浮世の後悔
それはあくまでもという言葉を加えておきたかった。阿久津の目は重い錘をおろすつもりなのが感じ取れた。俺の計画が壊れ行く恐れがある。そのためにはうまい行動をしなければならない。俺は阿久津に足を近づけた。拳銃を受け取るようになっているのだろう。俺の弱った靴には耐えれるのかは知らない。明らかに警戒している様子もうかがうことができるのだ。なくしたものの大きさを比較することなんてできない。目に見えていないのだ。嘘だろうが真実であろうとしても。
「俺の罪は消えないよな。」
「消えることはありません。償うことはできたとしてもです。一生付きまとってきます。それも覚悟の上で行ったんじゃないんですか?」
「それほど大きな覚悟をもっていたわけじゃないんだよ。黄劉会の時は捕まっても何も思わなかったんだよ。その組織にいるんだって。必然で逃げられないとかね。まぁ、俺が脅すだけだったからさほど表に出ることもなかったんだ。」
阿久津の口調は寂しがっているようでもあり、悲しみも抱えて、むなしさに対抗しようと無駄にあがいてきた結果のようにも思えた。世の中の他人に対する冷め切った目を目にする度に、助けを呼ぶこともできなくなってくる。外には作られた光を加工してまで明るくしているのに、知ってか知らずか騒ぎ立てる奴もいる。レンタルのように使っている光なのに扱いが下手な政治家もうじゃうじゃといるのだ。親の七光りだけにしか勝てない勝負もあったりするのも確かだ。金にものを言わしている時点で本人には価値というのはないと断定されているのと同じだ。それをプライドとはき違えて偉そうに横暴に言うだけが全てなのだろう。俺の動きは止めることはできないのだ。角度によって見にくい状態なのを利用するしかない。きっと、西條は拳銃をもっている。腰回りをガサガサと探っている。準備の体制にしようとするはずだ。
「恵美子にもいい報告はできないけれど、それくらいなら・・・。」
阿久津は自分に拳銃を向けた。頭に向けている。予想通りの動きをしてくれている。下見をしているので、場所は把握できている。阿久津の心を揺さぶることできっと揺らいだ心の行き先はわかっているのだ。後悔じゃないのだ。きっと達成できなかったということが大きいのではないかと。鬼塚恵美子は記者としていきれなかったことは自分の所為もあると思っているはずだからだ。暴力団に入ったりしなければとかさ、後悔は尽きない。




