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復縁のためのその6

 登場したお姉さんのその姿に。

 おお。

 俺の瞳孔が開いた。


 めっちゃ綺麗な。高身長でスタイルのいいお姉さんやぁ。

 浅黒い肌、つりあがった大きな目、ぽってりした唇。

 プレイボォゥイ表紙のディィバみたい。


 お姉さんはピチリとした近未来SFのスゥゥツみたいなのを着ていた。身体のラインがそっくりそのまま……ええ胸のカタチですね。


古寺こでらさん。お待ちしておりましたわ」


 ハスキィボイスでそう言い、お姉さんはバサッとロングのカァルヘアをふって背中に流した。

 わお。

 やる奴がやったらハリィポッタァの森の人(ハグリッド)になる髪型やろうけどな。お姉さんやったらモニカ・ベルッチ(イタリアの至宝)みたいですわ。


「先程、サンシャイン四天王のうちの二人、カジキストレェトさんと青龍シンジさんがクレェムをつけてきましたの。(王子)処遇(垢BAN)について。まったく、男って、友情をふりかざせば道理が通ると思っているんですもの。男の友情は崇高だなんて、誰が言ったのかしら」


 そう言って、ちらりとお姉さんは俺を見た。

 うわ、俺、めっちゃ値踏みされてる。


「そうか。それは面倒なことになったね。Ms.(ミズ) green(青唐) chili(辛子)。すぐに帰ろう」


 古寺さんと呼ばれたお爺さんはグリィィン チリさんの肩に手を回した。


「君には今回、手間をかけさせたね。申し訳ない」

「……私に、欲求不満の主婦(・・・・・・・)を演じさせたことをおっしゃってますの? ……ふふ、でも、あの王子、案外他愛ないものでしたわ。あっさりと罠にかかったと思ったら……私の前ではまるで借りてきた子猫のよう」


 グリィィン チリさんは古寺さんを支えながら歩き出し、またちらりと俺を横目で見た。

 うわあ、俺、流し目貰っちゃった。


「つまらない男の相手をさせられた、という意味では今回はとても不愉快でしたわね。あなたのような本物の男って、なかなか居ないんですもの」

「私に免じて許してくれるかい?」

「ふふ。どうしようかしら」


 グリィィン チリさんは古寺さんと向き合い、そっと古寺さんの耳元に口を寄せた。


「……なら……今夜はあなたを寝かせませんわ」

「……なんてことだ」


 聞こえましたけど!

 二人の会話に耳を澄ましていた俺は仰天した。


 な、な、なんてことですか!

 古寺さん。

 あ、あなたはいつも、この美女のお相手を……。

 ウ、ウラヤマシイィ!


 列車に乗り終えた古寺さんは、俺の方を振り向き、帽子をあげて頭を少し下げた。


「では。……あなたに『死に場所』が見つからんことを」


  え? 今、なんとおっしゃりました?


  驚いた俺を、帽子を再び頭に乗せた古寺さんは「坂の上の雲」の日本人のような顔でまっすぐに見た。

 俺はその表情に思わず息をのむ。


 扉が閉まる。

 ゆっくりと速度を上げて走り去っていく列車を見送って、俺は酔っ払って夢でも見とるんやろか、と思った。

 いやいや、このリアル感。

 自分の頬をつねって確認する。

 やっぱり夢やない。


 ……降辺ふるべさん。

 あなたの言った、男は生涯現役、ってホンマのことやったんですね。

 俺、なんか、元気出てきましたわ――

 




 ほう、と俺はため息をついて、席に深くもたれ、目を瞑った。

 あかん。頭がぐるぐる回っとる。

 酔い覚まそうと思ったのに、かえって酔いが回った気ィがするぞ。


 古寺さん、グリィィン チリさん、三木道三さん、ランニングシャツ、猫男、美少年、飯田、降辺さん、死に場所、星の王子さま、バラ……マコ。


 ごちゃ混ぜになってる頭を整理しようと、俺は天を仰ぎ見た。ホォゥムの屋根の隙間から、星空が見えた。

 はあぁ、綺麗な夜空や……。


『別れがこんなに寂しいなら、あなたと仲良くならなければよかった』


 突然、星の王子さまのセリフが頭にふってきた。

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