幼馴染
気づいたら朝になっていた。カーテンを開ける音が鳴った。目を開けると、数多がせっせと動いていた。
「兄貴と緑谷君此処で寝たのかよ。それなら俺も此処で寝ればよかったかな。」
「いいよ。そんなことは。」
ダイニングテーブルにコーヒーを置いていた。きれいに並んでいたビルを見ている。電信柱には烏が止まっていた。嫌われることも知らずに飛んでいるようでもあった。
「兄貴、もう昼過ぎてるからさ。朝ごはんと昼込みで食べよう。まぁ、さっさと作ったから大したものじゃないからな。」
ごはんと肉の炒め物が添えてあった。野菜炒めのようにも見えるが、明らかに肉の量が多いのは数多が作ったからである。野菜も高い時代であるから無駄にはできないのだ。次の日にでも食べてもいいようにとも思って作ったのだろう。
「うまいか?」
「うまいよ。味付けがいいね。」
バイトでは飲食店に行っているが、まかないを出ないところに行っているのだ。それはおまけに食いつくことはなかった。福利厚生のほうが大事だとさんざん利かせたからだろうかもしれない。話をしていると、電話が鳴っていた。明らかに俺の携帯だった。ダイニングテーブルから少し離れたところで受けた。
「もしもし。」
「俺だよ。奥村。」
「あぁ、なんだ?」
こんな時に電話をするのは決まっているうえに何となくわかっている。奥村は緑谷の意思を継いで警察に入り、必死にかんばって刑事になったのだと本人に聞いた。確か・・・警視庁の捜査一課とか言って警察の中ではエリートとされているところにいるのだと。愚痴を吐いていた。
「お前のところの関係者が死んだの知ってるか?」
「伊丹の会社のことか。それなら今日、くればいい。数多もいるし、堂安と阿部に会うのなら会いやすいだろうから。」
「そうか。お前はわかってくれてありがたいよ。お前の親父のところに行ったところでお前や数多の話は聞けないのは知っているから聞いて正解だったよ。」
久しぶりに声を聴いてうれしかったのか弾んだ声があった。切った後にも余韻が残っていたのだ。リビングに戻ると数多に事情を話すと仕事で来るといっているのに久しぶりに会えるということ自体がうれしいのだろう。緑谷も離れるつもりもないのだ。奥村に会えると聞いているし、聞かれる話も知っているのだから急いで出て行ってもらう必要もないのだろうから。
「奥村が来るのか。刑事になったあいつに会えるなんて嬉しいな。」
「お前の意思を継いでくれた人だからな。」
「俺のぼやきを受け取って刑事になって警視庁に入って捜査一課だ。すごい奴だよ。」
嬉しそうに言っているのを眺めているようでもあっていい雰囲気であった。きっと聞かれることは嫌なことがあっても抵抗することもない。真実は話すだけ。




