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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
59/91

58.領主館潜入。 【チキンカツ、練乳もどきサンド、温麺、ザル麺、野菜天ぷら】

ソア様宅だけのつもりだったヨリ。気の向くままに領主館へ。


料理パートが半分ほど入ります。

 石畳の道路をひた走る。前方に領主館の門が見えてきた。

 範囲探索と範囲鑑定と感知不可を展開して、最高速で門衛の脇を通り抜けて。タイミング良く開いた扉に、開けた人の上方から天井走りでスルリと入り込んだ。潜入成功である。

 そのまま天井を奥へと走る。




 え? ソア様のお宅に行ったはずじゃないのかって? さっきまで居たともさ。

 私を奥様に紹介したソア様が慌てて仕事に戻って行った後、少々硬い空気の中で里芋を茹でて塩を付けて食べるだけのを教えて、ゴボウと葉ネギと白ネギとニラのスープも作ってきた。「タダで採れる食材を」という話だったので、ダンジョンに潜らなくてもいい森で採れた食材だけを教えたのだ。


 ん? 何でこんな所にいるのかって話だったか。……うん。ソア様の奥様がね、ガリガリだったのだ。顔色は良くないし頬骨も目立ってしまって、とても妊婦にふさわしい栄養状態では無かった。スープや里芋を食べて奥様の心が解れてきたあたりで訊いたら、なんとまあ「下級貴族であればこれが普通なのだ」と言うではないか。

 3年前から俸禄が少しずつ減ってきていて、本当に苦しいのだそうだ。……それでソア様は嘘をついて昼食を抜いていたのだね。


 中級貴族であればもう少しマシかと思えば、たいして差は無いらしい。貴族院での階級に応じた身だしなみにお金が流れるだけなのだとか。

 領地を取り仕切る上級貴族と領主は、「階級が違い過ぎて、生きている間にお会いする事は無いでしょう」との事で生活ぶりは分からないそうだ。


 下級貴族と中級貴族の生活が苦しい場合、その上の身分の人のパターンは2種類ぐらいしか思い付かない。

 自分たちだけ贅沢に暮らしているか、同じように困窮しているか。

 街の人たちはお金に困っている感じでは無かったから、誰かが街で買い物をしているはずだ。だったらそれは、上級貴族か領主一族でしかあり得ない。交易や観光などで外からお金を落としに来る人が居なさそうだからである。という事は、やはり自分たちだけ贅沢に暮らしているパターンか。


 じゃあどんだけ贅沢な暮らしをしてるのかを見てやろう、とソア様宅からそのまま上級貴族と領主一族を見に来たわけだ。しかし、さすがに上級貴族の住宅街には乗り込めない。まあ場所を知らないというのもあるがね。

 ソア様宅より大きめの家だとしても、感知不可を付与してずっと家の中で走り回らなければならないのは無理があるし、誰も居なければ入るのは簡単だが、調度品の贅沢具合が判ったとしても食生活具合がうかがえないから、私にとっては半分意味が無いのだ。

 よって昼間であれば、全部の階級の貴族が領主館に居るだろうと予想したのである。




 今のところ眼下には痩せてフラフラと、力無く歩く人たちばかりだ。

 モンスターと戦う選択肢しか無かった村の住人たちは、骨と筋肉だけだったが力強かった。だがここの人たちは骨と皮だけに近いし表情も暗くて、強風が吹けば倒れてしまいそうにはかない。

 時折見かける元気に働いている人は、私と同じ短い丈の上着を来ていたので平民なのだろう。


 ひたすら奥に進むと、一際ひときわ重厚で美麗な彫刻が施された大扉の前に辿り着いた。扉上部には「書斎」という文字が。うむ。入らない選択は無いな。

 周囲を探索しつつ来たので、周りにも部屋の中にも誰も居ない事は判っている。扉にトラップなどが付与されてないか鑑定して、普通の鍵だけで開く事が判明したので「開錠」を付与して中に入った。もちろん「閉錠」でまた閉めなおす。


 部屋はそれほど広くなく、私が行った事のある図書館のように本棚が並んでいた。私が背伸びをしなくても一番上の本が取れるくらいの本棚の高さなので、使い勝手は良さそうだった。天井は廊下と同じくらい高い。誰かが入ってきた時は天井に避難すればまず見つからないだろうと判断して、一番見つからなさそうな所にミニ祭壇を建てた。夜にゆっくり読みに来たいと思う。


 また付与を使って部屋を出て、天井走りを開始する。

 途中で見つけた階段を、最上階まで駆け上がった。身分が上の人間が下の階に居る事はまず無い。独断と偏見かもしれないが、下から探すよりは確率は高いはずだ。


 おやさっそく当たりかな?

 前方を歩く人を発見。服が今まで見てきた人たちとはかなり違う。視力を強化して服を見ると、もう生地から違った。おまけに美麗な刺繍まで。……でも色褪せてるし擦り切れてる。

 服を見終わって身体つきに目がいった。


「あれ?」


 思わず声が出た。小声だったし天井は高いし、まだ距離があるので気付かれはしなかった。

 ……それにしても上級貴族と思われるこの男、やけに痩せているような。歩くたびに服の中で身体が泳いでしまっているのが判る。追い越しながら見た男は、ソア様よりひどい顔をしていた。……あれえ~~?


 釈然としないモノを感じつつ突き当りを曲がる。質素だが品のある、両開きの扉が並んだ廊下に出た。

 加速をゆるめて扉の上部を確認しながら進むと、4つ目のそこに「領主執務室」と書かれているのを発見。

 さあ領主の顔を見てやろうではないかと意気込んで、換気のために開けられているのだろう廊下の窓から外に出て、外壁伝いに執務室の窓に向かう。窓の外からそっと中を覗いた。


 ……あれ? 本日何度目かの「あれ?」。

 やけに立派な机な机に座っている男は居た。その男の服は刺繍なんかもう全部分に入っていて、見るからに最高級品だ。なのにさっき追い越して来た男に、勝るとも劣らぬ骨と皮っぷりなんだが……あれえ~~部屋間違えたか私?

 またさっきの廊下に戻って「領主執務室」の札の場所をチェックして、間違っていない事を確認。


 うむ潜入結果を述べよう。

 領主と上級貴族は、ソア様以上にガリガリでした。下級貴族もガリガリです。途中で見た中に中級貴族も混じっていたなら、中級貴族もガリガリです。以上!


 どうやらこの領地、ポルカが一番貧困していたと思っていたのだが貴族もおなじくらい貧困中らしい。

 現在この領地で一番イイ物を食べているのは間違いなくポルカだろう。次が平民、最後に貴族か。一番金を持ってるはずの貴族が、一番ご飯が食べれてないとはね。……帰ってケーキ作ろっと。

 とにかくまずは晩ご飯の仕度を終えてから考えよう。私はそのまま壁伝いに貴族街の屋根へと飛び移り、村へ向かって走ったのだった。






 村へ戻って、さっそくケーキ作りを開始する。

 料理番の皆と他6人は(ガザとシガ含む)出がけに頼んでおいたフランスパン風のパンと角切り野菜のコンソメスープを作っておいてくれた。後はケーキとチキンカツを作るつもりだ。


 ケーキはニルヴァス様に一度作ったスポンジケーキをやるので、1人に2つずつボウルを用意して計量からオーブンの予熱、メレンゲ作りまでを教える。そして黄身の方もやって、木ベラを付与で「曲がる」ようにしてもらってから、メレンゲを3回に分けて加えながら「切り混ぜる」方法を教えた。その後は壺の中で攪拌した(ふるいにかける代わり)薄力粉を、上のほうから空気を含ませるように入れ(本当は振るい入れたい!)また切り混ぜて型に入れ、空気抜きをして焼くまでを教える。

 もちろん型には「不着」を付与するのを忘れない。

 1人8分の1個計算で作るので、先の17個を焼いている間にボウルと泡だて器を新しくしてもう一通り作った。


「どうせ材料は同じだから、洗わずにそのまま使えばいい」って? 黄身の方ならそのまま使ってもいいかもしれんが、メレンゲを作る時は絶対にキレイなボウルでないと、メレンゲが失敗するので駄目なんだよね。分離がどうとかなるらしい。

 何が失敗に繋がるかわからん以上、危険を冒したくはない。よって黄身の方にもキレイなボウルと泡だて器を使う。これがフィナンシェとか練るだけの生地なら、そのまま使ってしまうんだけどね。


 ケーキに使った道具類を樽に放り込んで、次はチキンカツの準備をする。

 スライスして塩コショウをしておいた鳥ムネ肉をカツにしていくのだ。

 中華鍋を3つ用意して植物油をなみなみと入れ、それを強火で加熱して油が温まるまでに衣を付けていく。


 カツの衣といえば、薄力粉をまぶして溶き卵にくぐらせ、パン粉を付けるのが一般的だ。

 前はそうしていたのだが、溶き卵の白身の欠片のせいで衣が剥がれるのが嫌なので、私は薄力粉を水で溶いただけのを使うようにしている。

 ボウルに入れた薄力粉に水を少しずつ入れては混ぜて、とろみ具合を調節していく。水っぽいと衣が上手く付かないので、ドロドロでいい。

 それに肉をどかっと入れて、ボウルの中で適当に混ぜながら、両面付いたな~と思うのをパン粉の上に載せて、後は普通にパン粉を付けるのだ。

 これなら卵が足りなくなって困る事も無いし、残って困る事も無い。薄力粉と水なら、足りなくなったら足しやすいし楽ちんなのだ。


 そんな具合に薄力粉班とパン粉班に分かれて手早く衣を付け、別のボウルに積み上げていく。

 油の温度が上がってきたかなと思ったら、パン粉をひとつまみ放り込んで、すぐにパチパチ言い出せば入れていこう。

 肉が薄いのですぐに揚がる。どんどん揚げて時間停止を付与したボウルに放り込んでいく。本当はバットの上に載せて油落としをしたいのだが、いずれまた製鉄所に特大サイズのバットを注文する事を心に刻んで、今日のところは時間停止の付与で我慢である。


 チキンカツが揚がり終わった頃にはケーキも全部焼けていて、型から外して切り分けも終わっていた。

 後は盛って並べるだけである。

 夜ご飯まではまだ少し時間があったので、ちょうどいいので訊いてみた。


「皆はさ、今欲しい物って何かある?」


「欲しい物?」


「うん」


「……ねえなあ」


 ガザ以外で話し合ってもらったところをまとめると、こうなった。……そうか、無いのか。


 何でそんな事を訊いたのかというと、ソア様の奥様に「報酬を払う」と言われてしまったからだ。私はそんなつもりでは無いと言ったが、奥様があまりにも引き下がらないので「じゃあ、次回までにお金以外の報酬を何か考えておきましょう」ということになったのである。

 私の欲しい物は奥様がいくら頑張っても手に入れられないので、じゃあ村の皆の欲しい物でもいいかと思ったのだ。

「ご飯の時に皆に訊くから、また考えておいて」と頼んで、盛り付けに入った。




 ご飯の前にいつも声かけをするソルに頼んで、「欲しい物が無いか食べながらでいいから考えてくれ」と言ってもらった。各テーブルで話し合いが行われるのを、広範囲盗聴で聞きながら食べる。

 ニルヴァス様以外に初めて作ったチキンカツもケーキも、とても評判が良くて気分は上々だ。美味を訴える声をBGMに、次は唐揚げとクッキーでもやろうとレシピを脳内でこねくり回す。

 もちろん明日はやらない。毎日が揚げ物では健康被害を及ぼしそうだからね。


 欲しい物の方は、どうやら服に決まりそうだった。武器も食べ物も心配が無くなったのだから、着る物に気が行くのは当然の事と言える。私が言い出さなかったら気にもしなかっただろうけども。

 穴開き、擦り切れ、ほつれ、破れ。誰1人として欠損の無い服を着てる人が居ないのだ。私は最初から気になっていたのだが、着る物よりも食べ物を優先すべきだと判断してそのままになってしまっていた。つまりはちょうどいい頃合いということだ。

「そういえば服はどうしてるのか」と訊いたら、「古着屋で一番安いのを買ってる」のだそうだ。

 ボロボロなのが普通で、局部が隠れていればいいのだとか。……うん、服を縫ってもらえるか訊いてみよう。


「誰か一番安い布屋に連れてってくれるかな」


 肉屋たちにふってみる。こういうのは地元民の方が詳しいだろう。

 案の定「いいぜ」と返事が返ってきた。


「じゃあ明日の朝ご飯の後ね」


「おう」


 肉屋たちはダンジョン組の能力開発が終わったので、今は自由なのだそうだ。潜りたい時に混ぜてもらって、そうじゃない時は自分の用事を済ませに街に戻ったりしているのだと言う。


 晩ご飯の後に、明日の朝ご飯と昼ご飯の準備をした。出かけるのでお昼も先に用意しておくのだ。

 横半分に切れ目を入れたフランスパン風のパンに、塩の代わりに無塩バターに砂糖を入れて練った練乳もどきを挟む。

 今回はヒマを見つけては皆でせっせと作っておいたパンを使った。緊急用や非常食にと常にそうしているのだ。今夜はちょっと用事ができたので時間短縮の為に使わせてもらうことにしたのである。


 後は塩揉み野菜スティックたちをボウルにどかっと用意して、時間停止と冷却をかけた石板コンロの下に突っ込む。そしてお昼には定番となった、パン屋でもらう平パンの半分スライストーストにバターを塗るのにして、以前も大好評だった塩漬け肉の野菜巻きを作ってボウルに積んで、石板コンロの下に放り込み、準備は完了だ。


「朝は練乳パンに野菜スティックと腸詰、昼は平パンを焼いてバター、それに野菜巻き。夜ご飯の仕度は明日やると」


 今までで一番早く準備が終わった。

 ホスさんたちが「何かやる事は無いか」と言ってきたので、鳥モモ肉をひと口大に切ってもらうことにした。水に塩コショウしっかりとハチミツを少々加えて混ぜた液を作りボウルに入れ、それに浸るように切った肉を入れて揉み込んでもらう。その液の作り方をすぐに覚えた人が他の人に教えつつ作業がどんどん進んだので、後を頼んで調理小屋を出た。


「じゃあまた明日」








 一番近い肉ダンジョンに飛び込み、すぐに異空間部屋に入る。

 即行で大鍋4つをコンロにセットして水魔法で水を入れ、強火で加熱を開始する。そのうちの1つには、今朝獲ってきたばかりの鰹〇り出汁のパックを水のうちからポポイと放り込む。うどんと蕎麦つゆを作りたいので、濃いめを目指してガッツリ入れた。

 もちろんお湯が沸くまでやらなければいけない事はたくさんある。

 中華鍋を出して油を入れて、こちらも強火で加熱。

 ボウルに薄力粉とベーキングパウダーを入れ、冷却で冷やした水を入れて菜箸で軽くかき混ぜ、天ぷらの衣の準備を完了させる。

 野菜の洗浄用の樽からアスパラガスと人参とナスとピーマンと玉ねぎ、さつま芋と椎茸とエリンギと舞茸を出した。


 私はいつも時間をかけて揚げるモノから揚げていくので、さつま芋の処理から始める。1センチから2センチの厚みに切って、細い芋ならば輪切り、太い芋ならばそれを半円に切るのだ。大きさよりは厚みがあった方が美味しいので、私はいつもそうしている。そして衣を付けて、まだ高温になりきっていない油にポイポイ入れて次の食材の処理に入るのだ。低温めでじっくり揚げる方が甘くなると聞いてからは、いつもそうしている。


 次は当然玉ねぎだ。元いた世界のサイズであれば、縦半分に切ってから断面を下にしてまな板に置き、切りたい厚みで間隔をとって、3~5本のつま楊枝を背中からブスリと中心まで刺してからスライスしていたのだが、こちらの世界の玉ねぎは5倍サイズだ。

 縦半分に切るのは同じだが、そこからは木製所で作ってもらった太めの木串を、厚みを2センチにした放射状に4等分になるように刺していく。当然身体強化を使って刺していった。押し込むには力がいるのだ。

 切った後、木串は刺したままになっているので玉ねぎは外れない。そのまま衣を付けて揚げればいいのである。


 まださつま芋が揚がっていなかったので、椎茸の石突を取って軸に十字の切り込みを入れる。こうすれば火の通りにくい軸にもすぐに火が通るし、噛み切れないという事もない。揚がった時にタコさんウィンナーみたいになるという見た目の悪さはあるかもしれないが。


 エリンギは長さはそのままで放射状に6~8個に縦切りし、舞茸は手で食べやすいように分ける。

 ナスは縦半分に切ったのを横半分にも切って、厚い部分に切り込みを入れる。貫通しないようにまな板に菜箸を横にして置いて、間にナスを挟んで切ると安心だ。急いでいる時は絶対に貫通させてしまうので、そういう時こそ役立つ小技である。


 ピーマンは縦半分に割って種を取り、アスパラガスは根元の皮を剥いたら長さそのままで、人参は3センチくらいの細めのスティックに切った。


 さつま芋が揚がったので、玉ねぎから揚げていく。こちらは柔らかくなりすぎないように注意だ。私は歯ごたえが多少残っている方が好きなのである。でも玉ねぎ辛いのは駄目なので、こちらもじっくり揚げていきたい。


 ゴボウの存在を思い出して、いそいそと処理をした。人参と同じように切って、変色を防ぐために酢水に浸ける。

 そして天つゆとして、追いガツオの濃縮つゆを小鍋に入れ、味を見ながら水で薄めていく。今回は大根おろしが無いので、薄めにした。そして中火にかけて温める。


 麺のつけ汁と同じ味なので、つけ汁に付けて食べればいいと思われるかもしれないが、天ぷらの油がつけ汁に入ってしまうと味が変わってしまうのだ。お店でそうやって食べた時「代わりのつゆ下さい」などとは言えずに、美味しくなくなってしまった蕎麦をガッカリしながら食べるハメになった。

 暖かい蕎麦やうどん、ザルで無い麺つゆがかけてあるタイプの天おろしなどであれば問題無い。冷たいザル蕎麦とうどんのつゆに付けて食べるのだけがアウトだったのである。

 不思議な現象だと思うのだが、それからずっとザルの時は天つゆか、無ければ塩で食べているのだ。だから塩もテーブルにセット。


 玉ねぎが揚がり、次は少し火力を上げてナスを放り込む。揚がるのを待っている間にショウガをすりおろし、ワサビも出す。後は好みで白ごまも。

 麺つゆは1人3つ欲しいだろうと思い、麺つゆ用のガラスの器をイメージして6つ出した。ついでに麺たちを載せるお店で定番の木枠のザルも、1人3つ計算で6つ出す。

 ゴボウをザルにあけて水切りを開始だ。


 ナスが揚がったので、次は椎茸とエリンギと舞茸を入れた。焦げないように様子を見ながら麺つゆを入れて器に冷却をかける。

 箸置きを出して箸もセットしてから、エリンギと舞茸を取り出す。少し後に椎茸を取り出したら、後はすぐに揚がるピーマンとアスパラガスだ。ピーマンとアスパラガスが揚がると、次はゴボウと人参も揚げていく。単品でも混ぜても美味しいので、ゴボウだけのと、人参と混ぜたのと、人参だけのを作った。


 揚げ物は時間停止で揚げたての状態をキープして、いよいよ麺を茹でていく。

 沸騰したお湯にまずは蕎麦を入れ、その隣にきしめん、きしめんの隣にうどんを入れる。鍋底に貼りつかないように時々かき混ぜて、その合間に葉ネギを刻んで、竹輪を薄い輪切りにして、乾燥わかめを水で硬めに戻したら絞って、ほうれん草を茹でて取っておいたのを出す。

 出汁の鍋からは出汁のパックを取り出してしっかりと絞り、みりんを少しだけ入れて5分ほど沸騰させて火を止めた。使い終わった出汁パックは、乾燥を付与した壺に放り込む。貯めてから佃煮を作るのである。楽しみだ。しらす干しや乾燥桜エビなんかがあると最高なんだけどね。どこかに無いかニルヴァス様に訊いてみよう。


 茹で上がった麺からザルにあけて水が濁らなくなるまで洗って、温かい用のは中くらいのどんぶりに入れて、ネギと竹輪とほうれん草と戻しわかめをトッピング。後は熱々の出汁を注ぐだけにした。

 ザル用のは冷却で冷やしておいた水に入れてしめて、ザルに載せていく。もちろんニルヴァス様より量は少なく自分の分も用意する。


 蕎麦、うどん、きしめんの3種のザルをテーブルセットして、その手前に保温を付与したどんぶりに熱々の出汁つゆをかけて並べていく。

 ─────テーブル上は大変な事になった。箸があって、蕎麦、うどん、きしめんのどんぶりが左半分に並び、右半分には手前につけ汁の器が3つ、その横にネギとショウガとワサビと粉末の唐辛子の4種の薬味の皿。その向こうにザルの蕎麦、うどん、きしめんが並び、真ん中手前に天つゆとその奥に天ぷらの盛られた大皿が。……ははは大宴会か?


 まあいい。私も麺に飢えているので自分の方も全く同じ状態だ。もちろんニルヴァス様より量は少なくしてあるが。

 いくら太らないといっても、やはり食べ過ぎるのは危険に感じる。晩ご飯だって食べてきたのだから、少なくていいのだ。だってデザートにレアチーズケーキもあるのだから!


 おっと湯冷ましも作らねば。

 お湯を沸かしながら、ニルヴァス様を呼んだ。


「ニルヴァス様、ご飯ですよ~~」






ヨリが想像していた貴族ではありませんでした。平民より食べれてなさそうな様子に唖然です。


よくある悪徳貴族との対決にはなりません。悪しからず。


終わりの方で入れた長い横棒、本当は他の方のように真ん中に入れたいんです。どうやれば入れられるのか、どなたか教えてください。(土下座)→「けいせん」で変換する方法を教えていただき、やってみました。


次話はやっと麺の実食です。ザルが美味しい気候になってきましたね~~。



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