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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
37/91

36.混成パーティー誕生 粉ダンジョン上層。 (3月30日加筆&修正)

肉屋とポルカの混成パーティー結成です。


粉ダンジョンに潜ります!



 ポルカ側と肉屋側、両方の知り合いだということで、パーティーリーダーは私になった。


 ちなみにこの世界では、パーティーを組む時は手を重ねる。リーダーが一番上だ。

 ほら、あの「ファイト! オーーー!!!」のアレである。

 え? 微妙な気分にならなかったか? 少ない人数の時は別にそういうモノかで流していたのだよ。初めて組んだのはロジ少年と2人でだったし、肉屋たちと遭遇してパーティーに入れてもらった時は、誰か1人と手を重ねれば良かったからね。


 しかし16人でアレを? と考えた時は、まあ正直なったと白状しよう。

 16人は大変だったが、部活での経験がある私が身体を斜めにする方法を伝授してあげたので、無理なくできた。

 お? 今までで一番役に立った気がするぞ!


 解散方法は、「抜ける」と言えば抜けられるし、リーダーが「解散」と言えばパーティーは解散する。

 抜けた人が再度入る時や新たに人が入る時には、パーティーに入っている人と手を重ねて「入る」と言えばいいのだそうだ。


 じゃあその組んだり抜けたり解散したり入ったりとか、どうやって解るんだって話だが、頭のどっかで感じるのだ。

 組んだ時は「ヴォン」、解散の時は「ファ~ン」。組んだ時に空気が圧縮される感じで、解散の時はそれが広がって空気に溶けていく感じだ。

 抜ける時と入る時の感じがどんなか、秘かに楽しみにしていたりするのだ。ワクワク。


 16人のパーティーで、私を先頭にして進んだ。

 私のすぐ後ろにはソルとロンさんとボイフが並んでいて、その後ろは自由だ。

 入口からトンネル状になった通路を進むと、出口が見えてきた。

 そこを抜けると部屋があるのは、前回来たので知っている。部屋に入る手前で一度止まり、部屋を覗く。


「うげ」


「…さすがに多いな」


「すげえ」


 後ろから男3人が身を乗り出して部屋の中を見て言った。当然私のすぐ後ろに居た3人だ。

 部屋には大きいコウモリのようなモンスターが、ぶら下がっている。

 部屋は、今居る通路から部屋の反対側に見える奥に向かう通路を中心に、縦長の楕円形をしていた。そこの壁際に沿うようにモンスターたちはぶら下がっているのだ。

 仕様なのか何故か天井は低い。これではコウモリ共は飛べないのではないだろうか。素朴な疑問だ。


 私が夜中に来た時はここには2匹しか居なかった。

 ガランとした部屋の両壁際に1匹ずつだ。私でなくとも湧きの少なさにイライラしたことだろう。

 しかも近付くまで襲ってこない。遠距離攻撃と身体強化が無ければ早々に諦めていたと思うよホント。


「夜中に来たときは1人だったから、2匹しか居なかったんだよね」


 私がボソっと言うと、ソルとボイフが「ああ」と教えてくれる。


「夜中はパーティー人数が増えても湧きは増えないぞ。だから俺らは夕方までしか、ここには潜らん」


「そうそう、だから夜は街の奴らが時々来るぐらいだな。昼間はとても潜れないって夜に来るんだ」


「ほおおおおお~~~」


 さすが地元民。頭使ってるわ。本気で感心した。


「今は、えーーーと。38匹か。人数×2匹に少しプラスってとこかな」


 数えて通路に戻る。皆で寄って計画を立てるのだ。


「いつもどうしてるのか、まずは教えて。私のは参考にならないだろうしね」


 全員を見て訊く。普通のパーティー戦など、肉ダンジョンでボイフたちとちょこっとやったぐらいだ。


「俺らはいつも2班で潜る。モンスターは近付かなきゃ襲ってこないから、先に行く班は真ん中を突っ切って、2層まで行く。後で入る班が少し待って、入ってすぐから始めてく。数が集まれば突っ切って中層に入るところでもう1班と合流する」


 ソルが言うと、次はボイフも教えてくれる。


「俺たちは5人だけだからな。先客が居れば、お互いの邪魔にならんように離れるまで突っ切って、始める。そんで行きは片側だけやって行って、中層をやった帰りにも片側ずつやる」


「じゃあ上層は、お互いの欲しい数が集まったら、一度パーティーを解散して突っ切った方がいいってことだね」


 私が思う所を言うと、全員が頷いた。

 そこで更なる提案をする。


「片側19匹ずつだから、まずは2班に分かれて両側? それとも片側から全員でやってく?」


「とりあえず全員で片側をやろう。お互いの動きに慣れておかないと中層から困ると思うぞ」


 ロンさんがすぐに決めてくれた。そうだね。その方がいいか。


「じゃあそれで行こう。私は皆の補助をしながら、ドロップ品を拾う係でいいかな?」


「上層ならヨリに頼らなくてもいけそうだ」


 私が補助に回ると言ったら、ボイフが頷いて言う。

 ガザも頷き、弟たちも、ロジ少年も頷いた。


「ソルさんたちも居るし、大丈夫だと思う」


 そう言ったロジ少年を見ると、目が合う。口をとんがらせて睨まれた。言外に私に「守るとか言うなよ」と伝えたいようだ。しぶしぶ頷いたら、笑顔になった。

 こうやって少年は青年になってしまうのだね。お姉さんはさみしいが、ロジ少年をそっとガン見しよう。


 よし、作戦だ。右側手前のモンスターから行くが、15人居る。(私は見守り係だ)

 モンスター1匹に3人で当たることになった。

 ユジとターヴとロンさんには分かれてもらって、せっかくなので肉屋たちにも1人ずつ分かれてもらった。

 ポルカと肉屋の混成グループで親睦と連携を深めていただきたい。


「じゃあ行くよ」


 まず私が出て部屋の左側の方に立ち、右側に行く皆の背中の警戒をする。左側の一番手前のモンスターが反応して来ないとも限らないからだ。

 手前から3人ずつが付いて、戦闘を始める。

 付与などを使う間も無く、すぐに戦闘は終了した。

 それを繰り返しながら右側を終えた。ドロップ品もちゃんと拾えた。


「小麦粉17、透明瓶2」


 一度次の部屋に向かう通路に入って全員に伝える。


「こんだけ集まるのが早いなら、片側だけで行った方が効率が良さそうだけど、どうする?」


 中層まで10層あるのだ。一層ごとに10部屋はある。上層だけでないなら、片側作戦の方がいいだろう。

 私の提案にボイフたちもソルたちも頷いた。


「次は3人で2匹ずつ相手してみようか。3人で1匹じゃ簡単過ぎたみたいだし」


 更に提案すると、さっきの3人ごとで顔を見合わせて頷いた。

 たった3回ほどでチームワークが育ってきたようだ。素晴らしいではないか。

 敵を増やすからにはアドバイスもしておく。


「3対2になるから、前衛2人、後衛で補助する係が1人欲しいね。後衛はまずは戦わずにモンスターと仲間をよく見て、危ない方に加勢に入ったりモンスターが変な動きをしたら教えてあげて。前衛は剣が折れそうとか、1人じゃ無理そうなら声を出して応援を呼ぶこと。とにかく声を出し合うのが大事だからね」


 3人ごとに集まってミーティングしてもらう。

 まだモンスターが弱いうちに、こういう事は練習しておかないとね。

 話し合いが終わったグループから次の部屋に向かう。

 次の部屋への出口で、全員そろったのを確認したら始めるのだ。

 今は時間がかかっても、何回かやれば慣れる。最初は納得がいくまで話合うことが大事なのである。

 全員が集まったので、さっきのように私が左側に出て皆を出す。


「いける!」

「手伝ってくれ!」

「入るぞ!」


「大丈夫だ!」

「いけそうだ!」

「おう!」


「こっち頼む!」

「こっちはいい! そっち行ってくれ!」

「わかった!」


「うわあ!」

「そっち頼む!」

「おう、入る!」


「そっち行った!」

「一緒にやるしかない!」

「俺も入る!」


 グループごとに上手く連携ができているようだ。

 さっきよりは当然、時間がかかる。モンスターとの戦闘時間が長引けば、より連携というのは育ちやすいだろう。

 声も初めてなのによく出ているし、遠慮が無くていい感じだ。

 余裕があると遠慮が出る。かと言って連携が育ってないうちに余裕が無さ過ぎても連携は生まれない。難しいよね。

 危ないグループの所には入るつもりでいたのだが、そんな心配はいらなかった。

 これは、わりとすぐに5人グループにして対モンスター3匹ができそうだ。



 3人グループのを2層が終わるまでやって、2層から3層に降りる通路に座って次の作戦を言う。


「次は5人ずつになって、モンスターを3匹相手にしてもらうよ。前衛が3人、後衛が2人ね。できればさっきまで一緒だった人とは別れてね」


 よし、上手く別れられた。そして話し合い。さっきより時間がかかる。人数が多いから当たり前だ。

 これで慣れたら中層まで突っ切ってもいいんじゃないかなと思う。

 小麦粉は1人20袋ずつは集まっているので、全員の欲しい分はすでに集まってしまったのだ。


「これで慣れたら、中層まで突っ切ろうね」


 そう声をかけて5人作戦スタートだ。


 1対1の図式で戦闘が始まり、2対2になったり、3対3になったり。声を掛け合って補助が入り。

 上手く機能している。

 次の部屋、次の部屋と進むうちに、グループそれぞれで連携の仕方を考えるようになってきていた。


 前衛3人のうちで時間がかかる1人の所に補助が1人一緒に入り、片付けてから残り2匹を2人ずつでやったり。

 前衛3人を崩して、モンスター1匹を1人が引き受けている間に、2対1でサクっと片付けて残りの1匹を前衛3人でやったり。

 1対1を3つ作って、モンスターの背後に回り込んだ後衛が仕留めていったり。

 反応してこちらを向いたモンスターを、後衛の指示で誘導して距離を離し、1対1で仕留めたり。

 基礎通りに前衛が危なくなったら補助に入ったり。


 ちなみにロジ少年は後衛だと入るタイミングが難しいだろうとのことで、前衛だ。

 そこには大人がいつでも補助に入れるように気を配っている。

 ロジ少年は塩ダンジョン産の短剣を使って、皆の予想以上に動けていた。

 まああの短剣に付いてた付与は「強化」と「不壊」と「衝撃無効」と「防御強化」だ。

 攻撃を受けても衝撃を感じないのだろう。おかげで恐怖で身体が固まらずに済んでいる。

 防御強化で、多少殴られても怪我をしないと思われる。いい短剣ゲットできて良かったな。


 そう。私が大人しく見守れるのは、そんな短剣のおかげだったのである。

 決して私がロジ少年の心意気に頷いたわけでは無かったり。言わないけどね!


 それを5層までやって、5層から6層に降りる通路で休憩。そして皆にやってみた感想を訊いた。

 ボイフたち肉屋も、ソルたちも、基本1対1でやっていたそうだ。


「1対1より早く済む気がする」


「ああ、補助が入る分、気持ちが楽だな」


 回復役や遠距離攻撃役が居ないから、剣で全員で戦うのが普通だったのだろう。剣を持って後ろで待ってるという発想は無かったそうだ。

 連携の大事さを最初に言っていたロンさんはどうだろうか。視線を向ける。


「今のやり方で連携の取り方は慣れてきたと思うが、それなら5人ずつでパーティーを組んでも良かったんじゃないのか?」


「そういえばそうだな」


 ロンさんの疑問にガザが同意する。

 しかし私はそこで力説しようではないか。


「皆には混戦にも慣れて欲しいからだよ。5人で組むと、湧きが10匹ぐらいしか無いでしょ。両側にばらけたら、片側5匹しかいない。これじゃあモンスターが離れすぎて5対3なんて出来ないよ。下層はもっと強いのがたくさん湧いて襲ってくる。混戦なんて普通になるんだから、今から慣らしておくのは当然!」


 私が胸を張って言い終えると、聞いてたメンバーが。


「はあああああああ?!」


 と、ロジ少年とロンさんとソル以外が大合唱だ。

 おやそういえば言ってなかったか。


「あのね。今までと同じ中層まででいいって言うなら、こんな事してないの! 能力開発なんてしようともしないの!」


 とユジたちに向かって言い、今度は能力開発って言葉も初めてなボイフたちに向かって、


「塩ダンジョンの下層で拾ったモノ、もう忘れた? 塩ダンジョンは初級ダンジョンだよ? 中級ダンジョンの下層が、あれよりいいモノ落とすなんて普通だと思うんだけど、まさか行く気さらさら無かった?」


 私の弾丸トークに、ボイフたちはびっくりして固まっている。

 もう! これはガザを釣るしかない。


「あ~あ、ここの下層で獲れるアレと、肉ダンジョンのボスが落とすアレがあれば、唐揚げという名の至高の肉料理が作れるのにな~~~~」


「何だソレは?」


 案の定、私の釣り糸に見事にガザが引っかかってくれる。


「え? 私がこよなく愛する鳥肉料理だよ? 鳥もも肉に塩コショウして、ここの下層で獲れるアレをまぶして、肉ダンジョンのボスが落とすアレで揚げるんだ~~~。あああああ~~食べたいな~」


 ガザの目が底光りしてくる。

 ボイフが訊いてくる。


「下層で獲れるソレと、肉ダンジョンのボスが落とすソレは、俺たちが獲れるようにならんと作らないということか?」


「材料を自分で獲れない料理教えてどうするの? 作れない料理は教えないよ私は」


 んふふ。生活に困っていなさそうな肉屋たちに、食材提供までするつもりは無いぞ。

 言いたい事は言った。本当に下層ぐらいは行ってもらわないと料理のレパートリーが少なくて、そのうち私が困るんだよね。という事で、肉屋たちも頑張れ。


「さて皆、今から中層まで突っ切るから、パーティー解散するね」


 解散して少し待つとモンスターが2匹になった。

 そして全員で部屋の真ん中を突っ切る。もちろんダッシュだ。

 これで身体強化覚える人がいるかもしれないから、一応ね。


 上層から中層に降りる通路で休憩する。

 ここは部屋から部屋への通路よりも広くて長い。

 走って疲れている皆を休憩させながら、軽くお昼にすることにした。

 一度に食べ物をお腹に入れると、身体が重くなるので、一度に全部食べさせたくないので小分けにするのだ。

 チーズ焼きと塩揉みキュウリと人参を出す。とりあえず1枚ずつとキュウリと人参を2本ずつ。

 肉屋たちには私が用意すると言っておいてあったので、彼らにも渡した。


 全員に行き渡ったところで、食べながら中層の情報を訊こうとしたのだが。

 チーズ焼きと野菜の味の感想で、通路内で声が反響してすごい事になっていた。

 収まるまではとても話せる状況ではない。

 まあ食後の休憩中に話せばいいか。


 肉屋たちから「どうやって作るんだ?」攻撃を受けたが、「この上に載ってるの、肉ダンジョンの下層で獲れるんだ~」と戦闘意欲向上を煽っておいた。

 ガザが「ふんぬー!」と憤り、ボイフがそれを宥めている。弟たちはそそくさとソルたちの方に逃げていた。



 ふはは。頑張れ。







上層で混戦&連携の練習をしました。


今まで隠されていたロジ少年のもらった短剣の性能が出ました。これはヨリが「もらっておけ」と言うはずですね。


「守っていらない」を「守るとか言うなよ」に修正しました。これでよりロジ少年の負けん気が伝わるかなと^^


次話は中層です!


3月30日の修正&加筆で、パーティーの仕組みをやっとこっちに入れれました。ふうスッキリ。


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