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学年交流会のふたり

   学年交流会のふたり   進む?新たな親睦⁈


「え?宗ちゃん?」


 今日は学年交流会。

 うちの学校には学年交流会の日というのが月に1回。年間12回ある。これは、学年の違う二人がランダムで1年間ペアになって交流を深めつつ地域貢献をする。という企画。地域貢献というのはほとんど毎回、地域清掃&ゴミ拾い。俺たちはくじ引きで学校近くの海岸清掃の係になった。

 そして、俺の相手は、玲。

「こんなに大勢いるのに、宗ちゃんとペアになるってすごい確率だね」

 玲は純粋に驚いて、相手が上級生とはいえ俺だから、さして気も使わずにルンルン海岸に向かっている。

「怖い先輩が相手だったらどうしようかと思ってたの」

 あのさ、これが偶然なわけないだろ。ときどき・・・1日に1回くらいは真剣に思うんだけど、玲って、本当に馬鹿なんじゃないだろうか?

「でも、学年交流会なのに宗ちゃんとペアじゃちょっと意味ないかも」

 まだ新しいジャージのハーパンに制服のブラウス、ちょっと肌寒いから羽織ったジャージの上着。玲の私服はいつもスカートORワンピースだから、中学のときの部活以来のスポーティ(?)な玲の後姿が新鮮だ。

「どうして?」

「だって、学年交流会って、他の学年の先輩後輩と仲良くなるための行事でしょ?宗ちゃんとはもう充分仲良いもん」

 俺はもっと仲良くなってもいいけど。というか、もっと仲良くなる予定だけど。


「ねえ、裸足になっちゃダメ?」

「ビーチサンダル履くって規則だろ」

 海岸清掃組は足元の怪我防止のために砂浜で必ずビーチサンダルを履かなければならない。

「砂が入って痛いんだもん」

「裸足で歩いてたらもっと痛い思いするかもしれないぞ」

「うーん」

 それぞれの割り当てられた場所からごみを残らず拾わなければいけない。真夏ほどではないけれど、海岸はごみが多い。海岸を利用する人たちが何を考えているのかは知らないけど、ガラスの欠片や金属片だって普通に落ちてる。

「ねえ、宗ちゃん見て!」

「ん?」

「綺麗な桜貝」

「・・・・・・」

 玲は海岸で貝殻やシーグラスを拾うのが大好きだ。でも・・・。

「あのね、玲。今授業中で、ゴミ拾うのが目的なの。貝殻拾ってる場合じゃないの」

「だって、綺麗だったんだもん」

「ほら、そこのペットボトルのフタ拾って」

 玲はごみもよく拾うけど、それと同じくらい貝殻とかシーグラスも拾う。

「みて、いっぱい」

 ゴミ拾いの途中で拾った小さなキャンディの空き缶に玲の“宝物”がいっぱいに詰め込まれている。

「ゴミもそろそろないかな」

「じゃあ、学校戻る?」

「うん、天気怪しいしね」

 だんだん雲が広がってなんだか雲行きが怪しくなってきた。見渡すと、あちこちでみんな学校に帰り始めている。俺はわざとみんなから離れた場所を選んだから、学校まで少し距離がある。少し急がないと、降り始めるかもしれない。

「玲、ちょっと急ごう」

「うん」

 そういって海岸から上がって足早に学校へ向かい始めたとき、バラバラとスコールのように強い雨が降ってきた。

「きゃっ」

「玲、走るよ」

 俺は玲が濡れないように自分のジャージを玲にかぶせて玲の手を引いて走った。海岸にもう生徒は残っていなくて、俺と玲が最後だったらしい。


「2年A組32番三井宗一郎、1年D組7番神崎玲、只今戻りました」

 正門のところで生徒の確認をしている生徒会役員に学年クラス出席番号名前を告げて確認をとってもらい、校内へ戻った。

「わぁー、宗ちゃん濡れちゃった」

「俺は部室に着替えあるから、それより玲だよ。中まで濡れてるだろ」

 玄関で玲にかぶせていたジャージを絞ると、雨水が滴った。

「でも、授業これで終わりだし」

「今日はバイトだろ」

「あ!そうだった!どうしよ?」

 授業はこれで終わりだけど、玲は放課後バイトがある。

「玲、ちょっとおいで」

 俺は玲を連れて部室へ向かった。

「入って、いいの?」

「うん。誰もいないからおいで」

 部室のロッカーには何枚かワイシャツがストックしてある。

「俺のだから大きいけど、袖まくってエプロンしたら大丈夫だよ。濡れてるよりましだしね」

 ちょっと窮屈になってきて捨てようと思っていたワイシャツを玲に渡す。

「ありがと!」

 部室の奥のカーテンで仕切られたスペースで玲を着替えさせて、玲の濡れたブラウスは俺のと一緒に俺のバックに突っ込んで、家で洗濯することにした。

「じゃあ、またあとで」

「うん!ありがと!」

 ホームルームのために玲と別れて、それぞれの教室に戻った。玲が俺のワイシャツきているのがちょっと変だけど、袖まくってベストを着ているし、あとはホームルームだけだからまあ、いいだろう。

 そんな俺の考えが甘かったということに気づいたのは、ずっと後になってから。


 玲、何があっても俺が守るから。




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