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復縁のためのその2

 その次の日も、マコから返事は返ってこんかった。

 俺は更に落ち込んで泣きそうやった。


 今日も帰り際、右隣のデスクの降辺ふるべさんに。


『吉井君。ため息はつくと白髪が増えるんやで』


 と、昨日より優しい声で言われた。

 慰めてくれてんのやろか。


『ちなみに白髪は抜くと、もう一本生えて増えるんやで』


 俺が答えるより先に、左隣の後輩の飯田が食いついてきた。


『ホンマですか降辺さん!? そんなん僕、増えるんやったら白髪でもいいから抜きますよ! 今ある白髪、全部抜きますよ!』


 抜いて生えてこおへんかったら、どないすんねんやろ。

 俺はそう思いながら『うん、そうしいや』と、若いながら後退しつつある飯田の額を見下ろして言った。




 帰宅して。

 俺は今は嫁いでしもておらんようになった姉ちゃんの部屋に入った。

 俺が高校生の時、姉ちゃんの部屋に「あの人と復縁する方法」ていう本があったことを思い出したんや。

 それを見たとき、姉ちゃん、どんな恋愛しとんねん。て心配になったわ。

 当時、姉ちゃんが不倫しとる、という噂を俺のツレの姉ちゃんから聞いた。

 まあ、今は幸せに嫁いだから問題なしやけど。

 部屋に入って本棚を隅から隅まで探したけど、その本はもう無かった。姉ちゃん、もう処分したんかな。


 自分の部屋に戻って、俺はスマホで「復縁する方法」を検索した。

「彼女と復縁する方法」

 これや!

 俺は飛びついてクリックした。


『愛した彼女。もう彼女以外の女性は考えられない。もう一度、彼女とヨリを戻したい。

そんな男性必見。彼女の心をもう一度、貴方に向けさせる方法、教えます!』


 おう、教えてくれや!


 俺は勢い込んで、先を読んだ。


『まず最初に。彼女から別れを切り出された原因を考えましょう。原因究明が肝心です。

 仕事や趣味に忙しく、彼女との時間をあまりとっていなかったのではないですか?』


 おう、その通りや!


『ならば今までの行為を反省したところを彼女に見せて謝罪し、そのうえでワンランク上のとびっきりのデートをプランするのです。思いきって、海外旅行などを提案してはいかがでしょうか。彼女は喜んで承諾してくれるでしょう』


 いや、あの。

 イタリア旅行を提案した直後に撃沈したんやけど。

 これはあかんな。


『……別れを切り出された直後は辛いもの。あなたはさぞ混乱し、取り乱し、悲しむでしょう。しかしこのときに復縁を望むあなたが彼女に決してとってはいけないNG行動があります。注意事項としてそれをお伝えします』


 おう、なんや。


『彼女となんとかやり直したい、彼女に考え直してほしい。その思いが先行し、彼女にメールを日に何通も送っていませんか? 逆効果です。女性というものは別れた直後、相手のことを最大限に不愉快に思っています。そのときに、あなたのこのような行為は更に不愉快な印象を与えるのです。下手すれば、ストーカー行為にも見られかねません。嫌悪感を抱かせるかもしれません』


 遅いわ!

 もう、やってもうたやんけ!


『女性が別れを切り出すのは、決して突発的ではありません。それよりもずいぶん前から、彼女は別れについて考えていたのです。女性は男性と違い、考えに考えてから別れを切り出すのです。ですからその意志は強固です。簡単には揺らぎません。もどかしいかもしれませんが、じっと耐えるのです。彼女の気持ちが落ち着くまで。別れた直後、人は解放感にてすがすがしい気持ちになります。しかし、時が経つにつれ、徐々に寂しいという感情がわいてきます。そのときです。人は、いい思い出ばかりを思い出すようになるものです。あなたとの素晴らしかった日々、それらが次々と思い浮かんでくるのです。あなたとの日々は悪いものではなかったかも、そんな感情さえわいてきます。彼女と接触するのはそのタイミングです』


 そ、それはどれくらいの期間なんや。


『個人差がありますが、お薦めするのは一年ぐらいでしょうか』


 長すぎるやろ!

 もう、マコは他の男んとこ、いっとるやろ!


『最初の接触はあくまで自然に。男友達の間隔で、気軽に連絡を取りましょう。そして徐々に……女性の気持ちを知りたいあなたにはこの本がオススメです。「ジョン グレイ先生著書 〜男は水星人女は木星人〜……』


またこの先生か! もうええわ。

 俺はもう続きを読む気がせえへんかった。


 一年も俺は我慢できそうにない。

 そして何より、マコがそれまでフリーでおるわけがないのが予想できた。

 マコはあれで、エエ女なんや。本気だしたらすぐ男が寄ってきよるに決まってるやろ!


 それよりも。

 ……俺、絶対あいつにストーカーやと思われたわ。


 俺はスマホをにぎりしめたまま、布団に突っ伏した。




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