言葉の重さ比べ
緑谷が来るまで2人で家の冷蔵庫の中にあるビールを開けたりチューハイになったりしながら過ごした。インターホンが鳴った時、数多がうれしそうに駆け出した。数多は緑谷と波長が合うのか来るのが楽しみなのだろう。缶がゴミ箱にたまる分、いいこともたまっていているような気がした。
「兄貴、緑谷君が来てくれたよ。いっぱい買ってきてくれている。」
リビングに入って来た緑谷は驚く様子もないのだ。何時もの風景だといっているのだから。コンビニの袋を2つもっている。数多のほうに1つある。
「お前とも話がしたかったんだよ。お前のところの伊丹がやっている会社がやられたというのをニュースで見てな。驚いたよ。」
椅子に座りながら言った。久世グループの御曹司だということも知っている。それは明らかにわかる扱いを受けてきたからだ。小学校、中学校をあまりにも丁寧に扱われてきたのだ。教師も知っているために成績を上げていたりするのだ。嫌なほどの対応にいたくなかった。緑谷に伝えるとひたすらうなずいて聞いてくれた。お前の思うままにやったほうがいいと。1度きりの人生を無駄な時間だったと後悔することがないようにと。緑谷は普通の家庭であったが、久世が経営を行う学校に入れたのだ。試験を受けて受かったこともあったのだろうから。高い制服を買わせるということはしない。鞄くらいなのだ。決まったものは少ないため、交流をしやすいのだ。家庭的に厳しいところでも入れる私立として話題になっているのだ。
「俺もな、数多と飲んでていて知ったんだよ。まぁ、産業スパイをしていたからばちが当たったとしか思えなくて。いずれ俺と数多は呼び出しを食らうだろうな。」
「難儀な家庭だな。生まれる場所も家庭も選べないんだもんな。俺は普通でよかったよ。」
彼の放たれる言葉の意味をしみじみ思うが、変えられないものにあがくのもいいのだろうと思うのだ。無駄だといってしまって終わらせるのがいいのかもしれない。
「久世の家には戻るつもりもないのか?」
「俺はないよ。俺は親父と対抗する会社を起業するために出たんだ。だからいくら呼ばれたって行かないよ。」
「それくらいでいいよ。数多はどうなんだ?」
「俺は兄貴が起業するときに手伝えればと思ったんだ。企業を作ったってうまくいかないとかはわからないだろう。だから、いいんだよ。」
数多が手伝うつもりであったことを初めて知ったがうれしかったのだ。それを感じると飲む酒の味も変わるのだと言い切れる自分がいた。




