表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2016年/短編まとめ

人は一人じゃ生きてけないよ

作者: 文崎 美生

部屋の光源はパソコンと携帯ゲーム機と家庭用プラネタリウムだけ。

回転椅子の上で膝を抱えながら、パソコン画面から流れる声を聞き、カチカチカチャカチャとゲーム機のボタンを弾き続けた。

部屋の照明を落として点けたはずの家庭用プラネタリウムは、天井に作り物の星空を映し出している。


草木も眠る深夜に相応しくない楽しそうな声が、パソコン画面から響いており、それをBGMにゲーム機のボタンを弾き続けた結果、画面には『ミッションクリア』の文字。

緩く細い息を吐き出し、ゲーム機を目の前の机に滑らせる。


丸まっていた背中を伸ばすように、背もたれに背中を押し付け、抱えていた足を伸ばす。

視線は自然と天井に向けられて、薄汚れたそこに広がる星に目を細めた。

目の神経がズキズキと痛む。

鼻筋に沿って落ちてくる眼鏡を押し上げたついでに、眉間の辺りを親指と人差し指で押した。


小学校中学校高校、順調に進んで全ての過程を終え、大学まで進むことなく就職した私の人間関係は、今現在職場のみとなっている。

悲しいかな、学生時代の友人に分類されたはずの人達とは、殆ど連絡を取らない。

……いや、悲しくはないけれど。


元々人間関係はそこまで広くもなく、深くなく、狭く浅くの人見知りでぼっち気質だった。

学生を終えた時点でこうなることくらい、予想は付いていたのでどうとも思わない。

職場のみの人間関係になり、狭く浅くが余計に狭く浅くなり、家にいることが増えたくらいで、私自身はそんなに変わっていないのだ。


同部屋の妹も、別室で眠る母も、私が深夜までパソコンを点けっ放しにして、作り物の星空の下でゲームをしていることは知らない。

見上げた星は、輝いているわけではないが、確かに存在する。

これよりも少し値の張るものを買いたいと思いながら、ゆったりと通帳と見つめ合う日が増えた。


それからゆっくりと視線をパソコンの画面に向ければ、開かれた窓ではゲーム画面が広がっており、四人分の声が聞こえている。

ガヤガヤ、ワイワイ、楽しそうな声に、笑い声。

太めの声に、少年のような声と、酷く落ち着いた声、ほんの少しヤケたような声の四人がするゲームは、いつだって私の心を揺らす。


楽しそうだろ、と言っているような、楽しいんだぜ、と笑っているような動画は、笑顔を押し出す動画サイトに投稿されているもの。

ゲーム実況、と呼ばれているジャンルだが、ひたすらゲームをするのみである。

ゲームとお喋りだけの動画が、私の心を揺らして止まないのだ。


残念ながら長い学生生活を送ってきたが、こんな風に誰かと同じゲームをしたことはない。

そんな風に声を、言葉を、あちこちに飛ばしながらゲームをしたことはない。

例え皆で出来るゲームだとしても、私は一人でやるし、相手はいつだってコンピューターだ。


目を向けたゲーム機には、変わらず『ミッションクリア』の文字が浮かんでいて、一人でここまで進んだんだよ、という結果が残っている。

一人で進められるなら、別にゲームがクリア出来るなら、問題ないとは思うけども。

ただ、ほんの少し、ちょっとだけ、羨ましいかも、知れない。


パソコンの中では、それじゃあ今日はこの辺で、と中途半端にゲームを切り上げていた。

次のパートを見ようか、寝ようか。

私の視線は壁に引っ掛けられた時計に向き、朝方近いことを知る。


「……あーあ」


パソコンの窓を閉じ、パソコンそのものをシャットダウンさせ、ゲーム機をスリープモードに切り替える。

家庭用プラネタリウムの電源は、十五分後に切れるようにタイマーを点けた。

分厚いレンズの眼鏡を机の端に置いて、私の体はベッドへと沈んでいく。


見上げた夜空はボヤけて不明瞭だ。

何だかなぁ、なんて呟いた私は、重くならない瞼を下ろす。

目尻から何か溢れたけれど、そんなの知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 凄く現実味を帯びている話でした(n‘∀‘)η ちょっと主人公が思っている事と行動がごちゃごちゃになっている気がします…。 『最近は「これよりも少し値の張るものを買いたいなぁ…」そう思いなが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ