紫苑とエリオル
前に罰ゲームで書かされた短編です。
そういえば投稿していなかったなと思い、投稿しました。
拙いですが、見ていただければ幸いです。
「紫苑……」
愛おしそうに隣に眠る少女の名を呼ぶ紺色の髪をした少女・エリオル。
「……ぅん」
「愛してるわ、紫苑。
これまでも、今も、これからも」
起こさないように、優しく髪を撫でる。
髪から、頬へ。
そして、頬へ口づける。
「……この愛は、未来永劫続くものよ」
未だに可愛らしい寝息を立てる薄紫色の髪をした少女・紫苑の耳元で呟く。
「……私の可愛い紫苑。
あぁ、早く目を覚ましてくれないかしら」
そんな呟きをしながらも、まだ眠り続けるのは目に見えている。
「……んぅ」
ときどき、眉をひそめたり、声を漏らしたりと、何やら夢を見ているようだからだ。
「今なら、少しくらいいいわよね?
あなたを……味わっても」
そういうと、早速エリオルは紫苑の顔へ自分の顔を近づける。
「……もしも嫌な夢なら、私がその夢からさましてあげる」
呟くと、自分の唇を紫苑の唇へ重ね合わせる。
長く、深く口づける。
「ふふっ。
紫苑とのキスの味は、甘いわ」
唇を離したエリオルは少し名残惜しそうにしつつも、嬉しそうに微笑む。
そして、
「次は、体の方を……たっぷりと」
と言うなり、紫苑の体を撫でていく。
「……んぅっ…………」
「あら、眠っていても体を弄られれば反応するのね。
見ている夢に影響しているのかしら……」
紫苑が起きないのをいいことに、エリオルのボディタッチは徐々に激しくなっていく。
最初は顔の輪郭を撫でたり、腕や首筋を撫でていた手がだんだんと際どいところへ伸びていく。
弄られている紫苑はというと、エリオルに体を撫でられる度に小さく声を上げたり、体を捩ったりしている。
「さて、紫苑の女の子な部分へは……」
「……ん?
エリ……オル?」
「あっ、起きちゃった?
なぁんだ、今からがお楽しみだったのにね」
エリオルが紫苑の大事な場所へと手を伸ばそうとした時、丁度タイミング良く紫苑が目を覚ました。
「……ん?
エリオル? 今、なんて言った?」
だが、エリオルが言った言葉の意味とか今の体勢とか今までされていたことを紫苑自身はよく理解していなかったようだ。
「だから、今からがお楽しみだったのにって」
「ってか、なんでエリオルにあたしが押し倒されてるような格好してるの? これ」
ようやく紫苑は寝起きの頭が回転してきたのか、今の体勢への違和感を指摘する。
すると、元凶であるエリオルはまったく悪びれもせずに妖艶な微笑みを浮かべて、
「紫苑を味わってただけよ」
「はぁ?
まさか……」
「大丈夫よ。
まだ事には及んでないから安心なさい。
それに、あの方へ嫁ぐあなたを傷モノにしてしまうわけにはいかないしね」
「傷モノにするわけにはいかない」とか言いつつも実はこのエリオル、紫苑を傷モノにする気満々なようであった。
理由は簡単。
望まぬ婚姻をしなければいけない紫苑の「初めて」くらいはエリオルが貰っておきたかったから。
あわよくば、「傷モノになったから」とかで婚姻自体解消されればいい。
もし、自分にもっと力があれば紫苑と駆け落ちするのに。
それほど、誰よりも深く真剣に紫苑を愛していたエリオル。
その気持ちに気づかない紫苑ではないし、本当なら紫苑だってエリオルとともにずっとありたかった。
「……そんなこといって、本当は手を出す気満々なくせに。
…………わかったよ、エリオル」
「あはは。
やっぱり私の紫苑への愛は、漏れてしまうほど深いのね!
……で、本当にいいの?」
「うん」
紫苑は決意したように頷く。
どうせエリオルと水入らず過ごせるのも今日が最後であり、明日には婚姻相手の許へ行かなければならない。
行ってしまったら最後。
もう二度とエリオルとゆっくりと過ごすことはできないし、会うこともままならなくなるだろう。
なら、自分の「初めて」くらいは、心から好きな相手にあげても罰は当たらないだろう。
愛し合っている仲を引き裂かれるのだから。
「……ありがとう、紫苑。
私のワガママを聞いてくれて」
「こっちのセリフだよ、エリオル。
あたしだってエリオルに初めてをあげたかったんだし」
「じゃあ、遠慮なくいくからね」
「いいよ、きてエリオル……」
二人はそのやりとりの後、体を重ね合わせた。
愛する人と一緒にいられる、この至福の時を精一杯味わうように。
少しでも引き延ばすように。
永遠に終わりがこなければいいのに。
叶うことのない願いを、二人は心から願う。
これが今生の別れとなってしまうかもしれない。
二人はその非情な現実に、願わずにいられなかったのだ。
二人の少女の願いは夜闇へ紛れ、夜明けの日の出とともに消えていった。
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