残されたもの
緑谷がリビングのソファをベッドに変えて布団を出している。風呂に入る準備も兼ねているのである。
「緑谷、俺は先に寝るな。数多はほっといてもいいよ。あいつも明日は休みだとか言っていたからさ。」
「そう。じゃあ心配することないね。」
俺は首を縦にうなずいた。そういうと自分の部屋といった。部屋には机とシングルのベッドがある。机の棚にはノートが置いてあるのだ。会社に入った時に日記替わりに付けると決めていたのに、三日坊主ですぐにやめてしまったものなのだ。自分に対してうんざりしてしまうのかもしれない。表に出していないだけで。カーテンに隠す前の空は暗黒であった。世間を映し出す鏡のようにも思えてしまってならない。思い込みを繰り返し自暴自棄になっていくのかもしれないと。俺はベッドで寝ることはできそうではなかったので椅子に座った。ノートが並んでいるうちに見覚えのないノートが目についた。出してみると少し黄ばんだような真新しいようにも思えてしまった。開いてみると、俺の字が連なっていた。書かれていることを読む気になれなくなったわけでもないのに、開いては閉じてを繰り返す。時間の無駄を行っていると感じた。俺は読むと決心した。最初にこう書かれていた。
『これを書くことにしたのは、誰のためかというと数多のためでもある。最初に書いておくことがあふれている俺は死ぬのだ。今、事件を追うことによって関係のないことに巻き込まれてしまうというのだ。
読んでいるお前が信じるはずがないだろう。何故なら今のお前は生きているからである。普通の生活をしているのだ。普通の出来事が哀れであると思ってしまうのかもしれない。上司を眺めていることも昔の話だといってしまう。俺は最期になって気づくなんて愚かだと心底思ってしまうのだ。
誰にも言うな。それは告げておく。先走って言ってしまうと心配する人間が増えてしまう。それだけは避けたいのが本心ならば言うな。親父の事件と離れておくのがいいのだが、きっと数多のためだとして動く気でいるのは事実だろう。動くのはよせとは俺は思わない。何故か、そうやって動いた人間だからだし、俺は死んだことに後悔はしていないと思っていたが、数多を残すのは嫌なのだ。そう気づいたのは遅かったから。気を付けて動けと感じる。
内容は書ききれないから別のページへと書くことにする。』
俺からあてられたメッセージはあまりにも酷である。事件にかかわることをいけないというのだ。




