戦いの切符
最も親父は株主に顔向けできるようなことを言葉を並べるに決まっている。安定しているということで多くの人が株をもっているのだ。俺や数多もすこしだけ株をもっている。久世家の一員であるということにさせて置きたかったのだろうから。緑谷は酔った雰囲気を楽しんでいるようである。
「株をもっているからとか言ってさ、呼ばれるなんて嫌だな。」
「特に兄貴は親父がずっといてほしかったとかぼやいていたからな。」
数多も何処か俺の気持ちを察してだろうほそぼそとした声を繰り返している。テレビを見ていると親父がマスコミに冷たい対応をしていたのだ。黙っていてほしいのだ。俺たちの名前を出されるだけでも厄介である。親父が俺たちの存在を隠しているのに、今更利用するかのように使われるのは道具であるといわれているようでもあり、そこに駒として行くのが嫌なのだ。数多は疲れていたのに加えて酔っていたので椅子に寝込んでしまった。昔と変わらないところを見つけるとやはりいい奴だと思うのだ。素直で無邪気な姿を見えているかと思えば強がるようにしているのだ。
「俺はさ、お前が久世に偏ると思ってないよ。ただ、事件を解決しないとお前らいずれ巻き込まれるかもしれないぞ。」
「そんなことはないさ。俺たちのことを世間には黙っていたんだ。一応は普通に育てようとする意志は遭ったみたいだ。カスみたいな扱いを受けていたのかもしれないな。学校では取り繕ったように持ち上げたのにさ。」
過去のぼやきを聞いてくれるのはやっぱり緑谷しかいないのだと心から思ったのだ。俺もこの事件に巻き込まれるといわれたのは初めてだった。笑い飛ばすこともできないのは生まれたところが悪かったのだと嘆いたところで変わることなんてない。嘘でもいい。変わってみたいのだと感じる。高いものだけが全てだとも思えない。それがわからないのは親父とおふくろとそれに仕える召使のような感じの人だけだ。普通に入って来た人はげんなりしてやめるのかと思えばそうではない。大企業でそれも大正時代から続くのだとして親からの評価が高いのだろうから。やさしさを感じさせないのは圧力を感じてしまうからだと。
「まぁ、お前が事件の犯人を見つけてしまえばいいんだよ。いわゆる探偵ごっこさ。得意だろう?」
「得意じゃないよ。やったこともない。素人が手出しできるものでもないだろう。それに爆弾を作った人間に抵抗できる策なんてもってもない。」
「そういうな。俺も手伝うから。お前には数多や堂安、阿部もついているだろう。一人じゃないんだから、やってのけれるよ。」
優しい笑みを見せる姿は昔から変わらない。俺に付き合うのは見返りを求めていないのを知っているからだ。




