まれるときを待っているようである。
「貴方の考えもあるでしょうけど、まぁ見守ってあげてください。私はそう思います。」
堂安の優しい言葉やしぐさを見ていると此処にいるような人間ではないと思ってしまうのは俺だけだろうか。堂安は施設で育ったことを言い訳にすることなく、淡々とこなす姿は目に映るものがある。いろんな会社に行ったら必要とされた人間なのだろう。そう思ったところで過去は変わらないのだ。
「刹那様、心を落ち着かせてください。それが私の願いです。奥村様が訪れてから変わったのではないかと数多様から相談を受けました。阿部も警戒しているほどです。」
「そうか。俺もダメだな。数多にまで読み取られるなんてな。兄貴としていけないだろう。」
つぶやくほど墓穴を掘ってしまうのではないかと心を動かしてしまっているのだ。俺を見捨ててくれればよかったのに・・・。昔から思うことであるのだ。俺なんて・・・。




