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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
46/91

45.ナスを食す!   (5日目)  【ナスとパプリカとピーマンの肉味噌和え、揚げナス、ポン酢、きんぴらゴボウ、マヨネーズ】

やっとナスの肉味噌がけを作ります。



 


 話し合いはすでに進んでいたので、私が言う事は特に無かった。

 明日は夜中過ぎに起きてダンジョンに向かうこと、上層のモノを集める日なので、まずは上層でやること。能力開発は湧きを見てから試して行くこと。

 そして明日一緒に行くことは、まだ伝えていないとのこと。


 ソルたちが「身体強化を使えるからモンスターが増えても大丈夫だ」と言ったところで、本当にそれを見ない事には信じてもらえないという確信から、そうしたんだそうだ。

 なので彼らとは別にダンジョンに向かって、あちらで実力を示すほか無い。


 まあそういうワケだそうなので、明日は朝ごはんをダンジョンで食べる事に決まった。

 ここで皆で食べれば「なんで起きてるんだ?」になるだろうからね。

 ご飯係は当然私だ。快く立候補しておいた。





 話し合いを終えたので、立ち上がる。私はこの後も予定があるのでさっさと動きたいのだ。

 今日はダンジョンには行かない。すぐに異空間部屋に行きたいのである。

 今日はどこから行くべきか…。


 少し考えて、やっぱりダンジョンに行くことにした。出入りするのに人目が無いのはどこか考えたら、一番安全なのはダンジョンだと気付いたのだ。

 肉ダンジョンに今行っている班がいると聞いたので、そっちは止めておく。私が行けばモンスターが1匹増える。彼らのローテーションを知った今となっては、不用意にモンスターを増やしてはいけないと自重したい。

 というわけで、粉ダンジョンから行きたいと思う。


「ちょっと粉ダンジョンに行ってくるから、何時に起きるのかだけ教えて」


 ソルに時計を見せた。そもそもどうやって起きる時間が判るんだろうか。もちろん訊いた。

 彼らは「これくらいに起きる」と思えば、そのくらいに起きられるのだそうだ。ポルカは超人たちの集まりだったようだ。…凄いを通り越してるよね。


「ロンさんが時計持ってるから、読み方は知ってる。早朝の班が起きるのは2時半で、潜るのは3時からだ」


 それを聞いて、ロンさん居て良かったなと心から思った。

 だって「腹時計」だ「なんとなく」だと言われても、私にはそんな腹時計スキルの持ち合わせはないし、朝と昼と夕方のように判りやすい時間ならともかく、「夜中過ぎ」は時計をチェックしながらでないと無理だ。しかも「夜中過ぎ」って私の中では0時から2時半くらいだから、けっこう幅広い。

 そんな時間があったら、次の日の下拵えでも始めてしまいそうだ。ん? 時間が余ったらそれもいいな。


「じゃあ私たちは2時起きで、2時半前には出発だね」


 時間を聞けた私は改めて時間をチェックだ。今は9時ごろ。よし行くぞ。

 私は「おやすみ」と皆に行って、全速力で粉ダンジョンに向かった。





「はい、来ましたよ。と」


 異空間部屋に入った私は、「さて、まずは挽肉を…」と考えた所で、肉屋から挽肉を受け取るのを忘れている事に気付いた。……明日でいいや。

 今は少し欲しいだけだから、そのくらいは自分でやるさと肉屋で買った忘れ去られそうな豚肉スライスを出した。

 それをまずはダブル包丁で挽肉にする。そんなに量は要らないが、時間停止の壺に作り置きしておけばいいので、少し多めに作りたい。だから挽肉を、いつも私が使う量より多めに作った。


 鍋に水を入れてコンロに載せ、強火にかける。お湯が沸くのを待っている間に、別の鍋を出してそこに八丁味噌と砂糖を、だいたい同じ量だけ入れて木べらで練る。そこに味噌と砂糖と同じ量のみりんを、少し入れては練ってを繰り返す。それが終わったらコンロに載せて弱火にかける。


 お湯が沸いたので、そこに挽肉を入れて木のスプーンで固まらないようにゆるくかき混ぜながら火を通し、ザルに空ける。それを弱火にかけている味噌の鍋に投入して、かき混ぜる。後は底が焦げ付かないように、時々かき混ぜながらふつふつするまで加熱するのだ。


 その時々の間に、ピーマンとパプリカの種を取って大き目の乱切りにしていく。

 そして中華鍋に油をだーっと入れて強火で加熱。揚げ油の準備だ。

 ナスは、縦に3か所皮を剥いて厚めの輪切りにしたものと、厚み1センチほどで縦にスライスしたものと、長さを半分にして放射状に6等分したものを用意する。


 肉味噌が出来上がったので、火を止めて鍋に「冷却」をかける。一度冷ますことで、みりんの味が落ち着いて、より美味しくなるのだ。


 油がまだ熱くなっていないので、葉ネギを薄い輪切りにしていく。そして生姜はおろし金を出してり下ろして「時間停止」をかけた。


 さて油が熱くなったようなので、輪切りを投入していく。素揚げにするのである。

 揚がるのを待っている間に、バットと網がセットになったものを創り出す。これ、揚げ物の時は必須なのだ。特にナスは後からすごい油が出てくる。なので出来る事なら食べる直前まで網に載せておきたいのである。

 揚がったのを載せて、今度は放射状に切ったのを入れる。これは細くてすぐに揚がるので、それも同じバットの上に。


 ナスが揚がるのを待っている間に、醤油をカップ7、酢カップ5、みりんカップ3を鍋に入れて、中火でかき混ぜながら加熱してポン酢も作っておいた。

 この割合は色々あるらしいが、私は親に教えてもらった量を調合している。ここに砂糖やレモン汁、ゆずなどの柑橘系の果汁を好みで入れるのだが、私はゆずポン酢が苦手でさっぱり派なので、入れるとしても砂糖を少しだ。


 さらに乱切りのナスとパプリカとピーマンの乱切りにしたものも揚げていく。

 揚がるのを待つ間に、冷却していた肉味噌を弱火で温める。そしてナスたちが揚がったら別のバットで油を切り、熱いうちに深皿に入れて熱々の肉味噌を絡めて、「ナスとピーマンの肉味噌和え」の完成だ。


 そしてお湯を沸かしながら、お皿に盛り付けていく。

 大皿3枚に、輪切りとスライスと放射状6等分のをそれぞれ盛り、皿をどかっと出して、一枚ずつに3種類を2切れずつ載せたのを6枚作る。


 そして小さい透明瓶に醤油を用意し、小さい壺にはポン酢を入れ、小さいボウルに「保温」をかけて肉味噌をスタンバイだ。ちなみに切ったネギと摩り下ろした生姜は、すでに小さな入れ物に入れてテーブルにスタンバイ済みである。

 さてと。お湯をカップに注ぎながら呼ぶ。


「ニルヴァス様、食べますよ~」


「うむ」


 お、今回は返事があった。そしてすでにテーブルに座った状態で現れた。

 もしかして姿を消して、座って待ってるのだろうか。


「はい、これが言っていたナスですよ。これとこれに、肉味噌を使ってます」


「ふむ。これがナスか。肉味噌とはいい匂いがするのだな。この緑と赤と黄色のは、ピーマンとパプリカと言うのであろう?」


「おや、ご存じですか」


「ごく最近植えたものであるでな。さあ、もう食べて良いのであろう?」


 ニルヴァス様はすでにフォークをお持ちだ。待たせては悪いな。


「今からタレをかけます」


 私はニルヴァス様の前にセットした3枚の皿に調味料をかけていく。

 1つには生姜とネギを載せて醤油をかけ、もう1つにはネギとポン酢をかけ、もう1つには肉味噌をかける。

 そして小鉢にナスとピーマンとパプリカの肉味噌和えだ。


「はい、どうぞ」


 そして自分の方にも同じように。

 ニルヴァス様はフォークだが、私はもちろん箸で食べる。


 まずは醤油からだ。ナスから生姜とネギが転げ落ちないように、慎重に口に運ぶ。


 …んんん~~~~~~っ! 美味い! 醤油に浸みた生姜とネギが混ざり合って、その薬味の辛みと醤油のしょっぱさを、油が丁度良く中和して、ナスがさらに甘くなる。うおおおおお~~~! やっぱ美味し過ぎるよナス~~~!


 次はポン酢だ。こっちは少しさっぱりと食べられるが、やはりポン酢も油で中和されて、ナスの旨味に華を添える。こっちも美味い! やっぱり美味い!


 そして肉味噌。……ぬあああ~~~至福だ! 肉味噌の濃いめの甘じょっぱさが、本当にナスに合うのだ。

 私はいつも甘めに味噌を作るが、しょっぱいのが好きな人は、砂糖とみりんを半分の量にして、後は好みで増減すればいいと思うが、私は甘めが好きなのだ!

 油と混ざって、本当にもうナスが甘すぎてヤバイくらいだ。


 そして肉味噌和えも食べる。

 肉味噌を載せるだけでも良かったのだが、和えるとね、肉味噌の甘さがナスたちに絡んで、そりゃもうお祭り騒ぎになるくらい美味いのだ。お祭り騒ぎになるのは、私限定かもしれないがね。

 ここで重要なのは、食べる直前くらいに混ぜるということ。時間を置けば油が出過ぎて感動の美味さではなくなってしまうのだ。和えるだけならナスも崩れないので見た目もいい。


 パプリカとピーマンは、あえてカーブを残して大き目に切ってあるので、そのカーブに肉味噌をせっせと載せて食べるのが素敵なのだ。そしてパキパキと食感が残る程度に軽く揚げてあるだけ。そうすればピーマンとパプリカの甘味がもうすっごいよ! うん、こっちも美味すぎて泣けるよ私…。


 私がペロッと自分の皿のを片付けて、さあおかわりしようと顔を上げると、ニルヴァス様がフォークの先をくわえて夢見心地でゆっくりとモグモグしていた。


「ナス、美味しいでしょう?」


 私はニルヴァス様の皿にナスたちを追加して、薬味とタレをかけてから、自分のもそうする。


「うむ。美味であるな。このナスは切り方が違うが、何か意味があるのか?」


「食べ物というのは切り方でも全然味が違うんです。この3種類の切り方以外にもありますが、とりあえず定番の切り方をやってみました。ニルヴァス様はどの切り方が好きですか?」


 私が訊くとニルヴァス様は一通り食べて、二通り食べてから困った顔で。


「我には選べぬ…」


 いや困ることじゃないし。


「全部好きでいいんですよ? 私だって全部好きですから」


 そして私とニルヴァス様は、「ナス美味い」「ピーマンもパプリカも美味い」と言いながら、山盛りのナスを食べきったのだった。


 夜に。食後に。油モノを山盛り食べてしまった……。

 いやでもナスは油で調理するのが、一番栄養的にもいいんだようと言い訳を見苦しくしてもいいだろうか。…昼間に食べろ? 正論だ。

 朝ごはんのレーズンパンは、1個にして残りはニルヴァス様にお供えしよう、と膨らんだお腹をさすりながら思う私であった。





 湯冷ましを呑んで「はふ~」と一服中に、ニルヴァス様に訊きたい事があったのを思い出した。


「ニルヴァス様。 ダンジョンのモンスターって、1部屋何匹まで増えるか知ってますか?」


 ソル達には10対60とか言ったものの、本当にそんなにひしめいて湧くだろうかという疑問がある。

 まとまっていたほうが範囲攻撃には都合がいいので、私は助かるのだが。


「ダンジョンに関しては魔力と食材とモンスターを設定したら終わりであるのでな。そのあたりはおぬしらで調べるほか無かろう」


「モンスターの数はニルヴァス様が決めたのでは?」


「人数によって増える設定はしたのであるが、どこまで増えるのかという所までは考えておらんかったのだ。強さも最初は全部同じに設定しておったはずが、いつの間にやら上層と中層と下層では強さが変わり、ボスも巨大化しておるしな」


 ほ~~~。じゃああの油虫も最初はあそこまで大きくなかったのか。


「ダンジョンの食材は変えられるのに、モンスターは変えられないのですか?」


 できればアレは変えて欲しいのだ。アレが落とすのが油だというのが、大きく精神力を削ってくるのである。


「む? 変えられるぞ?」


 なぬ? ならばあの油虫を!


「じゃあ食材ダンジョンのボス、変えてください!」


 考え込むニルヴァス様。そして思い出したようで頷く。


「あれはダメであるな。おぬしの居た世界の神が油を譲ってくれる時に出した条件であるゆえ」


 ガックリ……。


「そーですか…」


 私はぬか喜びした自分に涙して諦めた。

 あ、そういえばまだ言いたい事があったんだった。私の復活は早い。


「それはそうとニルヴァス様。蒟蒻こんにゃくと豆腐と油揚げと厚揚げと、タケノコと大根とお米が欲しいです!」


 私は手をビシッと上に伸ばして申請する。申請すれば、またどこかのダンジョンに設置してくれるかもしれん。そう考えたからだ。

 もちろんそれがここであれば言う事はないが、そこまで欲張ってはいけないと思う。今の場所である程度食材も集まっているし、まだ作っていない料理をニルヴァス様に作る分には問題は無いのだ。


 だけど私は日本人だ。米が食べたいのだ、米が!!

 私は切実に米を求める。もう4日も食べていないのだ。本当は1日に1回は食べたいのだ。


 煮物も食べたい。それには蒟蒻こんにゃくが必須だ。煮物で一番好きな具が蒟蒻なのだ。どの煮物にも入れるというわけではないが、里芋とゴボウと人参と鳥肉があるなら、蒟蒻も欲しいのだよ私は!


 そしてネギと生姜が手に入ったからには、冷ややっこも食べたい。豆腐があるなら、揚げだし豆腐も食べたい。揚げだし豆腐には、大根おろしが必須だ。

 油揚げと厚揚げは、豆腐のついでだ。豆腐があれば、ダシがあるのは聞いているので味噌汁は絶対作るから油揚げが要る。厚揚げは煮て食べたいし、そしたら一緒にタケノコも煮たいのだ。


 まあそういう連想によって今回の申請は、力強く発せられたのである。

 ニルヴァス様は目を瞑って脳内検索中なのだろう。眉間にシワがぐぐっと寄っていく。そしてシワが開いてニルヴァス様の口も開いた。


「ふむ。米は魔大陸にしか無いが、他のモノであれば在るぞ」


「ど、どこに?!」


 前のめりで訊く私。


「ここを南に行った隣の領地との境目のダンジョンに、タケノコと大根以外があるのである」


 おおおおお~~~! 豆腐と蒟蒻がまとめてあると! まとまってるなんて素晴らしいじゃないか!

 興奮していたら、ん? と疑問が湧いた。「そこは何ダンジョンと呼ばれているのだろうか」と。


「何ダンジョンと呼ばれてるんですか?」


 四角繋がりで「四角ダンジョン」とかだろうか。ん~~~、思い付かないな。

 私が首を捻って、頭を絞っていると。


「…カスダンジョンと呼ばれて、打ち捨てられておる」


「っ……」


 ニルヴァス様の言葉に、私は絶句である。

 冒険者には、あの食材ダンジョンですらゴミダンジョン扱いだったのだ。蒟蒻たちはさぞかし得体の知れないモノに見えたのだろう。しかし「カスダンジョン」とは…。

 私が「はーーっ」と大きなため息を吐いたら、ニルヴァス様が更に教えてくれる。


「豆ダンジョンと乾物ダンジョンも同じように言われておる」


 ぬ? 乾物ダンジョンはこの前聞いたが、豆ダンジョンの話は聞いていないぞ。


「豆ダンジョンには当然、大豆と小豆はありますよね?」


 そこは大事だ。小豆が無ければあんこが作れない。あんこ大事! あんこ大事~~~!!

 私の心の叫びにニルヴァス様は気付かずのんびりと答える。


「うむあるな。後はアーモンドと言ったかな? 枝豆というのもあったぞ」


「ええええええ枝豆食べた~~~~~~~い!!!!」


 いきなり席をガタッと蹴って叫びながら立ち上がった私に、ニルヴァス様がビクッと椅子を後ろに引いて逃げた。

 うん、驚かせてしまったのは悪かったと思う。だが枝豆だよ?!


「ニルヴァス様、枝豆は美味しいのです! 塩で茹でるだけで幸せになれるのです!!」


 腕を振り身体を動かし、全身で力説する。そう、美味しいのだ。


「元居た世界では、高くてなかなか買えなかったのです!」


「そ、そうであるか」


 む? ニルヴァス様が帰ってこない。少し落ち着こう、私。ふう~。


「その豆ダンジョンは、どこにあるんでしょう」


 椅子を戻して座り直して訊く。さあ言ってくれ。早く言ってくれ。

 私が椅子に座ったのが良かったのか、ニルヴァス様が帰ってきてくれた。


「隣の領地の南の方である」


「という事は、蒟蒻ダンジョンの更に南ですね」


 蒟蒻ダンジョンが南にあって、そこから更に南に行けば在ると。よし、行く時は一緒に行くべしだな。

 しかしダシも麺も欲しいから西の領地にも行きたいんだよね。どっちに先に行くべきか~~~。

 私が悩んでいると、ニルヴァス様の言葉が追い打ちをかける。


「あとは…。大根は王都の農民が育てておるし、タケノコは王都の食材ダンジョンの中に生えておるぞ」


 お。タケノコもダンジョンなのか。まあ育つと竹になって食べられなくなるから、タケノコのままにしておくのはダンジョンでないと無理なんだろう。時期を気にせず食べられるのは私にとっては嬉しい事だ。

 しかしどっちも王都方面とは。う~~~~ん。悩むけれども、まだ行けそうには無い。行けそうになってから、食べたくてしょうがないモノの所に行く事にしようと決めた。


 米の事は念を押しておいた。「米があれば、私が作る料理は3倍美味しくなります」と誇張しておいたので、ニルヴァス様は頑張って交渉してくれる事だろう。




 湯冷ましを飲み終わってニルヴァス様が帰った後、私はせっせときんぴらゴボウを作った。

 まずゴボウを3センチの細長い角切りにした。まあ拍子木切りだ。そして酢を少し入れた水にゴボウを浸けて、その間に人参も同じように切った。


 ゴボウの水を切って、フライパンに油を少し入れてそこにゴボウだけをまず入れる。そして少し炒めてから人参を投入。また少し炒めてから、みりんと砂糖を入れてまた炒め、火が通ったなと思った所で醤油を回し入れる。

 そしてまた少し炒めながら煮詰めて、白ごまと粉末にした乾燥唐辛子をパパッと振り入れ混ぜ合わせてから火を止めた。


 味見をすると少し味が薄い気がするが、これでいいのだ。冷めれば味が浸みてくるので、一度冷めてからまた味見をして味を調えるのである。

 時間が無ければ「冷却」で冷ませばいいだろうが、こういうのは時間をかけて冷ますのが良いと思うので、明日の分を今作ったのである。


「完成じゃないので、食べちゃダメですからね」


 ニルヴァス様に言いながら、今度は鳥モモ肉をひと口大に切る。ニルヴァス様用なので、大き目のひと口大だ。

 ボウルに水を少し入れ、塩コショウをしっかりめに、砂糖を2つまみくらい入れる。日本酒があればほんの少し入れるのだが、無いのでみりん少々で代用だ。

 それを手でいいのでかき混ぜて、切った肉を入れてからよく揉み込む。終わったら「冷却」をかけて大皿でフタをして明日まで放置だ。



 後は。

 卵を5つボウルに割り入れて、黄身と白身に分ける。今回は硬めのマヨネーズを作りたいので卵黄だけ使うのだ。

 時間停止が使えるので、多めに作っておきたいと思う。普通の卵の3倍のサイズの卵を5個だ。けっこうな量になる事だろう。ワクワク。


 残った白身はケーキに使うので、透明瓶に入れて時間停止を付与してテーブルへ。

 そして泡だて器を手に持ち、身体強化を発動させる。ボウルに入った黄身をガガガっと混ぜてから、そこに大匙1杯の油を入れて、しっかり混ぜる。そしてそれを延々としっかりめのドロドロになるまで繰り返すのである。


 この作業、元居た世界では当然ハンドミキサーのお世話になった。下手なのだろうが、自分の力で生クリームも泡立てられない私は、ハンドミキサー様のお世話になりっぱなしであったのだ。

 しかし今は違う。身体強化を速さに振って、ハンドミキサー張りのかき混ぜで見る見るうちに黄身と油が混ぜ合わさって行く。


 硬めのドロドロになった所で、酢と塩と砂糖を、まずは少々入れてしっかり混ぜて、味見をしながらそれぞれを足していく。

 この時、マスタードや粗びきコショウや塩コショウやレモン汁を好みで入れても美味しい。今回はプレーンをやるけども。


 私は、塩コショウとコンソメ以外の味に飢えていたのである。

 サラダにはマヨネーズをかけたいし、ジャガイモだってポテトサラダにしたいのだ。

 でも酢がね。「どこで獲れるんだ?」と訊かれたら答えられないじゃん? だから皆に食べさせてあげたくても、無理なんだよね。


 考えてみれば森で採れる野菜たちも、ダンジョンで採れる野菜たちも、塩コショウだけでは美味しく食べられないモノが半分くらいある。

 コンソメと油はボスドロップだから、当然今までは選択肢に無いだろうし、塩茹でか、茹でて塩を付けるかの味付けでは、やはりジャガイモが重宝されるのも頷けてしまう。



 そんな事を考えながらマヨネーズを完成させて、小ぶりな壺に入れていったら15壺になった。

 これで明日はサラダを食べようと思うのだ。「ぬふふ」と笑いながら壺を棚に入れていく。壺には当然「冷却」と「時間停止」をかけておいた。冷えてた方が美味しいよね。

 その下の段に白身の入った透明瓶も入れる。これはシフォンケーキとかフィナンシェのように、白身を多く使ったり、白身しか使わないお菓子を作る時にとっておくのだ。

 時間停止って、ほんと重宝だわ~~~。



 あ~~~、気が済んだ。明日がとても楽しみだ。肉ダンジョンで隙を見て野菜も採れたら嬉しいぞと。

 時計を見たら0時半だった。

 私は異空間収納部屋を出て、村の調理小屋まで最加速で走って行く。

 まだ2時までは1時間半ある。今日の夜のチーズ焼きの付け合わせでも何か作るかな。



この世界では「育てる」という事をあまりしません。なので、ダンジョンに設置された枝豆を放置しても、大豆にはなりません。

そういうわけで大豆と枝豆は、食材としてそれぞれ設置しました。


ナスは素揚げが一番美味しいと思います。その思いの丈をぶつけてみました。

追いガツオの麺つゆや、そうめんつゆでも美味しいですよね!


次話からは、ダンジョン組のブートキャンプが始まりますが、ソル達ほど細かくやる気はありません。なるべくサクっと終わらせたいです…。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白く読ませていただいてます! 主人公が食いしん坊なところが好き◎ [気になる点] 24時間闘うとか、選ばれし者とはいえ不憫、、、 睡眠とらないと脳が疲弊してパフォーマンスが落ちるのでは?…
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