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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
30/91

30.街へ そして肉屋訪問 

今回はちょっと料理パートはお休みです。


街に戻って、あれこれします。


 街に着いた私は、まず市場を巡る。

 さつま芋を求めて徘徊するのである。

 前回買えた場所を回って、どんどん買う。

 大人たちの分も欲しいなとは思うが、とりあえず子供たちの分だ。

 大人たちは自分で食べるものを作れるが、子供たちはそうではないからね。


 うむ。300くらいは買えたかな。

 市場に行くと、あのおじさんを発見した。


「おじさん、野菜欲しいな」


 おじさんは私を見上げて、驚いた顔になった。


「お、おう。ねえちゃんか! 今度はどのくらいいるんだ?」


 ん? やけに驚き過ぎというか。


「ん~、人参、白菜、キャベツ、玉ねぎ、ジャガイモ、全部20個ずつ欲しいな。あとは、あの芋がまた欲しいんだけど……」


 野菜が並べられているラグを見渡すと、隅の方に山盛りになっていた。

 やったね! さつま芋だけは、いくつあっても困らない!


「おじさん、あの芋全部」


 私はビシッと芋を指差して言った。

 おじさんは、その芋と私を交互に見て。


「ねえちゃん、まだこの街に居たんだな。家畜買うって言ってたけど、買えたのかい?」


 ああ、驚いたのは私がもうこの街に居ないと思ったのに居たからか。納得である。

 しかし。言われてみて思い出したが、前回さつま芋を買う時、「家畜のエサ」だと言われて、「家畜買うから」と言ったような。

 あの時は家畜が何なのかも知らずに適当に答えてしまっていた。

 確か貴族の持ち物だとニルヴァス様は言っていたな。


「うん、ご主人様が買って、私がエサ係になったんだ」


 これなら無難かなと答えた私に、おじさんが「そうかい」と、さつま芋を売ってくれた。


 やった~~~! おじさんは今回、300くらい持っていた。

 さつま芋は直接、洗浄袋に入れた。他のものは斜め掛け鞄に。

 さて、次は木製所と製鉄所を探したい。

 鍋、フライパン、つまようじ、竹串みたいに長い串など、いろいろ作って欲しいものがあるからだ。


 とりあえず道具屋に向かった。

 袋も欲しいし、情報も欲しい。



「おう、お前さん。まだこの街に居たんだな」


 顔を合わせてすぐに言われた。

 この街に滞在する冒険者は居ないのだろうか。まあダンジョンでも見かけなかったしな。


「鞄がまた欲しくて。後は道具をいろいろ。付与して欲しいモノあったら、またやりますよ」


 店主がいそいそと袋の大きいのを持ってきた。

 付与して報酬をもらう。


 私は付与のかかっていない袋と鞄、鎌や剣、弓などを、ごっそりカウンターに載せた。

 店主は唖然としている。


「お前さん、こりゃ買い過ぎじゃないか」


「後で無いほうが困るんで」


 村の大人たちは、これからもっとダンジョンに入るようになるのだ。

 野菜を刈る鎌など、足りないくらいだと思う。


「そういえば剣に名前は付けてやったのかい?」


 店主が勘定をしながら訊いてきた。


 ハッ! していない! 忘れていた!


 何がいいか考えはしたが、思い付かずに放置していたら忘れていた。

 あんなに尽くしてくれているのに、申し訳ない気持ちだ。


「いいのが思い付かなくて」


 うん、本当に思い付かない。それは本当だ。

 付き合ってくうちに、ピンとくるのが思い付くんじゃないかと思うんだが、どうだろうか。

 安易には付けたくないんだよね。無理にも付けたくない。やはり自然と思い付くまでやめておこう。


「適当に付けたくないんですよね」


 そう言ったら、店主は嬉しそうに頷いてくれた。

 店を出る時に、訊いた。

 ここのダンジョンは、なんで冒険者が少ないのか。


「大陸の端だからだろう。王都からかなり離れているという話だし」


 大陸の端で、王都からは遠い。なるほどね。

 過疎ってる理由にはなる。

 納得して今度は道具を作ってくれる所が無いか訊いた。

  作って欲しい物を訊かれたので、細々した道具だと答えたら、木製所と製鉄所を教えてくれた。建物や乗り物など大がかりな物を作るのは、木工所と鉄工所だそうだ。

 道具屋のある通りを、このまま西に行くとあると言う。

 私は店主に「また来ます」と声をかけて店を出た。





 まずは木製所に行く。

 つまようじと竹串サイズの串と、串モノができるように少し太い串を、まずは100本ずつ頼んだ。

 まな板を50枚頼み、パンなどをオーブンから出すための、柄の付いたちり取りみたいなのも説明して頼む。

 木べら、お玉、フライ返し、菜箸も注文だ。どんな物か説明しても解ってもらえないものは、紙に書いて説明した。

 泡だて器も、細くて弾力性のある木の枝で作れないか試してもらうことにした。もちろん研究費は私持ちである。


 私の道具を渡してもいいが、作る人が居なければ壊れた時に困る。是非とも頑張ってもらいたい。


 同じ理由で製鉄所では、片手で持てるフライパンを10個お願いした。でかい鉄板も4枚お願いする。

 これは石板コンロの上に載せて使う用と、村の広場のコンロで使ってもらう用だ。

 魔法で加熱できない人は、あの石板コンロは使えないからである。

 鍋のフタも20個頼んでおいた。フタが無いと火の通りが悪いし、粉ふき芋を煽るのに無いと不便なのだ。

 そして包丁だ。ペティナイフくらいの先がとんがった物、菜切り包丁(四角いの)、後は肉屋が使っている肉切り包丁。それぞれ30本ずつ頼む。


 どちらの店でも、顔を出した時に、できた分だけお金を払ってもらっていくことにした。




 終わって、街のポルカに顔を出す。

 私はまず一番大きな家の子供たちを見に行った。

 まだ動き回る元気はなさそうだったが、私を見て笑顔になってくれた。

 うむ。笑顔に力が出てきたように感じた。


 壁のコンロにまたジャガイモスープを作る。

 煮える間に、持ってきた食料たちを一番年嵩の少年に渡した。もちろん焼き芋もの入った袋も。

 少年が荷物を持って部屋を出ていくと、治癒の小石を渡した少女と、市場で助けた少年が来た。

「ご飯、ちゃんと食べれてる?」

 と小さい声で尋ねると、2人とも笑顔で頷いた。

「また持って来たから食べて」

 可愛かったので頭を撫でながらそう言ったら、2人は頷いてくれた。


 どうして子供って頭を撫でたくなるんだろうな。

 妹の子供を思い出しながら、そう思った。



 ジャガイモスープと湯冷ましを、起きている子たちから順番に食べさせた。

 食べる強さ、欲しがる量、身体に入る力具合をチェックしたかったのだ。

 初日よりは、だいぶ力が入るようになったかもしれない。

 噛めなかった子供は、ちゃんと噛めるようになっていて安心した。

 家を出ると、外に子供たちが全員集まっていた。


 私が「ダンジョンに行く」と言ったとき、落胆した顔を見せた子供たちも居た。

「また来るよ」

 私が言うと、今度は皆が頷いた。




 ポルカを後にした私は肉屋に向かった。

 例の美味しい店に着く。

 店に声をかけようとして気付いた。


 肉屋の男たちの名前を、覚えていない!


 少し考えた私は、2軒の店を行ったり来たりしながら覗くという「気が付いたら声かけてね」作戦を実行に移した。

 いやまあ普通に不審者だよね。

 てっきり肉屋の中にいると思って、そんなことをしていたのだが。


「ヨリ」


 名前を呼ばれて振り向くと肉屋たちのパーティーのリーダーが道の先に立っていた。

 呆れ顔をしている。


「店の中で働いてるわけじゃないんだね」


 私が素朴な疑問を言うと、リーダーは大きく息を吐いて。


「店番じゃねえからな」


 と、教えてくれた。

 なるほどねっ!



 私はリーダーに連れられて、店の裏の道を歩いた。

 表と違って静かな通りだ。

 それにしても静か過ぎないか?

 気になって訊く。

 リーダーは答えた。


「今日は休日だ。仕事が休みの奴らが組んで、ダンジョンに狩りに行ってるからだろう」


 え? 街の人もダンジョンに潜るんだ。

 たくましいな街の人。


「きみたちは今日は行かないの?」


 私との約束で予定が変わってしまったなら申し訳ないな。

 そう思って訊いたら、リーダーが首を振った。


「街の奴らが来る日は狩りにならんからな。俺たちは、その日に休むんだ」


 ほ~~~~。


 ついでにダンジョンに冒険者が来る頻度を訊く。


「めったにこねえな」


「冒険者と話したりする?」


「いや、奴らは奴らでまとまってるからな。こっちもわざわざ声をかけたりしねえ」


「そうなんだ」


 ダンジョンでドロップする物は、冒険者とそうでない者とで情報共有はされていなさそうだ。

 私の中では、冒険者は宿とか酒場で呑んでいて、わりと街の人と交流していそうなイメージなんだが。


「冒険者って、この街だとどこに泊まるの?」


「冒険者なんてめったに来ねえし、旅人だって来ねえからな。飯屋に泊めてもらうしかないんじゃないか?」


「へえー」


 飯屋と聞いて、私が見た飲食店を思い出す。

 ここの飲食店は、肉と酒がメインのようだが、それらにしても品数が少なかった。

 メニューは肉を焼くか、腸詰と塩漬け肉を焼くか。それと酒だ。


 それにしても冒険者だけでなく旅人も来ないのか。…交易って概念があるのかすら不安になってきたな。






 連れてこられたのは、わりと大きめの家だった。

 リーダーに付いてそのまま玄関を入る。

「お邪魔します」と言うものなのか、そうじゃないのか悩んで、玄関で止まった。

 リーダーが振り向いて、「入れよ」と言ってくれるが……戸惑っている後ろでガチャリと音が。振り向く間も無く私の横を通って「おうボイフ入るぞ」とドカドカ上がり込む男。確か特大鞄を背負っていた釣りやすい男だ。その男が数歩進んでからピタリと止まり、振り返って私に言った。


「何してんだ入れよ」


 自分の家じゃないのに「入れ」はどうかと思うが、「お邪魔します」は言っていいようだ。


「お邪魔するね」


 言って入った私の手の平は汗でびっしょりだった。

 人の家にお邪魔する機会なんて、35年で数えるくらいしか無かったのだ。緊張するに決まっている。あー今ので、すごい疲れた…。


 入って特大鞄の男を追う。もちろん今は背負っていない。そういう覚え方をしているってだけである。

 リーダーと特大鞄の男は覚えているが、後の3人は顔を見れば「見た事あるな」程度だ。

 毎度の事ながら人を覚えない。いや申し訳ないとは思うけどね。



 廊下を曲がって、台所に出た。

 台所と四角い食卓がある部屋だ。

 他にも部屋があるのだろう。家の綺麗さを見て、なかなかいい暮らしをしているんじゃないかと推測した。



「さて、昨日ダンジョンで獲れたモノの使い方を、教えてくれる約束だったよな」


 特大鞄の男が、腕を前で組んで仁王立ちだ。

 そんな眼光鋭くしなくても教えるのだが。

 私は食卓に並べられている壺たちを見て、言う。


「一緒にやるってのもアリだよ」


 それには3人のうち1人が。


「俺たちがいきなりやって、できる物なのか?」


「肉切ってるんでしょ? なら野菜だって切れるよ。それさえできれば、後は難しくないと思うんだけど」


 だって今回は、ハンバーグなのだ。野菜をみじん切り、肉をひたすら叩き切る。

 うむ、切れればできるだろう。


 さあレッツクッキン!!






肉屋のお宅にお邪魔しました。

ヨリは友人が少なかったので、友人宅への訪問経験がほぼありません。


前回料理パートが長かったので、今回は短めにしました(笑)

次回は引きずりまくったハンバーグです!



ヨリがボイフのお宅に上がるあたりを修正しました。ちょっと解り辛かったので。(6月8日)


木製所は造語です。木工所と区別したかったので、こうしました。

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