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さあ美味しいモノを食べようか  作者: 青ぶどう
18/91

18.分配  

 ボス部屋を後にします。


 氷砂糖、早く梅酒と梅シロップにしたいです。

 ********************************************

 18.分配


 この砂の山からドロップ品を探すのは大変だ。さながらミニ砂丘である。

 よって砂山から降りてロジ少年たちのほうへ行ってから、土魔法で砂だけどかした。

 どかした後に残ったモノ。

 ひと抱えある茶色い大きい袋が7つ。宝石の付いた装飾品がちらほら、無骨な短剣が1つであった。

 この位置から「鑑定」してみると、装飾品と短剣には付与が付いていた。そして気になる大袋。



 氷砂糖!!!!!



 え、ボス部屋に氷砂糖? 何で? 氷砂糖って料理にそんな使う? 私は料理には使ったことが無いぞ?

 私が氷砂糖を使うのは、梅シロップと梅酒を作る時だけである。そのまま舐めて飴代わりにしていた子供時代もあるにはあるが、今「舐めな」と渡されても、こんなに多くは舐められない。これはニルヴァス様に是非とも訊きたい案件だ。


 ボスドロップに首を傾げていた私を放って、ロジ少年と肉屋たちがドロップ品を集めてくれる。氷砂糖を持ち上げようとしたロジ少年がよろめいたので、特大鞄の男が代わりに持ち上げた。彼らもだいぶ打ち解けてきたようだ。

 梅に似た果物と、ホワイトリカーに似たお酒を探さなきゃなーとぼんやり考えながら彼らを見ていた私であった。





 +    +    +





 ドロップ品を全員で集めた。

 ヨリは首を傾げて難しい顔をしていた。

 時間が気になって時計を見てみると、晩飯まであと1時間半以上あった。

 ヨリが一緒なのだから、これから下層をやって遅くなっても上層で取り戻せるだろう。


 分配をどうするかだが …。

 ヨリは迷わず大袋を選んだ。1人1袋あるから当然通る。

 ロジはできれば短剣が欲しいと言った。いつも壊れかけのを使っているからだそうだ。見た感じ貧相だったし、俺たちで短剣を使うやつが居なかったので、短剣はロジの物になった。


 宝石の付いた装飾品たちは、全部で17個あった。腕輪、指輪、ネックレス、時計、クシ、イヤリングなどだ。

 俺たちは装飾品から1つずつ選んだ。

 残りからヨリが時計を選んで、ロジが大袋を選んだ。

 俺たちはまた装飾品から選ぶ。

 残りは装飾品が6つと大袋が5つ。

 ヨリがまた大袋を選んだ。そこで俺は訊いた。


「ヨリはその大袋が何か解ってるのか?」


 ヨリは迷いなく頷いた。


「何なのか訊いてもいいか?」


 一応、下手したてに出る。


「氷砂糖って言うんだよ」


 そう言って自分の物にした大袋に指で穴を開け、そこから石のようなものを取り出す。それを手のひらに載せて全員の前に出し、逆の手で1つつまんで、ぽいっと自分の口へ放り込んだ。


「「「「「「っ!」」」」」」


 俺たちもロジもそれを見てびっくりした。モゴモゴやってるヨリの顔に釘付けになっている。ヨリはモゴモゴしながら、手のひらを1人1人に差し出して、口に入れるようにジェスチャーする。


 一番最初に口に入れたのは、やはり友人のロジだった。さすが友人なだけある。

 感心して見ていたら、ロジが目を見開いてヨリのほうを向いて「んんん~~~~!!」と叫んだ。

 不味いんじゃなさそうだな。

 俺も恐る恐る1つとって、口に入れてみる。ん? んんんん~~~~~~?

 俺も目を見開いてしまった。声こそ出さなかったけどな。




 +    +    +




 氷砂糖を口に入れた肉屋たちは、眼球が飛び出しそうで少し怖かったな。ロジ少年は可愛かった。

 結局氷砂糖の味を知った肉屋の5人は、氷砂糖の大袋が欲しいと言った。

 なので私は2袋めの氷砂糖をもらわず装飾品から腕輪をもらって、ロジ少年はクシをもらった。

 残りの装飾品4つは、私が言い出しもしないのに私に寄越してきた。何かに使うかもしれないし、売るかもしれないから、ありがたくもらっておく。

 自分の分を各自の異空間収納に入れる時、私以外の全員が「もう入らない」と言ったので、「おまけにしとく」と拡大してあげた。帰りもあるし、大きめに。


 分配も終わってさあどっこいしょっと皆が立ち上がりかけたとき、隅に寄せられた砂が巻き上がり、ザラスの姿をかたどり始めた。

 倒してから、およそ30分かな? インターバルは30分と覚えておこう。



 それから。

 ロジ少年たちには再び隅っこに避難してもらって。今度は高くジャンプした私の、頭部への突き込みによりボス死亡。

 再びドロップ品を分け分け。収納、大きくしといて良かったな。


 時間的に戻ろうということになって、ボス部屋を出た。

 私はボス部屋を出てすぐの部屋を範囲攻撃の「鎌鼬かまいたち」で一掃し、肉屋たちがぽかーん、ロジ少年がドロップ品を集めている間に、ボス部屋の入り口のすぐ外の壁際に小さな鳥居を建てた。


 土魔法でここの土で作ったのである。周りと同じ色で壁際に、しかも小さく作ったので見つかりにくいだろう。これでいつでも氷砂糖を獲りに来られる。ふふふ。

 料理には使わないが、梅シロップと梅酒には大量に使う。もし梅か梅もどきを発見したら、私は自重できないと言っておこう。うむ。


 とりあえずロジ少年たちはシェルターに入りながら歩けるようになっていた。

 ボスを見て、私を見て。怖さが薄れたらしい。なので、歩きながら「鎌鼬かまいたち」範囲攻撃をして、ドロップ品を回収後また歩きながらといった感じで進んで行った。

 ドロップ品の分配は中層に上がってから、晩ご飯の時にしようということになった。いくらシェルターがあっても、「下層では飯は食べれない」そうだ。それまでは拾い続けて異空間収納に入れ、それを特大鞄の男の弟が個数をメモしながら進むことに決まった。


 サクサク進む。それを10回ほどもやった時、それは来た。ザーラたちが砂になった時、視界の端に今までとは違う色が見えたのである。

 それは薄黄色の壺であった。すぐに「鑑定」した。をををををを~~~~~~~~!


「ケチャップ~~~~~~~~~~!!!」


 私を除く全員がビクッてなってこっちを見た。

 いやごめん! だってケチャップだったんだもん! ケチャップってハンバーグのタレに必須なんだもん! 自分で作れないんだもん! めっちゃ嬉しいんだもん!!


「びっくりさせてごめん。気にしないで」


 内心で興奮の嵐を吹き荒れさせながら、私はクールに謝る。

 ふう、ごまかせたかな。

 私の狩りボルテージは最高潮に。中層に抜けたとき、ケチャップの壺は23個も集まっていた。うはうはである。


 はっ! もしや付与してた幸運確率上昇がここに来て発動してるとか?!





 +    +    +





 やっと中層まで戻って来れた…。疲れた。

 俺はドロップ品集めてるだけだけど、下層をほぼ立ち止まらずに駆け上がるって、普通疲れるよな?

 肉屋の連中も下層と中層を分けるこの通路、まあボス部屋行く前にヨリに消された場所なんだけど、ここに着いたら、ほっとしてたしな。


 せっかくなのでここで休憩してくことになった。

 念のためにシェルターに入ったままで、その中で飯の準備をする。

 肉屋の連中は、特大鞄のやつが5人分、何かの包みを出して配っていた。


 俺の飯はヨリが出す。

 ヨリは腰に巻いた小さな鞄から、昼のときと同じように毛布を出して敷く。もう1つ出して敷いて、肉屋たちにも勧めた。

 そんで昼と同じジャガイモのやつと焼き芋と小さい粒を出す。どうやってんだかジャガイモと焼き芋は、いつもあったかい。


 視線を感じてそっちを見ると、肉屋たちがこっちを見ていた。

 俺は気になったが、ヨリは全然そんな感じじゃなく、鞄から行きに中層で拾った黒い粒の入った小瓶を出す。そしてその小瓶の栓を抜いて中の粒を1つ取ると、手でぎゅっと握り込んでから、自分の皿に載せたジャガイモのやつにパラパラと振りかけた。


 白に細かい緑だったジャガイモに、黒がかかってマズそうに見える。だって砂みたいだ。

 引いて見ていたら、ヨリがスプーンでひと口食べて「んんん~~~!」と目を閉じて唸った。

 その後見ていた俺に気付いて、スプーンでひと口すくって差し出してきた。

「うえっ」って身体を引いた俺に、ヨリは「匂い、嗅いでみて」とささやく。まあ匂いだけなら…とスプーンに顔を寄せてクンクン匂いを嗅ぐ…んはああああああ~~~~!!


「め、めっちゃいい匂い! なんだこれえぇ~~。」


 俺はその匂いにやられてしまった。

 鼻を膨らませてハワハワ言った俺の口に、スプーンが迫る。俺はもう無抵抗に口を開けていた。

 食べてみてヨリが唸ったワケが解った。なんだこれ!? 全然違う!

 口にスプーンが入ると、温かいジャガイモが舌に当たる前に、まず何かの香りが口の中に広がり、鼻まで広がって。あ、鼻が自然に膨らんじまう。そしてソレが舌の上に載ると……。


「んんんん~~~~!!」


 なんだこれ! なんだこれ~~!! 舌が勝手にソレを味わう。噛むのがもったいなくて噛めない!

 なかなか噛めないでいる俺に、ヨリは「ふふ」と笑って俺の皿のジャガイモにも黒い粉を全体に振って渡してくれた。そしてスプーンも載せてくれる。

 いつもはスプーンなんかで食べない。俺はいつものように手で1つ、つまんで食べてみる。

 ん? うまいのはうまいんだけど、さっきほどじゃない。今度は慣れないスプーンに頑張って載せて「あーん」と食べてみた。


「んんんん~~~~~~~!!」


 これだよこれ! 食べ方でこんなに違うなんて、知らなかった。めっちゃうまい!

 ひと口ごとに香りを楽しんだ。ひと口ごとに噛み締めて食べた。

 あー俺、付いて来てほんっとーに良かった!





 +    +    +





 やはりコショウは粉ふき芋には要るコだった。

 粒コショウに「粉砕」を付与してみたらいけたので、それを自分の粉ふき芋にかけて食べてみて再認識したのだ。

 ロジ少年が黒い粉に引いてたようなので、ひと口勧めたら、とても気に入ったもよう。ロジ少年のお皿にもかけて渡してあげたら、めっちゃ味わいながら大事に食べてた。

 うむ、焼き芋の時から思っていたが、彼にはグルメな素質を感じる。


 肉屋たちがこちらをじっと見ていたので、私もじっと見る。目が合った。何か言いたいことがあるのかなと、首を傾げてみる。

 そうしたらリーダーが私の横に置いてある、粉ふき芋の入った透明瓶を指さしてきた。

 ああ、これね。

 私は肉屋たち用にひとつ皿を出し、そこに盛りっと粉ふき芋を出す。彼らは熱いものを食べ慣れてそうなので、皿に「保温」を熱めにかけた。それをスプーンを添えて渡して。


「まずはソレでひと口ずつ食べて」


 私が言うと、肉屋たちが興味深そうに皿を覗き込みながら順番にそうしていく。 皆一様に目を見張って「うまい!」と言う。しかしまだこれからなのである。

 私はその皿を寄越こしてもらうと、また粒コショウを「粉砕」して粉ふき芋にパラパラとかけて渡した。またひと口ずつ食べるように言う。

 肉屋たちは、口に入れた順に「んんん~~~!!」と上を向いて唸っていく。

 ふはは。コショウマジックはすごかろう?


 私も自分の分を堪能し終わって、焼き芋に移る。二つに折ってカプリ。ん? またも視線…。

 肉屋…これもか!

 私はさっさと鞄から焼き芋の袋を取り出し、5本まとめてリーダーに渡した。

 あの筋肉兄さんたちが1本ずつ配ってもらっている様子がいじましい。

 ロジ少年が自分の分を食べ終わっていたので、粉ふき芋と焼き芋のおかわりをあげた。ロジ少年はレーズンもどきより、芋たちが好きなんだね。


 焼き芋を食べ始めた肉屋たちは再び「んん~~~!!」「んん~~~!!」と言い始めた。すでにBGMのようである。それを聞きながらご飯を終えた。ロジ少年も満足したようで何よりだ。

 肉屋たちも終えていたので、片付けて分配に入る。

 さてどれだけあるかな~~♪




 下層ドロップは大変な量になっていた。

 白い壺が758個、赤い壺が100個、青い壺が100個、薄黄色の壺が23個あった。

 中身が何か知っている私1人がうきうきしている。

 まあそうだろう。肉屋たちは下層に来たことがないと言ってたし、ロジ少年は中層にも行ったこと無かったし。


 肉屋たちは一度、自分たちの取り分は4割でいいと言い出したが、沸きが無ければこれだけの収穫は無かったのだ。「ロジと2人だったら、この半分も集まらなかった」と言って、等分に分けることを納得してもらった。


 そして私は「それぞれの壺を1つずつ開けて全員が味見してから分配すべきだ」と主張した。

 等分にして捨てられる可能性が高いのは、もちろん唐辛子とケチャップだ。それなら私がもらいたい。

 私の提案に、ボス部屋で味見した時の驚きを思ったのか、全員が大きく頷いた。私は壺を4つ並べ、それぞれの名前を教えていく。並べ方は味見する順番である。


「白い壺が、砂糖。青い壺が、黒砂糖。薄黄色の壺が、ケチャップ。赤い壺が、唐辛子」


 先に舐めると他の味が解らなくなるので、唐辛子はラストにした。

 そして全部を開け、小さいスプーンをそれぞれに入れる。

 私は白い壺から順番に、スプーンの先にほんのちょっとだけ載せて、手のひらに落として舐めて見せた。ロジ少年も、肉屋たちも真似をする。だいたいがケチャップで顔をしかめ、唐辛子で眉をしかめた。


「どれが欲しいか決まった?」


 少し待ってそう訊くと、全員が頷いた。ので分配開始である。

 まずは唐辛子が欲しい人。肉屋の5人が手を上げた。おや意外。眉をしかめていたのにね。

 私ももちろん手を上げたので、まずは唐辛子を6等分する。1人16壺になって、あとの4壺は他の残り具合で決めようということになる。


 次はケチャップ。これには手が上がらない。私が全部いただく。ぐふふ。


 黒砂糖の壺は全員が手を上げた。甘いものってやっぱ欲しいのかね。全員で等分する。1人14壺と残りが2壺になった。


 最後に砂糖を分ける。

 今のところケチャップを総取りして他のももらっている私が53壺あった。肉屋たち5人がそれぞれ30壺。ロジ少年が14壺だ。

 まずは肉屋たちとロジ少年に、砂糖を足して53壺になるように配っていく。砂糖が154壺減った。…また算数だな。


 758壺から154壺を引いて、残りが604壺だ。そこから等分にする。1人86壺ずつになって残りが2壺だ。


 唐辛子が4壺、黒砂糖が2壺、砂糖が2壺残った。内、それぞれ1つずつは味見で開けた分である。少し量が少ない。

 肉屋たちが「後はそっちで」と言ってきた。それに対して、「私は欲しければいつでも獲りに来れるから」と逆に勧める。

 遠慮していたが、結局肉屋たちは受け取った。ロジ少年には「また欲しければ獲りに来ようね」と言っておいた。


 ロジ少年は考え込んでから、言った。


「とりあえず甘いからもらったけど、どうやって使うかも知らねえし。なのにめっちゃあるし」


 そういえばそうだったね。使い方を知らない壺が、139壺も目の前に並んでる。怖っ(笑)





 ************************************************

 下層を脱出しました。

 肉屋たちとロジ少年は、だいぶヨリに慣れてきましたが、ケチャップの叫びには思い切りびっくりしました。


 次の話は実食なるか? …ならないか…わかりません。

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