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xiii. カコドイナハデココ!はマーサのターン!






―よし、っと!この部屋はこのくらいにしといてやろうか。




「お次はもう一個の部屋の方だ。ドアを開けるのが楽しみだ全く!」




オオカミは勢いよくドアを開け部屋に入るとそこは寝室だった。




あれ…外れたかな。ここのは寝室じゃないか。この部屋には…何もありそうにないなあ。



オオカミはそんな風にがっかり思いながら取り敢えずとクロゼットを開けた。




すると、世にも豪華なキラキラと輝く刺繍布たちが出て来るではありませんか。





「うわあ!すごい」




オオカミはあまりの絢爛豪華な作品に感嘆の声をあげた。




すごいすごい、これは上等な値段がつくぞ!と感情が沸いてしょうがなかった。





でも、オオカミはすぐにその感情が鎮まると、何かを考えるようにうーんと唸っていた。




「上等はいいが、これをどうやって盗み持ち帰ろう?こんな大きな物はポケットにしまっておけない。そのまま持ち帰ってしまったらおいらの盗んだことがバレちまう。欲しいなあ、これ、高く売れるぞ。」





そうだ!とオオカミは(ひらめ)いていい考えが浮かんだのか嬉しげな顔をした。





「一通り、事が済んだらたんまりこの布を持って帰ろう。そうだ、なにも今日は仲良しこよしで終わるんじゃないから。婆さんに化けて、赤ずきんを襲って食っちまった後、その後持って帰ればいい!おっと、子ヤギもな。」





静かにクロゼットを閉じ、グヘヘ、グヘヘ、と笑い出すとベッドの脇にある小棚の中を今度は探りだした。




一番上の引き出しを開くと運がいいことに見事な装飾された宝石のブローチが入っていた。




おお!とオオカミは感嘆の声をあげると、

そのブローチを窓から差し込む陽の光に透かせて見て、また薄気味悪い笑みを浮かべていた。



「あるじゃないか、いい物。」




その代物はとても良い物だった。なにせ、娘であるママナがマーサのために時間をかけて丁寧に作ったブローチなのだから。



ガーネットの中心にダイヤモンドがぐるりと一周してその更に周りにはママナがあしらえた、繊細な小花の装飾がされてあった。





その大切なブローチをまた、懐に忍ばせようとしたその時。





「あらあ!それはだめよ!」




オオカミはその声に驚いて丸めていた背中をピーン!と伸ばしてしまった。




その瞬間、体に隠していた盗品がバラバラと落ちて、オオカミの本性をあらわにしてしまった。






「全く、様子を見ていたけれど、しょうのないオオカミさんだねえ!人の物を盗んではいけないよ?今ならまだ返せば許してあげるよ。ちゃんとごめんなさいをしてね、許すのはそれから。」





落ちた盗品を拾い集めるのをやめたオオカミ。




その後ろにある窓から差し込む陽が雲に陰ってまだらに明るくなったり暗くなったりしている。




その暗くなった瞬間、オオカミは今までとは比べ物にならないくらいの不敵な笑みを浮かべた。




ニヤリ。




「ヘヘヘッ。グハハハッバレちゃあしょうがないな!もう演技はおしまいよ!おいらなあ、今日シチューをご馳走になりに来たんじゃあないんだよお!実はなあ、赤ずきんを待ち伏せするためにここに来たんだよお!あんたに化けて赤ずきんを騙し食い殺すためになあ!!」





グハハハーッと大きな笑いをしたその時、あれ、とオオカミはあれあれと焦り出し、アガアガと声を出した。



「ルマトガゴアママノソ」



そう聞こえたが早いか。





オオカミの正面には杖をき腰の少し曲がった、年老いた老婆がいたはずだった。





ールマトガゴアママノソー




そう唱えた女性がいた。




それはオオカミの正面に立っていた。




自分の唱えた呪文に得意げに顎を上げながら。



姿勢はピンとして。





その女性の名前はマーサといった。





そう、それは間違いなくマーサという名前の赤ずきんのお婆さんだった。





要するにママナのお母さん、さっきまでシチューを作っていて孫の赤ずきんを待ちわびていたあの、よぼよぼのお婆さん。




それが今、オオカミの前にいていつの間にか紺色のマントを羽織って木でできた杖を持ちオオカミを懲らしめている。





そう、そうなのだマーサは魔法使いだったのだ。






「悪いことをしてはいけませんよ。オオカミといえど、ちゃんと懲らしめて教育いたします。」




大きな口が空いたまま閉じないオオカミはアガーアガーというようにもがいていた。




「さあ、その手に持った大切なブローチをお返しなさい。」



魔法使いマーサはそういうと再び呪文を唱え、泥棒オオカミからガーネットのブローチを奪い返した。







「これこれ、これは大事なのよ。娘が私のために手をかけて作ってくれたの、これだけは渡すことはできない。綺麗なのよ、ほうら、陽に透かせるとガーネットがまるで葡萄酒みたいに見えるのよ。フフッ。」





マーサはオオカミのポケットからビョンと飛び出し、マーサの手の中への飛び込んで来たブローチを大事そうに懐にしまうとさて、と一言言ってオオカミへの魔法を解いた。




オオカミはガクッとその場に落ちて開けぱなしで痛かった顎を手で包みかばった。




「ウググ…くそお、何すんだ婆さん。あんた、魔女だったのか。くそお。」





マーサはふふふっと笑うと、


「こんな深い森の中で何の力もないお婆さんが一人きりで生活出来ると思う?それに、私は魔女じゃなくて魔法使いよ、似てるけど違うの。」





デイオテッエカヨノモタレマスヌ




再びマーサは呪文をオオカミに向けて唱えて杖を振った。





「さ、他の盗品も返してもらおう。」




その呪文が寝室に響き渡るとオオカミの周りに落ちていたマーサの大事なものたちが持ち主の元へ戻っていった。




それらは六つあった。





一つは小さな地球儀のようなもの。



二つ目は五芒星のマークが描かれたペンダント。



三つ目、カメレオンをかたどった陶器のようなもの、



四つ、円盤になった人らしき顔の土器。



五つ、数字がバラバラにに並んだ時計のようなもの。



六つ目の最後の物は、美しく宝石で装飾された小さなナイフ。





それらが一斉にマーサの元に戻ってきた。





「うん、うん、どれもちゃんとあるね。全く、困ったオオカミだよ。」






オオカミは悩んで選んで自分のものにした盗品たちが持っていかれるのが悔しいのか、爪を噛みながらマーサを睨んでいた。




そして、オオカミはグルル…と唸り、攻撃態勢になるとマーサ目掛けて飛びかかってきた。




すると、マーサは目を瞑り、再び得意げに呪文を唱えた。





カコドイナハデココ!




その言葉とともにオオカミの元から返ってきた盗品の一つが浮かび光を放ち始めた。





その盗品のひとつの小さな地球儀に似た魔法具はクルクルクルクル…光を放ちながらもそんな風に回り始めたと思ったらパアアッと眩しく光り、寝室を宇宙にしてしまった。




飛びかかってきたオオカミはその場に止まってバタッと地面に落ち辺りを見回して、びっくりして宇宙の中をあちこち逃げ回った。





マーサはそのオオカミに対して杖を振りながら様々な呪文を唱え続けた。





その呪文の効果でオオカミには色んなことが起きました。





まず、小さな隕石がオオカミ目掛けてぶつかりました。




オオカミは頭がクラクラとして目が回ってその場に手をついたあと、太陽がいくつもに割れてそのたくさんの火の玉が彼目掛けて落ちてきました。




そして、彼の尻尾を燃やしました。





オオカミはその火のついた尻尾から逃げ惑うようにぐるぐるとその場を回って円を描きました。





そして、マーサは二つめに返ってきた五芒星のペンダントに魔法をかけ、一つの大きな五芒星にしました。




するとその大きな五芒星はぐるぐると回り出すと車輪の様に、縦になり回りながらオオカミを追いかけ始めました。





オオカミはこりゃたまらん!といった様子で五芒星の棘に突かれながらも更に逃げて逃げ逃げて。






三つめに返ってきた陶器で出来たカメレオンが大きくなって尻尾でバーーン!とオオカミを叩くと四つめの人の顔がかたどられた円盤が大きくなってその人型がうわあああっと口を開けオオカミを追いかけ始めたからオオカミはもうたまらなくなって逃げ出した。





しかし、この宇宙にはちゃんとブラックホールがあってオオカミはそちらの方に逃げ出したからさあ大変。




ブラックホールは何もかも飲み込んで人型の円盤も、カメレオンも、火の玉も隕石も全部飲み込んだ後、宇宙空間にしがみついて離さないオオカミの手を人差し指から順に一本二本というようにゆっくり剥がしていった。






そしてギャーーーーー!というがなり声と共に、ブラックホールへと吸い込まれていった。












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