大それたこと
「恵美子が殺されたことに何処か全て解決したと思い込んでいた俺のさ、心は納得しなかったんだよ。ろくでもない生き方をしていたからこその更生をしようとも考えられたかもしれない。下種な団体だなんて知らなかったわけじゃない。」
「貴方には崖から飛び降りるほどの決意もなかったわけですね。だから、暴力団の構成員として存在していたんですから。」
俺の言葉も一理あると思ったのかぐうの音も出なかったのか静まり返った緊張した空気が漂った。窓もすりガラスのように白かった。此処には月日の流れには抗えなかったのだ。事件も加わって売れないビルが残った。オーナーも放っておいていた。
「俺は今も黄劉会にいる。それはいずれ裏切るためでもあったんだよ。裏切って恵美子の仇を取りたかった。」
「貴方が更生もできていないのに、警察が聞き入れるほどお人よしじゃないんですよ。野菜や果物の規格と同じなんです。少しでも傷があると外される。」
俺は言いながら阿久津の動きを見た。ただ、窓の前に立っている。きっと時限爆弾なのかもしれない。手口を考えると時限爆弾があり得るのだ。野菜や果物の規格は厳しくそこから這い上がることなどできない。外された場所からは戻る道なんてない。きっと少しの割合にだけあるのかもしれない。警察は個人情報を雑に扱う。色眼鏡で観察をするために冤罪を生み、権力のあるものにはペコペコと腰を曲げる。もみ消している時点で可笑しいのだ。正義だの勝手なことを言っているのに、甘い考えを浸透させているようだ。
「こんなくだらない話をするのはよさないか?久世。」
彼は振り返って拳銃を握っていた。握りなれているのか扱い慣れているのかは知らないが、震えなどない。覚悟は決まっているようには見えなかった。ただ、口をふさがなければという何かに駆られているだけ。孤独なんて人は誰しももっているのだと教えてくれたのは阿久津だった。悪事にはいずれ天罰が下るのだとも・・・。孤独であることを嘆くことは簡単なことだ。現実にはたくさんの叫びが存在する。それに対応する人も必要だと。相手にしないのは少しの自信という大それたものではなく、プライドを守るための技術だと笑っていた。今、思えば暴力団として生きてきたのだ。権力者には頭を下げる。プライドが間違えた方向に導いたとしても警察が捕まえに来ない限り、のうのうと生き続けるのだ。それを知っている人間なのだと。
「お前に出会った時にでも・・・。」




