手を取り合う手はいったい・・・
拳銃をもっていることで抱える重みというのはもっているものにしかわかりえない。だから、単純にごたごたという資格もない。阿久津の震えていない手を見ると安心をするのはどうしてだろうか?俺の今までの生きてきた中で嘘で生きてきたことを後悔しているのか。まっぴらだといってしまえるほどの人生なのだ。拳銃というのは構造の違いによってモデルガンとしてもっていることもある。3Dプリンターで拳銃を作り上げた奴もいた。そいつは警察に捕まった。爆薬も作るほどだったのだ。一般人もなりうるのだ。暴力団だからとか言ってられない時代なのだとしみじみに思ったほど。
「打てばいいじゃないですか?」
「久世の人生を俺が終わらせるなんて簡単にできないんだよ。隣で笑いあっていた時もあった。悪口を言ったりするときもあった。それを俺のエゴの復讐で殺すことなんて・・・。」
エゴという言葉は何処にでも張り付いてくる。何処にでも存在するのに、知らぬふりをしてなかったことにしてしまうのだろうから。外が騒がしくなっている。此処に来るまでに大して無駄な動きをしたつもりはなかったのだ。無駄といえば相部屋になった大学生になり切れなかった浪人で予備校に通っている子には印象付けたかもしれない。足取りというのは見えてくるものなのだ。
「エゴっていうのはいいですから。撃ってください。」
乾いた黒の拳銃のかちゃという音が鳴った。これでいい。拳銃をもっていことは夏目を通じて知っているだろう。夏目も長年、俺と数多の教育係として過ごしてきたのだ。一度、あれになったのだから。後悔もない。重みの増した拳銃を震えてもっている。脅す道具として扱ってきたが、殺す道具としては初めてなのだと理解した。幹部候補だった理由もわかった。小心者で卑怯者であったのだ。権力を得ることに必死になっていた。上から指示を与えるのはうまいが、殺しには向かなかった。だから、殺しメインの部下よりも部下も脅しで済む幹部にすることで保とうとした。幹部研修もあったのだろう。それが普通の会社と同じなのだ。闇の社会に生きていたことを隠すことが可能だったのだ。嘘偽りを吐くのは向いている。
「貴方が何故、黄劉会の幹部候補だったかが分かりましたよ。俺、会社を見るのと人を見るのが得意なんですよね。あんなくだらないところにいた所為かもしれないですけど・・・。」
「くだらないところって久世グループのことか?」
「そうですよ。俺は親父の悪事を知っているんですから。黄劉会と手を取り合って作り上げていたものがあったんでしょうね。」




