66. 焼き鳥とオリーブオイル炒め と萌え。
料理パートです。面倒な方はスルーでお願いします。
ヨリはやっぱりロジ少年ラブです。
今日の晩ご飯のメインは塩コショウ味の焼き鳥だ。まずは1本焼いて食べてみて、そのままでいいのか、追加で塩コショウ、塩のみ、塩と粗びきコショウのどれかが必要なのかを判断する。何せどれだけ味が付いているのか、生肉を食べて確認するわけにはいかないのだ。モグモグ味見。うん、下味は薄目に付いている。付け合わせに粗びきコショウを使うから、こっちは塩コショウだな。
下味を付けてないならその必要は無い。調味料をふって焼き始めよう。残念ながら炭火は無い。石板コンロに敷き詰めて行く。
最初は弱火でじっくり焼いて、火が通ったら強火にして肉から出た水を蒸発させて焦げ目を付ける。鳥モモ肉からは脂が多く出るので、一度肉を皿によけて石板コンロの脂を洗ってから強火加熱した方が、焼き上がりも早いし調味料も流されないし、ドロドロしない。
焼き鳥には要らないが鳥の脂は美味しいので、焼き上げの前にアスパラガスといんげんとエリンギとしいたけをそこで炒めて、塩コショウで味付けして表のテーブルの数分の小さい壺に入れた。明日の3食のうちのどれか用にする予定だ。
野菜を炒めるのが面倒な時は、ここにバターとコンソメと塩コショウを入れてソースを作る。パンに付けても食べてもいいし、鳥ムネ肉を塩コショウで焼いたのに掛けて食べても美味しい。もちろんこのソースでチャーハンを作っても美味しい。脂は要らないよ! って人は洗ってくれ。元居た世界ではキッチンペーパーで拭いていたよ。
追加の調味料はこの強火加熱の時にすれば鳥の脂に流されにくいし、食べた時の風味も良い。舌に載せた時はしょっぱさを強く感じるが、噛んでいくと肉の脂と溶け合って、素晴らしいハーモニーを届けてくれるのだ。美味しい焼き鳥はフルコースに負けていない。そう思わんかね? 諸君。
そして付け合わせは野菜のニンニク炒めだ。それとフランスパン風のパンを厚めの斜め輪切りにしてオーブンでカリッと焼く。ニンニクと野菜のエキスが溶け出た、旨味たっぷりのオリーブオイルに付けて食べるのだ。味付けは塩と粗びきコショウ、刻んだバジルを少々。テーブルに粉末にした鷹の爪を置いておいて、辛くしたい人はそれをかけてもらえばいい。
野菜のニンニク炒めはとても簡単だ。ニンニクをみじん切りかスライスしてフライパンに入れ、オリーブオイルをどばっとかけたら、そこにどかどか切った野菜を載せていくのだ。炒めって言うより蒸し焼き? オイル煮? と言った方が通じるかもしれない。料理の名前を意識して作ってる事が少ないので、オリーブオイルを使うからイタリアン、かな? ぐらいの認識だ。
オイルの量はナスを入れる時やパンに付けたりパスタに絡める時は多めにする。オリーブオイルを飲む人もいるくらいだから自重しないで使えるけども、やっぱり少しクセがあるから、気になる人は少なめで。ドロドロが気になる人は、オイルをちょこっとにして塩分(中華ダシ、塩、粗びきコショウ、醤油)を掛けてフタをして弱火で放置しておけば、勝手に水分が出てくるから蒸し焼きにできる。
オイルが少ないとプライパンの底に焦げ付きやすいので、水分が出るまでは弱火の中でも弱火にするか、『呼び水』(水をほんの少し加えると、食材から水が出易くなる。理由は知らない)をして弱火にするか、後は中華ダシをウェイ〇ーにするかだ。この赤い缶の中華ダシは、現在は製造が終わってしまって白い缶のに変わってしまったが、炒め物にピラフにスープにと、中華ダシなのに中華以外にも使える万能君なのだ。ペペロンチーノ、クリームパスタ、今回のオリーブオイル炒めとかもそうだが、オリーブオイルとの相性がいいと思うのは私だけかもしれないがね。
私がよくやるのは、フライパンに油を敷かずに野菜を入れ、水分を野菜から出す為に塩コショウを軽くしてからウェイ〇ーを上にパラパラ載せて(粉では無いので、スプーンで削ったのをちぎる)フタをして弱火で点火する方法だ。野菜から出た水分でウェイ〇ーが半分ぐらい溶けてきたら中火~強火にして、ささっと炒めると、油を使ったかのような野菜炒めができるのである。肉を入れる時は一番下に敷いて、肉に塩コショウをふってから野菜を載せていく。風味付けに最後の方でごま油をひと回し掛けても美味い。特にもやし炒めにはコレをオススメしたい。もやしだけで2袋は軽く食べれてしまうよ。シャキシャキ、ギブミー!! ニルヴァス様に中華ダシともやしとごま油在るか訊いてみよう……。
おっと脱線してしまった。とにかく弱火スタートで火が通ったら、最後は刻んだバジルを好きなだけ入れて中火~強火で全体にオリーブオイルが馴染むようにして完了だ。形が崩れる食材もあるので、優しくひっくり返すのが重要である。
焦げ目を付けたい時は、半分くらい火が通ってきたかなってところで中火にすれば大丈夫だ。その時は放置はやめて、まめに覗いて焦げ目が付いたのと付いてないのを入れ替えていこう。忙しいから頑張ってくれ。
そうそう、この料理に使える野菜はナスとピーマン、パプリカ、アスパラガス、ブロッコリー、玉ねぎ、キャベツ、ジャガイモ、大根、かぶ、レンコン、しいたけ、しめじ、エリンギ、かぼちゃ、ズッキーニにいんげんと、本当にたくさんある。もちろんトマトを入れてもいい。とにかくオリーブオイルと塩コショウで美味しくなりそうな野菜は何でもOKだ。
ちなみに大根とジャガイモは下茹でしておこう。余程根気よくやれば火が通るかもしれないが他の材料が溶け崩れかねない。火の通り具合を考えるとかぶとかぼちゃは一番下に敷くし、味の浸み込みを考えると玉ねぎといんげんと下茹でされた大根も下の方がいい。
レンコンも下の方に置きたいが、火の通りが心配なら下茹でしておけば上の方で温めるだけでも大丈夫。いんげんとアスパラガスを先に塩茹でしておいて、最後に入れる方法もあるしね。ピーマンとパプリカは最後の方に入れてフレッシュに仕上げて、トマトはお好みで中間くらいか後の方に。
これはあくまで私の好みなので、食材ごとのタイミングを自分なりに実験してみて欲しい。
切り方も思いっきり自由で大丈夫だ。大き目が好きなら乱切り、厚切り、ブツ切りと食材によって変えてもいい。私は大根は厚さ1センチのイチョウ切り(円を十字に切る)、レンコンは1センチの半月切り(円の半分)、人参は1センチの輪切り、玉ねぎとかぶとエリンギはくし切り、かぼちゃは1センチスライス、ジャガイモとナスとピーマンは乱切り、ブロッコリーはひと口大、いんげんとアスパラガスは半分のあたりで斜め切りってとこだろうか。キャベツはザク切りでしめじは2~3本で分けるかな。しいたけは大きさによる。そのままだったり切ったりだ。
もちろん全部の具を入れるとフライパンが大変なことになる。加熱後の縮み具合も考えて、具の組み合わせと量を決めよう。レンコンといんげんとかぼちゃとアスパラガス、ナスとしめじとピーマンとパプリカ、ジャガイモと玉ねぎとしいたけとエリンギ、キャベツといんげんとキノコ類、かぶとレンコンとトマトといんげん、とまあ3~4種の野菜だけでも見栄えはするし充分美味しい。もちろん野菜1種とベーコンか腸詰のスライスを一緒にやれば1品には充分だ。何種類も入れたいのはホラ、品数を増やさずに満足する為さ。見た目的にも栄養的にもね。
油を使いたくないよと言う人は、蒸し器に全部入れて蒸してみてくれたまえ。ポン酢で食べてもいいし、粗塩をちょんちょんと付けて食べても美味しいんだコレが。私は油が平気なので蒸した時には食材と気分でマヨネーズとかイタリアンドレッシングを掛けることもあるぞ! しゃぶしゃぶ用のタレ、鍋のタレ、サラダのタレと、こっちはどのタレでも合いそうなのが楽なんだよね。鳥肉を一緒に蒸せばコレ1品で他に作らなくてもいいし、楽! 美味しい! 栄養ばっちり! の作り手にとっても食べ手にとっても万能料理だと思う。
あっさりし過ぎておかずにならない? こういう時に佃煮を白ごはんに載っけて食べるんだよ! 佃煮ってそれだけで白ごはんをお代わりしたくなる程美味しいんだけど、栄養価的には心配になってしまうよね。でもおかずがしっかりしてる時には食べたいと思わないし……。そんな佃煮好きの悩みを解決してくれるのが、この蒸し料理ってわけさ! ああ、いかん。オキアミの佃煮が食べたくなってきてしまった。無いモノねだりは危険だ。忘れろ私!!
そうそう、かぶってスープにしたり煮物にしたりする時は筋がすごいから厚めに皮を剥くのだが、何と炒めると筋が気にならないのである! くし切りにして薄切りベーコンと一緒に中華ダシとオリーブオイル(無ければサラダ油)とひとつまみの砂糖で、中火で炒めるだけでかなりの美味しさになる。かぶが半透明に透き通ってきたら、皮の方が硬めに感じても火を止めよう。皮側と中身側の食感差がクセになって止まらない一品だ。
お好みでニンニクと鷹の爪を入れても、ペペロンチーノみたいな味になって美味しい。もちろんかぶの葉っぱがあれば2~3センチに切って入れよう。エグみが気になるなら軽く茹でておくといい。味は中華ダシと塩コショウで整えて。
あああああ~~~~~~、そういえばかぶも大根も、まだ無いんだった! 今日のところはレンコンとしめじとナスとエリンギで耐えろ私! ほら! ナス美味いよ! 思い出せ私!
うむ復活。
またもや話が逸れてしまったが、まあそうやってフタをして弱火で加熱開始だ。どうして弱火かっていうと、そうしないとニンニクが辛いだけになってしまうからだ。オイルだけではガーリックフライになってしまってニンニクの甘みが出ないので、塩コショウをふった野菜から水分が出るのを待つ為にも絶対弱火なのだ。
フライパン放置、焼き鳥待ちの時間に明日作るモノを決めてしまう事にした。朝は平パンのスライストーストのバター載せと、肉団子のスープ。昼はじゃがバターとさっき焼いた野菜と牛肉のステーキ。夜はピザにすることにした。トマトとピザチーズが手に入ったので、トマトソースを教えておきたい。もちろん私が食べたいって理由の方が大きい。
トマトもピザチーズもオリーブオイルも、ミゾノのダンジョンでゲットした物だが、連れて行けば楽勝でゲットできるのは解っているので出し惜しみはしない。美味しさを知っているのといないのとでは、付いて来てくれる人のやる気が違うだろうって打算もある。汚れている私を許しておくれ……。
自己嫌悪に軽く酔っていたら、調理小屋の入口にひょこりと我が愛しのロジ少年の顔が現れた。え? 表現が濃くなっている? まあ理由は他にもあるのだが、最近はご飯の時しか一緒に居られない。さすがに14歳の少年に付いて回る自分を想像すると、それってやばいじゃんと解ってるから我慢をしているのだよ私は!! 心の中の表現だけで圧し止めている私を、もっと褒めてくれてもいいと思う。
その愛しのロジ少年は鼻をヒクヒクさせながら、すでに半分ぐらい意識を持っていかれている様子だ。最近は日課になっているロジ少年の調理小屋通い。目当ては残念なことに私ではなくて料理たちだ。最初は期待してしまったよ? だってもじもじして入ってくるんだもん。私に会いたくなっちゃったかな~? この友人の私に! って浮かれたさ。違ったけどね。
「ヨリ、覗いてもいいか?」
おいおい、ロジ少年や。君にお願いされて頷かなかった事があったかね? 無い。無いさ! だがダンジョン帰りのロジ少年の頭には砂粒がぁあああ~~!!
「いいけど、先に顔と手を洗ってからね」
友人だろうが言うことは言う。こんなんだからすぐ友人が居なくなるのだ。解っているけども曲げられない。そんな私に嫌な顔をするでもなく、ロジ少年は元気よく返事をして消えた。そしてキレイになって帰ってきた。満面の笑みで。釣られて私の表情筋も緩みっぱなしだ。
ロジ少年が端のフライパンから順番に、匂いを嗅いでは悦に入ってる様子を微笑ましく見ながら、そう言えば……と思い至る。
料理番の皆もガザもシガも、そして入れ替わる4人のダンジョン組たちも、解らなければ訊いて来て、ちゃんと説明すれば解るように努力してくれる。解らなくても、そういうモノなんだと覚えようとしてくれるのだ。私としては納得するまで訊きたい、訊かれたい質なので、とことん付き合いたいのだが、元居た世界ではそれがウザい、しつこいと面倒がられる事が多かった。ゆえに段々と私も距離をとって人付き合いをする事が増えた。当然仲の良い友人は出来ない。距離をとっても、とらなくても、ぼっちになった。まあでも家族とは仲が良かったし、姉と妹とは腐仲間だし、全然淋しくは無かったけどね。
そんなわけで割と一方通行の友情ばかりだった私の人生は、ここに来て友情に満たされ気味になっていると思う。だって、ソルを見つけた時にこっそり愚痴ったら、教えてくれたのだ。ロジ少年が私の足手纏いにならないようにする為に、色々頑張っているのだと。魔力操作や身体強化を朝から晩まで意識して使っているぞと。そう言えば野菜採りがとてもいい練習になると言っていたなと思い出す。単純に魔力操作に興味が出てきたのかな~と思っていたから、その新事実に激しく萌えた。もちろん大の大人が転げまわって悶えるとか気持ち悪さ全開なのは想像できるので、そうしたいのをグッと我慢して心の中で悶えた。鼻息が荒いくらいは見逃してくれるとありがたい。ちゃんとソルは見逃してくれた。若干呆れ笑いをしながらではあるが。……ね? 「愛しの」を付けてしまう理由、解ってくれただろう?
回想にまた心の中で悶えながら、鼻息の荒さをフライパンの匂いを嗅ぐことで誤魔化す。そしたらロジ少年の相棒的なハギ少年が引いた。確かにここに居るほとんどの人がフライパンのフタを開けて鼻の穴広げて陶酔してるって図はシュールだと思うが、やってみると病みつき間違い無しなんだけどな。そう苦笑していたら、ハギ少年の叫びが聞こえた。
「俺が可哀想みたいに見てんじゃねえよ!」
思わず噴き出してしまった。だってハギ少年の言い方が面白過ぎて。
そりゃキモいと思った事を、自分以外が喜んでやってて、「この良さが分からないなんて可哀想に……」って憐れまれたら悔しいよね。ぷぷぷ。あー面白い。いつの間にかガザたちも笑っていて、ロジ少年とハギ少年も笑っていた。ふふ、幸せだね。
「さあ、配るの手伝ってよね」
「「おう!」」
元気に返事をした少年ズがとても可愛かった。怒りそうだから本人たちの前では言わんが、後でガザかロンさんにでも「可愛すぎて大変だ!」と訴えよう。あまり萌えを溜め込むと身体に障るからな。鼻血を噴くなんてした事は無いが、もしかしたら魔力を噴くくらいはしてしまうかもしれない。小出しに、小出しに、である。
初の焼き鳥とオリーブオイル炒めは大好評だった。オリーブオイル炒めの汁をパンに付けて食べるのも、とても気に入ってくれたようだ。鷹の爪をかける食べ方も気に入ってくれた。もちろんそのままの方がいいという人も居た。
ロジ少年は焼き鳥を食べながら、半分くらい意識が彼方に行ってしまっていたと思う。斜め上を見ながらゆっくりと咀嚼して「んんん~~~~~!」と、初めてのモノを食べる時の定番の唸り声? をあげていた。こういう時に何を話しかけても無駄なのは知っているので、そっとその顔をガン見する。作った料理にそこまで感動してくれるなんて、本当に料理人冥利に尽きるよね~~~。この顔が見たくて頑張っておりますです私!!
焼き鳥は美味しいです。塩もタレも大好きです。
オリーブオイルとニンニクが合体すると、だいたいウェイ〇ーも加わります。塩と粗びきコショウも鉄板な組み合わせですね。そこにクレイジーバジルが在ったら最高過ぎます。美味いです!
バターは仲間に入れません。オリーブオイルのクセと喧嘩してしまうので。(完全なる個人的好みです。悪しからず!)
次話はニルヴァス様との夜食です。レレモの事を知りたいヨリです。




