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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
25/91

25.再会 皆で森に。  

皆さまありがとうございます!

皆さんのおかげで日間ランキングにランクインしまして、感謝感激です^^

一気に感想をいただくようになって、すごくびっくり&緊張しました。

応援してくださる方、本当にうれしいです。ありがとうございます^^



 異空間収納の出口を食材ダンジョンの上層の野菜部屋に出して飛び出した私は、時間が惜しいので「感知不可」をかけて天井を突っ走った。

 おかげで時計を見ると8時50分。良かった10分前行動には間に合った!


 ダンジョンを出て、周りを見回す。と。

 む? 何だあの集団。いやポルカの人たちだというのは判るのだ。

 ダンジョンの入口を出て左後ろの辺りに、人が群れている。座ってるのから立ってるのから。

 1、2、3、4……10人居る。これからダンジョンに潜るのだろうか。

 そそそっと移動して覗きに行く。ロジ少年居ないかなー。


 こういう時、後ろめたくもないのに腰が引けてしまう。もっと颯爽と「お待たせ」と登場する予定だったのだが。

 そういえば感知不可をかけたままだ。これでいきなり現れたら、盗み聞きでもしていたかと思われてしまうではないか。すぐに解いた。ふう、危なかったな。

 にじり寄る。いや普通に近付いて訊けばいいのだ。私は気が付いた。


「あの、ロジはいるかな?」


 声はそんなに大きく無かったと思う。なのに全員が、バッと一斉にこっちを見た。内心でビビる私。


「ヨリ」


 そんな私を救ったのは、愛すべき私の友人ロジ少年だ。男たちの影になってて気付かなかった。

 ホッとして近付く。


「ロジ、お待たせ」


 気を取り直して当初のセリフを言う。予定通りの「颯爽と」にはならなかったが。

 男たちが全員こっちを見ている中、ロジ少年がこっちに来る。


「ヨリ、皆が礼をしたいんだってさ」


 ロジ少年の言葉に、ん? と彼らをよく見る。ジーーーーーー。


「ああ、昨日ダンジョンで会った人たちかな」


 思い出した。食材ダンジョンで会ったのが7人揃っている。残りの2人は知らない。


「やっぱ会ってたんだ。その中のソルって人が俺らの頭領なんだよ。街のポルカのことも礼をしたいって」


 ほーそうなんだ。めっちゃ揺すられてたけど。…ソルを起こす彼らは容赦が無かった。上下関係ってより兄弟か親友みたいな関係に見えるね。

 男同士の友情に、ひそかに萌えた。……鼻息が荒くなっていたらすまない。


 私が頷いたら、ロジ少年が彼らに向かって手を振った。男たちが近付いて来る。

 男たちは、全員が穴開きあたりまえのボロボロの服を着ていた。半袖や袖無しから見える腕は、筋肉質と言うより骨と筋肉だけに見える。ズボンの裾から見えるふくらはぎも同じだ。


 ロジ少年は同じガリガリでも男たちほど筋肉が発達していない。数年経てばロジ少年もこんなふうになるのだろうと思わせた。いや、私がもっと肉を付けてやらねばな!

 そんなことを考えてる間に、男たちは私の前に整列していた。そしてソルが頭を下げると、他も頭を下げた。ロジ少年まで加わって一緒に。

 何事?! びっくりだ。ソルが言った。


「街の子供らのこと、礼を言う。昨日、助けてくれたことにも」


 ああ、ロジ少年に訊いたのかな。


「朝、ここにいる全員で行ってきた。礼を何回言っても言い切れない」


 見に行ったのか。勤勉だな。

 感心した。きっとその時間なら、たぶん私は呑気に朝ごはん中だっただろう。

 ハッ! 朝ごはんと言えば。


「ロジ、朝ごはん食べた?」


 ポルカではいつご飯を食べるのだろうか。1日1回というのは聞いたが、それがいつなのかは聞いていない。

 ロジ少年が首を傾げて言った。


「朝に飯なんて食わねえよ。1日1回の飯が、朝で無くなっちまうじゃんか」


 うおう。確かに! 朝食べたら1日中無いよりも、昼食べたほうがお得な気がするな!

 いや、夜に食べて満足したところで寝るのもアリか…。


「じゃあいつ食べるの?」


 訊きたかったので訊いた。こういうのは、後になればなるほど訊きにくくなるものだ。


「昼だよ。だいたい昼までダンジョンに入って、飯食ってまた入るかな。思うように狩れない時は戻るのめんどいから、ダンジョン中で食べることもあるけどな」


 そうなのか。じゃあ昨日は1食多く食べれたわけだ。訊きたいことを聞いてすっきりした。

 礼を言われて、いきなりご飯の話を始めた私に男たちは戸惑っていた。まあ当然である。


「えっと、子供たちの事もきみたちの怪我も、放っておけなかっただけだから、気にしなくていいよ」


 うむ模範的回答だ。実際そのままなんだが。

 ソルが食い下がる。仁義に篤い男。ポイントアップである。


「それじゃ気が済まない。金とか物じゃ礼はできないが、何かしたい」


 ふむ良かろう。では一緒に行こうではないか。


「じゃあ今から森か山に連れて行ってくれないかな。探し物を手伝ってくれない?」


 ソルたちはきっといい戦力になることだろう。ついでにちょっと実験といきたいところだ。




 私には、ニルヴァス様から聞いた事で試したいことがあった。

 小さい時からダンジョンに入り、1日の大半をダンジョン内で過ごすであろう彼ら。

 ダンジョンの物をずっと食べている。かどうかは不明だが、かなりポルカの男たちは魔力が上がっている可能性が高い。

 でも魔力というのは自分では気付きにくい。多いだろう私ですら、ニルヴァス様に「使える」と教えてもらえなければ今も使っていなかっただろう。まあ身体強化は使っていたかもしれないが。

 ということで。


 魔力に気付いて、魔法使いになってみないか実験! なのである。


 その1.誰にでも魔力があることを教える。

 その2.魔力を「魔力増幅」付与で増やす。

 その3.実際に使って魔力の流れを感知しよう。


 私自身は、魔力を感知しようとすると後頭部と首との境あたりの少し離れた空間に感じる。それが緩く回っていて、私が何かしようと意識すると回転が速くなる感じだ。集中している時など、引き絞るように高速回転している。戦闘中でも調理中でもそうだ。

 じゃあそれに気付けばいいんじゃない? と思うが、私だって言われて使って気付いたのだ。魔力が動かねば気付きようが無いと思う。


 ちなみに私には、魔法とスキルの違いが良くわからない。

 生活魔法と各属性魔法は魔法と判るが、「探索」「治癒」「鑑定」「付与」はそれぞれ後ろに「魔術」と付いている。だが使う時は魔法と同じように魔力を使うのである。

「身体強化」もスキルか魔法か。ニルヴァス様は魔力の配分だと言っていたので、魔法もスキルも結局、魔力配分なんだろうと思う。


「探索」の時はそれを自分の足裏から地面に押し流すようにしていると思う。そこから範囲や方向など、自由に広げていくのだ。

「治癒」は傷に魔力を送り込む。

「鑑定」は目からその物に魔力を投げる感じかな。

「付与」はそのまま配るイメージだと思う。

 魔法は発動する場所、大きさ、強さ、効果の長さとか、だいたいをイメージしてそこで魔力をパッと開かせる感じだろうか。


 やはり使い方は一緒だな。あれかな。魔法は目に見えて発動する物のことなのかもしれない。

 だから魔力が多いほうが発現しやすい。のだろうか。うむ考察終わり。




 目の前には森があった。街から一番近くて大きな森だそうだ。

 山はもう少し歩くとのことで、とりあえずここで探して、目的の物が無ければ山に行く、と来る間に決まっていた。

 さて探している物。それは…ネギと生姜を始め、食べられるものである!!


 おかしいと思わないかね? 食材ダンジョンに潜り、調味料ダンジョンに潜り、粉ダンジョンにも潜れる彼らが、なぜこんなにもご飯が食べられていないのか。


 完全に自給自足できるではないか。

 中層までで充分だ。小麦粉、塩、肉、卵、ハチミツ、コショウ。

 野菜はダンジョンの野菜部屋がある。まあサイズが普通サイズだったから、こっちのジャガイモなどと比べると雑草部屋とか思われてるのかもしれないが。

 なぜ全部売るのか。

 3つのダンジョンを踏破した私の疑問である。


 まあそこの辺りは、また見えてくることもあるだろうから置いておいて。

 まずはネギと生姜を探すのだ。他にも何かあれば嬉しいなと。


「ヨリ、ここで何を探せばいい?」


 おお、さっそく始めねば。ロジ少年に訊かれて、我に返った。


「ここで、食べれる物を探すんだよ」


 それを聞いて、全員がこっちを振り向いた。……うおう目がギラリ。






 私が森に入って行くと、後ろを男たちが着いて来た。ゾロゾロ。

 女が歩いて、その後ろを少年が歩いて、そしてその後ろを男たちが歩く。シュールだろう光景である。


 森に入って少し歩いた。さてこの辺りでいいか。

「鑑定」しながら歩いていたので、この辺り一面にネギと生姜、ゴボウ、山芋などが植わっているのが判っている。なんとニラまであるのだ!! 

 立と止まって振り向く。クールに見せて、実はソワソワ。


「ここには私が欲しい野菜があるんだよね」


 そう言って、しゃがみ込んで自分の周りにあるはたから見たら雑草に見えるモノを引き抜く。ちょこちょこ移動しながら、抜く。そして男たちの前に並べた。


 白ネギ、葉ネギ、ニラ、生姜、ゴボウ、長芋、里芋。


 里芋まであった! やったあ!!

 小躍りしたい自分を諫め、お願いする。


「これと同じのを今から探すんだけど」


 そこで男たちの顔を見回す。


「今から魔力増幅と魔力感知の付与を皆の服に付けるので、それで探してみて欲しいんだ」


 きょとん。無反応……でもないのが1人。39歳くらいの男がじっと私を見る。38歳以上に見えるが40歳には見えない。ので39歳くらいだ。なんで「くらい」と付けるのか。自分の目が確かだなんて、そんな自信はないからだ。

 私も見る。男も見る。キリが無いので逸らす。


 私はその男に見られながら、まずはロジ少年の背中に手を触れる。そして他の男たちにも。

 最後にその男のところに行く。相変わらずじっと見てるが、気にしないことにして手を触れた。

 まあ、触れたと言っても全員を突いただけである。「触れた」ってなんか上品に聞こえるね。


 そして説明。全員座ってもらう。


「魔法も、身体強化も、鑑定も、治癒も、全部。魔力が多ければ、使えるようになるかもしれないんだけど」


 一旦切る。はい、注目です。


「きみたち、覚えてみたくない?」


 全員フリーズ。今度はあの男も。

 その後、ロジ少年から「ヨリみたいに強く速くなりたい」と希望があった。

 そしたら、他の男たちも「治癒覚えたい」「魔法使いたい」のリクエストが。


「さっきそのために魔力を増幅させたからね。コツを教えるから、やってみようか」


 即席魔法教室の誕生であった。


 ん? あのじっと見てくる男は、相変わらずじっと見てくるよ?

 言いたい事があるなら、早く言って欲しいな。うん。




 各々がやりたい事の確認をした後、散ってもらった。

 私は「探索」と「魔力感知」と「鑑定」を同時発動させながら観察だ。

 もちろん私も作業する。突っ立って見てるなんて怪しいじゃないか。


 白ネギを抜いていたら「探索」の中で、ゆらりと魔力が動いた。

 その直後に、魔力を感知した方から小石が飛んできたが、そのくらいなら身体強化を使うまでもなくキャッチである。元ソフトボール部を舐めるなよ?

 石が飛んできた方を見ると、あの男がこちらに歩いて来ていた。

 その男を視界に入れながら、小石を鑑定する。「盗聴不可」だ。


「皆には聞かれたくない話かな」


「あんた、鑑定持ちだって本当だったんだな」







39歳の男。私の中では、藤原啓〇さんのお声キャラです。


スラムの人たちと森へピクニック。ではありませんでした。


なぜ39歳なのか、加筆しました。


山芋を長芋に変更しました。

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