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みなさん、お久しぶりですこんばんは。そしてこんにちは。

作者の代弁者の紫乃宮綺羅です。元気してた?


やっと第七話が完成したのでアップしまっす!


ところで最近間宮冬弥さくしゃは『ファン○シースターノヴ○』の体験版をダウンロードしたらしんだけど、すごいと言ってました。

何がすごいかって? それは細かいキャラクリエイトと『揺れる』って事だって。何がって揺れるってそれは む…あ、痛っ!


痛った~あ、間宮冬弥さくしゃさんじゃないですか。お久しぶりでぇ~す。えっ、それ以上言うなって? まったく恥ずかしがりやさんですねぇ。

わかりましたよぉ。わたしも存在を消されたくないので。


では、もろもろと言いたいことはありますが、第七話をお楽しみください。

それではっ!



「おお、すごく綺麗な制服!」

 箱から出してきたピカピカの真新しい制服を見せてもらいわたしは感嘆の声を漏らす。


「サイズはSSでよろしかったですか?」

「ううっ……はい」

 でも改めてサイズを言われると……わたしってホントに背も低いし身体も小さいし幼児体型だし童顔なんだなぁ……せめて……アイリーンくらいの身長と身体がほしいなぁ……あと胸も。


「では、こちらの廃棄する服を持って、カウンター内のシュレッダールームへと向かってください」

「あ、はい……でも」

 そういってカウンターをあけてくれる丁寧な口調の女性の係員さん。係員さんは初めに受付したひとと変わっていた。たぶん休憩中か、それとも勤務時間が終わり帰ったのかな? まぁ時間が時間だし。


 その時間は午後五時十七分。


 その時間に船橋に着いてフェイルビルの森羅の施設に到着。そして受け取り票をカウンターのひとに渡す。すると捨てる制服引き替えに『シュレッダールーム』とやらに案内された。に至る。


 そう言えば棄てる制服はシュレッダーにかけてくださいって初めの受付のひとが言ってたっけ?


「中……入っていいんですか?」

「はい。どうぞ」

「あ、はい、えっと刹那くん。向こうだって」

 わたしが後ろにいた刹那くんに声をかけた。


「あ」

「あ」


 と、係員と刹那くんが同時に声を上げる。


「へっ?」

「申し訳ございません。あちらのシュレッダールームはプライバシー保護の為、女性専用となっておりますので男性の方は一切入れません」

「ふぇ?」

「凪紗ちゃん。そういう訳だからひとりでシュレッドしてきて」

「あ、はい。わかりました……でもなんで棄てるだけなのにそんな大がかりな部屋で処理するですか?」

 そんな疑問をわたしは無遠慮に刹那くんへとぶつけてみた。


「えっと……それはね……制服を預けたときに言われたかわからないけど……えっとぉ……女性の服って特殊なひと達から色々と需要があるんだよねぇ……う〜んと、特に凪紗ちゃんのような女の子の学生の服って通常では手に入らないんだよね……え〜、制服とか体操着とか……それと……水着とかは特にね」

「はぁ……需要ですか?」

 刹那くんはとても言いにくそうにわたしに説明してくれている。でも、需要って? なんで?


「だから〜え〜……」

「後は私が説明いたします」

 突然、割り込んでいた声の主は受付の女性。その受付の人が刹那くんの言葉を引き取り、代わりに説明役を買ってでたのだった。


「なぜ、女性だけの部屋で処理するかと言うとただ棄てただけでは、後にその特殊な男性が棄てた服を持って帰る可能性があるからです。それと先ほどそちらの男性も需要があると言いましたが、その通りです。あなたの制服は普通の手段では手に入りません。それ故にお金になります。その手の好きなマニアなら高値で売れるでしょう。なんせ現役の女子学生さんの制服ですからね」

「棄てた服を持って帰る……? 制服を売る……」


 一度も止まることなく、言葉なめらかにそれでいて流暢に唇から言葉が流れ出す。


 でも、もしそれが本当ならすごくイヤだな……勝手に服を持って行かれるのは……


「えっと……でもこの制服は血だらけでボロボロですよ?」

 わたしは渡された制服を見て、受付のひとにも見せた。


「服の状態は関係ありません」

 ……わたしの意見は一蹴されてしまった……ううっ……


「あなたのようなカワイイ中学生の女の子が着たという事実があれば。むしろ血が付着した制服はレアで高額で取り引きされます ……失礼しました。このような事例があり女性の服は服のシュレッダーにかけるようになったのです。また、男女にわけたのは男女一緒にすると、そこで直接男性が女性の服を買い取る取引行為が横行するかもしれないからです。実際に棄てるという口実で別の森羅の施設で高校生の制服の買い取りが行われていました」

「ううっ……イヤだぁ……」


 一度もかまずに説明してくれた受付の女性。こんな時に不謹慎だけどすごいなぁ……


 それにしれも……イヤだなぁ。いくら棄てるとはいえ、知らない誰かに自分の服を持って行かれるのは……気分悪いよ……気持ち悪い……


「すいません。説明ありがとうございます」

「いえ、仕事ですから」

 刹那くんが説明役をしてくれた受付の女性にお礼を言う。でも、そんな女性は澄まし顔で刹那くんのお礼を華麗に受け止めた。これが『クールビューティー』ってやつなのかな? その流石のクールビューティーさに自分が『中学生』って言われた事を訂正できなかったなぁ……高校生なのに……高校二年なのに……ううっ……


「……なんだが怖いけど……じゃあ刹那くん。わたし行ってくるよ」

 気を持ち直して棄てる制服のハンガーを握る。


「うん。じゃあ俺は待ってるからね。もし、『制服買い取るよ』と言って話をもちかけられても売っちゃだめだよ」

「はい……でも、男性だけなんですよね? 需要があるのって?」

「凪紗ちゃん。世の中は広いよ。『男性だけ』だなんて思わないで。中には『女性が好きな女性』だっているよ」

「ううっ……」

 どうしよう……もしその女性に『その制服棄てるの?』とか聞かれたら……ホントにどうしよう……


「と、とりあえず、行ってきます」

「新しい制服とかカバンとか俺が預かろうか?」

「あ……えっと」

 刹那くんはわたしが持つ新しい制服が入った箱を預かろうかと言ってきてくれたけど……あんな話を聞いちゃうと……


「……刹那くん。刹那くんを信用してないわけじゃないですけど、制服はわたしが持ってます。そのかわりカバンとマフラーをお願いできますか?」

「うん。いいよ」

 わたしは刹那くんに肩掛けカバンと赤いマフラーを首からほどき手渡す。


「じゃあ向こうで待ってるね」

「はい。じゃあ、カバンとマフラーをお願いします」

「任せて」

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」


 刹那くんに見送られ恐る恐る『シュレッダールーム』の引き戸を開けに中に入る。中は結構広くて大きな機械が八台、たぶんこれがシュレッダーなんだと思う。それに受付カウンターテーブルらしきモノとその内側には受付の女性。そして二、三人わたしより年上らしき女性が服をシュレッダーにかけていた。


 このひとたちって……もしかして、もしかしてだけど……


「お客様。シュレッダーをご利用でしょうか?」

「あ、はい」

 綺麗な顔立ちの受付の女性に声をかけられいきなり心拍数が上がる。そんな激しい鼓動のままでドキドキしながらカウンターへと向かう。


(どうしよう……『制服棄てるの?』とか聞かれたら……大丈夫だよね? 係りのひとだから大丈夫だよね? 他にもひとがいるし大丈夫だよね?)


 不安で不安になりそうな心を抑えて受付のひとと言葉を交わす。


「では、こちらのカードキーを持って空いてるシュレッダーへどうぞ。使い方はわかりますか?」

「あ……いえ今日が初めてで……」

「かしこましました。では簡単に説明させていただきます。まず機械にこのカードキーを挿入していただきまして、それからタッチパネルで服の種類を選んでいただき……」


 その後、特に何事もなくわたしは受付の女性からシュレッダーの使い方を学び、機械に向かうのだった。


 どうやらわたしの考え過ぎだった。よかった、よかった。



 ◆



「おおっ〜〜すごい細かく切り刻まれるなぁ」

 操作方法はいたって簡単で指示通りにタッチパネルを数回タッチして制服を投入したらあっと言う間に終わった。


 わたしの二年間着た制服は色とりどりの粉雪のように細かくふわっふわっに切り裂かれた。


「ちょっと、触ってみたいかも……」

 すでに原型を留めていない制服はシュレッダーの中。切り裂かれた制服はガラスケース越しで切り裂かれるのを確認できるけど開けて触ることはできなかった。


 ピー! ピー!


「ん?」

 なんかシュレッダーから電子音が鳴っていたのでタッチパネルを見る。


「あ……終了か」

 タッチパネルには『完了しました。カードキーをお取りください』と表示。見るとカードが排出されてシュレッダーが停止した。



 ◆



「さっきはありがとうございました」

 取り出したカードキーをカウンターにいた受付のひとに返しひと言お礼を言った。


「いえいえ、またご利用の際にわからないことがありましたら、ご遠慮なくお聞きください」

「はい。あ……あのじゃあ、ひとつ聞きたいんですけどいいですか?」

「はい。どうぞ」

 わたしはちょうどいい機会なので入ったときに思っていた事を聞いてみようと思った。


「ここにいる女のひとって、アンブレイドバトルをしているひとなんですか?」

 思った事はこれだった。だってここで服を処分するくらいだからきっとアンブレイドバトルで服がボロボロになったひとだと思うから。あ、もしバトルをふっかけれたらどうしよう……


「いえ、全員が全員そうじゃありませんよ。アンブレイドバトルをしないひとでも、ただ単に服を処分をしたいからって理由でくるひとだっていますよ」

「へぇ〜そうなんですか?」

「はい。あ、ですけど森羅カードを持っている方と一緒にご来館していだたく事が条件ですが」

「なるほどぉ〜」

 森羅カードかぁ……なんか色々と便利そうだな。このカードって。


「他にはなにかございますか?」

「あ、はい大丈夫です。ありがとうございます。じゃあこれで」

「はい。では、ご利用ありがとうございました」

「はい、じゃあ、失礼します」

 わたしは一礼をして、丁寧な対応をしてくれた受付のひとがいたシュレッダールームを後にしたのだった。



 ◆



「刹那くん。終わりましたよ」

 受付カウンター前のソファーで座っていた刹那くんに声をかける。


「すごいですね。あのシュレッダーってすごく細かく切るんですね」

 戻るやいなや刹那くんの隣のソファーに座りついさっき体験したシュレッダーのことを話した。


「微塵も残さないからね。それで大丈夫だった? 中でへんな事は聞かれなかった?」

「あ、はい大丈夫です。無事に制服はシュレッダーにかけてきましたから」

「うんよかったよ。心配したよ」

「はい。心配ありがとうございます」

 心配してくれてたんだ……嬉しいな。やっぱり好きな人から心配されるとなんか……嬉しいなぁ……でも、あんまり心配させるのもいけないけどね。


「じゃあ、帰ろっか」

「あ……はい。そうですね」

 残念だけど、もう用事は終わっちゃったし……あとは帰るしかないんだよね……あ、わたしはバイトがあるけど。


「荷物ありがとうございます」

「あ、そうだ。凪紗ちゃん。そのマフラーだけど」

「はい?」

 わたしは刹那くんが置いておいてくれた荷物をソファーから持ち出すと刹那くんが買ったばかりのレコーダーを床に置きわたしの赤いマフラーをさした。


「それって、この前のアンブレイドバトルで巻いてたマフラー?」

「はい、そうですけど?」

「だったら、それも制服と一緒に交換してもらえばよかったのに」

「あ……そうなんですけど、思ったほどそんなには汚れてないですし、糸のほつれもひどくないですし、それに新品にしない一番の理由は……思い出にしたいんですよね」

「思い出?」

 刹那くんはわたしの言葉の意味がわからないから目を丸くして顔がキョトンとなってるな。でもね、言葉通りなんだよ。


「うん、アンブレイドバトルの思い出。あの時の身につけていたモノやアンブレイドをすべて新品にしたら残るのは『記憶』だけですよね? でも、記憶って日に日に薄れていくものでいつかは忘れる。そんなあいまいなものを思い出にするより何か形に残るもの。触って確認できるモノを思い出にした方がいいかなって。そう思ったんですよね。それに……刹那くんと仲良くなれた思い出のアンブレイドバトルだからこの思い出はいつまでも大切にしたいんだ。痛かったことや辛かった事すべてをひっくるめて」

「思い出か……そっか。凪紗ちゃんは強いね」

「そんな事ないですよ」

「ううん、強いよ。俺なんかよりずっと。なら俺もなんかか残しておいた方がよかったかな? 凪紗ちゃんだけってのは悪いし」

「あ、いえ、別にそういう事で言った訳じゃ……」

 ううっ……また刹那くんに気を使わせそう……


「と言っても、なにも無いなぁ……服は処分しちゃったし……コートはクリーニングに出すし……う〜ん……ごめんね凪紗ちゃん」

「あ、いいですって。わたしが勝手に言ったことですし、思ってることですから。刹那くんには強要しませんよ?」

「うん……でもごめん」

「もう、ホントにいいですって」

「うん、ごめんね」

「もう……」

 何度も同じようなやりとりをしてるけど……刹那くんは一向にすぐあやまるクセは直る気配がないなぁ……でも……そんなやさしさが刹那くんのいいところだし! 大好きです!


「でも、凪紗ちゃんは俺と仲良くなりたかったの?」

「ふぇ!? ええっと……」

 あ、ううっ……なんて答えよう……堂々と仲良くなりたかったです! とか、好きですから仲良くなりたいです! って言うのはなんか恥ずかしいし……


「なんて言うか、朝は同じ電車に乗ってるのでなんか(えん)を感じたというか……あ、もしかして刹那くんはわたしと仲良くなるのはイ、イヤなんですか……」

 手をモジモジさせながらわたしは話を逸らすため、刹那くんにこんな事を聞いてしまう……


 ううっ……この返事は聞きたくないなぁ……


「ううん、そんな事ないよ。俺は凪紗ちゃんのようなカワイイ子と仲良くなれてうれしいけど? そういう凪紗ちゃんは俺と仲良くなるのはイヤなの?」

「そ、そんな事ないです! わたしも嬉しいです!」

「そう、でもそんなに大きな声で言わなくてもいいよ?」

「あ、す、すいません!」

 自分が大きな声で答えてしまったことを速攻で刹那くんに頭を下げ謝る。刹那くんに『イヤなの』とか聞かれて感情的になっちゃったなぁ……


「あ、あのホントに大きな声ですいません……」

「いいって。そんなに謝らなくても」

「はい……ありがとうございます」

「じゃあ、帰ろっか」

「はい。そうですね」


 そして、わたしと刹那くんはソファから腰を上げ、森羅の施設を後にして船橋の駅へと向かうのだった。


 でも、わたしは刹那くんの言葉に正直に喜ぶ事ができなかった。その逆に気持ちは沈んでいる。胸の内にはひとつ気がかりな事がある。それが気になってモヤモヤとしていた。



 ◆



「あ、あの、せ、刹那くん……」

「ん?」


 JP線船橋駅の改札を通り、千葉方面行きのプラットホームで快速電車をまつ最中(さなか)、わたしはこのモヤモヤをはらすために言葉を刹那くんへと向けてみる。


「これから刹那くんにひとつ聞きたいことがあります。なので正直に答えてくれますか?」

「なにを聞くかによるけど?」

「お願いします」

「……わかった」


 刹那くんに真剣に向き合う。そんなわたしに刹那くんも真剣な表情で返してくれた。


「ふぅ……」

 わたしはひとつ小さい深呼吸をして言葉を繋げてる。


「刹那くんはさっき、『わたしと仲良くなれて嬉しい』って言ってましたよね?」

「うん、言ったよ」

「あの……それって……」

「ん?」


 その後の言葉が口から出せない。刹那くんの事だからやさしい刹那くん事だからきっと……肯定する。だからわたしは最初に『正直に答えて』と付け加えたんだ。



「それって、ウソじゃないんですか?」



 刹那くんはわたしに気を使ってそう言ったんじゃないかと勘ぐってそう思ってしまう。だって刹那くんはとてもやさしいし他人を思いやるひとだから。きっと刹那くんの事だからアンブレイドバトルの時だって涼葉さんや涼葉さんのお兄さんを思いやってたと思う。


 だから、そんなやさしい刹那くんの言葉が『ウソ』に聞こえてしまう。


 だから、わたしは刹那くんの口から『ウソ』じゃないと聞きたい。


 だから、わたしは刹那くんの本心が聞きたい。もし『実はイヤだった』と言われてもいい。それが……刹那くん……本当のキモチなら……


「ウソじゃないよ」


「えっ、……えっと……」

「あれ、聞こえてなかったの? ならもう一度言うね。ウソじゃないよ」


「ふぇ! ウソじゃない!?」

「うん。凪紗ちゃんがなんでそんな事を聞いたのか俺には理解できないけど、凪紗ちゃんと仲良くなれたのはウソじゃんないよ?」

「ほ、ホントですか!」


 心から嬉しくなって笑顔がこぼれちゃう! ううっ、どうしよう! 嬉しすぎる!


「うん。もしイヤだったら、今日一緒にふたりでこの時間まで一緒にいないよ? それどころか凪紗ちゃんの診察が終わったら俺、帰ってたもん。それに一緒にご飯も食べなければエドバシカメラにも行ってないし。それとlPodの代金も代わりに支払ったりしないよ?」

「ほ、ほ、ホントですよね?」


 ホントのホントだよね!?


「ホントだって。疑り深いなぁ。もっと言うならメールアドレスの交換だってしないよ。あんな長いアドレスを教えるのだって面倒だし」

「ううっ……」


 あ、どうしよう……嬉しくて涙がでそう……


「えっ! ちょっ落涙!? なんで泣いてるのぉ!」

「えっ?」

 泣いてる……? ああ、そうか。わたしは涙が出そうなんて思ってなくて、ホントに涙が出ていて……涙がでるほど嬉しかったんだ。


「あっ、えっと……せっかく洗ってくれたんだけど……ごめんね、これで涙拭いて」

 刹那くんはポケットからわたしが洗濯したハンカチを出してわたしに差し出してくれた。


「あ、いえ、大丈夫です」

 刹那くんの申し出を断ると、自分のパーカーのポケットからハンドタオルを出して涙を拭く。


「えっと……なんか変なこと言ったかな? 俺?」

 ハンカチをポケットにしまいとても、申し訳なさそうにわたしに尋ねてきた。


「ううん。違いますよ。すごく嬉しかったんです」

「嬉しかった? 俺と仲良くなれて?」

「はい。わたし刹那くんと仲良くなりたかったんです」

「そうなの?」

「はい!」

「なんで? 俺なんかと?」

「え? えっとぉ……」

 ううっ……どうしよう……なんて答えよう……正直に『好きだからです!』なんて恥ずかしくてとても言えないよ! かと言ってはぐらかすなんてしたら怪しく思われそうだしなぁ……


 でも、なんかいい機会だし! ここは真っ直ぐにす、『好きだからです!』と言ってしまった方が……


「えっと、刹那くん!」

「な、なに?」

 わたしの大きな声ですこし驚いたのか、刹那くんはすこし後ずさったかけど、気にせず気にしないぞ!


 よし……! ここは勇気を出して!


「仲良くなりたかった理由は……その、す、す、す、す、す、す、しゅ!」

「す? ん、凪紗ちゃん。ちょっとごめん」

「ふぇ?」

 刹那くんはそう言ってデニムのポケットからスマホを取り出した。


「真咲から? もしもし?」

 スマホを耳に当て通話をしだす。どうやら着信があったらしい。真咲って言ってたから妹さんからかな。


「えっ? 今は錬糸町にいるけど? はぁ!? 今から?

 真咲は今どこにいるの? えっそんなトコにいるの? なんで俺がそっちに行くの? 配送してもらえば…… 俺も荷物があるんだけど? ……お前はまったく。うん、わかった。じゃあ、俺がそっちに行くよ。その代わりそこまでの交通費を出せよ。うん、じゃあ」

 スマホをタッチして通話を終了。そんな刹那くんの会話を一部始終聞いていたわたしは『今からどこか行くんですか?』と刹那くんにたずねた。


「うん。ごめんね。妹がエッグカメラでひとりじゃ持てない大きな買い物をしたって言うんで、手伝ってくるよ」

「エッグカメラですか? 船橋の?」

「ううん、有楽町」

「有楽町まで行くんですか? 山手線に乗って? 今からですか?」

「うん。まぁそう言うことになるね。ったく、あいつは……ごめんね凪紗ちゃん。そういうことだから、俺は東京駅で山手線に乗り換えるからここでお別れでって事で」

「あ……うん」

 そっか……刹那くんとはここでお別れか……帰りも一緒にいたかったけど……残念。


「じゃあ、俺、行くね」

「あ、はい。じゃあ、また朝の電車で」

「うん」

 刹那くんはわたしにお別れの言葉を投げると到着した快速に急いで乗って行ってしまった……


「結局……言えなかったな……」

 『好きです』の言葉が出なくて。告白できなくてわたしはいろんな感情や思いが入り交じって……頭の中かが真っ白になって……ぼっーとして……結局なにも考えれなかった。



 そして、錬糸町駅に到着した千葉行きの快速電車に乗り妻沼へと帰る。


 その車内でもわたしはスマホも見ずに頭が真っ白になっていた。


 続く。

お久しぶりです。間宮冬弥です。

まずは、このような稚拙な小説を最後まで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。


あまり進展のない番外編ですが、一応次回で完結する予定です。まぁ、予定ですので、もしかしたら九話か十話くらいいくかもしれませんが、一応次回で完結予定です。


その第八話ですが、現在書いている最中です。もしかしたら年内にはお届けできるかもしれないので期待しないでお待ちください。


それでは、これで失礼します。

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