47.ニルヴァス
お待たせ? のニルヴァス様です。
カプリ。モグ…モグモグモグモグモグモグモグモグ。
ガブリ。モグモグモグモグモグモグモグモグモグ。
我は今、ヨリが奉納したレーズンパンなるモノを食している。
ふわふわとしたパンは2度目なのであるが、この、中に入っている黒っぽい粒をパンと一緒に食すと、「うまい」で済まされない何かを感じるのである。
食していると身体に感動が広がっていくのだ。その感動に浸りつつ、ひたすらモグモグと黙して食す。
大事に噛んで飲み込んで、今度は皿の上のピンクのモノで巻かれているモノを手でつまみ、口に運ぶ。
「むお…」
「ぬお…」と唸ったつもりが、そうなってしまった。だがそのような事はどうでも良い。
「生ハムもどきの野菜巻き」であったか。…これは「美味」と言って良かろう。
生ハムもどきと野菜が口の中で、噛むごとに混ざり合い、見事な味わいを醸し出している。
うむ。
「うまい」
ここは異空間収納部屋である。ヨリが居れば一緒に食すのであるが、そうでない時に奉納された料理は1人で食すのだ。
「ちょっと、何1人で食べてるのよ」
またである。我が料理を堪能していると、いつも決まって現れるのだ。と言っても2日前からなのであるが。
3日前に神域で会った時「あれを食べた。これも食べた」と調子に乗って言ったせいであろう。
「ねえ、誰のおかげで食べれてると思ってるわけ? 返事くらいしなさいよね」
この料理をせびる女こそが、魔神イリスである。
見た目は少女で、いつもヒラヒラと布が多い服を着ているのだ。
「イリス。我は今、ヨリの料理を堪能していたのである」
噛んでいたモノを飲み込んでから、返事をしなかった理由を説く。
口の中にモノを入れたまま口を開くなど、我にはできぬのだ。
皿を向かいに座ったイリスの方に差し出した。
「あら、今度は何?」
「レーズンパンと生ハムもどきの野菜巻きである」
「美味しそうだわ」
イリスは皿の料理の匂いをふんふんと嗅いでから食べ始めた。
そしていつものように「ん~」やら「おいひ~」やらと、口にモノを入れながら感想を叫び出した。
この料理はヨリが我のために作ってくれたものなのであるが、イリスに差し出さない選択は無いのである。
何故ならばこのイリスが居なければ、我が世界はどうにもならなかったであろうし、ヨリという素晴らしい人物にも巡り合わなかったであろうからだ。
後は相談に行った時に、イリスに恵んでもらった恩もあるのである。
「あ~、美味しかった! はい、もういいわ」
戻って来た皿には、先ほど差し出した時の半分の量が残っていた。
ちゃんと半分を残して戻すのである。こういう所も好ましい理由であろう。
「そうそう、ワサビと和がらしだけど、限定1つずつならいいそうよ。だけど彼女が作った何かを渡す事が条件で」
「1つとはどのくらいの量であるか」
「ん~と、このくらいの壺に入ってるわ」
イリスが壺の大きさを手を動かして伝えてくる。
「ふむ。では何を渡せば良いのか」
「そうね、その残りでいいんじゃないかしら」
我は手元の皿を見下ろす。皿には後、レーズンパンが3個と野菜巻きが5つ残っていた。
ヨリはいつも多めに用意してくれるのだ。すでにレーズンパンを4個と野菜巻きを4つ食した。ならばヨリの希望を叶えるために、残りを差し出す事など容易かろう?
己に問いかけ、強く頷く。我はヨリのためならば、我慢ぐらいするのである。
「うむ。持って行くが良い。これでワサビと和がらしと交換であるな」
「ええ。はい、交渉成立よ」
イリスが皿を受け取り、壺を2つテーブルの上に出して押し出した。
壺を受け取りながら、そうであったと思い出した。
「ヨリが米が欲しいと言っておったぞ」
「そう、訊いておくわ。でも米だもの。期待はしないほうがいいかもしれないわよ」
米はヨリを魔大陸に呼ぶ餌にすると言っておったな。ふむ。どうすれば米を渡す気になるのであろうか。
イリスが「アイツがどーだ」「アイツがあーだ」と特定の人物の愚痴を言い出したのを聞き流しながら、我は感慨深くイリスを見る。
それにイリスが気が付いて、話を止めて睨んできた。
「何よ。聞いてるの?」
「いや、おぬしが来ねば今は無かったのだなと、改めて感謝をしておったのだ」
「いやあね。あなたに助けてもらったのは私が先だもの。お返しぐらいはするわよ」
我が正直に感謝を示すと、イリスは頬杖を付いて穏やかに言った。
「いや、おぬしのおかげだ。礼を言わねばな」
イリスを誠意を込めて見つめる。イリスは頬杖を付いていない方の手をひらひらと動かして、「もうやめて」とそっぽを向いた。どうやら照れているのである。頬が少し赤い。
うむ。魔神と恐れられていたとは、とても思えぬ。
「そういえば、おぬしの方には最近行っておらぬな」
ヨリが来てから行っておらぬ。
それまではよくイリスの世界の異空間部屋に通っていたものだが。
「それはしょうがないわね。彼女を助けるのがあなたの役目でしょ? もしこっちに来てばっかいたら、アイツが怒るわよ」
それもそうであるな。ヨリに何かあれば、奴が黙っておるまい。
「それはそうと、ヨリに好きな男は出来てないだろうなって、アイツがうるさくて仕方ないんだけど」
イリスがげんなりした顔でテーブルに突っ伏した。
我の相談に乗った報酬に、「ヒナガタ ヨリにしろ」と言った男の顔を思い浮かべる。
最後に会ったのが10日ほど前であるが…うむ、あの時食べた「カップ焼きそば」というモノは美味であった。イリスのを少しもらっただけであるが。
「で、どーなのかしら」
我がカップ焼きそばに思いを馳せていると、イリスの声が意識に割り込んできて「ぬ?」と我に返った。
「周りは男ばかりであるが、そういう…ぬ? そういえば、少年にやけにくっ付いているようであるな」
「ちょ! 少年て何歳くらいの?」
イリスが驚いて、身を乗り出して来る。食材に身を乗り出す時のヨリのようであるなと思いながら。
「あれは12歳くらいであろう。まだ子供である。気にすることはあるまい」
後でその少年が14歳だと知るのであるが、我にとって12歳も14歳も変わらぬのである。
ヨリは25歳としてあるのだ。13歳や11歳の差ではどうにもなるまい。
「ぬ? あとは肉屋の男と料理を作っていたか」
「なななな! 男って何歳くらいよ!」
「むう。あれは24歳くらいに見えたが、どうであろうな。なかなかの男前であったぞ」
「や、やばいじゃない! アイツが怒るじゃない! 約束が違うって言われたらどうするのよ?」
ぬ? 約束が違う? なにせ約束をしたのが1000年前であるのだ。なんであったか…。
我が手を顎に当てて思案していると、我が約束を忘れてしまっている事に気付いたのであろう。イリスが教えてくれた。
「あなたの相談に乗ったお礼に、ヨリを呼ぶって約束でしょ?」
それはさっき思い出したばかりである。というか…
「ヨリを呼ぶという約束は果たしたのであるぞ?」
そうだ。約束は果たしたのである。我が胸を張って答えると、イリスが「ばかっ!」と怒り出した。
ぬ? とまたもや首を傾げる。イリスが地団駄を踏んで指をビシッと突き付けて来た。ぬぬ。
「呼ぶだけじゃ駄目なのよ! アイツはヨリと番になりたいの! だから魔大陸に来るように米やら色々、そっちに渡してないんじゃない」
我がのけ反るくらいに指をグイグイ近付けてくるイリス。完全に目が据わってしまっているではないか。
「1000年も待ったあげくヨリが別の男とくっついたら、アイツ、こっちの世界を壊しかねないわ。それは何としても阻止するのよ!」
イリスの剣幕にタジタジとしながら我は頷いた。しかしだ。
「その番というのは、何の事なのだ?」
そこが解らぬのでは、どうしようもない。
イリスはさっきの剣幕が嘘のようにキョトンとした愛らしい顔になって、「ああ」と頷いた。
「男と女が生きてる限り、愛する相手はお互いだけだと決める事よ。私の世界では番と言うの」
「ほう。我の世界では夫婦というのがそれであろうな。そうか、奴はヨリと夫婦になりたいのであるか」
我はヨリと並ぶあの男を思い浮かべる。うむ、悪くは無かろう。
「そう、だからヨリが誰かとくっつかないように、しっかり見張って阻止しなさいよね。そうじゃなきゃ、すぐにでも魔大陸に寄越せと言いかねないわよ」
「それは困るのである!」
そう。やっと我の世界にも希望が見えて来たのである。
白いドロドロスープ以外を奉納されたのは、いつぶりであろうか。少なくとも2000年は前の事であったな。
あの野菜のスープ、白菜のポトフと言ったか。あまりの美味さに「うまい」としか言葉が出なかったのであるが、その後出されたモノもすべて美味かったのである。
「ヒナガタ ヨリにしろ」とあの男が言ってから、あちらの世界の神に許可をもらっては観察しておったのだが、あのスープを食べるまでは半信半疑であったのだ。「本当にヨリで正解だったのか」と。
今となっては正解ではなく、大正解だったと判っているのであるがな!
王都や交易が盛んな王都から西の領地たちは放っておいても良いが、ヨリを降ろした領地の周辺は、皆我ほどではないとはいえ、不遇を囲っている者たちなのだ。
ヨリが居ればどうにかなると確信してはおらぬが、どうにかなるかもしれんとは思うようになったのである。
なにせヨリの料理を作れる人間が、もう10人は居るのである。たった5日であるぞ?
ヨリが居なくなれば、今の流れも止まるであろう。それだけはならん!
「すぐは無理である。まだ来て5日目であるぞ。まだ1つの領地のダンジョンにしか潜っておらぬでな」
「彼はちゃんと待つわよ。他の男に獲られない限りはね」
「…ヨリに、気になる男が居るか訊いておこう」
我とイリスは互いがやっておくべき事を確認した。
頷きあってイリスが帰った後、自分で沸かした湯を飲みながら、先ほどのイリスとの話繋がりで1000年ほど昔の事を思い出す。
あの男にはダンジョンに設置する食材の事などを、よく相談していたのである。時々は男の作ったモノをイリスがほんのひと口くれる事もあり。……うむ。美味なるモノばかりであったな。
その美味さに「我にも使徒が欲しい!」と我慢が出来なくなったのであるが、「協力の報酬としてヒナガタ ヨリにしろ」とあの男が言ったのであった。
だが我とて神である。本人の知らぬ所で勝手に決めては不味かろう。なぜならば。
「あちらの世界で生きている者は、一度死なねばこちらには来れぬ。簡単には行かぬのだぞ」
そういうわけであるでな。ヨリはまだ生きておったのだ。
男が考えて出した譲歩は、「あちらの世界の10年後、ヨリに決まった相手が居なかったら」というものであった。
あちらの10年とは、こちらの1000年である。我にとっては待てない時間ではないが、我としては早く欲しいのである。
何故かと訊いたら、「あっちの世界じゃ35歳にもなると、相手が見つからん事の方が多いからな。さすがに35歳で浮いた話が無ければ、こっちに来てもいいと言うんじゃないか」と。
聞けば男の世界では女が35歳ともなると、本人の気持ちをよそに色々と生きていくのが難しくなるらしい。それならばその時に、本人に訊いて決めさせればよかろうという事にした。もちろん10年以内に何らかの理由でヨリが死ぬことがあれば、その時は早まる。
もしその時「否」と言われたり、決まった相手が居たならば、その時死んでいる魂の中から選べば良い。イリスもそのようにして男を見つけたと言っていたことであるしな。
あの時はそう考えていたのであったな。思い出したのである。しかしその話の中に「夫婦になりたい」などと言っていた記憶は無いのであるが。
とはいえ、人にとっては長かろう1000年もの間、想い続けるとはなかなかの男である。
男への恩もある。「ヨリに好きな男が現れぬよう、しっかりと見張ってやろう」と我は強く頷いたのだった。
さて、さっそくヨリの様子でも見るとしよう。水盤を作り、そこにヨリを映し出す。これでいつも世界を覗いているのである。
ふむ。貧困層の訓練は順調に進んでいるようであるな。
ほう。魔力の扱いを知らなかった10人のうち、4人の魔力が揺らいでおるな。
やはり魔力量が多ければ覚えるのは容易いか。
む? また2人揺らぎ始めておるな。…ぬ? 1人身体強化を覚えおった。
ヨリと料理を作っておったあの男、なかなかに魔力の扱いが良いではないか。ふむ。そうやって補助しておるのだな。
ヨリは使い始めて間もない魔力を、上手く使う。そして教えるのも上手いようだ。さきほどまで魔力が揺らいでいなかった4人が、ヨリに何かを言われてすぐに魔力を揺らがせておる。
先に揺らいでいた5人が、もうすぐ何かを覚えそうであるな。
ほう。付与か。ぬ? 身体に魔力を纏って防御として使うか。ヨリが初めてやって見せた時、我らのような事をすると思ったものだが、この者たちもそれが使えるとは筋が良いのではないか?
この男は身体強化と魔力を飛ばすか。やはりダンジョンに潜っている時間が長い者たちは、きっかけさえあれば覚えるのが早いのであるな。
今日のダンジョンは終わりであろうか。
10人中9人とは順調であるな。あと1人も、もう少しだったのであるがこの様子であれば明日にでも覚えよう。
この後ヨリは…街に行くのであるか。
街のポルカの子供らの様子を見に行くと。ふむふむ。
子供らも毎日ちゃんと食しておるので、顔色が良くなっておるな。
ほう。寝たきりであった子供たちが、己で身を起こせるほどになってきておる。
いつもであれば助からなかった命であろう。ヨリには感謝をせねばなるまい。
む? 寝たきりの子供らの中で噛める者には次からは粉ふき芋を食べさせるようであるな。
粉ふき芋は美味い。よく食べて元気になるが良かろう。
ぬ……街からポルカの村に向かう者がおるな。水盤をもう一つ作るか。これでヨリと両方を見れるのである。
ポルカの村に来る役人であるな。ほう? 昼を一緒に食すか。ヨリの料理を作れる10人の中の1人が、己の分を半分、分けてやっているようである。
ふむ? 初めてではないようであるな。今後は少し注意して見ておくべきであろうか。
我は見張った。毎日見張った。
ヨリが異空間部屋に居る時以外はずっとである。
異空間部屋にヨリが来た時に、それとなく「好いた男などはおらんのか」と訊いたところ、「そういうのは居ませんね」とすぐに返事が来たので、今の所は大丈夫であろうと安心できたのであるが。
その後も毎日ヨリは、男たちの能力開発に勤しんで、時折街の子供らの様子を見に行き、店で何やら道具たちを買い、市場で野菜とさつま芋を買っていた。
朝昼晩の料理は今まで食したことのあるモノが多かった。ヨリいわく「私が居なくでも作れるように、おさらい中です」ということであった。
だがヨリは、夜にこちらに来ては新しい料理で我を喜ばせてくれておる。
1日目の唐揚げと、マヨネーズで食べた野菜たちの美味であったことよ!
あのトンカツも美味であった! 味噌カツも…ああ、また食したくなってきてしまったではないか!
ポテトチップス、フライドポテト、チキンナゲット、チキンカツ、サンドイッチ、ピザ、クリームシチュー、チキンステーキのバターソース、タレに漬け込んで焼いた牛肉、豚の生姜焼き、野菜の肉巻きカツ、キノコの生姜醤油、ロールキャベツ、ロール白菜、洋風茶碗蒸し、レタスに長く切った野菜を巻いて、オレンジ色のソースを付けてかぶりつくサラダ。
「ぬうううううううん!! 思い出したら食べたくなってしまったではないかあああああ!!!」
ぬ? またあの役人であるか。
相変わらず1日置きに役人は昼飯を食しに来ていた。
いつもの男であった。村に向かう表情が明るい。見張りを始めた日よりも、ずいぶんと肉が付いてきたようである。
街の子供らも肉が付き、浮いた骨があまり目立たなくなってきておるな。
寝込んでいた子供らは、この20日ほどの間で歩けるようになっておった。
ふむ。今朝は野菜の具の入ったコンソメスープであるか。今日からは皆同じ料理であるな。
こうして皆が同じタイミングで同じモノを食すという事は大事なのだとヨリが言っておった。
「元気な子たちが先に次の段階に進んでしまうと、進めない子たちは焦りますからね。元気な子たちには、そうじゃない子たちが粉ふき芋をちゃんと食べられるようになるまで、待ってもらっていたんです」
我は食材があれば後は自由に食せばよいと考えていたので、ヨリが子供らに与えるモノに気を付けていることに、最初は驚いていたのであるが。
実は昨夜。いやヨリが帰ってからであったから今朝であるか。イリスの所に行って男にそれを言ってみたところ、「当たり前だ」と返されてまた驚いたのであった。
「食べ物を消化する力が落ちてる時は、それに合わせた飯がいるんだよ」
その後に、「ヨリが米が欲しいと叫んでおったぞ」と言う。イリスが言っておるとは思うがな。
「10キロやる。代わりにクリームシチューを鍋いっぱい寄越せ」
…先ほどクリームシチューの話をしたのであった。震えるほど手を握りしめておったのは、食したかったからであったか。
設置権や現物権は駄目だと男は言い張った。「そうしたらヒナガタ ヨリがこっちに来る理由が1個減る」と断固として許可は出さぬ姿勢であった。
我は「クリームシチューであるな。ヨリに言っておこう」と頷いて、男にもう1つ訊いた。
「米があると、ヨリの料理が3倍美味くなると言っておったが、本当にそんなに変わるものなのであるか?」
我はヨリが怖い顔をして断言していた、それが気になっていたのである。
男は「ん~~」と目を瞑り、グッと眉間にシワを寄せた直後にパッと目を開けて断言した。
「モノによっては10倍だろう。いや100倍だな!」
「そ、そのような……」
我が先に言葉を続けられずに絶句していると、イリスまでもが男と同じように目を瞑り、「確かに!」と叫んでクワッと目を見開いたのである。
「そ…そんなにであるか……」
我は「米」というモノを、侮っていたようである。ヨリよ、我はもっと必死にならねばならんかったのだな!
己の浅慮に嘆いていた我は。
「早く米を持ってけ。喜ぶぞ」
と、異空間部屋からイリスと男に放り出されたのであった。
ぬ? 我は神であるというに、あの男の仕打ちは毎度毎度…っ!
だが今回は許してやろう。なにせヨリが喜ぶ米を寄越したのだ。
しかしその交換条件が「ヨリのクリームシチュー」とは。
ふむ。これならば他のモノも存外、容易く手に入るかもしれんのである。
恩はあれども無礼な男の弱点を見つけ、我は「ふはは」と笑いをこぼした。
あやつめ、ヨリの料理が食べたくて仕方が無さそうであるな。
この1000年と少し、我がイリスの部屋に行けども、決して我の分を用意してはくれなんだあの男。
少しくらいは意趣返しをしても許されると思うのだが、どうであろうか?
むむむ。
今朝の出来事を思い返していたら、あの男の仕打ちを思い出して悲しくなってしまったのである。
だがそのような過去はもう良い。我にはヨリが居るのである。
うぬ。米があると言えば、それに合う料理も作ってくれよう。今夜が楽しみであるな!
神様たちはお互いの異空間部屋を行き来できますが、お互いの世界に行く事はできません。異空間部屋は神域扱いなのでOKなのです。
そして! 出てきましたね。皆さまお待ちかねの例の人です。
米が出てきたら恋愛パートだよと再三言ってきました。ですが、ヨリなのでいきなりどーのこーのはなりません。彼の頑張りをそっと見守ってください!!
次話はイリス視点です。鈍感ニルヴァスの気付いていない奮闘ぶりをお届けしたいと思います。




