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前略  作者: 実嵐
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うわべかどうか

親父にもおふくろにも失望したのを見たのだ。何故か親父はもっぱら手腕のなさを部下に指摘されても怒りをまき散らすだけ。おふくろはそれに賛同するだけ。回想めいたことをしたところで変わりえない過去を嘆く気もない。

「堂安と阿部には会えるかな?」

「どうかな。俺と数多が休みの日には好きなことをしろって言ってるしさ。親父やおふくろの時みたいに縛り付けてもないから詳しくわからない。アパートは知ってるから住所は書くよ。もしいなかったら俺や数多は邪魔しないから。」

奥村に向かって行ったら納得しているようにも知っているというようにも取れるうなずき方をした。邪魔をしたという態度ではなく、遊びに来たに近いのだろう。

「事件のことをまた聞きに来るかもしれないが、その時は頼むよ。」

「了解。ただ、奥村、部下を大切にしろよ。」

「わかってるよ。」

奥村と部下を玄関まで送った。緑谷はじっくりと聞いていたのだ。口を出すこともなく、ただじっとコーヒーを飲み干していた。

「俺も帰るかな。長居するのは構わないだろうけど、奥村に久しぶりに会えたからよかった。」

「そうだな。まぁ、好きな時に来いよ。」

数多は寂しそうな顔をしている。けど、止めようとはしないのは俺と話したいことがあるからだろう。兄弟でのごたごたにするのは嫌な気がした。緑谷はひっそりとかえって行った。俺はリビングから自分の部屋と向かおうとしたとき、声をかけられた。

「兄貴、さっきの話が本当か。俺を久世に残そうとして兄貴は去ろうとしたこと。」

「そうだ。奥村に嘘言っても仕方ないからな。俺は久世家の中での失敗作だからといわれたからな。お前が好きなようにしろ。」

吐き捨てるように逃げるように言って部屋に入って行った。真っ暗な部屋が何処か落ち着きを取り戻すようだった。逃げたノートを再び開いた。今読んでも何も思わなかった。

『数多を救うというのはきっとやってみないとわからないのだろう。納得するのは俺だけなのだとは思わないのだから。伊丹の事件をことを聞きに奥村が来たであろう。事実を言って数多は寂しそうな声を響かしていたはずだ。

決して振り返ってはいけないのだ。俺は黒幕に会った時の対応に迫られてしまう。それの実験だと思え。

会社に行って横領について調べてみろ。きっと思った通りの奴が、金を奪い取っている。俺のことに気づくことはないだろう。警察に通報するか人事に言うかを選べ。

少しは考えることが少なくなるだろう。』

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