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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
20/91

20.食材ダンジョンのボスは。  

 お食事中の方、もしくは油ぎった虫が苦手な方は、ご注意ください。

 ********************************************

 20.食材ダンジョンのボスは。



 驚きすぎた3人は、さながら石になっていた。

 命の現場は一秒が大事なのだ。固まってる場合ではない。私は身体強化を最大にしてローブを脱ぐ。例のアレをやるのである。

 場所が判らなければ案内してもらわねばならないが、私には判っているので必要ない。ゆえに異空間収納に3人を放り込んで、肉たちは放置で向かう。

「感知不可」をかけて天井を全力で走る。手遅れになれば治すことができない。私が何とかできるのは、生きている時だけなのである。だから急いだ。


 私が本気で走れば3分とかからなかった。「探索」で見つけた4人がいる場所に着くと、そこは上層で見つけたのと同じような、中層の3層と4層の間の通路であった。ここならモンスターに攻撃されない。うまく避難できたものである。

 そこに男が4人居た。3人は座り込み、1人は横たわっている。

 傍まで行って「感知不可」を解く。


「…誰だ?」


 音も無く忽然こつぜんと現れた私に、座っていた3人のうち1人が気が付いて言った。それで気が付いた他の2人も、怪訝そうに見てくる。

 それに答えず、ローブを脱いで振るった。

 男が3人、立って固まったまま出てくる。


 それを放置して、私は横になっている1人の傍に行った。

 両腕の骨折と、頭を強く殴られたようで鼻血が出ている。意識は無いようだ。

 緊急なので即「治癒」をかけた。5秒くらいで魔法に反応が無くなる。

 どうやら症状が重ければ、治癒にも時間がかかるらしい。今まで重症だった人を治したことが無かったので気付かなかった。


 横になっていた男は、安らかな寝息を立てて寝始めた。

 私が治療している間に、男たちが周りに来ていた。全員が横になっている男の様子を心配そうに覗き込んでいる。

 治ったことが解ってないようだったので教えてやる。


「治ったよ」


 教えてあげたのに、全く彼らは信じていないらしく。


「おいソル! 起きろ!」


「ソル! 返事しろ!」


「ソル! ソル!」


 名前の大合唱&身体を掴んで揺する、揺する。

 気持ちよく寝ている人にする仕打ちではないと思ったが、本人から「大丈夫」と聞かなければ安心はできないのだろう。気持ちは解るので、ソルという男に同情しつつも見守る私。


「ぅ…ううん?」


 可哀想なソルは目覚めた。すごくうるさそうに。


「せっかく気持ちよく寝てんのに、何邪魔してくれてんだ」


 可哀想なソルは…めっちゃ三白眼で皆を睨んだのだった。




 三白眼のソル。彼の名は、仲間の大合唱により珍しく私の脳内に刻まれた。

 この7人のリーダーは、どうやらソルらしい。

 ソルが目覚めた後、彼含む全員が喜びに沸いた。他の3人も「治癒」したら、また喜びに沸いた。

 その後お約束の自己紹介が始まりそうになったが、私は時間が惜しいのでその空気をぶった切る。


「悪いけど、下層に行きたいからここで別れる。全員でなら戻れるね?」


 いつも来ているベテランだろうから、そこはあまり心配はしない。ただ、ボロボロの武器だけは気になる。

 頷いた全員の顔を見渡して言う。


「じゃあ皆、剣を前に出して」


 全員が困惑。


「いいから剣出して」


 再度語気を強めて言うと、まだ困惑しながらもソルが出した。後の全員も出す。ソルが出した剣は根元から折れていた。彼が瀕死だった理由だろう。


「修復」「鋭利」「強度強化」「不壊」「自動治癒」


 5本をまとめて置いてもらった私は、一度に付与した。彼らにも何が付与されたか判るように声に出した。

「自動治癒」は彼らの傷を治すように。途中で死なれでもしたら意味が無い。

 剣のヒビと欠けが無くなり、新品のように切れ味鋭く見える。ソルの剣も無くなった剣身が戻り、他の剣と同様輝いていた。


「これで心配なし、と」


 さて終わったとばかりに立ち上がった私に、ソルが慌てて訊いた。


「なんでここまでしてくれる?」


 そういえば言ってなかったな。


「きみたちに何かあれば、ロジが悲しむから」


 ロジと出会っていなくても放っておけなかっただろうが、怪我人がいると知ったときに頭に浮かんだのがロジのことだったので、一番の理由がそれだ。


 彼らを背にして通路内を進み、彼らの視界から消えたところで、また加速した。

 壁を使って天井に駆け上がり、ひたすら天井を駆け抜ける。中層モンスターは無視だ。上層と同じような脇道もあったが、そこも後回しにした。

 下層に入ってもそのまま駆け抜ける。下層モンスターも脇道も無視である。


 なぜって? まずはボスを倒す。あの7人がダンジョンを抜ける前にボスを倒すのだ。

 1人に8匹ではなく、1人に1匹という事実が判明したからね。今ならボスを倒せばドロップが+7に! どっかの通販番組の煽り文句のようだと笑えた。

 




 10分後、ボス部屋の前の部屋で停止した。さすがに中も確認しないでいきなり入るのは抵抗がある。

 そこには上層にいた牛と、似ているモンスターが2種類。胸がある牛と、胸があって腕が4本ある牛だ。それぞれが8匹ずつ、合わせて16匹だ。


 鑑定すれば名前は判るだろうが、ここのダンジョンのモンスターは「牛」「豚」「鳥」でいいような気がしているのでやめた。

 部屋は上層の倍の広さはあって、足元には相変わらずの下草だ。

 私が止まって姿を現したとたん、近くの牛がこちらに顔を向けた。上層より反応が格段に速い。


 私はずっと剣を抜いて走っていたので抜剣の手間は必要ない。近くの3匹を剣で仕留めて残りを範囲攻撃する。さあ何が出るのか…ん? 茶色い壺だな。だが今までよりもでかいか。あそこに見えるのは黄緑色の壺…少し小さいか。…ん、あれは壺でも瓶でもないな。四角くてクリーム色だけど…まあいい「鑑定」だ。


 ん? 茶色い壺は「牛乳」? 黄緑色が「生クリーム」!! あの四角いのが「チーズ」ううう?!


 私はささっと近寄ってチーズを確かめた。下層ではバシャッ! が無かった。ドサッ! だけだった。瓶や壺は洗えばいいとして、血まみれのチーズを食べたくないのは神様も同じというわけかな。

 牛乳壺が持ちにくかったので、その都度ローブで「異空間収納」に送った。他もどうせ脱いだついでなのでそうする。

 16個中、8個が牛乳で7個が生クリーム、チーズが1個だった。レアドロップはチーズに決まりだ。帰りにいっぱい狩ろう。

 さてボスボス。

 私はやる気充分でボス部屋に足を踏み入れたのだった。






 おおう。

 私は今、非常に困難な状況にいる。

 ボス部屋に入ってすぐ見たもの、それは…超巨大〇キだったのだ!!!!!!

 あたたかくなると台所に出るようになる、アレだ。

 カサコソと暗闇を這い回る、アレなのだ。


 私は弱くはない。アレを目撃すると仕留めるまでは気を抜かない。

 左手に厚めのチラシ、右手にハエ叩きを持ち、アレの尻方向から忍び寄り、手首のスナップで軽く叩いて落とす。

 そして弱ったアレをハエ叩きでチラシの上に寄せ載せ、その上でさらに動かなくなるまで軽く叩く。

 それからチラシに畳み込んで思い切り叩いて止めを刺すのだ。


 なぜそこまで手間をかけるのか。それはもちろんゴ〇汁を見たくないからだ! 壁や床に飛び散らせたくないからだ!! 潰れた〇〇を見たくないからだああ~~!!!

 …解ってもらえただろうか。


 私は塩ダンジョンのときと同じように、突けばいいと思っていた。もしくはモノにした魔法攻撃たちでなんとかなると。


 しかしどうだろう? 突けばどうなる?

 かかるだろうがっ?!

 魔法攻撃で斬ったり、刺したり、削ったりしたらどうなる?

 見えるだろうがっ?!

 焼けばいい?

 〇キの焼ける匂いなぞ誰が嗅ぎたい?!

 …まあそういうわけなんである。


 倒し方に悩んで、私は時間を稼ぐべく最高速でボス部屋を走り続けているのである。

 うーん。うーーん。う~~~~ん。

 考えに考えて、やっと私は思いついた。凍らせればいいではないか! と。

 アレを全部凍らせてしまえば、たとえ切っても汁は出ない!

 倒し方が決まってしまえば後は実行するのみだ。私はアレの上まで天井を駆け上がり、イメージを固めるとジャンプと共に思い切り魔力を込めて打ち出した。


「凍れぇええ!!」


 願いが強すぎて声に出さずとも発動するのに、叫んでしまったよ。ははは。

 アレは瞬間冷凍された。しかしまだ生きているもよう、アイテムにならない。むむ。

 私はアレからできるだけ離れて立ち、氷の槍をアレの体内に打ち込んだ。よし!


 絶命したアレがドロップしたものは、でっかい瓶だった。透明のでかい瓶。その中には黄色い透明な液体。

 あーーー「鑑定」したくない。

 例のアレでこれ。黄色い透明な液体なんてホラ、あれくらいじゃないだろうか…。


 ハチミツじゃないよ。ハチミツは肉屋たちが獲れるんだものボスじゃないさ。

 鑑定したくない瓶が8つと、氷砂糖と同じ大きさの大袋が8個。こっちはなんだろうか。

 大袋の誘惑に勝てずに、私はついに「鑑定」してしまった。


「お、やったあ!」


 大袋はニンニクであった。ニンニクはイタリアンには欠かせない。肉とも野菜とも相性がいいので大好きだ。しかしだ。もう片方。もうお気付きの人もいると思うんだが。目に入れたくないのにニンニクと一緒の視界にあったものだから、見ざるをえなかった。その名も。


「植物性油」であった。


 油虫から油って、シャレなのか意地悪なのかどっちなんだろうか。ニルヴァス様のことだから、シャレのつもりだと思うんだけどさ。はあ…。


 植物性油は使う。揚げ物には必須だ。油無くして揚げ物は出来ない。ハンバーグだってフライパンに焦げ付かない。炒め物だって油が無いとできない。あの神の調味料、マヨネーズだって油ありきだ。

 そう考えると油も神の食材なのだがしかし! よりにもよってアレだよアレ! 抵抗ありすぎるっつーの!! まあ使うけどね! 使ってもいいよね?!


 私は目に浮かんできた涙を、ローブでグッッと拭いたのだった。





 ************************************************

 食材ダンジョンのボスはバカでかい〇キでした。ドロップしたのが「植物性」であったのが、せめてもの救いだと思います。




「自動治癒」は剣に付与していますが、効果は人に対してです。


わかりづらくてすみませんでした。


わかるように加筆しました。

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