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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
38/91

37.粉ダンジョン中層 グループ練習継続なり。

中層です。

モンスターが強くなります。

その分能力開発には期待が持てます。


「じゃあ中層の事、教えてもらおうかな」


 軽食が終わり、ガザが落ち着いた所を見計らって訊いた。

 私が来た時は3匹しか湧かなかった。

 上層と同じであれば人数×3匹と少しプラス。

 ボイフが言った。


「中層は数が増えると面倒なんだ。飛んでる奴と壁を歩いてる奴がいて、1匹が気付くと部屋にいる奴全部が襲って来やがる」


 ロジ少年以外が頷く。このメンバーの中で初めてなのはロジ少年だけだ。少し緊張しているように見える。

 ちなみに飛んでる奴は「ぺギ」ってでっかいハチで、壁を歩いているのが「アガ」ってでかいクモのモンスターだ。だが私の中で奴らは「ハチ」と「クモ」だ。面倒なのでそう呼ぶ。


 ソルがボイフの言うことに頷いて続ける。


「だから俺らは2班を解散して、ここで5人パーティーを1つ作って、残りは組まずに一斉に狩りをする。そうすりゃモンスターの数を18匹より少なくできるからな」


 ほうほう。


「ボイフたちはどうしてる?」


「俺たちは解散してモンスター3匹を全員でやってるな」


 なるほど。どっちも自分たちのパーティー人数でモンスター数を調節しているのか。やるなあ。


「じゃあまずはパーティーを組まずに、さっきの5人グループずつでやってみようか」


 上層では楽勝だったが、中層ではどうだろう。そこを見てみたい。私の体感はアテにならんからな。


「もしできれば、一番近くの奴に石投げたりしておびき寄せて、1匹は先に仕留めたいとこなんだけど」


 ユジとロンさんを見る。2人なら粉ダンジョンに入る前に私が教えたのをすれば出来そうである。

 ユジとロンさんは、私の意図する所に気付いてくれたようだ。足元に転がる小石を拾い出した。


「じゃあ5人ずつで相談して。部屋を覗きに行くのもありだよ。相談が終わったとこからの順番で1部屋ずつやっていくからね」


 私は聞き耳を立ててそれを聞かせてもらうのだ。耳からにょにょにょ~~と魔力を伸ばしたら。

 バッ! っとポルカ組に見られた。そんで何をしてるか知ってるロンさんだけが苦笑。

 そういえば皆、魔力感知が使えるようになっていたのだった。


「話を聞いてるだけだから」


 おかげで盗み聞き宣言をするハメになってしまった。


 肉屋組が、それを首を傾げて見ている。

 そういえば彼らには魔力増幅を付与してあるのだが、上層では楽勝過ぎて何も起こらなかった。

 中層で楽勝なら、下層に放り込むしか無かろう。

 私は厳かに1人納得顔で頷いた。



「飛んでる奴が針を飛ばしてきて面倒なんだ」(シガ)

「そうそう、あれに当たると後で腫れて痛いのなんのって」(ボイフ)

「俺らんとこにはターヴがいるから、刺された奴はターヴんとこまで下がろう。治ったらまた戻る」(ミノ)

「ターヴさん、もしかして治癒使えるの?!」(ビエル)

「ああ。だから俺は後衛だな。一番最初に向かってきたのを2人でやって、残り2匹を1人ずつが足止めして、一匹目を倒した2人がそれぞれを補助する。でどうだ?」(ターヴ)

「それでやってみよう」(ボイフ)


 ターヴの居る班はそういう方針にしたようだ。1番目に話が決まった。


「飛んでる奴に付与で強化したのを当てて、倒せなくてもおびき寄せよう」(ロン)

「そうだな。アイツが先に居なくなれば後が楽だ」(ソル)

「強化を付与って、ヨリに頼むのか?」(バル)

「ロンさんは元冒険者なんだよ」(ロジ)

「付与と身体強化使えるんだぜ」(ジル)

「すげえな」(バル)

「俺がまず付与と身体強化を使って、飛んでる奴に強化した石を当てる。そんで倒せなきゃ剣で仕留める。お前らは歩いてる奴を2人ずつで相手してくれ」(ロン)

「「「「わかった」」」」」


 ロンさんの居る班の方針が2番目に決まる。


「飛んでる奴が厄介だからな、まずはそいつからやろう」(ガザ)

「じゃあ飛んでる奴の近くから始めるか。ユジ、できるか」(ノラン)

「ああ、皆が位置についたら俺が強化を付与した石を、飛んでる奴にぶつけよう」(ユジ)

「あんた、付与使えんのか?!」(サイダ)

「昨日覚えたばっかだから、期待はすんなよ」(ユジ)

「先に奴に襲われても、投げろよユジ。歩いてる奴は俺とノランで止めるから、お前は投げるのに集中しろ」(ビス)

「ああ分かった」(ユジ)

「じゃあ俺とサイダでユジの補助だな。飛んでる奴を片付けたら、俺たちも歩いてる奴の方をやる」(ガザ)

「おう、頼んだぜ」(ノラン)


 ユジの班もまとまった。

 今からの時間がすごく楽しみだ。それぞれの班のやり方を、まずは見せない方がいいかもしれない。

 せっかく決めた方針が、他の班を見て揺らぐのは決断に響くだろう。

 そう説明して2班をそこに残した。

 私はツアーガイドのごとく、1番目に決まったターヴ、ボイフ、ビエル、ミノ、シガの班を部屋に案内する。


「はい、1番目。危なければ入るけど、ギリギリまで手は出さないよ」


 そう言って送り出した。

 どうやら3匹湧きの場合、飛んでるのが1匹、歩いてるのが2匹らしい。

 上層と同じ形の部屋だが、倍の高さ(普通の高さとも言う)の天井付近にハチがのんびり飛んで、壁をクモがノソノソ歩いている。

 ハチは部屋の一番奥に居た。1匹のクモは左の壁を奥に向かって歩いていて、右側の壁をもう1匹のクモが彼らに向かって歩いて来ていた。


 先頭に居たボイフがクモから視線を外さないように後ろを見て言う。


「右のをやろう」


 他の4人が頷いた。

 右の壁に沿って進み、ある程度近付くとゆっくり近付く。

 クモが気付いた。彼らに向かってジャンプする。それをボイフとシガとミノとビエルで一太刀浴びせて倒す。


「先に飛んでる奴が来るぞ!」


 ターヴが教える。

 ハチが来ると4人はばらけてハチを囲む。

 こうすれば針を飛ばされても当たるのは1人だ。針を撃っている間は向きを変えないから、その間に他の3人が仕留めればいいという作戦だ。

 盗聴していたので、そこも聞いたのだ。

 針の標的にされたのはシガだった。剣を持っていない方の腕でガードして、針を受けながら前進してハチに向かって剣を突き上げる。

 彼には盾が似合いそうだな。それを見た私の感想である。

 結局ハチは4人に突き込まれてすぐに倒された。


「後ろから来るぞ!」


 ハチの後ろに回り込んだ2人の後ろから、残り1匹がすごい速さで迫ってきた。

 身構えた4人の少し前で、クモが大きく跳ねてターヴの後ろに着地する。

 ターヴが居た所を目掛けて脚を振り上げ、鋭い爪で攻撃しようとするが。

 ターヴはすでに剣を抜いて、そこからクモの横に回り込んでいた。

 クモが脚を振り上げた時に、反り返った胴体と頭を繋ぐ一番細い所を、上から両断する。

 あっけなくクモは倒され、戦闘終了だ。

 さすが元ダンジョン組だ、危なげが無いなターヴ。


 シガに刺さった針は、ハチが砂になるのと一緒に砂になったが、刺された所は腫れ始めていた。

 ターヴが近寄り、それを治す。

 私の以外は見た事がないボイフとビエルが、それをじっと見ていた。

 ビエルがしきりに「いいな~」と言い始めたので、「その気になれば使えると思うよ」と言う。

「まさか!」と言った彼に、「だってターヴは昨日使えるようになったばっかだもん」と教えてやると。

 ビエルはその後、ピタリとしゃべらなくなった。



 全員で次の部屋へ向かう。中層は30分で次のが湧くそうだ。30分てなかなか丁度いいインターバルだと思う。

 次はロンさんたちの班だ。


 ロンさんを先頭に部屋に入って行く。

 今度は左側の天井にハチが飛んでいた。

 クモは2匹とも右の壁に居る。


 5人は部屋の真ん中に進んで、ロンさんがハチの方を向いて、残りはクモの方を向く。


「始めるぞ」


 ロンさんが合図して、魔力を練って身体強化をする。

 小石には何が付与されているのか。鑑定をかけて見る。

「命中」「強化」「貫通」「高速」

 まんまだね。だがこれで身体強化して投げたら、ハチは生きてはいられないだろう。

 ロンさんは「倒せなかったらおびき寄せる」とか言ってたけど、ヤル気満々だよね。

 魔力の回転速度が上がって行くのが目に見える。

 そのロンさんの魔力回転に引き摺られるように、ソルとジルとロジ少年の魔力が、ゆらゆらと揺らぐ。


 通路の出入り口に立っている私は後ろを振り返った。

 魔力の回転と複数の揺らぎに気付いている6人が、じっとこちらを見ている。

 ターヴとユジも魔力回転が始まっていて、他の4人の魔力も揺らいでいた。

 それを感じて私は振り向いたのである。


 おや? 引き摺られた方が発現が早いかもしれない。

 そう考えた私は、肉屋たちを見て「魔力感知」と声に出して言う。

「何言ってるんだ?」と言いかけたボイフとガザの口が、開いたまま止まる。

 サイダとビエルは自分が感じ始めた何かの動きに、キョロキョロと周りを見ている。


「それね、魔力の回転と揺らぎだよ。魔力の使い方を覚えた人は回転させる事ができる。使おうと思って能力が発現しそうになると魔力が揺らぐ」


 私はロンさんたちの動きを見ながら教えた。


「何かを考えたり思ったりした時に身体のどこかが熱くなるなら、そのまま考えるといいよ。あとは叫びたくなったら叫ぶこと。叫びたい人は叫ぶと覚えるし、叫ばなくても覚える人は覚えるから、そこは絶対とは言えないけど」


 言いながら見ている間に、ロンさんがハチに向かって小石をぶん投げた。

 私の予測を外さず、「キュィン」という音をさせて見えなくなった小石は、数瞬後にハチをキレイに消滅させた。

 まあ私の魔力を付与されて増えまくった魔力を、ロンさんに出来る限界で身体強化に練り込んでいたからな。

 あれま、ロンさんが目玉が飛び出そうなくらい驚いている。

 4人は唖然と口を開けて天井を見ていた。

 投げた本人もびっくりな威力を見せた小石が、ハチを消滅させてそのまま天井に「ズゴッ!」っと穴を開けてめり込んだからだろう。


 いやきみたち、クモ来てるからね?

 私はダッシュして向かってくる2匹のクモが、いつ跳ねて4人の上に来るのかとハラハラしてしまった。

 しかし、彼らは自分で気付かねばならない。気付かずに襲われても、それに対処しなければならない。

 ぬおおおおお~! 我慢だ私!

 教えたいけど、我慢我慢!


 祈る気持ちで見ていると、ロジ少年とバルがすぐに我に返ってクモの方を見た。


「来てるぞ!」


 バルが大声で教える。ジルとソルがその声で我に返り、近くまで迫っていたクモを2人ずつですぐに倒した。

 ああ、良かった。心臓ドキドキだよ。


 自分を取り戻したロンさんが、「すごかった」と口々に言われながら戻ってきた。

 私の前を通過する時に、ロンさんは少し困ったような顔でため息を吐いて言ってくる。


「ありゃあ、とんでもねえな……」


 あはは。私も塩ダンジョンで初めてやった時、力加減が判らなくてそう思ったんだよね。

 先輩としてアドバイスをしようではないか。


「うん。だからその時々で練り具合を調節するんだよ」


 それしかない。ん? そのまんま? アドバイスになってない?

 いつか身体強化を覚えた頭のイイ人にアドバイスはお願いすることにしよう。

「それってロンさんだよね」という自分突っ込みは聞かないフリでスルーである。


 さてロンさんの魔力の練りが終わったせいか、皆の魔力も落ち着いてしまった。

 う~ん。これ私が魔力練りすれば済むんじゃない? って結論かな。

 とりあえず最後の班がやってからにしようか。




 次の部屋に向かって、最後のユジの班を連れて行く。

 ユジが後ろからボソっと言ってくる。


「なあ、俺、あんな事できないぞ」


 誰も天井に穴を開けろとは言わないと思うんだが。

 不安気な声に、ユジの横に並ぶ。


「ユジ、今までは誰も魔力を使えずに中層で狩りをしてたんだよ? 使えるようになっただけでも本当に助かるんだから、ユジは胸を張ってやればいい。大丈夫だよ」


 背筋を伸ばすのだ、青年よ。そう思って背中をポンポンと叩いてやる。

 しかし青年の背筋は伸びない。う~~ん。


「ねえユジ。さっきロンさんが身体強化で魔力を回転させてた時、ユジとターヴの魔力も回転してたのは気付いてた?」


 私の問いにユジが頷く。


「じゃあさ、それ思い出して回転させながら、やりたい事考えてみたらどうかな?」


 どうだろうか。さっきの皆の状態なら、これで発現しそうな感じなんだけど。

 ユジが目を閉じた。魔力がゆるく回転し始めるのが判る。

 さっきのを思い出して回転させているようだ。

 段々回転が速くなってきた。


 あーーー。グルグル~~。


 そしてユジと私の後ろから、ゆらゆらが始まる。

 あ、そういえばロンさんの班のバルにはまだ感知を付けていなかった。振り向いて「魔力感知」とバルを指差して言った。

 バルは突然に指差されてビクっとなったが、その後「ん?」とキョロキョロし始める。よしオッケー。

 ボイフを見て、目でバルに教えてねと伝えた。

 彼には日本人な素敵スキルがあるのかもしれない。すぐにバルの所に行って、説明を始めてくれた。


 あと少しで次の部屋だ。

 そこで止まる。

 ユジたちの班には自分たちの作戦を思い出してもらおうと、少し話し合ってもらった。

 さっきのびっくり事件で、忘れてたら大変だからである。

 確認が終わった所で、送り出した。



 この部屋では最初の部屋のような場所にモンスターが居た。

 ただ、左側のクモはこちらに向かって歩いてきていた。


 モンスターの居ない方の壁に、真ん中より少し寄る。モンスター側に全員が向く。

 ビスとノランは左右の壁に近付いて立ち、それぞれのクモを迎撃する姿勢だ。

 奥に飛んでいるハチを正面に見て、ユジが立つ。石を投げるのに邪魔にならない程度に離れて、ガザとサイダが構えた。


「はじめるぞ」


 ガザが合図をする。

 さっき回転させていた魔力をさらに加速させて、ユジが構える。

 しかし、やりたい事がまだできそうにないのだろうか。

 まだ投げない。

 目を閉じて、眉間にシワを寄せて「ぬぬぬ」という感じだ。

 魔力の回転でポルカ組の魔力は、グルグル、ゆらゆらである。


 右側のクモが先に気付いた。

 そして他の2匹も。

 クモはどちらも同じくらいの位置だったので、ほぼ同時に襲ってきた。

 それをビスとノランが応戦して足止めをする。

 ハチは一番距離があったので、まだ来ていない。

 ユジはまだだ。


 そこに新しい回転が加わった。

 そっちを見るとガザの魔力が回転していた。

 そのガザはユジをじっと見ている。

 ガザが回転を上げると、ユジの回転も上がる。

 2人の回転がどんどん上がり、ユジの魔力が引き絞られて。


 パッとユジが目を開けて、手首のスナップだけで小石を投げた。

 小石が飛んで行くのを目で追いながら鑑定する。

「高速」「強化」「命中」「貫通」

 付与の内容はロンさんと同じだ。

 ロンさんは全力で投げていたが、ユジは手首だけで投げた。そこだけが違う。

 小石は「ヒュン」といってハチのお腹に穴を開けた。

 ハチは身体に穴を開けられてから数回ぐらついて落ちて砂になった。


 その結果に安心したのか、目に見えてユジの肩から力が抜けた。

 ハチが砂になるのを確認して、ガザとサイダが自分の方のクモを仕留めに動く。

 クモに近付く時に、ガザが異常な速さを見せた。

 踏み込みの姿勢から姿が消えてクモの上に現れたガザは、そのまま剣を下に向けてクモに突き刺した。

 いきなり目の前に現れたガザに、ビスがびっくりしている。

 もう片方はその少し後には終わった。


 ユジとガザに身体強化が発現したようだ。ガザの発現をユジが誘導して、ユジの発現をガザが助けたって感じだろうか。



 ぬふふふ。いや大丈夫だよ? ありもしない出来事を、勝手にねつ造したりしないよ私は!


 そういえばガザは、初めてパーティーを組んだ時もロジ少年の事をすごく気にしてくれていた。

 彼は偉そうな態度が目立つけど、実はかなりな面倒見のいいお兄ちゃんなのではないだろうか。


 いや~、今後が楽しみですね。どうですか? 

 いや腐ってる方向ではないですよ? 貴腐人だからといって、すべてを腐らせるわけではないんです!

 ええ純粋に今後の皆が楽しみなんですよ!


 え? 口調がおかしい? いつもと違う? ははは。そんなことはナッシングですってば!











まだ1回ずつで、作者が思っている以上にグルグルゆらゆらしてくれました。

この話、BLにはなりません。悪しからず!(笑)


書くの楽しかった~~!

次も楽しみです^^

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