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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
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9.スラム2 

 スラムに戻ります

 ニルヴァス様の許可により、金勘定をしなくなりました。


 …うらやましい。

 ********************************************

 9.スラム2



 異空間部屋から出るときに、私は試しに「探索」をかけた。出るところを人に見られれば面倒だろうと考えてのことだ。うむ、動いている&近くに人の気配はない。

 スルリと抜け出て市場に向かう。大きめの布を買うためだ。子供たちには布が必要だ。

 ニルヴァス様に許可をもらったので、自重しないでやろうと思う。


 市場で酒の空樽を4個買った。それを大銅貨4枚を払ってスラムの入り口まで運んでもらうよう頼んだ。ローブをかぶせれば異空間収納に入れられるのだが、さすがにそれは目立ってしまうので止めたのだ。自分で持って行けはするが、そっちも目立つし嵩張るので通行が困難だし、風魔法で飛ばすのはやはり目立つ。


 次に布屋に行き、タオルサイズの柔らかい布を10枚と大きくて柔らかい毛布、床に敷くのに良さそうな植物繊維のラグを買った。今度は収納できた。

 準備が整ったのでスラムへ向かった。あれから5時間ほど経ってしまっている。子供たちはもう起きているだろうか。




 スラムの入り口まで行く間に、樽を運んでいる2人の男に追いついた。この街で長くなりそうなので人脈は作っておこうと思う。そこから一緒に行って、着いたらお礼を言って大銅貨を1枚ずつ渡した。お互い笑顔で手を振って別れる。「また何かあったら言ってくれ」と言ってくれたので、成功したと思われる。

 そこから通りから見えないところに移し、ローブをかけて収納。子供たちの家に向かう。


 子供たちは眠っていた。4人が身を寄せ合ってスヤスヤと。

 私は今のうちに土魔法で便座付きのトイレを作っておく。こっちの世界の排泄物がどのように処理されているのか判らないので、形はそんなに変えない。拭く物などは見当たらないが、ここがそうなだけなのか、ここもそうなのかは分からない。…どっちかな。

 そういえば飲み水も食べ物も、普段はどうしているんだろうか。スリだけでは食べていけまい。


 外が暗くなってきた。街壁沿いなので暗くなるのは早い。今は6時くらいだろうか。時計が欲しいな。

 壁のそばに土魔法で小さなコンロを作った。お湯を沸かしてカップ5つにそれぞれ4分の1くらい注ぐ。この子たちは多分、水を飲み過ぎるとお腹がいっぱいになってしまってご飯が入らなくなってしまうだろう。

 妹が「うちの子、水飲むと入らなくなるんだよね」と何度も言っていたからな。


 自分の分に水魔法で水を足してちびちび飲んでいると、子供たちが目を覚まし始めた。そして私に気付いてまずはびびった。まあ居ないと思ってた室内に誰か居たら、私でもびびるよ。


「よく眠れた? お湯を飲んだら、ごはんにしよう。」


 声をかけると、「ごはん」に反応したのか大人しくテーブルに来てお湯を飲みだした。

 その間にボロ布を隅に丸めて置いて、ラグを出して敷いた。うん、これなら気持ち良く寝れそうだ。子供たちは鞄からサイズ以上の物が出てきたのでポカンとしていた。

 その上に石のテーブルを移動させる。昼間大きく作ったのは、子供たちが私から距離をとりたいだろうと思ったからなので今回はそのまま小さいサイズでいってみようと思う。ダメなら大きくすればいい。

 皿を出して昼間と同じだけ載せていく。今回は焼き芋も一緒に載せた。温度管理はばっちりである。お湯も注ぎ直してさあご飯だ。


 昼と違って、ご飯を用意している間に子供たちは自分の席にいた。自分の場所が決まったらしい。

「食べていいよ」と声をかけても食べ始めようとしないので、また私から食べ始めると、子供たちも食べ始めた。

 ゆっくりと時間をかけて食べていると、なにやらたくさんの気配がしたので入り口に目をやる…おおう。

 子供たちがのぞきこんでいた。ははは。うん、食べ物の匂いがしたら、そりゃ来るか。

 昼間は男の子が連行されてるところを見てたのか警戒してたのかな?




 食べている子供たちも気が付いたようで、びくっとした。皆の手が止まってしまう。男の子は、外の子供の中のひとりが気になるようだ。男の子と同い年くらいの、一番大きい女の子かな? 優しそうな子だ。例に漏れずに皆ガリガリのボロボロで暗い顔だけども。


「あの子たちのごはんもあるんだけど、きみが手伝ってくれる?」


 男の子に訊いた。びっくりして女の子から私に視線を戻した。


「皆の分も、あるんだよ。」


 もう一度ゆっくり言う。男の子は皿を見て、私を見て、女の子を見て、また私を見た。私が頷いて見せると、小さく頷いた。ええ子じゃのう。


「きみたちも、手伝ってね?」


 他の3人にも言うときょとんとしていた。


「まずはテーブルだね。ここじゃ無理だから、外に出るよ。」


 外に出ると、相変わらずのぬかるみ。そして狭い。

 そこを魔法で水を抜き、乾かす。そして街壁に魔法で机を作る。

 お皿が載るくらいの奥行の、解りやすく言えばカウンター式だ。

 テーブルにお皿を置いていきながら「探索」で子供の数をかぞえた。ここに居るのは35人、うち4人はあの子たち。そして来ていない子たちが43人。

 大きな街にいる孤児としては少ないのか多いのか。とりあえず、ここに居る31人に先に食べさせよう。テーブルを5つに区切る。

 各テーブルに私と子供たちが付いて、一緒に食べることで、ゆっくりしっかり噛んで欲しいのだ。急いで食べてお腹が痛くなるなんて、全部は止められないだろうけど少しは止めたい。


 数が数なので、地中から抽出した小石で、小さいカップを作って残っていた湯冷ましを入れる。男の子には配るのを手伝ってもらった。


 お皿にまずは粉ふき芋だけを載せた。さっき食べ始めていた子供たちの分も同じようにする。そしてその子供たちに「ゆっくり、たくさん噛むって、皆に教えてあげて」と言って各テーブルの横に座ってもらう。

 その位置なら全員から見えるだろう。


 そうしてから、他の子供たちを皿の前に座らせて行く。先に座った子が食べずに待っているのを見て、他の子たちも大人しく待ってくれた。

 ん? この子たち、もらいなれてる? もっと野獣のように席に着いたとたんに食べてしまうのを想像していたんだが。


「ゆっくり、たくさん噛んでね」


 私が粉ふき芋を一粒とってよく噛んで見せると、子供たちは食べ始めた。ちゃんと言うことを聞いてくれた…孤児ってもっと激しいイメージだったな。っていうか、子供ってこんなにしゃべらないものなのか。

 あの男の子たちもそうなんだけど、私、ここの子らの声、聴いてない気がする。

 うーん、おかしいよね? いや私がいるからしゃべらない、だけならいいんだけどね。明日、道具屋のおじいさんに訊いてみよう。

 皆が粉ふき芋を食べ終わったら焼き芋を配り、それも食べ終わったらレーズンもどきを配る。

 さて子供たちが食べ終わった。次は43人の子たちだね。


 ご飯を食べ終わった子供たちに頼んで、他の子たちを呼んできてもらった。

 集まったのは25人だった。その子たちに先に食べていた子たちを付けて、ゆっくりたくさん噛むことを言い含めると、男の子を連れて残りの18人を探しに行った。

 来ない子に無理にあげなくてもと言われるかもしれないが、この子たちの痩せ具合を見ると、来れない状態にあるんじゃないかと。

 男の子の家に近い家から見て行く。まずは右に向かって。

 ニ軒目に一人いて、熱で動けなくなっていた。その子に「治癒」をかける。実は初めてなので、どうなるかわからない。ドキドキ。ほっ、治った。起き上がって私にびびっている。そりゃ目が覚めたら知らん大人だしね。

 この様子では他の子もどうなってるか判らない。私はその子に「ごはん皆で食べてるから、おいで」と伝えると、さっさか次の子供を探しに向かった。




 結局、18人は熱か弱り過ぎで動けなかった。

 熱の子たちは治してご飯を食べに行ってもらい、弱りすぎの子たち10人にはジャガイモドロドロスープをお見舞いした。

 ジャガイモだけでなく玉ねぎも入れると美味しいのだが、時間がないので粉ふき芋に水足して煮て、練っただけだ。

 消化能力も落ちているだろうから、スプーンの先に少しずつ載せて食べさせて、噛めない子には舐めさせる。焦らずにゆっくりとだ。

 ご飯が終わった子供たちが食べさせるのを手伝ってくれたので途中からはお願いして、その間に全部の家に「乾燥」と「保温」、「換気」とトイレの作り替えと「無臭」をして回る。20軒ほどの家全部に、ボロではあるが大きな布があった。やっぱり誰かが…? ふむ。

 まあそこはそのうち判るかなと。明日はラグと毛布ももっと買わなきゃなと決めた。



 スヤスヤ。むにゃむにゃ。ぐーぐー。スースー。

 え? どこに居るのかって?

 スラムで一番大きな家ですハイ。

 この家を弱りすぎの子供たちのために借りて、容体が急変しないように見ているのである。

 ジャガイモドロドロスープと湯冷ましを保温してスタンバイして、目が覚めた子がいれば、スプーンでせっせとあげているのだ。他の子供たちも手伝うとジェスチャーしてくれたが、弱っているのは皆同じ。それに、子供は食べたらしっかり寝たほうがいい。ので一番元気が有り余ってる怪力なおばさんが頑張っているのである。

 怪力関係なかったかな。ん? 抱き上げて膝にのっけてご飯とか食べさせるのだ。怪力関係あったな。まあそういうわけで、私は子供たちの寝息をBGMにして、看護したり考え事したり。


 ん~~~、明日が来るのが待ち遠しいなっと。






 ************************************************

 孤児たちは78人でした。治癒魔法が成功しました。


 ヨリは孤児たちの様子に、援助の気配を感じています。


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