ようやく入学式
なんだかんだで入学式15分前。クラス内では、喧嘩の原因などについてずっと話をしている奴らが、大半を占めていた。
途中から真室へ標的を変えるくらいだ。大した原因でもないだろう。
ある程度頭のいい学校へ来たつもりなのだが、失敗したかもしれないな。
とそこへ、担任教師小国が教室へ戻ってきた。
ただでさえ目立つような容姿なので、言葉を発する以前に、自然と注目される。
「お前達、準備をしろ。出席番号順に整列だ」
クラス内は、いよいよ来たか…ていう感じの雰囲気になった。
廊下に出席番号順に整列をするため、クラス全員が廊下に出た。
番号確認などをする人がいたため、1分ほど時間がかかったが大した問題ではない。
この後体育館前に移動し、入場行進をするのだろう。もうすでに上級生は体育館で待っているので、他の学年の生徒とはすれ違ったりはしなかった。
周りからは、「緊張する」や「楽しみ」などと言った声が聞こえてくる。
真室は顔面が腫れすぎて体育館ではなく、保健室へと向かったようだ。流石にあんな顔したやつが堂々と体育館へ入場すれば、笑われること間違いなしだ。
あの女の子の近くには、二人の女子生徒が話しかけていた。
一人は、運動神経良さそうなお元気ガールと、もう一人は頭が良さそうで優しそうな、いかにも優等生みたいな人だった。
あまりにも正反対なキャラで少々驚いたが、顔には出さない。
あの女の子は、とても緊張している様子だった。それもそうだ、見るからにあいつらは初対面だろう。
特にお元気ガールの質問内容がそう推測できる。
少し距離があり、多少の間違いはあるかもしれないが、こう質問していた。
「何か運動とかしてたのー?」
これはもう、初対面の人がする質問だろ。
だが、そのうちお互い馴染むだろう。優等生とお元気ガールは悪い奴らではないと思う。
俺の目にはそう映る。
最強の恥ずかしがり屋な彼女だって、きっと友達はほしいはずだ。
よくわからんが、友達いらない奴とかは喧嘩止めるどころか、ほとんど見向きすらしないからな。
と、そんな事を考えながら前の奴について行くと体育館前に到着していた。
中はもう新入生が入場するのを待っている。
すると、入場曲が流れた。
俺のいる1年1組を先頭としているので、俺の入場は扉が開いてすぐだろう。体育館の入り口の扉が開かれ、学年主任から入っていく。
そして学年付きの教師などが入場したあと、担任の小国が先頭で入場した。
何だかんだで無事入場行進を終えたあと、恒例の新入生の名前呼びや来賓、校長の話などどこの学校にでもあるような事をするのだろう。
今からその内の1つ、生徒の名前を呼ぶやつをする。
これもクラス順でやる。出席番号1番からどんどん呼ばれていく。
お、始まったようだ。
小国が生徒の名を呼び、1番から返事をしていく。
小さな返事をする者もいれば、ハキハキと元気のある返事をする者など様々いた。
俺は小さすぎず、大きすぎず、1番目立たない普通の返事をした。これは非常に簡単なので、問題なくクリアした。
と、その時だった…
「真室――」
何と小国が、保健室にいるはずの真室の名を呼び、過ちに気づいたか、途中でやめた。
勿論返事など来るはずがない。
上級生や保護者も「えっ?」みたいな感じになっていた。
なんだか非常に気まずい雰囲気だ。同じクラスの奴らも、気まずそうにしていた。
小国は、気を取り直して次の生徒の名を呼ぼうとしたときだった…
「ハイハイハイハーーーイ!」
と体育館中に大きな声が響き、反響したため、真室が言ったハイの回数の倍ぐらい聞こえた。
真室の顔はあざだらけで凄く痛々しい。
こいつホントにどうかしてるぞ。
保健室は体育館から近いので、おそらく聞こえたのだろうか…。にしても普通は来ないだろう。
こんな奴と関わりたくないと今までより一層強く思った。
真室は返事をした後、すぐに自分の椅子を探して座った。
結局来てしまったようだ。
平和に終わるはずだった入学式も、この男のせいで台無しだろう。俺は別に構わないが、楽しみにしていた人達の中には、きっと怒った人もいるだろう。
その後は、普通に進行し何とか式を終了することができた。
入学式編終わり
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