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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
36/91

35.魔力考察 そして言うところの お見合い (後書きに人物紹介あります)

朝ごはんの後です。

まずはロンさんに相談です。


ラストに少しだけBL萌え部分アリですが、BL的展開の予定は一切ございません。



 朝食が済むと俺はダンジョンに行く準備をし始めた。

 ダンジョンに行く準備をするのは本当に久しぶりの事だが、忘れてはいなかった。

 自分の武器と異空間収納を準備して、そこに自分の水筒(革袋)を入れるのだ。

 普通なら飯も用意するのだが、飯はヨリが持って行くと言ってくれた。

 俺は緊張と高揚感で、すこし落ち着きが無かったかもしれない。いや、誰から見てもソワソワと落ち着きが無かっただろう。


「ロンさん」


 そこにすごく小さなヨリの声が。

 そっちを見ると、すぐそこの小屋のかげにヨリが居た。こっちに来いと手招きをしている。

 そういえばホスさんの事が訊きたかったんだった。

 俺はちょうどいいとヨリの方へ向かう。


「おう、飯うまかったぞ」


 本当にうまかったから、まずそう伝えた。珍しくヨリが笑顔で「ありがと」と言って、こう続けた。


「本当は昨日の夜話したかったんだけどね」


 俺も話したかったが、ヨリはソルとどこかに行っていた。

 気になったのでそれを訊く。


「ん? ロンさんが森で訊いてきたのとほぼ同じ。私の勝手だから、気にしないでって言っておいたよ」


 そうだったのか。気が済んだので話を戻す。


「で? 俺に話したいことって何だ?」


 ヨリがこっちに更に近付いて、顔まで寄せて来る。なんだなんだ?

 抑えていた声を、ヨリは一層小さくしてコソコソ言う。


「……朝ね、ホスさん以外の7人が、何か使えるようになってた」


「はああああああ?!」


 俺はヨリに合わせて声を低くしてはいたが、さすがに驚き過ぎて声が大きくなってしまった。


「ロンさん、声が大きい! シー!」


 ヨリが慌てて周りを見渡す。誰も居なかった。

 しかしまあ、10人中1人だったのが、今朝になって8人になってただと?

 どうゆうことだ?


「詳しく教えてくれ」


 俺はヨリの言葉を覚悟を決めて聞く気で言った。

 ヨリは眉間にシワを寄せて、「う~んとね」と話し始めた。


「昨日の夜、試しに料理番のおじさんたちに内緒で、魔力増幅だけかけてみたんだよね。そしたらホスさんが何かを使って調理を始めた」


「俺たちもそれは見た。何をしてるのかは分からんかったがな。だが魔力感知を付けなかったのは何でだ?」


 俺の母親はいつも両方一緒に付けていた。ヨリがそうしなかったのは何でだろうか。

 俺が訊いたら、ヨリは考えながらしゃべり出した。


「もしかしたら、無意識に使えるようになる可能性もあるかなと思っただけなんだけどね」


「無意識?」


「うん。私が調理する時って、わりと火魔法だとか水魔法だとか分けずに、こうなれって思ったことを無意識にやってる時があるんだよね。冷却と加熱って、正直魔法か付与かどっちでもいいやって感じでやってるし」


「ほう?」


「だから、もしかしたら無意識にこうしたいとか、こうなれって思ったほうが発現しやすいんじゃないかなと思ったんだ」


 俺は頷いて促す。「何を使うかではなくて、何をしたいか」という考えはしたことがなかった。


「だから、おじさんたちの真剣さにちょっと試したくなって、魔力増幅だけをかけてみたってわけ」


 なるほど。だから魔力増幅のみなのか。だが昨夕に付与して、今朝には10人中8人だ。尋常ではないだろう。


「それにしちゃ早すぎじゃないか?」


 俺の疑問にヨリも頷く。


「私もびっくりした。もしかしたら教えないで増幅だけした方が、覚えが早いのかもしれない。ソルたちにも教えずにやった方が良かったのかな」


「う~~~ん。俺は教える方法しかされてないから、判らんな」


 教えない方が早いかどうか、他のダンジョン組で試してみれば分かるんじゃないか?

 俺は思ったことを提案してみる。

 ヨリは頷いて「試してみていいなら、やってみる」と言った。

「どの組からにするか」という話になった時、ヨリが。


「え? 一気じゃ駄目かな?」


 と首を傾げて訊いて来た。


「いや、ダンジョン組は多い。いくらヨリでも一気には無理だろう」



 そう、ダンジョン組は多いのだ。

 各班が7人から10人で、全部で8班ある。

 粉ダンジョンには2班潜り、肉ダンジョンには早朝と昼間と夕方に分けて3班が潜る。そして塩ダンジョンの中層には夕方から3班が潜るのだ。


 塩ダンジョンの中層組が夕方から潜るのは、夕方からのほうがモンスター湧きが増えるからだ。

 初級ダンジョンでなければ出来ないことだろうが、そうする事でドロップ数を稼いでいる。

 逆に粉ダンジョンは夜になると湧きが一層少なくなる。

 肉ダンジョンは、人数が増えればモンスターも増える。だから一度に1班ずつだ。


 ソルの班が7人で、ターヴが元居た班は9人。後は10人ずつ居る。そしてロジたち5人の少年たちが塩ダンジョンの上層で塩を集める。

 合わせて81人だ。そこに俺とターヴが入り、83人。

 魔力増幅を付与されてるのは、俺たち10人と料理番10人の合わせて20人。

 残り73人に魔力増幅ができると言うのだろうか。


「ダンジョン組で付与を受けてないのが、後73人いるんだぞ?」


 俺は無理だろうという気持ちで言った。

 だがヨリは、うんうんと頷きながら。


「そのくらいなら大丈夫だと思う。私もいっぱい使った方が魔力が増えるから、助かるし」


 あ? いっぱい使うと魔力が増える? 


「そんなことは初めて聞いたぞ?」


 俺が初耳なことを伝えると、ヨリが教えてくれる。


「魔力は、使えば使うほど増えるよ」


「使えば使うほどと言うが……すぐ魔力切れで疲れちまうじゃないか」


「私は魔力切れしたことないな。疲れるって、動けなくなったりする?」


「だるくなるから、動きが鈍るな。身体強化に魔力も回せなくなるから、魔力切れを起こさないように節約して使うのが普通だぞ?」


 そう言うと、ヨリは「へええ~~」と完全に気の入ってない相槌を打ちやがった。

 そうか、ヨリは魔力切れを起こした事がないのか。

 ならばダンジョン組に付与をしてもらって様子を見たい。


「ヨリ、今日の出発前に皆を集める方法はあるか?」


 班ごとにさっさと行くから、いつもは集まったりしないのだ。


「それなら、お昼ご飯配るって集めればどうかな」


「それなら集まるだろうな」


 ヨリが作ったのだと言えば、絶対に集まるだろう。


「よし、それで叫びたくなったら叫べとでも言っておけばいいか」


 ヨリと段取りを決める。

 もちろん演説はソルに決まりだ。

 さてソルを捕まえねえとな。


 俺はヨリと一緒にソルを探して歩き出したのだった。






 +    +    +





 ソルはちゃんと捕まった。

 予定通りにダンジョン組を集めて配って、私がこっそり全員に付与をした。

 全員と言ってもダンジョン組の半分だ。早朝の班はすでに出てしまっていて、夕方から潜る班はまだ寝ているのだと、朝ごはんを作る時にホスさんたちが教えてくれた。


 ソルに「叫びたくなるかもしれんが、我慢せずに叫ぶように」と言われた皆は、「はあ?」って感じで 首を傾げていた。

 そして解散。各々、決まっているダンジョンに向かって出発する。





 私たちは粉ダンジョンの入口の近くで話をする事にした。

 肉屋たちがいつ来てもいいようにだ。

 そこに行くまでに、ソルが「そういえば」と肉屋と行くのはかまわないと全員が言ってたことを教えてくれた。

 ハッ! 私がソルと話さなきゃならないのってソレだったんだよ!



 皆には座ってもらった。ロジ少年以外は私より背が高いのだ。そんな大勢に見降ろされて話すなんてびびるのである。

 私は皆が座ったのを確認してから話し始めた。



「んーとね。昨日の夕方、料理番のおじさんたちには、魔力増幅だけ付与してみたんだよね。それでホスさんが何かを使えるようになったのは、揺らぎと魔力の渦を感じた人になら判ると思う」


 私の言葉に全員が頷いた。お? 全員判ってたのか。


「ホスさんは、肉を切る時、肉が動くのが切りにくくて嫌だったから、肉が動かないようにしたかった。そして肉に何かしたのかもしれないし、まな板に何かしたのかもしれない。そしたら肉はホスさんの願い通りに動かなくなった。そんでたぶん、包丁にも何かした。私は包丁の切れ味を良くする何かを付与したんだと思ってる。もしかしたら、水魔法とか風魔法で切ってたって事もあるかもしれないけど」


 私が考察していたことをずらずら言うと、集中して聞いていたソルたちの眉間に、シワが増える。

 ホスさんを思い出して考えているのだろう。


「もしかしたら、ホスさんは自分が魔力を使ってるのにも気付いてないかも」


 気付いてたら驚くなり騒ぐなりしてると思うしね。


「つまり。ホスさんは、この魔法を使ってって思ったわけじゃなくて、ただこうなれって思ったらそうなったんじゃないかな。肉が動いて切りにくかったから、肉が動かなくなればいいと思った。包丁の切れ味が悪くて切りにくかったから、包丁の切れ味が良くなればって思った。それでそうなった。でも自分の腕が上がったくらいにしか思って無さそうなんだよね~」


 そうなんだよ。めっちゃ普通にしてるもん。朝に魔力使ってたおじさんたちも。

 ロンさんが眉間に立派なシワを作って訊いてくる。


「だが、俺は身体強化を使う時は身体強化って念じるし、付与を使う時は付与だって意識してやってるぞ?」


「それはロンさんが付与はこうやって使うものだ、身体強化はこうやって使うものだ、って知ってるからだと思う」


 私は答えて続ける。


「私も戦闘中はわりとそうなんだけど、料理を作ってる時ってあんまり意識してない気がするんだよね」


「じゃあどうやって使うんだ?」


「あっためなきゃって時は、付与なのか火魔法なのかよくわからない時がある。冷たくする時もそう。もしかしたら、付与と一緒に水魔法使ってるかもしれない」


 ロンさんが「う~ん」と黙り込んだ。


「試しに昨日の夜ダンジョンに行って、魔力でいろいろ試してきたんだけど」


 私が言ったら、ロジ少年以外がギョッと目を剥いた。

 その後、「ああそういえば」って感じで落ち着いた。

 そうだよ。肉ダンジョンでソロやってたの知ってるはずだもん。気にすんな?!

 私は気にしない!


「魔力で弓と矢を頭に思い浮かべたら、できたんだよね。それで攻撃してみたら普通にいけたし。っていうことは、必ずしも魔法にわざわざしなくても、魔力だけで攻撃も防御もできるよってことなわけ」


 皆の首が傾いていく。眉間のシワはもう数が増え過ぎてて数えられない。


「治癒と探索と鑑定は、さすがにそれを意識してやるんだけどね。でも、身体強化と魔法と付与はどうかな? 攻撃を受ける時って、とっさにどうする? 剣で受ける? 腕で受ける? 魔法で壁作って受ける? これさ、剣に魔力を注いで受けるのは付与に似てるし、腕に魔力を注いで受けるのは身体強化にしか思えないし、魔力で壁を作って受けるってどう考えても魔法っぽいよね?」


「そういえばそうだな」


 普段付与と身体強化を使ってたロンさんが頷いてくれる。


「だからさ、魔法だ付与だって分けずに、ただこうしたいって考えた方がいいと思うんだよね」


「なるほどな」


 さっきから答えるのはロンさんのみになってしまっている。

 でもロンさんが解ってくれれば、皆が解らない時に教えてくれるだろう。

 皆の眉間のシワたちは、すごい頑張って寄っている。

 ロジ少年のは後でマッサージしてあげようかな。


「そういえば、ロンさんとユジ、付与って重ね掛けしてる?」


 話を変えて2人に訊く。もししてれば、的当てはもう達成してると思われる。

 重ね掛けは普通2つくらいまでだと、ロンさんが何かの時に言ってた気がする。


「いや、してないな」


 ロンさんがすぐに返事をした。ユジが頷く。


「昨日の的当て、あれ身体強化使ってないんだけど、気付いてた?」


 それには全員が「はあ?」ってなった。

 私はカラクリを教える。


「的に当てればいいんだもん。身体強化無くたって、付与だけであれだけできるよ?」


 ユジが身を乗り出して訊いた。


「どうやってだ?」


「まず槍に強化をかける。そんで命中をかける。貫通をかける。そんで高速をかけて投げるだけ。これすれば、後ろ向いて投げても当たるよ」


 ユジもロンさんもびっくりしている。

 まあ思い切り投げるところを見ていたのだ。身体強化を使わねば、あそこまでできないという思い込みなのだろうが。


「ね。付与ってわりと重ね掛けでなんでもできちゃうよ? せっかく魔力が増幅中なんだから、魔力切れなんか気にしないで、どんどん重ね掛けしてみ?」


 そうだよ。かなり万能なんだよ。そして今のうちにジャンジャン使って自分の魔力を増やすといい。

 なんと言ってもニルヴァス様のお墨付きである。私の魔力増幅、まず今の彼らでは魔力切れは起こさないそうだ。ハンバーグの時に言っていた。


「できない付与は弾かれるけど、言い方を変えれば出来る事もあるから、とりあえず思うように使ってみたほうがいいよ」


 付与組へのアドバイスは終わりだ。本筋に戻ろう。


「話を戻すけど。さっきの話でも言った通り、的に当てるって1つの事なんだけど、やり方はいっぱいあるよって伝えたいんだよね」


 ここでやっと皆が頷く。


「的に当てる方法は、何だっていい。そこまで走って当ててもいいし、私みたいに付与してもいいし、身体強化で投げてもいいし、もちろん魔法で補助してもいいし、身体を鍛えていっぱい練習したっていい」


「うん」と皆。


「相手はモンスターだから、モンスターに遠くから攻撃したいか、近付いて攻撃したいかで考えてもいいし、仲間との連携で考えてもいいと思う。私の魔力が付与されてる間に、やりたい事、どんどん試してみるといいよ」


 その言葉を締めに、男たちの眼光が鋭くなった。

 私が立ち上がると男たちも立ち上がる。



 あ、肉屋たちが来た。グッドなタイミングだ。

 私は手を振って肉屋たちに合図をした。

 近付いてくる肉屋たちに、「魔力増幅」とそっと呟く。

 さて自己紹介の場を設けるのは私の仕事だろう。

 これで肉屋たちの名前をしっかり覚えて、忘れている事実を隠蔽するのだ!

 うむ。今日の私は冴え冴えだな!



 ちなみに今日の私は一味違うのだよ。

 ニルヴァス様に「名前が覚えられない」と愚痴ったら、「髪の毛に名を付与すれば良いではないか」という、素晴らしい助言をいただけたのだ!


 さっそく知っている人の名前を付与してみた。まずは朝一に会ったホスさんに。

 できた時の感動を皆にも伝えたい!

 ロンさん、ロジ少年、ソル、ユジ、ターヴと知っている人全員にした。

 これで忘れないぞーーーー!!

 薄情な私、さよ~なら~~~~!!!!!(嬉泣)






 +    +    +





 粉ダンジョンの入口が見えてきた。

 そのそばではヨリが手を振っているのが見える。

 こちらも手を振って応える。

 横を歩くガザは、やる気に満ちていた。

 朝だってまだ早いって時間に家にドカドカ入ってきて、「行くぞ」と叫びやがるし。


 ヨリにダンジョンで会った日から、ガザはなんだか熱意がすごい。というかうるさい。

 目をギラギラさせてヨリに詰め寄るし、肉の燻製の出来上がりなんて、20日もあればできちまうってのに、10日も伸ばして言いやがるし。

 はあ。俺は頭がいてえよ、まったく。


 弟たちは、そんなガザに近寄らない。

 噛みつかれそうだからな。賢明だ。

 俺も出来れば放っておきたいが、親友としても共同作業者としても、放っとけねえ。

 まあ幼馴染だったのが運の尽きだったんだ。諦めてんよ。


 ヨリたちの所に着いた。

 ポルカの男たちは10人居た。その中にはロジも居る。

 いつも見る男たちの誰かだろうが、ポルカの男たちは多い。名前も知らなきゃ話をしたこともねえ。

 だから、顔見知りとはいっても、本当に見た事があるなって程度だ。


「はい、じゃあお互い名前を言おうか」


 ヨリが間に立って言う。

 ポルカの男たちはじっと見てきた。俺たちもじっと見ているからおあいこだ。


「じゃあ人数が少ない肉屋さんたちから、どうぞ」


 どっちも言い出さないから、ヨリがそう促してくる。


「ボイフだ。よろしくな」


 俺が言った。次は俺の右に居るガザだ。こいつはいつも偉そうだが、悪い奴じゃない。ちゃんと優しい所もある男だ。


「ガザだ。ボイフんとことはガキのころからの付き合いだ」


 そうそう、親友なんだよな。次は年齢順か? 一歩下がった場所にいる弟たちを見る。

 ああ、そういえば、誰の弟か判るように並んだほうがいいか。

 俺は、俺の弟2人を俺の左に並ばせ、ガザの弟をガザの右に並ばせた。


「俺の弟たちだ」


 言って弟たちに名前を言わせる。


「バルだ。よろしくな」

「サイダってんだ。よろしく」


 続いてガザの弟だ。


「ガザの弟のビエルだよ。よろしくね」


 ガザの弟はよくできた男だ。ガザは色男でモテるが、ビエルは甘い顔で優し気に微笑むのがいいと評判の優男。そして店を継ぐ長男は、美形で有名。モテ兄弟なのだ。俺んとこは……まあほっとけや。


 まあそんな感じで俺たちの方のあいさつは終わった。

 次はそっちだぞ、ポルカの男たち。





 +    +    +





 肉屋たちは、普通にあいさつをしてきた。

 1人偉そうな奴が居たが、俺たちを馬鹿にする素振りは見えなかった。

 肉屋たちが終わったなら、次はこちらの番だろう。

 俺が肉屋たちの方に進み出て言う。


「ソルだ。この班のリーダーだ。ロジが世話になった。礼を言う」


「よろしく」とか社交辞令じゃ言えない質なんで言わない。

 次にユジが進み出る。俺の横に立った。


「ユジ。ソルの相棒だ」


 そう、相棒だな。街のポルカに居る時からの相棒だ。

 次はロンさんが来た。


「ロンだ。よろしくな」


 さすがロンさんだ。「よろしく」って言える所が大人だと思う。

 順番など決まっていない。その後も適当に進み出て、名前を言っていく。


「ターヴだ」

「ミノ」

「ジルだ」

「シガってんだ」

「ノランだ」

「ビスだ」

「ロジ」


 最後にロジで10人だ。


「こっちは10人、そっちは5人。分配の話をちゃんとしておこうか」


 決まっているとしても、ちゃんと声に出して確認しておかなきゃな。

 俺が言ったら、肉屋たちの方も頷いた。

 俺たちはヨリを見る。


「私は、獲れたのを最後に皆で分ければいいと思うけど、どうかな?」


 ヨリの提案でいいと思うが。

 肉屋の方を見ると、肉屋たちが顔を見合わせて頷いていた。

 1人が言う。ボイフと言ってた奴だ。


「俺たちはそれでいい」


 俺が皆の顔を見回すと、全員が頷いた。

 俺も答える。


「俺たちもそれでいい」


「じゃあさっそく行こう」


 ヨリが言って、パーティーを組むことになったのだが。


「16人のパーティーなんて初めてだぞ」


 ユジが言った言葉に全員が頷いた。

 多くても10人だったからな。

 多すぎると部屋が狭くてモンスターとの距離が近くなりすぎる。

 配置を決めておかなければ、動けはしないだろう。

 俺たちとボイフたちがヨリを見る。


 ヨリは「う~ん」と考えて。


「とりあえず覗こうよ」


 と呑気にそう言ったのだった。





 +    +    +





 私は気高き貴腐人なので、密かにこの顔合わせを「お見合いのようだグフフ」と萌えながら見ていた。

 名前も無事付与し終えて、素敵な状況も拝めた私はハイテンションである。まあ押し隠すのは貴腐人のたしなみだ。

「グフフ」が貴腐人の笑いか?! という突っ込みには、「腐ってる方の貴婦人なんで!」とお答えしておきたい。

 35年生きてきて、こんな萌え状況、二次元でしか遭遇した事ナッシングだよ!


 や~、お互いを探りながらの自己紹介って、ホント妄想膨らむわ!


 パーティーを組む時に、皆がこっちを見てきた。

 モンスターがどこまで増えるのかも知りたい。私が先頭なら、16人の倍いようが平気だ。

 何匹湧いてるか確認したら、まず一掃して、そこで会議するなり、一度出て会議するなりでいいんじゃないだろうか。


 よってこう発言する。


「とりあえず覗こうよ」


 と。





お見合いでした。あ、間違えた。顔合わせでした…。


これからよく出てくるであろう人達の紹介を載せました。


<主な人物>

ヨリ…主人公。35歳。肉体年齢25歳。腐女子、時に貴腐人に。


ニルヴァス様…ヨリを連れて来たこの世界の神様。


ロジ…14歳のポルカの少年。ヨリに友人認定されている。


ソル…ポルカの頭領。20代。強い。そして責任感も強い。肉ダンジョンで死にかけたところを、ヨリの治癒で助けてもらった。


ロン…王都から来た元冒険者。付与と身体強化を元々使える。ヨリの魔力増幅により、探索を使えるようになった。


ユジ…ソルの相棒。肉ダンジョンの上層でヨリに拾われたうちの1人。ヨリの魔力増幅で、付与を使えるようになった。


ターヴ…塩ダンジョンに潜る少年たちの補助をしていた。右腕を負傷していたが、ヨリの魔力増幅のおかげで、治癒を使えるようになって治った。


シガ…肉ダンジョン上層でヨリに拾われたうちの1人。無口。背が一番高い。


ジル…肉ダンジョン上層でヨリに拾われたうちの1人。


ノラン…肉ダンジョン中層で怪我をヨリに治してもらったうちの1人。


ミノ…同上。


ビス…同上。


ボイフ…肉屋パーティーのリーダー。塩ダンジョン中層でヨリに助けられ、そのままボス部屋コースを体験した。


バル…同上。ボイフの弟。


サイダ…同上。ボイフとバルの弟。


ガザ…同上。料理に並々ならぬ興味を抱く。ヨリには釣りのターゲットにされている。


ビエル…同上。物腰が柔らかな優し気なイケメン。



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