19.不思議 そして食材ダンジョン
まだまだダンジョンです。
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19.不思議 そして食材ダンジョン
ロジのその言葉を聞いて、俺たちも「確かにそうだな」と頷いた。
黒砂糖も砂糖も、何かに使えそうかなと思った唐辛子でさえも、実は使い方を知らない。
名前すらも知らなかったのだ。
「そういえば、なんでヨリはそんなに知ってんだ?」
肉ダンジョンに時々肉を獲りにくる冒険者たちも(本当に時々だ)、ここの塩ダンジョンでは塩とコショウしか集めない。
肉と卵と塩とコショウと小麦粉とハチミツ。ここで冒険者が獲ってくのはそれくらいだ。
ヨリは確実に噂に聞く上位冒険者だとは思うが、どうもいつもの奴らとは違う。
冒険者としゃべるのなんて初めてだから、どう違うと訊かれても「人懐こい」としか言えないが。
「ん? 私は言うなれば食材ハンターだからね。」
ヨリの答えに、なるほどとなる。冒険者の世界は解らんから、そんなのも居るんだろう。しかし、透明で無い壺の中身が解るなんてのは…。
「なんで壺の中身が解るんだ?」
「まあ鑑定持ってるし」
これにはびっくりしちまった。
俺たちがコショウを「コショウ」だと知ったのは、肉を卸していた貴族が「コショウ」が欲しいと言い出したからだ。俺たちが「黒い粒が入った小さな瓶」がそうだと知ったのも、その時だった。
見ても解らない物の名前をどう知るのかと訊いたら、王都に居る「鑑定持ち」に見てもらうと教えてもらったのである。
つまり、ヨリはもしかしたら王都の…?
「ヨリは王都から来たのか?」
訊いたら、ヨリがびっくりしたように俺を見た。
「王都ってどこにあるのかな?」
逆に訊かれた。
まあ実は俺も知りゃしねえ。隣近所の街ならわかるが、遠くだって聞いてる。そんな遠くには用なんてねえ。そうだろ?
+ + +
肉屋たちのリーダーに、いよいよ「なんで?」系の質問をされた。
まあ来るよね。なので、私なりに行動が不審でない答えをした。
冒険者なのに宝飾品より食材獲るって、「食材ハンター」しかない。もしかしたら今この世界でそう言った瞬間、そんな職業が生まれたかもしれないが。
そして「鑑定」持ちだと言ってみる。隠さないほうが話が早いかなと思ったから。…驚かれた。
「王都から来たのか」と訊かれた。じゃあ「鑑定」持ちは王都にしか居ないほど少ないってのが常識なのだろうか。まあ確かにこの辺にもいるなら、食材の名前がもっと皆に知られてると思う。
むん。常識知らないと、訊きたいことも訊けないな。
そしてだ。訊きたい事といえば。
肉はダンジョンでしか獲れないと知ってから、私には激しく気になっていることがある。そう、じゃあ「家畜」って何だ。
さつま芋は「家畜」のエサっていうのがここの常識らしい。私は市場に肉があったから、じゃあその「家畜」たちが肉にされるんだなと思っていた。だけども肉はダンジョンで獲れると。…私の頭の中では、ダンジョンから捕まえられた牛や豚が連れられて出てくるイメージだ。
でもダンジョンでモンスター倒すと砂になる。そこにドロップアイテム。じゃあ砂の中に牛とか豚がモーモーブヒブヒ現れるのだろうか。すごく訊きたい。でも、訊いたら思い切り不審がられるだろうな…。
まあそんなことをつらつら考えながら分配した物たちを鞄に入れていく。
入れながら訊いた。
「ねえ、もしこの後上層のレアドロップ手伝ってくれるなら、今日のドロップ品の使い方も教えるけど、どうする?」
肉屋たちは入れる手をピタッと止めて言った。
「「「「「やるに決まってるだろ!」」」」」
うむ、大変いいお返事であった。
まあそういうことで、中層にはもう用が無いので全員の服に「感知不可」をかけて突き進んだ。私の付与魔術に安心感を得ていた彼らは、今度はごねずにさっさと歩いた。ロジ少年は恐る恐るだったので、私と肉屋たちで挟んで進む。
無事上層にたどり着き、「感知不可」を解除して進み始めると、なんとまあげっ歯類が7匹一気に湧いてくれた。やはり人数は必要だなと実感だ。
悪いが効率重視なので「鎌鼬」で範囲攻撃する。
最初のドロップは塩の壺のみであった。しかし私は落胆しない。レアドロップとはそういうものだ。私は3日間レアドロップを待ったこともある猛者だぞ? まあゲームの中だけであるが。
あの時は「まだ出ない」「えっと私は1日目で出たけど」というやりとりを、ギルドメンバーやフレンドとやったものだ。うむ懐かしいな。
まあそれだけ幸薄い私ではあるが、下層と中層をやった感じそこまで出にくいということはないだろうと思っている。ここから始めて出口までには、1つくらいはドロップするんじゃないかなと。
そんなことを期待しながら突き進むも、なかなか出てくれはしなかった。もう上層も半ばまで来ているというのに。
ここから上になるとポルカの子供たちが来たり、町の若者が自分家用に獲りに来るというので、この階層と下の階層を行き来すべきだとリーダーから助言をもらった。言葉に従い、この階を端まで行ったら下の階に行き、下の階をやったら戻ってくる計画にした。
それを3回ほど繰り返した下の階の終わりの部屋で……。
「「「「「「「でた~~~~~~~~!!」」」」」」」
まだかまだかと焦れてきた全員の叫びが重なった。
それは壺とは違って透明な瓶に入っていた。そして中身は白い粒。「鑑定」
…は? え? なんでコレ? これって調味料だっけ?
驚愕のその中身は。……「白ごま」であった。ん、んんんん~~~~?
白ごまは確かにそれのみでは食べない。和え物にかければ味が良くなり、肉団子のタレには欠かせず、坦々スープ鍋にも大量に使う。
んう? こうメニューを思い浮かべてみると、なんだか調味料としてしか使ってないぞ私。結論。白ごまは調味料だった。新事実発覚である。
新事実に再び驚愕していた私に、肉屋たちが「それは何なんだ?」と訊いた。私は「白ごまだよ」と教える。
「どうやって使うのか」という質問には、少し悩んだ。だって和え物もタレも、醤油があってこそなのだ。醤油は手に入る手段を確保してからでなければ、無くなるのが怖くて渡せない。
なので今ある調味料でということになると、私には確信できる使い方が無いのである。
「そのままでも潰しても使えるよ」としか言えないが、「塩と相性がいいよ」とは言っておいた。ごま塩、美味しいからね。
でもそれをジャガイモや肉に振りかける気にはならない。もしかしたらそれが好みの人もいるかもしれないが。
ああそうだ。パン生地に混ぜるとプチプチして美味しいかな。思いついたので言っておいた。
さて、そろそろ外に戻るかね。
+ + +
俺は戻ってきた。ダンジョンの入り口に。
やっとレアドロップの「白ごま」というのを拾うことができたから、俺たちは入り口に向かってネラを倒しながら登ってきた。
最初の1つを出すのに、あんなに時間がかかったのに。…ここに来るまでに4つも拾えたなんてなあ。
途中でポルカの仲間に会った。俺たちを見て、めっちゃびっくりしてた。目は合ったけど、しゃべれないみたいだったから手を振っておいた。
そういや皆にはダンジョンに潜ることは言ったけど、誰かと潜るとは言ってなかったことを思い出した。話せば長くなっちまうし、そうすりゃヨリを待たせちまうと思ったんだよな。
説明は今日の夜、村に帰ってからでいいだろう。まあその説明がうまく伝わるといいんだけどな。
ダンジョンの外に出た。外はまだ薄暗くなってきたばかりだ。これなら充分、暗くなるまでに村まで帰れる。分配された塩も鞄に押し込んだ。白ごまはヨリが1つ、残りは肉屋の連中がもらっていた。
肉屋の連中も帰るようだ。ヨリと何か約束してから俺にも手を振って街に向かって行く。
ヨリに訊いた。
「何を約束したんだ?」
「ん? 今日獲ったやつの使い方をね、明日の午後に教えに行くことになったんだよ」
柔らかく笑んだヨリは、今日の収穫に満足できたようだ。
「ロジも来る?」
塩がたくさん獲れたが、「一度に売ると怪しまれるだろうし買い叩かれるようになるぞ」と肉屋の連中が教えてくれたから、ちょっと明日はのんびりしようかなと考えていた。行く時間はあるだろう。
時間はあるがこのナリじゃ、ポルカのやつだってすぐバレちまう。ヨリはまあ「気にしないよ」と言うだろう。あの肉屋の連中も、もしかしたら気にしないかも知れねえ。でも街の連中はそうは思わない。パン屋のおばさんは見逃してくれるだろうけど。だから。
「俺はいいよ」
俺はそう言う。
始めて食べるだろう料理は気になったけど。
肉屋の連中も優しくていいやつばっかだったけど。
「じゃあ明日の午前は付き合ってくれる?」
ヨリが訊いてきたので頷いた。
「ねえ、肉が獲れるダンジョンてどっち?」
「明日は肉獲りに行くのか?」
ヨリに肉ダンジョンのことを訊かれたから訊いた。肉ダンジョンてのは、肉とよく判らないモノしかドロップしないから、宝飾品目当ての冒険者からは「ゴミダンジョン」て呼ばれてるとこだ。肉はその上層と中層で獲れる。ポルカの大人の稼ぎ場でもある。
「時間もあるし、今から行ってみようと思って」
目を剥いた。元気過ぎんだろ?! 俺なんてもうへとへとだってのに。
肩を落とした俺に、ヨリが「大丈夫だよ」と言う。
「何が?」と首を傾げたら。
「今度は無理に連れてかないから、ロジは安心して。ちょっと確かめたいことがあるだけだから」
そういや途中からは無理やりだったな。諦めてからが長かったから、俺は忘れてた。
俺は塩ダンジョン入り口から少し出たところに座って。
「さっきダンジョンの中にいたやつが出てきたら一緒に帰るから、ヨリだけで行けよ。俺はもう今日は無理」
そう言って肉ダンジョンの方向を教えてやった。
ヨリとは明日の朝9時に肉ダンジョンの前で待ち合わせをして見送る。うん、すぐ消えちまったよ。
どうやって9時だって判んのかって? ボスを2度目に倒したときに、分配で時計もらったんだよ。ヨリが「絶対必要だよ」って言うからさ。
もちろん使い方なんて解んねえから、ヨリに「この針がここに来たときね」と教えてもらった。
「よく判らなねえ」と言った俺に「時計は慣れるものだから、使ってれば解るようになるよ」と。まあ早めに行っときゃ大丈夫だろう。
その時計はボスのドロップだけあって持ってると目立ってしょうがねえ。使わねえときは異空間収納に入れてるのだ。
「明日の9時か」
俺たちの村は肉ダンジョンのちょっと向こうにあるんだよな。近くてちょうどよかったぜ。
明日は何するんだろうな。俺はそれを考えると楽しみでワクワクぜずにいられなかった。
+ + +
塩ダンジョンを出て肉屋たちが帰って行った。外はまだ薄暗いていど。
どうしても知りたいことがあったので、ロジ少年に食材ダンジョンの場所を訊いた。「肉ダンジョンは~」そう言って指をそちらに向けて教えてくれる。食材ダンジョンではなく、肉ダンジョンと呼んでいるらしい。
私はロジ少年と別れて、思い切りダッシュした。食材ダンジョンがすぐ前方に見えてきた。
入り口は塩ダンジョンより少し大きいかな? 入り口が中に下って行くのは同じようだ。
ん? ダンジョンのだいぶ向こう、何か建物がある。身体強化を視力強化に多めに振る。
村かな。集落かもしれない。人も居る。服装からいってポルカの人たちかな。
走りながら「探索」をかけ、そこに人がたくさん居ることを確認した。ふーん結構いるんだね。
食材ダンジョンに着いた。あの村は今日のところは放っておく。いきなり私が行ったらロジ少年を困らせてしまいそうだし、今はこっちが優先だ。
私は食材ダンジョンに入った。今度は独りである。
入ってすぐにモンスターと遭遇するが…うん、ミノタウロス発見。「鑑定」すると「モーラ」と出た。
それが奥に細長い部屋に8匹居た。
さすが中級ダンジョン。湧きが1人に対して8匹なんて感激である。
遊んでる暇は無いので、いきなり範囲攻撃を食らわす。うむ一撃。そしてドロップ。
……こういうことか。
どういう光景が広がっていたかと言うとだね。さあ想像してみてくれたまえ。
ダンジョン内の地面には下草がみっしりと生い茂っていた。
そこにモンスター。
倒した。
と、すぐにバシャッ!! とドサッ!! って音が重なる。
そこには血溜まりと、そこに落ちてる一抱えもあろうかという肉。
肉が、確かにドロップしていた。
立派な肉の塊であった。
ドロップしたのを「鑑定」してみると「牛肉」と出た。
サイズといいい、色味といい、市場の肉屋で売られていたものと同じようだ。
驚きはしたが、せっかくの牛肉なのでもちろん拾う。元の世界で買うと高かった牛肉が、タダで手に入るのである。私は素直に喜びたい。
ソロでこれだけの湧きならば、もう少しやりたい気分になった。ロジ少年に肉を焼いてあげる約束をしていることもある。焼いてあげるなら、ロジ少年にだけというわけにもいくまい。
来たついでに食材チェックもしてしまおうと身体強化で加速してスタートしたのだった。
上層ではひと部屋ごとに牛肉と豚肉がドロップしていた。牛肉を落とすのはミノタウロス、豚肉を落とすのは、足が6本ある少し大きい豚であった。
そして階層ごとに2部屋ほど、ランダムなタイミングで鳥部屋があった。
その鳥は豚サイズもあり、1つの体に短い頭が3つ付いているという、ちょっと不便そうなモンスターであった。瞬殺したので攻撃方法は判らないが、あの3つの頭で高速の突きを放ってくるのかもしれない。ん? 私の攻撃スタイルに似ているな。
なんとその鳥は、卵をドロップしてくれた。バシャッ! ではなくドサッ! のみで、鳥の巣に私が知っているサイズの3倍の卵が3~5個入っている状態でドロップした。これで作れるものが増えた。非常に嬉しい。
ここまでずっと、モンスター湧きは8匹であった。ランダムに増えたり減ったりする様子はない。ふむ。
事件はその少し後で起こったのである。
快調に飛ばしていた私は、今ドロップした牛肉の中に、ひと際白っぽいモノを発見していた。「鑑定」すると……なんと! 「霜降り肉」!!
ああ、まさか……まさか霜降り肉がドロップするなんて!!
「ニルヴァス様、グッッッジョーーーーーーーッブ!!!!」
全身全霊を込めてシャウトした。
感動に浸った私は、すぐ肉を回収して次の部屋へ向かった。
牛が霜降りを落とすなら、豚は何を落とすんだ?! 私が思うのは、それのみである。
それ以降、目の色が変わった私に牛と豚たちは狙われた。ご愁傷さまである。
豚のレアは、ついに4層めで出た。見るからに脂と身が層になっている。「鑑定」「バラ肉」。
「よっしゃーー!!」
バラ肉は好きだ。角煮ができるし、ベーコンもできる。…これを肉屋に持って行って、ベーコンにしてもらおう! 腸詰があるのだ、燻製技術はあるはずだ。私の鼻息は荒いぞ!?
「ニルヴァス様、えらい!」
ベーコンは至福の食べ物なので、改めてニルヴァス様を讃えた。
まあそんな感じで上層の5層めと6層めの下り通路に入ったら。
目の前の通路には、今までの通路と違って横道があった。
細い小道を見つけたら、入りたくなるのが人の性であろう。私も例に漏れなくそのタイプである。
入ると、わりとすぐに開けた空間に出た。広い。大広間と言っていいと思う。モンスターたちの湧く部屋より大きいのだ。
見渡して、目についた丸っこい黒い物を見る。何かの実かなと思ったのだ。
よく見てみたくなって奥に入って行く。そこに近付くまでに、また別の物が気になった。そしてまた別の物も。
生い茂った雑草の中に見える、気になる物たち。なんだろう、見覚えが。
あるはずである。そう、それらは馴染み深い我々のパートナー。
「野菜」だった。
赤と黄色のパプリカ。緑のピーマン。黄緑のアスパラガス。そして私が一番好きなナス!!
私の目を釘付けにした黒い実はキミだったのだね? 恋人に出会ってしまったかのように胸が高鳴ってしまうよ。…まあ恋人は居たことがないので想像の範囲内で。
愛するナスを発見して、またしても私はニルヴァス様に賛美を捧げたのだった。
ん? 今?
何してるかだって?
野菜の収穫に決まっているではないか!
邪魔なローブと服に「吸着」と「伸縮」をかけて、身体強化を速度に思い切り振り分けて、高速で野菜を収穫中だ。
手で引っこ抜いてるわけではない。ハサミに変化することが判明した、私の愛剣でやっているのだ。
そう、私の愛剣は素晴らしいコであったのだ。
野菜を見つけた私は収穫がしたかった。
その時持っていた刃物は、愛する剣のみだった。
私はハサミがあれば楽なのになと思い浮かべた。
そしたら手の中の剣が形を変えてハサミになったのである!
おおおおお? ビックリしたが、すごくありがたかった。
私は愛剣に声をかけた。かけたさ! だって素晴らしいんだもの! しかも形を変えるなんて、生きてる感じがするしね!
「ありがとう。助かる」
持ち手を優しくぎゅっと握って言った。感謝、伝わったかな。
それからは農婦モードで刈り続けた。
途中でハッと我に返る。
無心で刈ってしまった野菜たちは、最初に欲しいと思っていた量を軽く凌駕してしまっていた。
無心になりすぎてしまった反省をしながらそこを出て、6層に向かった。む。
実はこのダンジョンに入ってから、ずっとオンにしていた「探索」が下に人の気配があることを教えてくれる。
「探索」範囲は自分の居る階と、上と下の階までだ。範囲魔法をぶっ放す私は、不慮の事故を起こしたくないのでそうしていた。
6層に来てから反応したので、人は7層に居るということだ。
人数は3人。ということは、1人に湧き8匹と考えると、24匹を相手にしていることになる。
想像してみて首を捻った。
うん。範囲攻撃使えないと死んでしまうんじゃないかな。それともここの上層も、襲わなければ襲ってこないのか。私は離れたところから見つけ次第ぶっ放しているので、そこのところは知らなかった。
…見に行きたい。
なので、その3人を見るために今まで通り片付けながら7層に近付いて行く。
7層に下り3部屋向こうの部屋に気配が来たので、狩るのを今いる部屋で終わらせた。向こうが隣の部屋に入るのを待つのだ。
待っている間に3回湧いた。ここの湧きは20分かな。脳内メモに書き書き。
そしてとうとうお目見えした。同じ部屋に入ると湧き予想がつかなくなるので、隣の部屋から視力強化で覗き見だ。
3人はヒョロかった。そしてボロを着て、薄汚れていた。
ポルカの大人だとすぐ判る。ヒョロかったが筋肉は付いていた。というか筋肉しか付いていなかった。
ほつれ放題な袖と裾から、腕や足、腹筋が見える。髪は当然ながらボサボサのバサバサである。満足に切ってもいないので、私のイメージする原始人のようだ。それを紐だろうモノで後ろでくくっていた。
使っている剣は欠け放題で、ヒビまで入っている。
私が気になっていた湧きは8匹だった。3人でも3倍にはなっていない。
人数倍説は崩れた。階層人数説であれば、私1人だったときも今も、湧きが一緒なのですでに崩れている。ならば、上層中層下層それぞれ人数説かダンジョン総人数説だな。
部屋に入ってきた3人が一定以上中に入ってきたら、牛たちは一斉に3人の方を向いた。侵入者を一斉攻撃するタイプだったらしい。武器は無く、殴ってくる。
私は彼らの戦いを見ながら、「探索」範囲をダンジョン内全部に広げた。すぐ判った。中層に4人組が居たのでダンジョン総人数説が決定した。
そんな検証を呑気にやっていた私だったが、3人のうち1人の言葉でそんな悠長な場合でないことを知るのだった。
「くそっ! 早くしねえとソルのやつがくたばっちまう! まだ7層だってのによ!」
む? もしや中層の4人は彼らの仲間なのかな?
「ジル! しゃべってねえでやれ!」
「わかってるよ!」
どうやらそうらしい。ダンジョンというのは普通はこうやって死を意識するものだよなと、再認識する思いであった。
踏み出して、彼らを襲っていた牛を斬る。彼らには私の強さを見てもらわなければ話が始まらないので、彼らに見えるように速度は抑えた。
すべてを肉に変えて、言った。
「怪我人の場所は判ってる。さっさと行くよ」
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塩ダンジョン攻略しました。
気になりすぎてそのまま食材ダンジョンに飛び込みました。
ポルカの大人を発見です。(ロジは少年なので。)




