何時もの風景
天候の変化に敏感になっていたのはとっくに昔の話だ。昔も気にしてなどいなかっただろう。ただ、通り過ぎていくときに身を託していたのだろうから。そんなことを思っても無駄であると知っているのだ。アパートを出て何時も通りにしているのだ。電車を待っているのだが、最近は物騒な世間なのだと勝手に解決している。会社につく度にため息をつく。
「おい、久世。きて最初にため息とはいい度胸だな。」
嫌見たらしく言うのは部署の中では高棚部長と呼ばれている。それはいずれ話すと思っているが、行動でわかるはずだ。隣にいる1つ先輩の阿久津は面倒見がいいため、上の判断が間違いだと周りが隠れて騒いでいるが、届くはずがないと飲み込んでそれに参加しないのだ。俺がいるのは経理だ。大手ともなると小さな部分を見逃してしまったりするのだ。
「久世、気になることがあったら言えよ。俺くらいには吐き出さないといけないだろう。」
小声で言っているは高棚部長に目を付けられると消されると思っているのだろうから。警戒にあふれて和気あいあいとか言う会社とは違うのだ。入って知ることほうが多いのだ。昼になるとぞろぞろと部署から離れる。いるだけで気分が悪いのだ。雰囲気を壊している張本人は全く気付かないのだからしょうがない。会社近くの何時も行く店へといった。安いうえにうまいと評判なのだ。何時も日替わり定食にしている。店主とは顔見知りであるから来たとたんに作り始めた。仕事の速さがある。
「仕事はどうだ?段落はついたのか?」
「ついてないよ。部長から目を付けられない程度に済ませてきてるんだ。緑谷はいるか?」
「いるよ。何時もの席さ。行くか。」
店主の心配りによって席を移動した。緑谷は気づていないのか、携帯に目を落としていた。緑谷は幼馴染で高校が違っても大学が違ってもよく遊んでいたから気が知れる仲なのだ。
「よっ。元気か?」
「毎日毎日、聞く話じゃないだろう。それでそっちは大変か?」
「まぁな。部長に目を付けられないように言われている意味が理解したんだよ。お前は人事だろ。反感買うところだな。」
「それは人次第だよ。そう言えるのはさ、今だけかもしれないな。」
日替わり定食が2つ並べられていた。緑谷は下の名前で呼ばれるのを好まないを知っている。実家へ帰る度に嫌になるから。
「刹那。数多とは会っているのか。」
そういわれるだけでも嫌なのだ。親というのは気づきもしないのだと納得させているのだ。
「お前が此処にいるだけで落ち着くよ。」
「なんだよ、それ。」
くだらない話をするのが定番の昼の過ごし方だ。