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委員会決めのふたり

   委員会決めのふたり   進め!不人気委員会?!


『図書委員になったの』


 昨日の夜、玲が俺の家に来て、委員会決めの話をしていた。図書委員は昼休みや放課後に当番で貸し出し手続きの係が回ってきて、俺の中で、というか、大半の人の中で最もやりたくない委員だ。そんな委員に玲がなったのは、多分、じゃんけんかなんかで負けたからだと、その時の俺は思っていた。

「んー、図書委員になりたい人」

 シーン・・・うちのクラスは今日が委員会決めのロングホームルームだった。案の定、図書委員に立候補する奴なんかいない。

「はい」

 まっすぐ手をあげた俺に、クラス中が振り向く。

「・・・三井、マジ?」

 あみだくじで当たった、という、なんともわけのわからない理由で学級委員をしている松本が俺を見て恐る恐るという感じで声をあげた。

「うん」

「でも、三井・・・部活忙しいだろ?昼休みはともかく、放課後の当番とか、きつくないか?」

「でも、そんなこと言ったら部活入ってる奴なんかみんな同じ条件だし、それよりなにより早く終わらせて今部活に行きたいから」

 実はホームルームの時間は5分前に終わっていて、放課後に突入している。

「・・・じゃあ、頼むわ」

「うん」

 こうして俺は思惑通り図書委員に就任した。


「では、当番を決めます」

 学年が上がって初の委員会活動。

「すみません、遅れました!」

 玲がいないと思ったら、遅れて入ってきた。

「あなたは・・・」

「1年D組7番、神崎玲です」

「遅刻はダメよ」

「すみません、学校が広くて・・・」

 その言い訳にみんな首を傾げているけど、俺は玲の言いたいことが分かる。学校が広くて、図書館に来るまでの間に道に迷ったんだろ。

 いくら校内が広いからって、図書室までの道のりで迷うなんて、玲は本当にドジだ。っていうか馬鹿。

 俺はわざと最後に図書室に入ったから、空いているのは俺の隣の席だけ。玲はおずおずとそこへ座り、下向き気味に反省の色を表した。

「では、曜日と昼休み、放課後での図書の貸出当番を決めたいと思います」

 放課後は部活があるから、できれば勘弁してほしい。

「玲、バイトに引っかかるから、昼休みにしよう」

 俺が小声でささやくと、玲は驚いて俺を見上げた。どうやら、隣に座っているのが俺だということに今の今まで気づいてもいなかったらしい。

「・・・う、ん・・・わかった」

 こうして、俺はまんまと水曜の昼休みの当番になった。当然、玲も。


「宗ちゃんも図書委員になったなんて、偶然だね」

 玲、相変わらず馬鹿だな。

「図書委員は人気ないからな」

 委員会が終わって、俺は部活、玲はバイトへと行くために昇降口へ向かう。

「そうなんだ。本、読み放題なのにね」

 別に学校の図書室なんだから、貸し出しはただだし、本は誰でもどれでも読み放題だろ・・・。

「じゃあ、またあとで」

「うん!部活頑張ってね!」

「玲もドジするなよ」

 昇降口で玲を見送って体育館へと足を運ぶ。今日は年度初めの委員会活動で、みんな遅れてるはずだ。

「お、三井。図書委員に立候補したって小橋に聞いたぞ」

 部室に入るなり、部長に声をかけられる。

「あ、はい」

「誰もやりたがらないことを率先してやるところがすごいな。みんなも是非、三井を見習ってくれ」

 下心満載の行為をここまで褒められても・・・。

「当番の日はその分・・・」

「あ、水曜の昼番だけなんで、部活に支障はありません」

 部活は昼練もあるけど水曜は基本的になし。急なミーティングが入らなければ、部活には支障がない。

「そうか。それはよかった」

 コート上とは全く別人ののほほんとした笑顔で俺の肩を叩いた部長は一足先に体育館へ行ってしまった。


「三井さん三井さん!聞いてくださいよ!」

 学年が上がって、新学期が始まって一か月。校内のあちこちで新入生を部活に勧誘する声が飛び交っている。うちの学校は割とスポーツ強豪だから、特待生で入学してくる新入生も多い。そういう新入部員は春休みの間から部活にきていて、俺はなぜか、そのひとりに大層懐かれている。

「三井さん!」

「なに?」

 俺がどんなに邪険に扱ってもめげない後輩・浅井はその人並み外れたジャンプ力で無駄にぴょんぴょんと俺の周りを飛び回っている。

「俺、保健委員になったんっすよ!」

「そう」

 大興奮の末に告げられた言葉がそれで、それに対する俺のそっけない反応に目の前の浅井。

「『そう』って、反応薄くないっすか?ちゃんと聞いてました?」

「きいてたよ。保健委員になったんだろ」

 靴紐を結びなおしながら答えれば、浅井はまたぴょんぴょん飛び跳ね始める。

「すごくないっすか?」

「全員が何らかの委員会に所属するんだから別に普通だろ」

「だって、あの保健委員ですよ?」

 いい加減本気で浅井がうるさくなってきたので、俺はかごからボールを一つ取り出して、顔面に投げつけてやった。

「ちょっ!危ないっすよ!三井さん‼」

 そういう割にはしっかりぶつかる前に受け止めているあたり、さすが期待の新人だけあって、羨ましい反射神経の持ち主だ。俺からの顔面レシーブで鼻血を出した小橋とはわけが違う。

「保健委員なんて、保健だより作ったりで案外面倒らしいよ」

「でも、倍率5倍くらいで、クラスの男子ほとんど立候補したんすよ」

 その言葉で俺は首を傾げる。なんで?保健委員って、そんな人気の委員会だったか?うちのクラスではだれも立候補していなかったし、最終的にじゃんけんで負けたやつがやってた気がするけど。

「保健委員ってなんでそんな人気なんだよ?」

 俺が問うと、浅井は固まった。

「・・・三井さん、噂知らなかったんですか?」

「なんの?」

「保健委員には、あの滝田先輩がいるんですよ!」

 大興奮なままの浅井の言葉に今度は俺が固まる番。

「滝田って、滝田愛也?」

「そうっすよ!校内ナンバーワンですよ!」

 うん。知ってる。俺の彼女だから。

「いやー、俺マジでラッキーっすよね」

「良かったな」

 こんな俺と浅井のやり取りをチームメイトは遠巻きに眺めていた。俺のあまりの反応の薄さにか、誰も滝田が俺の彼女だと浅井に告げない。俺も言わない。

「じゃあ、練習はじめようか」

 言うより先に渾身のサーブを打ったのに、浅井はまたしても天性の反射神経で返してきて、俺は心底ムカついた。




 玲がどこで何をしているか、俺にとって大切なのはそれを把握すること。







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