31.ハンバーグを作ろう 【ハンバーグ】
ヨリのお料理教室です。
肉屋の男たちには手を洗わせた。もちろん私も洗う。
ここで流し台に石鹸ぽいものを発見。訊いたら、山に「泡の木」なるものがあるそうだ。
枝を切ると樹液が流れ出て、その樹液が固まるとこうなるらしい。
自由にとっていいそうなので、今度やりに行きたいと思う。
こちらに来てから「洗浄」でしか自分を洗っていない。そろそろお風呂に入りたい。
食卓を作業台として、まな板を出す。
そこに洗浄済みの玉ねぎ、人参、椎茸を出して。
玉ねぎの皮を剥いてもらって、その間に人参のヘタと椎茸の石突の端っこを切り落とす。
教えるためなので、身体強化は使わずに、ゆっくりやる。ってゆーか普通にやる。
肉を挽肉にするのには使うけども。
野菜を小さく切る。みじん切りである。
玉ねぎも人参も5倍大なので、使う分だけ切って、残りは収納にポイだ。
今回はハンバーグの中に入れる野菜を、炒めるのと炒めずに生のまま使うのと、両方教えようと思っている。
細かく切る方法を教えながら、まずは全員でひたすらみじん切りだ。
あまり細かくなりすぎても駄目なので、そこは気を付けてもらう。
みじん切りにした野菜を、2つのボウルに分けて入れる。
片方は置いておいて、もう片方を炒めるのだ。
フライパンを出し、コンロに載せて「点火」して「中火」にする。
そこに、ダンジョンで獲ったバラ肉の脂の厚い部分を切って入れる。炒め用の油を出すためだ。
油が出るのを待っている間に、パンを取り出した。
実はコレ、自分たち用に作っていたパン生地を異空間収納袋の中で「高温200度」を付与して焼いたものである。
薄パンや平パンでは心配だったので、わざわざハンバーグ用に持ってきたのだ。
焼き立ての匂いがして、今食べたいけれどもグッと我慢する。
「それは何だ?」
「なんだこの匂い」
「何だソレ」
はいはい。我慢できない? できないかー。
「しょうがないなあ」
パンを3個取り出して半分こして皆に分ける。もちろん私もいただく。
外はパリっと、中はふわっと。
パン粉用のパンだけ二次発酵の前に、水で濡らした手でなでなでしておいたのだ。
こうすれば二次発酵で他の生地より大きく膨らんで、パン粉にしやすいパンになる。
だが今は、普通に食べたい。焼き立てなんだもん~~~~!
焼き立ての匂いには抗えないのだ。
手でちぎって口に入れると、男たちも同じようにした。そして唸り声。
唸るのは美味すぎるから出るわけではないと思う。素人が作ったパンだからな。
思ったより美味い時にも、唸り声は出るものだ。
焼き立てってだけで許される料理は多いと思う。特にパン。
あああ~~、美味い! 皮が硬くて噛み応えがあるのがいい! そして焼き立ての香ばしさ! そして中の生地の甘み!
中の生地は舌に貼りついてきて、発酵で生まれる甘さがジワーッと浸みてくるのである。これが! これが美味しいんだ!
目を瞑って食べる者、観察しながら食べる者、一心不乱に食べる者。
特大鞄の男は、その観察しながら食べる者だ。
「これ、パンなのか?」と訊かれて、「その通り」と答えてやると、「これも教えてくれ」と言われた。
だがパンを焼くには窯がいる。どんな物か教えたら「窯ができたら教えろよ」と言われた。
作るつもりのようである。偉そうだが、子供のように念を押すものだから、微笑ましくなってしまった。
彼はたぶん、ダンジョンに潜るよりも料理に向いているんじゃないかと思われる。
何が獲れるかよりも、獲れたモノで何が作れるかの方に反応が強いんだよね。
食べ終わったのでまたパンを渡し、今度はそれを細かくちぎってもらう。
余っても次に使えばいいので、3個分やってもらった。
これでパン粉の用意は良し。
中火で温めていた脂身から充分に油が出たので、そのカスをどけて野菜のみじん切りを投入。
中火と強火の間にして木べらで炒める。塩コショウを少々振る。
この時、面倒な時は弱火と中火の間くらいにして、フタして放置とかよくやる。だがまあ今回は炒める。
ジュウジュウ炒めて、それをボウルに戻した。
「これが冷たくなるまで時々混ぜながら、放置ね」
さあ、モザイク修正の時間だ。
「はい、肉を今から挽肉にするよー」
牛肉と豚肉を出した。
それをひと塊ずつ、まずは小さい塊に切って全員でスライスしていくのだが。
そこで3人のうちの1人が一声。
「挽肉にする道具なら、店の作業場に行けばあるぜ」
む。あるのか。
そういえば腸詰があるのだから、あってもおかしくはないな。
「店の作業場ってどこにある?」
訊くと、それにはリーダーが答えた。
「山の方だ。後は言えん」
ほうほう。企業秘密だね。でもさ。
「今から行って、どのくらいかかるのかな」
「行きに30分。挽肉にするのにまあ10分。帰りに30分てとこだな」
「ここでやった方が早い」
時間を聞いて間髪入れずに返した。
近所みたいな事を言うから、期待してしまったではないか。
「挽肉は自分たちでやらなくていいって言うなら、私がやるよ」
時間も短縮できるしね。
私は牛肉をまな板の上に載せ、包丁を両手に構える。
「不壊」をまな板と包丁にかける。まな板と包丁には、私の力に耐え切ってもらわねばならないからである。
両方に「冷却」もかける。挽肉は手の温度でも鮮度が落ちて行くそうなので。
包丁には「鋭利」を足して、まな板の中心に「肉集中」をかけた。
挽肉にするのって、肉が周りに逃げてくのが一番イライラするんだよね。
なら集まってしまえばいいと付与したのだが、声に出すと違和感が。……まあいいか。
さてと。息を吸い込んで包丁を持ち上げ、身体強化をかけて。
「うおりゃあああああああああ~~~~~!!!!」
肉を叩き切る音が響き渡る。だがまあ私の声の方がでかいかもしれない。
さすがに「ホアタタタタ」と言わないだけの分別はあった。異空間部屋ではいつかやってみたいと思う。
鋭利を付けたおかげで、速い。そして引っかからない。切れない包丁だとこうはいかない。
肉屋の男たち?
いきなり叫びながら包丁を振り下し始めた女を見て、うん。引き攣って部屋の端っこまで逃げていたよ。
寄ってこられるより危なくなくていいと思うから気にはしないさ。いや本当に。
牛肉ができたら、次は豚肉をやる。
結局1人でやったので、まな板が2枚しか肉で汚れなかった。良かった、良かった。
それをボウルに分けて入れて、「冷却」と「時間停止」をかける。
時間停止、元の世界でも欲しかったな。
あんまりにも「冷却」ばっか言っているのが気になったのか、特大鞄の男が訊いて来た。
「冷却ってなんだ?」
ん? 冷却って言葉は日本語独自なのかな? 「冷やすって言えばわかる?」と聞いたら頷いてくれた。
「肉もそうだけど、挽肉はもっと鮮度が落ちやすいから、冷やす」
「時間停止は?」
「時間が経つと鮮度が落ちるから」
2つ目の質問には炒めておいた野菜をかき混ぜながら答える。男たちが「へ~」とか「ほ~」とか言っている。食品に対する知識はあまり期待しないほうが良さそうだ。
その後フライパンを洗って拭いて、コンロに「中火」で載せ、さっきと同じように豚の脂身を載せた。
ハンバーグ用の油を出しておくためである。
さてと。卵を器に割り入れ、フォークで溶く。
それを炒めていない野菜のほうに少し入れて、そこにパン粉を入れて木べらで混ぜる。
こうすると、野菜から出た水分と卵でパン粉がふやけるのだ。
最初はパン粉を牛乳でふやかしていたのだが、どうにも満遍なくふやけなくて、そのうちこうやるようになった。
パン粉がふやけるのを待っている間に、まな板をキレイに洗う。
そしてキャベツと人参とキュウリを取り出し、切る。村で作った浅漬けサラダを作りたいのだ。
今回はそのボウルを3つ用意して、それぞれの量を少なめにした。
1つには塩だけを入れて揉み込み、もう1つには塩と砂糖で、そして最後のには塩と砂糖に輪切りにした乾燥した唐辛子を加えて揉み込む。
そして放置だ。
唐辛子を使う上で一番気を付けなければいけないのは、何といっても「他を触るな」である。
唐辛子を触った手で、目や唇を触ったら大変痛い。水で洗ってもなかなか取れない。
道具を触って放置して、忘れたころにイタタタタ! ってこともあるかもしれん。
石鹸で手を洗いながら、
「死ぬほど転げまわるよ」
と、思い切り脅かしておいた。
ちなみに種はいつも使わない。種は私には辛すぎるのである。
激辛が好きな人は平気なんだろうが、私には恐ろしい代物だ。
「種のほうが辛いからね」
教えておいたので、何が起ころうが私のせいではないよね。
だがまあ牛乳の壺を1つ差し入れておいた。
辛い物には乳製品なのである。
「何だこれ?」
きょとんとした男たちに「牛乳」だと教える。
「そのまま飲めるけど、冷やしたり、熱くして飲んでも美味しいよ」
教えたが、その使い道をするために渡したわけではないのだ。
「飲む用はまたあげるから、これは唐辛子で何かあったら使うように!」
目に入ったら、これで洗え。
口の中が辛くなったらこれを口に含め。
口に含むのはマヨネーズかチーズの方が効くが、マヨネーズには酢がいるし、チーズはレアドロップだしで、譲ってあげられない。今のところは……であるが。
炒めた野菜をまた混ぜ返しながら、そこにパン粉を入れた。
卵はまだ後だ。完全に冷めてから入れたい。
先にパン粉を入れておいたボウルの方は、もう良さそうだと判断した。
そこに肉を入れる。
牛肉100パーセントでも、豚肉100パーセントでも美味しいが、今回は「合い挽き」を教えてみたいので、半分ずつ投入。
男たちは目を丸くして見ていた。
そこに塩とコショウを振り入れ、男たちに肉の匂いを嗅いでもらう。
ナツメグを入れると劇的ビフォアー&アフターなのを知ってもらいたいのだ。
「はい、ここでナツメグをいれる」
ナツメグのオレンジ色の壺をドンと出し、スプーンの先に載るくらいの少量を見せて、肉の上に振りかけた。
そして木べらで混ぜる。混ぜる。
ボウルを回転させながら、手早く混ぜた。
これは手で混ぜると鮮度が落ちるからでもあるし、手でやっても木ベラでやっても、混ざり具合に差が無いからだ。手に付いたのを、もったいないと頑張って取る手間が省けるので素晴らしく楽である。
この時、卵や野菜の水分でゆるいなと感じたら、そこにパン粉を投入する。
そして好みの硬さになるまで投入と混ぜるを繰り返すのだ。
まあ肉が足せれば肉を足すのだがね。
今回は少しゆるかった。肉はあるが、そっちはもう片方用なので手を出さずに大人しくパン粉を投入する。
卵が普通より大きかったから、入れ過ぎてしまったかもしれない。
混ざったら、はい。
また男たちに嗅がせる。
私も嗅ぐ。この匂い、大好きなんだよね。ああ~~~~癒される。
もうこのまま食べていいですか?! って毎回思ってしまうほどいい匂いなのだ。ずっと嗅いでいたい。
「匂いが全然違うな」
「ああ、なんていい匂いだ」
「このまま食えるんじゃないか」
一番最後の声に癒しを遮られた。気持ちは解る。解るのだが。
もしかしたら、この世界では生肉を食べても死んだりしないのかもしれないが、私の中の常識がストップをかけたい。
「生肉はやめなよ」
木べらをビシっと、言った男に向ける。
「解ってんよ」
生肉はこっちでも食べないか。良かった。「食え」と言われたくはない。
私は馬刺しや鳥刺しが苦手なので安心した。
次は形を作る。
「これを丸くしてくんだけど」
「丸く?」
まん丸じゃないぞ。
ボウルの中のハンバーグ種を木べらで6等分する。
1人1個の計算だ。
そのうち1個を木べらですくって。
「あっ!」
思い出した。手には油を塗るんだった。
そうしないと挽肉が手にくっつきまくって、形が作れないのである。
時々忘れて、手に載せてから思い出すんだよね。
今回は載せる前に気が付いて良かった。
油を出すのは簡単なのだが、ボスドロップなのだ。
それが無ければ作れない料理を教えるのは、どうなんだろうと考える私は、決断した。
「なっ!」
「おい、ヨリ?」
そう、私はバラ肉の脂の欠片を、握り潰した。
まあそう見えただけで、実は手を温めて脂身を少し溶かしただけである。
その脂身を他の5人にも渡す。
「はい、この脂身の油を手に塗って。自分の分は自分で作ってね」
身体を引きながらも特大鞄の男が手を出した。
その後にリーダーに「ほら、やれよ」と渡す。
特大鞄の男が急かしたおかげで、全員の手がめでたく油まみれになった。
再度、木べらで種をすくい、左手にボンと載せる。
それを、左手の指を駆使して、外側をまとめていく。
それから右手にかぶせて右手にベッと移し、左手にベッと移しを繰り返す。
空気抜きである。
「空気が入ってると焼いた時割れちゃうからね。こうやって抜くんだよ」
と教えてやる。
注意点は手早くやることである。
せっかく冷やしてここまで手を使っていないのだ。ここでのんびり触っていては、鮮度がどんどん落ちていく。
パパパパパパパパパパッとやってしまいたい。
回数とかは気にしたことが無いので、適当としか言えない。
彼らが作っていくうちに、そこは研究してもらいたいと思っている。
そして若干崩れてしまった外回りを直して平たい楕円を作り、脂身をどかしてもらったフライパンに置く。
中火のままである。
そうしたら、男たちの手に種を載せてやり、同じようにしてもらう。
慣れが必要だが形になったので、フライパンに置いていってもらった。
まずは中火で下を焼く。
フライパンに当たっている面の少し上に火が通ればひっくり返す。
赤い肉色が白く変わるのが目安だ。焦げ目は後で付ければ良い。
そうしてひっくり返したらフタをして、弱火よりも、もっと弱火にする。そして30分くらい放置である。
こうすると生の野菜までじっくり火が通りつつ、焦げ目も均等に付くのだ。
まあ焦げ目は火力によるのであるが。
私は小学校の調理実習で習ってから、ハンバーグの焦げ目について考え続けてきた。
片面を焼いてからひっくり返すと、なぜか焦げ目が同じように付かない。なぜか?
テレビの料理番組で、弱火調理の仕方を見て「コレだ!」と思った。
片面を焼く時に、上部にまで火が通ってはいけないのだ。
だから、最初に強火で焼くのだ。
しかし、強火で調理すると、肉縮みが激しいと言う。
ならば中火だ! 中火でフタをしないで焼けばいい。
焦げ目は後から強火で付ければいいのだ!
そういう試行錯誤を重ねて、今の焼き方が生まれたのである。
こだわりの焼き方は人それぞれなので、肉屋たちにはそこも伝えておきたい。是非自分の焼き方を見つけて欲しいものである。
焼き方も個人の自由、材料も個人の自由。ハンバーグって素晴らしい食べ物だよね! 考え出した人って本当にすごいよね!
どの食材でも、自分が美味しいと思う物を考え出した人には、いつも感謝をしている。
その人たちが「食べよう」と思ってくれたからこそ、私の生きている時代にその食材があるのだ。
彼らがそう思わなければ、その食材は無かったのだから、やはり感謝しかないな。
ひとしきり感謝を捧げて気が済んだ私は、もう片方のボウルにとりかかった。
炒めた野菜にパン粉を混ぜて冷ましておいた方だ。
冷めたことを確認して卵液を少し入れ、残りの肉を、ボンと投入。
もう1つのコンロにフライパンを出し、バラ肉の脂身を入れ中火でまた油出し。
後の手順は一緒である。
野菜に火が通ってるので、ひっくり返してフタをしたら弱火で15分にする。
これで焼き上がりは一緒くらいになるだろう。
全員で手を洗い、空いた道具を洗う。
これで後は待つだけである。
忘れないうちに頼んでおこう。
私はバラ肉を男たちに渡す。
収納袋から出し、10個渡す。
「これを、腸詰と同じように燻製にして欲しいんだけど」
頼んだら、リーダーが何か言いかけるのを制して、特大鞄の男が言ってきた。
「そういうのは受けてない」
ははは。リーダーが何か言いたそうにしているよ?
他の3人も驚いた顔をして特大鞄の男を見ている。
「そうなんだ。じゃあどうすれば受けてくれる?」
私にこう言わせたいんだよね。乗ってあげようじゃないか。
特大鞄の男は、リーダーそっちのけで言った。
「他のも教えろ」
なんだ、そんな事か。別にそのくらいなら労力でも無い。ベーコンの為なら快諾である。
「いいよ。じゃあいつにする?」
「俺たちはダンジョンに潜ったら1日休む。その休みの日だ」
「いつまで?」
「燻製は30日かかる。それまでだ」
燻製ってそんなにかかるんだね。
あれ、他の4人がまたギョッとしてる。
かからんのだろうか。
まあどうやって作るのか知らない私は、お任せの言いなりである。
「じゃあ予定を教えてもらわないとね」
どうせそのくらいは居る予感がしているし、よそに行っても祭壇ワープで来ればいい。問題は無い。
「ダンジョンには潜るのか?」
リーダーに訊かれる。
特大鞄の男は紙を出して、いそいそと予定を書き出しながら私の返事を気にしている様子だ。
「うん、たぶんロジたちと潜ると思う」
能力開発しないといかんのだ。
む? 肉屋もするか?
「一緒に潜る?」
思い付いたので訊いてみる。
男たちは顔を見合わせた。
「お昼と夜は、私がご飯作ってるんだけど」
「行く」
私が言うと、特大鞄の男がかぶせるように即答した。
まあ食いつかせるために言ったのだ。食いついてもらわねば困る。
他の男たちは決めかねていたが、リーダーがため息を吐いてから「行く」と言った。
何かを諦めてしまった感じだが、大丈夫だろうか。
他の3人は、そんなリーダーに続いてため息を吐いて、「行くよ」と。
1人、目をギラギラさせている特大鞄の男は、さっそく書いた予定を指さしながら、あーだこーだと時間を決めた。
私は「はいはい」と頷きながら、フライパンの様子を見に行く。そろそろだろう。
男たちも付いてくる。
フタを開けて両方を確認。
焦げ目が欲しければここで強火にするが、私は火が通っていれば気にしない。ふんわり派である。
肉屋たちには「自分で作る時は、好きにしてね」と言っておく。
あ、竹串がまだ無いわ。刺すやつは……無かったので菜箸を「分割」して縦に細く割って使った。
うむ。肉汁が透明だ。焼きあがったね。
お皿を出してもらって、どっちがどっちだか忘れないように、全員で確認してもらいながら載せる。
浅漬けサラダは小皿に分けて入れてもらった。
皆の真ん中にケチャップの壺をスプーンを入れて置く。
はい実食です!
まずはハンバーグを食べてもらった。
2種をケチャップをかけずに食べてもらう。
男たちは、私の食べ方を見てから食べるようだ。
フォークでひと口切って口に入れる。
うぬう。美味い。この美味さ、舌に浸み込んで来るようである。
肉だけ、肉と玉ねぎだけのハンバーグも聞くが、やはり人参も椎茸も入れた方が好きだなと再確認する。
特に生の野菜を入れた方である。
じっくり火が通った野菜たちと肉のエキスがお互いに浸み合って、甘いのなんの!
炒めたハンバーグも美味しいが、やはり生からの方が美味い。時間はかかってしまうがね。
ああ、おろしポン酢が欲しいよう。
男たちの「むむ!」「うむう!」「あにき、うばい!」「うばずぎる!」「うばい!」と言う声を聴きながら、ひと口分を切り、ケチャップを載せる。
それを「あーん」と大きな口で頬張った。
ああ、このケチャップ、美味い! 良いケチャップだよコレ!
ハンバーグと混ざると、最高に調度良い。
ハンバーグのソースって、合わないと全てを駄目にするからね。
本当はソースと混ぜたいが、酢と同じ理由でそれは出せない。
魔大陸にあるものを彼らだけが扱えば、なんだが問題が起きそうだし。
だからケチャップのみだったのだが、このケチャップは美味い。文句無しだ。
男たちはケチャップの味に驚いていた。
ケチャップは、そのモノだけで食べるものではないと解ってくれたようだ。
男たちの結論は、どっちも美味い。だった。
「パンが無くても焼けるけど」と教えておいたので、いろいろと試して欲しいと思う。
さて次は浅漬けだ。
口を水でゆすいで試食する。
唐辛子の入ったのを最後にしてもらって、他の2つを食べ比べてもらう。
「ね、違うでしょ」
砂糖が入っている方は、塩がとんがっていなくて野菜の甘味が際立っているのだ。
塩だけのほうも美味しいが、砂糖が入っているほうが、まろやかである。
そこを確認してもらってから、唐辛子のを食べてもらった。
「ん!」
「んん!」
「こりゃ美味い」
「ああ、いけるな」
コクコク。
男たちは唐辛子のを気に入ったようだ。
私は唐辛子のは時々でいい。辛いのを食べたくなるのが時々なので。
「この野菜、見た事がないが」
キュウリの事を言っているようだ。
「肉ダンジョンの中層で採れるよ」
教えてやったが、ピンと来ていない様子だ。
私の仲間は居ないらしい。
脇道の魅力を知らないとは不憫だな。憐れんでしまうよ、まったく…。
私は片付けを終えると帰り際に、もう1つのお願いをする。
「これ、挽肉にしておいてくれないかな。これでご飯作るからさ」
袋を3つ用意して、それぞれに牛肉と豚肉と鳥モモ肉を入れて渡す。
「別にかまわんが、挽肉にしたらここに入れておけばいいのか?」
「うん、すぐにね。頼んだよ」
「いつ渡せばいいんだ?」
そりゃ早いほうがいい。
「できれば明日の待ち合わせの時がいい」
「分かった」
リーダーは話が早くて助かった。
明日はソルたちと肉屋たちで、混合パーティーを組む。
帰って明日の昼ご飯と晩ご飯の準備をしないとね。
私は鼻歌交じりで街を出た。
時計を見たら夕方の4時半だった。おや急いで帰らないと。
晩ご飯の仕度をしなければ。
祭壇ワープ? 使えるけど使わないよ。いきなり村に居たら、忍者ではないか。
だから私は走るのさ。
ヨリは全く覚えていませんが、特大鞄の男の名前はガザで、リーダーの名前はボイフです。
他の3人は、作者も覚えておりません……。ごめんよ、調べておくから!
唐辛子は、乾燥してある赤唐辛子です。
皮より種が辛いと書きましたが、実はワタが一番辛いのだそうです。
ワタなんて物があるなんて知りませんでした!
不勉強ですみません><




