83.領主が来る日 3 【フレンチトースト、椎茸の肉詰め、グリーンスープ(前半)】
調理パートありです。
今話はヨリとロジへのご褒美回です。
「今日の晩ご飯はフレンチトーストと椎茸の肉詰めと緑のクリームスープでっす!」
昼食後の調理小屋にて、私は高らかに宣言した。
ガザの呆れ顔が見えます。料理番たちは苦笑です。はい、私だけがハイテンションなんです。え、何でって? ほら解るだろ? そこにつぶらな瞳の我が友人、ロジ少年が居るからだよ!
それだけじゃなく他の少年たちもいるわけで。うん、少年たちが相手ともなると、お姉さん頑張っちゃうぞ的な意欲がふつふつと湧いて止まらない。それと同じくらい緊張もしてるけどね? だってそんなつぶらな瞳で期待されると失敗できないじゃん! 失敗したら恥ずかしいじゃん! だから私、落ち着け……落ち着け……。
漫画で表現するなら、ふしゅーふしゅーとかコフーコフーとかなってそうな息を逃しつつ、高くなり過ぎたテンションを落とす。大抵が調子に乗ると失敗するんだよ。平常心になるべし、なるべし……うん、なった。よし。
「まずは卵液を作る。材料は、卵と牛乳と砂糖ね。溶き卵に牛乳と砂糖入れて混ぜるだけ」
2人で1つのボウルを用意して、私に続いてやってもらう。少年たちは料理番たちと組んでもらって、まずはどうやって卵を割るかを見るところからスタートだ。泡だて器を使って卵を溶き、そこに牛乳と砂糖を入れて、グルグルしっかり混ぜる。
ちなみにこだわりの配合は、卵1個に牛乳4分の3カップ、砂糖大さじ2杯である。甘さは控えめだが、そのまま食べても大変美味しくてだね。でも甘くしたい時もあるから、その時は砂糖を追加するよりもホットケーキシロップや粉砂糖、グラニュー糖を好みで掛けるかな。
グラニュー糖の時はシナモンをかけてシナモンシュガー味にしたり、きな粉をかけたりもオススメだ。トッピングをアレコレ試しているうちに、食べ過ぎてしまう危険料理の1つでもあるので、諸君には次に回す勇気を持ってもらいたいと思う。出来れば。うん、出来ればでいいから。
ああ、卵液の量を増やしたい時は、この配合で足してってくれたまえ。足りない時にその都度作って足す方法は、最初から多く作り過ぎる危険が回避できてオススメだ。生卵が入るから、残った時は菓子材料にして加熱消費しておくれ。時間停止できないなら残しちゃ駄目だ。コレ大事。さて次の作業だね。
「これを皿に流し入れて」
卵液が零れない深さの容器であれば何でもいいが、パンを一段で浸けるとなると水面の広さが必要となる。更に卵液を吸ったパンは沈むし柔らかく脆くなるので、触るのはひっくり返す時と焼く時だけの2回がベストだから、できれば底が平らで広い容器──タッパーかバット──が好ましい。それが無いのでフチが少し立ち上がった皿をチョイスだ。……バット注文しないとな。
「次はパンを、厚めの斜め輪切りに切る」
作り貯めしてあるフランスパン風パンを、少し斜めの3センチ幅で切っていく。思いっきり斜めではなく、ささやかに斜めに切るのもポイントだ。斜め過ぎると薄い部分が増えて、浸けて柔らかくなった時に溶け崩れやすくなるからね。
ちなみに厚みは完全なる好みだから、きっちりでなくていい。5センチなんて話はよく聞くし、8枚切り食パンでやる時は1センチくらいなわけだから、決まりはないのだ。
パンの種類も断面があればいいので好きなのを使ってくれたまえ。メロンパンでやるレシピを見た事もあるから、本当に何でもいけると思うんだよね。レーズンパンとかくるみパンとか、豆パンとかも美味しいんじゃないだろうか。私は歯ごたえのあるパンでやるのが好きなのでフランスパンでやることが多いが、そのうち試してみようかな。ニルヴァス様とアレコレ寸評しながら食べるのは楽しいに違いない。
ちなみにフランスパンでやるのは漬け込んだ時に溶け崩れにくいという利点もある。食パンだと耳を持っても千切れてしまう事があるので、初心者にも優しいのだ。
「そしたら平らな所を下にして、卵液に載せてくよ」
最初は浮くが吸えば落ちていくので、切ったのを水面に敷き詰めていく。隙間が無くなったら次の皿に卵液を注いで、同じように。その間に1枚目の皿の卵液がパンに吸われ終わっていたので、卵液を追加してと。
「浸け込む方は冷やすからオーブンは冷やしておいて、卵液の方には時間停止ね」
生卵は割ってから時間が経てば経つほどヤバイというのは既に教えてあったので、料理番たちには馴染みの処理だ。今回は調理台の下を冷蔵庫として使うので、冷却もお任せである。
「こまめに卵液の量を見て、足りなければ足す。1時間経ったらひっくり返して、同じようによろしく」
フレンチトーストの浸け込み時間は0時間から一晩と実に幅広いが、そこに厳密なる決まりは存在しない。パンの厚み、パンの種類、どこまで沁みさせたいか。悩んだらそこを判断基準にしよう。かと言って難しく考えることはない。明日の朝に食べたいな~と思えば一晩浸けられるので厚切りフランスパンで。すぐに食べたいと思えば薄いパンで。そんな感じで大丈夫だ。今回は焼き始めの時間から逆算しての2時間。別にそれだってきっちりでなくていい。適当、それが可能な素晴らしい料理なのである。
皆の作業中に、樽からせっせとほうれん草とブロッコリーとカリフラワーを出す。今度はスープの下拵えの見本作りだ。ブロッコリーとカリフラワーはみじん切りにしてヒタヒタに水を入れ、コンソメを入れて完了だ。
次は椎茸をドカドカ山盛り出す。数個の軸を根元から切り離し、その軸をみじん切りに。白ネギとにんにくもみじん切りにして、みじん切りにしたモノをボウルに入れ、豚肉の塊をドカンとまな板の上に載せたら準備完了だ。その頃には作業を終えた人が私の周りに集まり出していたので、全員集まるのを待って説明を始めた。
「ほうれん草は緑を残して柔らかめに茹でて、水にさらしたらみじん切り。こっちの鍋の具はドロドロなるまで煮るんだけど、水が少なくて焦げやすいから気を付けて。沸騰したら弱火にして、こまめにかき混ぜて、お湯が無くなってきたらヒタヒタになるように水でもお湯でもいいから足してね」
そこからは初調理法だから私が戻ったら教えるからと付け足して、次。
「椎茸の軸と白ネギとにんにくはみじん切り。豚肉は挽肉ね。混ぜたらナツメグとしっかりめに塩コショウよろしく。野菜と肉の割り合いは適当でいいから」
この料理はとにかく材料を細かくするのがメインの作業だ。そこを意図して考えたメニューではなかったが、少年たちの包丁の練習には丁度いいことだろう。教え馴れた大人がたくさんと、調理小屋には治癒を付与した石も常備されている。頑張れ少年たち。
「増やすのは50人分ぐらいでいいんだろう?」
「うん。それ以上来たら、足りるように分けよう。そんで作り置きのサラダ出せばいいよ」
貴族を晩ご飯に誘ったことは昼食中にソルに話し、すんなりと了承をもらっていた。同じテーブルに座った皆も聞いていたし、その周辺に座ってる人にも聞こえていたはずだが至ってのほほんと受け止められて拍子抜け。その後ソルが皆に言ってくれた時も、ヨリが呼ぶならって簡単に頷いてくれちゃうしで。
まあ領主が来るとは言ってなくて、痩せすぎで放っておけなくてっていう理由だけで呼んだことにしてるせいもあるとは思うけど。皆、貴族って言った時には警戒した顔したのに、理由を言ったら許してくれるとかさぁ。頭が下がるよホント。
ってわけで、皆が説明に頷いたところで私は退出を告げる。ちょっと行くところがあるから出掛けてくるねと。料理番たちはいつものことだと軽く頷いて返してきたが、少年たちは私がどこに行くのか気になるらしい。「どこに行くのか訊けよ」とロジ少年に小声でせっつく年上の少年たちと、傍観するハギ少年。ふむ、ハギ少年はクール君だね。将来が楽しみだ。素直なロジ青年とクールなハギ青年のツーショット。ふぐう、最高!
「靴屋に行ったり、色々注文してるものを取りに行ったりするんだよ」
脳内で身悶えつつ教えてやると、一番年長の少年が目を輝かせて自分たちの番も来るのかと訊いてきたので、来るよと頷いてやれば3人が歓声を上げて喜んで、ハギ少年は少しだけ嬉しそうな顔をした。どっちも可愛いが、気になるのはロジ少年の反応だ。何で眉がハの字? 嬉しくないのかい?
「ロジ?」
抱きしめてギュッとしたいところを抑えて、そっと近寄り小声で尋ねる。そしたらその顔で見上げられて、私の胸は締め付けられるばかり。ふぐっ、手が、抱きしめたくてワキワキするぅ~~~!!
耐える私に、躊躇いがちにロジ少年たら。
「やってもらい過ぎじゃね? ヨリ、無理してないか? 大丈夫か?」
なんてさらに眉間を狭くしながら言うもんだからっ!
「無理してないから大丈夫っ!!」
「ぅわっ?!」
はい、もう耐え切れずに腕がっ! 身体がっ! ロジ少年をぎゅうぎゅうに抱きしめてしまいましたとさ! え、他人ごとっぽい? だってもう私の身体は私の制御を受け付けないんだもの。私の身体であって、私の身体ではないのだフハハハハ! あ~~~、ロジ少年の抱き心地サイコーー至福~~~!!
スキンシップを我慢していたのが祟ったのか、ロジ少年の頭への頬擦りが止まらないよ。ハフンハフン、大好きじゃあああああ~~~~!
「──い、おいヨリ! 離せ! ロジが潰れる!!」
どうやら周りの一切をそっちのけで堪能していたらしい。ガザの焦る声に「ん?」と気が付いた時には、ロジ少年を閉じ込めた腕に複数の手が掛かって、グイグイと四方八方から引っ張られている状態だった。魔力で防護膜張っちゃってるから気付かなかったよ。
「私がロジを危険に晒すわけがないじゃん……。ちゃんと力加減はしてるし、頬擦りだってもっと髪の毛ぐしゃぐしゃになるまでグリグリしたいのを、ちょっと浮かせてスリスリに止めてるし。だからほら、ロジは無事だし大丈夫!」
聞き捨てならない言い掛かりも甚だしい! と腕の中に閉じ込めたロジ少年を、ジャーンと公開して証拠を見せる。気分はステージに立つ手品師だ。フフン。
「……顔真っ赤だけどな」
「ああ、真っ赤だぞ」
「苦しかったんじゃないか?」
「息できてたか?」
あれ? そんな心配されるような状態? おかしいな、とロジ少年の顔を覗き込む。──うむ、本当だ赤い。俯いてプルプルと涙目だし、これはマズってしまったか? いかん! 謝らねば!
「ご、ごめん、苦しかった? 痛かった?」
ロジ少年が、フルフルと首を振ってくれた。良かったセーフ! と安心したが、まだ続きがあった。
「……いきなり過ぎてビビっただけだ」
ビ……ビビらせてしまっただと?! ああ~~~~~ロジ少年を恐がらせるなんて、なんたる不覚っ! 反省、そして改善策を捻り出すんだ私!
ん、んんんん~、こう両手を広げて左右に身体を振って、抱き着くぞ~とアピールするのはどうだ? ……完全なる変質者だな。んんんん~~~~、両手を広げてゆっくり近寄るのはどうだ? ……うん、これだ! これしかない!
「ごめん、これからはもう少しゆっくり近付くから」
「……それならいい」
うっしゃーーっ! お許し出ました~~~~! グッ(ガッツポーズ!)
「そうそう、やってもらい過ぎだとかも気にしないでいいよ? ダンジョンのボスドロップ貰い過ぎなのは私の方だし、多いって思う分はソルたちが他の領地のダンジョン、手伝ってくれるって言ってくれてるから」
もうね、モンスター湧きだけはどうにもならんのよ。そこ手伝ってくれるだけで本当に万金に値するんだって。って、ん? どうしたんだろうロジ少年がムッとして睨んでくるんだが。……私なんか変な事言った?
「……俺だってそんくらい手伝えるんだかんな」
「う? ん、そうだね?」
もう大人と変わらないぐらい足が速くなって来たんだって、教えてくれたもんね。そん時のはにかみ顔がまた悶絶もんで可愛かったよ。ぐふふ。
「何にも無くたって行ってやるし」
うそ、マジで? 一緒に行ってくれるの?! でもでも、私と一緒に行くとしばらくポルカに帰って来れないかもしれないしれないんだよ? だから誘うの我慢してたんだもん。
思い掛けない申し出に、あわあわはわはわなっていたら。
「……よそ行く時は絶対に俺も連れてけよな……」
な、なななななんと! 駄目押しのっ! 拗ね&照れ&上目遣いのコンボ来た~~~~~~!! ──駄目だぞ我慢だ! 耐えるんだ私! ビビらせないようにゆっくりとって決めたばっかじゃないか! ゆっくり! ゆっくり!
にじり……にじり……にじり……にじり……。
「……ゆっくり過ぎてキモい」
「え、じゃあこんくらい?」
にじり、にじり、にじり、にじり。
「……もう少し速くても……」
にじにじ、にじにじ、にじにじ。
「はは。まあ、そんくらいじゃね?」
このくらいか、覚えておこう。そして、その「しょうがねーな」混じりのはにかみ笑顔も憶えておこうっ……。
それらを心に刻んでからロジ少年をそっと抱きしめる。
「絶対、連れてけよ」
「うん、行こうね。一緒に行こう」
スリスリと頬擦りも追加する。ぬっは~~~~やはりこのすっぽり感が堪らないよ。抱きしめて丁度いいところに頭があるんだもん。頬擦りせずにはいられないっ!
「もう出掛けた方がいいんじゃねーか? 靴屋に行く時間があんだろう? 確か」
ガザに言われて、ああそうだったと思い出す。靴屋に次の5人を連れてって、試着の結果を諸々の場所に伝えに行って、領主のとこにも人数訊きに行かなくちゃだし、天板の出来も見に行く約束もしてるんだったよ。
「……離したくない」
「かわいそーに。ロジだけ覚えるのが遅れるなぁ?」
グリグリとガザに脳天を拳で抉られるが、そんなのには全く痛痒を感じはしない。が、ロジ少年だけが出遅れるとか、しかも私の我儘でとか。無い無い、あり得ない! ので大人しく離します……。
「ごめんなさい、行ってきます」
+ + +
昼飯終わりに、ヨリを捕まえた。
「50人分あれば足りないってことはないと思うんだけどね。それ以上来た時は、あるだけ分けて作り置き料理を出せばいいよ」
って貴族が50人て何しでかしてんだお前! しかもどういう状況で、どうやって誘ったんだよ、おい……。
ソア様のこともあって俺らと普通に話してくれる貴族が居るってのは解ってるが、その50人てのはポルカに連れてきて大丈夫なのか?
飯を食わせれば、激ウマなのも充分に食えてることもバレるし、そしたら収穫量が増えてることもバレるんじゃないか? まあヨリのことだからポルカに悪いような事をするとは思えんが……。
「バレるぞ。いいのか」
「どのみちバレるよ。だからバラす相手を選べるうちに、選んでバラす」
「今日のが選んだ相手か」
「そ。これ以上は無いってくらい最高の人選」
ヨリが口角を上げて、目を細めて楽しそうに笑む。
「ソルたちは知ってんのか」
「皆にはソア様にするのと同じようにしてもらいたいから、言ってない」
「ロンには?」
「ご飯の前に言ったよ。ポルカの皆の反応見たいから、内緒ねってお願いしてあるから、ガザもよろしくね」
どうやら心配無用のようだ。なら俺も成り行きを楽しもう、とヨリに付いて調理小屋に向かった。それで、だ。
あー、やっぱこうなったか。
今日の昼からロジが調理小屋だと聞いた時から、こうなるような気はしていたのだ。ここ最近、ヨリが我慢しているのにも、ロジの方でも寂しさを感じているのにも気付いていた俺は、ロジに調理小屋の順番が回って来たことを自分事のように喜んでいたのだが。
まさか魔獣に肉迫するのと同じ速さで抱きつくとは……。ヨリが過去最高に幸せそうな顔で頬擦りしているのを見て苦笑が零れる。
よほど飢えてたんだろう。俺の座るとこから、ちょうど見えてたアレ──飯のたびに、テーブルの下で蠢いていたヨリの指──を思い出す。料理番たちは苦笑いで、少年たちは唖然とする中、俺は腕を組んで調理台にもたれた。すぐには終わらんだろうから休憩だ。
って、それにしても終わらんな。いつまでやるつもりだヨリの奴。
待つのも飽きてきた時、シガがボソリと。
「長い」
ああ、待ちくたびれたのは俺だけじゃなかったかと周りを見れば、全員がそんな感じだ。ってことは、ぼちぼち引き離してもいいな。
「おい、ヨリ。そろそろ離してやれ」
……駄目だ聞いてやしねえ。ヨリの腕をほどきにかかるが、ぐぅうう、びくともしない。
「おい手伝え!」
助けを求めながら身体強化をどんどん強めたが、ふんぬう~~っ、ちくしょうめ!
「おい、んだこりゃ!」
ハギが足の裏でヨリの腰を押しながら、うんうん引っ張り叫ぶ。無言のシガからは、ギリギリと歯を食いしばる音が聞こえる。いかん、全力でやってこれだ。力じゃどうにもならん。
「おい! ヨリ! いい加減離せって、コラッ! おい! おいヨリ! 離せ! ロジが潰れる!!」
こうなりゃ本人に離させるしかない。とにかくヨリの耳の傍で叫ぶ、叫ぶ。
ヨリのことだから本当に潰すなんて思ってやしないが、とにかく解かせることが大事なのだ。お前のロジが潰れるぞと脅せば少しは耳に入るかもしれん、という計算は見事に当たった。
見ろと言わんばかりに、ヨリが手を広げてロジを開放したのだ。けどそっからまた微笑ましいやり取りを挟んでの、抱き込みの再開。まあ俺もあんな可愛いこと言われたら、頭撫でるぐらいはするだろうが……もういいだろう? お前は早く出掛けろ。作業が進まんだろうが。
何とかヨリを追い出し、作業に入ろうという時。ロジがあんまりにも嬉しそうにはにかむもんだから、釣られて俺まで嬉しくなって、なんだか胸がこそばゆい。
ヨリに付いて行きたいと、誰から見ても頑張っていたロジ。でも、なかなか自分からは言い出せなかったロジ。ロジが言い出してあんだけ喜んでたってことは、ヨリだって連れて行きたかったんだろう。ったく、訊きゃあ一発なのによ。……いや、断られるのが怖かったってのもあるか? 変なとこでビビりだからな、ヨリの奴。
地下足袋やら服やらが全員分できてからの話だろうし、ポルカが落ち着かないと行けないのは俺にも解るが。何にしても俺らはもう腹をくくってるし、ソルたちもその気だし、ロジもヨリに約束させたしで、他領に行くのが楽しみでならない。いつでも行けるように、ぼちぼち親父たちに冒険者になることを言っておくべきだろう。
──明日、一度全員で帰るか。
やっとロジ少年が溜めてたモノを吐き出せました。良かった良かった。
ロジ少年はヨリに抱き着かれるのが、実は好きです。経験が無いので戸惑いますし面映ゆいだけなんです。今回も顔が真っ赤なのはビビったからじゃなくて、ヨリに好かれてるのを再認識できて安心&歓喜したからなんですが、それが言えない少年心。ヨリが知ったら、くっついて離れなくなりそうですね。(笑)




