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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
5/91

5.新事実と説明    (4月5日修正&加筆)

 サブタイトルって悩みますね。



 ********************************************

 5.新事実と説明


「こちらも食べますか?」


 向かいに座った私は、自分用に盛った皿をそっと差し出す。


「いや、我はもう堪能した。それはヨリが食べるとよい。見ておったが、不味かったのであろう?」


 晴れやかに言ったニルヴァス様は、続けて私に同情した顔で言った。


「不味かったです」


 私は嘘が言えないので、そう答える。もちろん作った本人に言わないだけの常識はあるので、あくまで無関係な人にのみ言えるのであるが。ありがたく私も粉ふき芋で口直しをする。ん~~、やっぱ美味いな粉ふき芋。

 うまうまと食べていたら、


「ヨリ、おぬしの事であるから付与魔術の使い方も解らぬのだろう?」


 ゴックン。さっき鑑定したとき、確かそんなのが……


「もちろんです。元の世界には魔法なんてありませんでしたから」


 さっき言えなかった心の声も追加して言っておく。言いたいことを溜めるって良くないからね。

 パクリ。モグモグ。


「付与と名の付く通り、物に魔術をかけることができる。袋に時間停止魔術をかければ、中に入れた食べ物は時間が停止して腐らないし、異空間収納に繋げば、容量は増えるぞ」


 ゴックン。…かの有名な青いロボットが持ってるやつに似てないか?

 いや、それより使えそうかもしれん。しかし、


「その袋を使って、私がジャガイモを10個買ったら、不審じゃないですか?」


 小ぶりな冬瓜大のジャガイモを10個。普通一人では持てないよね?


「皆、普通に持っておるぞ。道具屋でも異空間収納が付与された袋や鞄は売られておるでな」


 ふむふむ。それならこれからは、持ち運び気にしなくてよくなるね。実にエクセレント。


「付与魔術はどうやって使うのですか?」


 そこがまず解らなければ、あっても使えない。


「かけたい物に触れて念じるか、離れた物には声に出して言えばよい」


 言われて、今食べている粉ふき芋が入っている皿に触れながら念じる。「保温」……あったかくなってきた。次は自分のカップに触れずに言ってみる。


「冷却」


 触ると冷たくなってきた。湯気が立っていたお湯が、飲んでみるとぬるいくらいまで冷めている。


「生き物にはかけられぬ。そして単語でしかかけられぬし、その効果をイメージできねば成功できぬ」


「異空間収納は物にかけられる付与魔術の一つみたいですけど、ここはどうなんでしょう? 何もないところにドアできましたけど」


 何も知らなければ、「こういうものなんだな」で済ませてこれたのだが、異空間収納が付与魔術だと聞いたら別の疑問ができてしまった。パクパクモグモグ。


「ここは我が半分、干渉しておる。祭壇も無しにこうして食べられたのは、ここが半分我の領域であるからである」


 そういえば、祭壇にお供えしないと食べれないって言ってたな。でも、ここで食べれるなら、祭壇いらないんじゃないか?


「…祭壇いりませんね」


 ここがあるなら、いらんだろう。ここで食べればいいんだし。しかしニルヴァス様は言う。


「ヨリ、祭壇があれば、異空間収納をそこに繋げることができるのだぞ」


「はあ」


 目が輝きだしたニルヴァス様に対して、今ひとつピンときていない私は生返事である。パクリ。モグモグ。


「塩はダンジョンでしか取れぬぞ」


 それで? 眉間にシワを寄せながら首を傾げる。パクリ。モグモグ。


「コショウも、砂糖も、ハチミツも、唐辛子も、ワサビも」


 うんうん。だから? 引き続き、眉間にシワで首傾げ。パクリ。モグモグ。


「パスタ…とか言うのであったかな? 後は蕎麦とうどんであるか。ああ、素麺というモノもあったかもしれぬ」


  麺類もあるなんて、うれしいな~~。あと油もあったら、私の好きなペペロンチーノができそうだ。あ、ニンニク無い、ニンニクめっちゃ欲しい。

 うーん。ダンジョンて冒険者が入るものだから、私にはあまり関係ないと思うのだが、ニルヴァス様は何に気付いて欲しいんだろう。パクリ。


「ヨリよ。この世界の調理法を言ったであろう? 茹でるか焼くかであると」


 うんそう聞いた。ニルヴァス様にモグモグしながら頷き返す。


「茹でるか焼くかで使うのは塩とコショウのみである。ハチミツと砂糖は、そのまま食すか牛乳と一緒に煮込むのみであるぞ?」


 おお、牛乳もあるんだ! いい~んじゃない?! パクリ。モグモグ


「だが塩コショウ以外の調味料は、貴族でなければ食せぬのだ。ダンジョンから獲れるモノは希少で高価であるゆえな」


 まあダンジョンで獲れるモノが希少で高価じゃない方がおかしいとは思うので、そこは普通だと思うんだが、なぜそこでそんなにもニルヴァス様は悲しそうなのか。


「今言ったモノたちはまだダンジョンの外に持ち出されるゆえまだ良かろう。だが、持ち出す者が居ても茹でるか焼くかして不味かったモノや食べられなかったモノは、ゴミだカスだと持ち出す者もおらず、ドロップしてもそのまま打ち捨てられておる」


 モグモ……グ?

 真顔で微動だにせず、非常に重々しく告げられた内容。


 ななななななななな、なぬう~~~~~~?! は? 今なんてった? 食材が捨てられてる? え? じゃあ皆なに食べて生きてんだ? ああ、パンはあるんだからパンか。って、ぇぇええええええええええええ?! えーと、えーと、ってことは。

 お水飲んでひと息ついて。


「自分で獲ってこないと手に入らないってことですか?!」


  誰も持ってきてくれないなら、それしかあるまい?


「昔は普通に種を植えたのだが、野菜や香辛料だと気付く者がおらず、パン以外の主食も増えず。ならばともうすでに使うだけの形として人の手に渡してしまえと、ダンジョンを創りドロップ品にしたのだが、思うようにはいかぬな」


 ニルヴァス様って頑張ってるよね? 皆も褒めてあげて欲しい。

 そんだけ頑張ったのに食文化発展せずって、可哀想としか言えない。いや、何も言えないよ。

 しんみりとした、ニルヴァス様可哀想大会になりそうな雰囲気を。


「で、話は祭壇に戻るのであるが」


 本人があっさりと覆したので、話は戻る。


「ダンジョンに特色を作ったのでな。調味料が多く出るダンジョン、粉モノが多く出るダンジョン、麺類や乾物などのダンジョンもあるのである」


 欲しいモノによって、潜るダンジョンを選べばいいなら助かる。専門店に買い物に行くイメージだ。


「ああ! なるほど! ダンジョンの近く、もしくは中に祭壇を作ってしまえば、いつでもそのダンジョンに行けると!!」


 やっと祭壇の有益さに気付いた私は、さきほどのニルヴァス様のように瞳を輝かせて叫んだ。理解が遅くて大変申し訳ない。

 やっと解ってもらえてうれしいのか、ニルヴァス様は腕を組んで笑顔でウンウンと頷いている。


「つまり、ダンジョンに潜って、調味料とか食材を獲ってきて調理、が私の今後の生活になると?」


「そういうことになるのである。そのために、最初から身体能力を上位冒険者並みにして魔力も高めにしておいたので、まず死ぬことはあるまい。使っていけば馴染んで能力も上がるであろう。頼むから死んでくれるでないぞ」


「サー、イエッサー!」


 敬礼して言う。座ったままであったが。いやあこのセリフ、気持ちいいよね。

 しかし例のごとくニルヴァス様には理解されない。


「なんだそれは?」


「了解しましたって意味です。」


「うぬ、そうであるか。」


「はい。あ、ちなみに私が死んだら後任はいるんですか?」


「おらぬ!」


 崖っぷちじゃんよ!!





 ニルヴァス様が帰りそうな感じだったので、急いで訊きたかったことを訊いた。

 まずは異空間収納は、どこまで自由にできるのか。これには付与魔術とほぼ同じだと答えがきた。

 台所をイメージした時に、私のアパートの台所だったから最初は日本版の台所になって、こっちの台所をしっかりとイメージできなかったから、何も起きなかった。

 ニルヴァス様ができたのは、こっちの台所を知っていたから。つまり、私もニルヴァス様も知らない、イメージできないモノは作れないそうだ。

 そして二つ目。これは話してる間も感じていたこと。

 ニルヴァス様って、やけに元いた世界の食材に詳しいですよね?

 そう言ったら、「教えられたのである」という答えが。

 そばやうどんなどまでがあるのは元いた世界の神に「あんなに美味しいのに」と、その料理の美味しさを聞かされて食べたくなったからだそうだ。


 後は世界間の人間や物の行き来には縛りがあって、私が一度死ななければならなかったのもその一つだったこと。

 別の世界の物を持ってくるには、お互いの世界の神の許可が必要だということ。


「あれ? でもそれじゃあ、ニルヴァス様ばっかりがもらってばっかですよね?」


 元いた世界の神様は、そんなにお人よしなのだろうか? 昔あった戦争や、今も続く内戦やテロを思えば、そうでもないと思うのだが。


「その対価は、ちゃんと払っておるぞ。」


 ふ~~~ん。


「対価って何ですか?」


「それは言えぬでな。」


 ふ~~~~~~~~~ん。


 後はまあ自由にやれとのことだ。喧嘩しようが引きこもろうが、料理作れればいいらしい。やってはいけないのは私が死ぬことだけだった。


 言われた事を頭の中で整理しながら、出かける準備をする。残りのジャガイモは、2食分だけ粉ふき芋にして瓶に詰めてお弁当にした。


 リュックに付与魔術で「異空間収納」を付けて、入ってた諸々を入れるとあら不思議、膨らまない。ので、斜め掛け鞄にも付与して、そこにその袋を突っ込んだ。


 パセリは全部刻んで、時間停止の付与を付けた透明瓶に入れて鞄へ。一個残ったジャガイモは、そのまま鞄にポイ。水筒も財布もポイ。その他も全部ポイ。

 念じないと出てこないので、スリの心配がなくて非常にうれしい。


 しかし、鞄ごと盗られる可能性もある。身体にくっつければ盗られなさそうだけど、何て言えばいいんだろう。 身体接着? 身体吸着? 身体固定? 全部試して、結局、「身体固定」にした。

 そうすれば歩くときにゆさゆさ横揺れしないし、手で押さえなくても走れる。あれって地味にイライラするんだよね。


 終わってみると斜め掛け鞄のみの自分。軽いって素晴らしい。

 ご機嫌で異空間収納を出た。…鞄に異空間収納を付けたので、これからは区別がつくように「異空間部屋」と呼ぶことにしよう。

 うむ、ベストスポットその1を放置するのはもったいない。祭壇作っとくか。

 土魔法でミニストーンヘンジもどきを作ってみた。うむ良かろう。満足した。

 祭壇作るとどうなるのかな~とそこから道に戻って「探索」してみたら、頭の中に地図が出て青い点が追加されていた。そこを意識したら、「ヘナ村南西」と表記された。さっきの村がヘナ村なんだろう。


 さて行くぞっと。まずは街に行ってダンジョンに潜るための準備をしないとだ。






 ************************************************


 色々な食材があることが判明しました。でもほとんど何一つ活用されていません。

 ニルヴァス様は食材通ですが、ヨリの元いた世界の神様にグルメリポーターばりの解説を聞かされるばかりで、それらの料理を食べたことがありません。


 次話はダンジョンまで行けるといいのですが……

冒険者のメイン収穫物が、ボスドロップの宝飾品となってましたが、ダンジョンドロップ品で人気の高いモノをメインに修正しました。

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