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スイートマジック

お久しぶりです、こんにちは。そしてこんばんは。

復活した作者の代弁者 紫乃宮綺羅々しのみやきららでぇ~す! 元気にしてた!?


アンブレイドバトル~(以下略)の最新作が出来上がったので投稿しま~す!

今回はタイトルにもあるように番外編なのでアンブレイドでのバトルはないよ。ごめんね。


それと、番外編と言ってるけど直接的な続編なので前作を読んでないと意味が分からない部分があるから注意してね。登場人物も同じだしね。


…続編を新章として書くなら前作を完結扱いにしなくてもよかったのにね!

おっと、これは間宮冬弥さくしゃ自身も言ってたことだから気づいているよね! あはは!


さて、今回もわたしの出番はここだけ! まえがきだけっ! …番外編でも出番がないわたしって…

いいや! きっとわたしの出番はあるはず! 信じてるからね! 間宮冬弥さくしゃ


じゃあさっそく、第一話『スイートマジック』をお楽しみください! それでは!

■序章/雪桜


「う〜キンチョ〜する」

 この後の展開にわたしがキンチョ〜している。


 わたしは部屋でこの緊迫感がハンパないスマホの動画に見入っていた。


 動画内ではどこかでみたことある制服で背の低い小さい女の子がアンブレイドを手に持って戦っている姿。


 制服は動画内でも分かるほど擦り切れてボロボロ。あの制服の傷つき具合からたぶん顔も手も足も相当の傷があると予想が付く。


 それでも、女の子はポニーテールを振り乱して、スカートも翻して戦っている。


 アンブレイドで殴打されて、空に打ち上げられて……


 そして、たたき落とされる。気絶してもギブアップもしないでなお、それでも女の子は立ち上がり戦っている。


 途中、女の子は何度もガラスに頭を打ちつける。


 なんで、そんな事をするんだろうと思った。



 そして戦いは終盤。女の子は……



 『大きな雪の結晶』。女の子が男のひとに抱きつく。雪の結晶がふたりを素通りして……


「綺麗……」

 そして、女の子の髪は一瞬で、銀髪になっていた。


 遠目でもわかる。あの銀髪は綺麗だと。ふたつの月の光に映えてさらに幻想的にゾクっとするほどに怖いほど綺麗になっていた。


「えっ? なんで……」

 女の子は髪をさすりながら走ってどこかに行ってしまった……


 数分後、帰ってきて戦いは再開された。


 その戦いは圧倒的だった。銀髪になった女の子は雪だるまや氷の柱を具現化させて対戦相手を一方的に圧倒する。


 特に空から無数の大小の雪だるまを落としたのは圧巻だった。


「すごい……」

 そう声を上げる。


 でも、女の子はあと一歩のところで負けてしまった。


 突然現れた『氷の結晶』によって元の髪の色の戻り、そして逆転された。



「わたしもあんな戦いができるのかな……」

 部屋に立てかけてある、知らない女の子からもらったアンブレイドを見る。これは戦闘用らしい。


「……ううん、これじゃ無理か……」

 わたしは足をさすりながら言う。車いすに座っているわたしの足は『ここじゃ動かない』


「いいなぁ……」

 わたしはもう何も流れていないスマホを見ながらそう、呟いた。


 そしてアンブレイドを膝の上に置いて車いすのまま、部屋を出た。




■序章/雪桜 完




「うわぁ〜結構込んでるね」

「そうですね……オープンテラスも満席です」

 スノーバックスに着いたわたしと刹那くんは満員御礼の店内で席がないかを探し店内を見渡していた。


 どこも空いてない……

 空いてる席はゼロ。すべてお客さんで埋まっていた。


「どうする? ミスドかラッテリアにする? それともあっちのクレープ屋に行く? でも向こうも混んでるけど」

「そうしますか……あ、あそこ空きそうですよ!」

 と、奥の丸形テーブルに座っていたふたり組が今まさに席を立とうとしていた。

 刹那くんの提案は空振りで終わりそう。


「よし、じゃあわたしが席を確保してきますね」

「うん、お願い。俺は並んでるから」

「わかりました、あ、カバン一緒に置いてきましょうか?」

「あ、お願いできる?」

「はい、もちろんですよ!」

 手渡された刹那くんのカバンを持って若干、早足気味で今まさに空いた席へと向かった。


「よし、席確保!」

 袋ふたつとカバン。それと刹那くんのカバンを置いて急いで戻っていった。



 ◆



「お待たせしました」

 わたしはキャラメルマキアートのトールサイズを手に愛しの刹那くんが座るテーブルに戻った。


「刹那くんはカフェアメリカンですか?」

 刹那くんのコーヒーみて開口一番の言葉がこれって……これが職業病ってヤツなのかな?


「ううん、俺のはただのドリップコーヒーだよ」

「なにも入れてないんですか?」

 刹那くんのコーヒーカップに入ったコーヒーは真っ黒だった。ガムシロップや砂糖は入ってるかもしれないけど、ミルクやコーヒーフレッシュは入ってない。


「そうだよ。なにも入れてないよ」

「砂糖も? ガムシロもミルクも? ポーション系も入れてないんですか?」

「うん」

「……なにも入れないドリップコーヒーって苦くないですか?」

 刹那くんのコーヒーを見てそう質問を投げかける。


「はは、そうだね。まぁこのコーヒーはあまり女の人は飲まないからね。ましてや女子高生は飲まないでしょ」

「そうですね。このコーヒーを飲む女の人は知らないですし」

 刹那くんは一口、コーヒーを飲む。わたしもつられてキャラマキを一口、口に付ける。


「凪紗ちゃんのはキャラメルマキアート?」

「はい」

 刹那くんはわたしのフォームミルクたっぷりのキャラマキを見て言う。


「うん、甘いもんね」

「……子供扱いしてます?」

「あ、いやそんなことないよ。妹もそのコーヒーが好きでね。なんとなくそんな気がしたんだ」

「そういえば妹さんがいるんですよね?」

 昨日、妻沼駅や車の中の会話で出てきた刹那くんの妹。どんな子なんだろ?


「凪紗ちゃんと同い年か下くらいかな? 元気いっぱいでいてなかなか無茶をする妹なんで、困ってるんだよね」

 そう言う刹那くんは笑っている。ホントには困ってはしてないんだろうな。


「へぇ〜そうなんですか」

「うん昨日もキズは大丈夫なの? とかそういう電話が何回もかかってきて大変だったよ」

「それは……大変そうですね」

「うん、凪紗ちゃんにも機会があれば紹介するよ」

「はい」

「あ、凪紗ちゃんってふたつ名が『白い雪のプリンセス』に決まったんだってね」

「ううっ……」

「かわいいふたつ名だね。凪紗ちゃんにぴったりだと思うよ」

 顔が真っ赤になる……ううっ、は、恥ずかしいよぉ……


「そ、そうだ。わたし、ここじゃないんですけどスノバでバイトしてるんですよ」

 白い雪のプリンセスの話はちょっと恥ずかしいので話を逸らしてみる。


「へぇ〜そうなの? どこ」

 よし、話の変更成功!


「はい、妻沼パルモの一階のスノバです」

「ああ、あそこか。あそこは俺がよく行く店だね」

「えっ!? そうなんですか?」

「うん。仕事が休みの土日の午前中にね。その後に買い物とかしたりね。あそこの店には結構お世話になってるよ」

「へぇ〜」

 今度、日曜日の午前にシフト入れようかなぁ〜


「あ、スノバでバイトしてる凪紗ちゃんに聞きたいんだけどさ」

「なんですか?」

 そう前置きをして刹那くんはポケットをゴソゴソしだす。


「これなんだけど、異様にレシートが長いんだけどなんなの?」

 刹那くんが取り出したスノバのレシートは確かに長い。これは『あれ』だな。


「あ〜、これって『カスタマーズヴォイスペーパー』ですね」

「かすたまーずぼいすぺーぱー?」

「はい。これのレシートに書いてあるアドレスからサイトに行くとアンケートがあるんです。で、そのアンケートに答えて最後に出てくる数字を書くと、どんなドリンクも無料になるレシートですよ」

「へぇ〜そうなんだ」

「はい。わたしたちは『当たりレシート』って呼んでて滅多に出ないんですよ」

「へぇ〜」

「アンケートに答えて使ってみてください」

「うん、そうするよ」


 妹さん会話とふたつ名の会話。そしてわたしのバイトの話。当たりレシートの会話。わたしと刹那くんは同じ時間を過ごして……楽しい会話の時間が過ぎていった。




 ◆




「ねぇ、千佳。この前の約束忘れてない?」

 新妻沼の改札口。中原麻子。役職は生徒会副会長。は振り向き一緒の下校を共にしている生徒会長の斎藤千佳に言葉を投げた。


「約束? なにかしら?」

 答える斎藤千佳は新生徒会長。生徒会長選挙で歴代一位の投票数と圧倒的な支持率で生徒会長になった新生徒会長だ。


「卒業式の話。聞くかわりにケーキふたつおごってくれるんでしょ?」

「ああ、その約束ね。じゃあ、そこスノバでいいかしら?」

 斎藤の指さす先にはショッピングビルのリーナに併設されているスノーバックスがある。


「えっ、今!?」

「ええ、そうよ。今日は麻子とずっと一緒にいたい気分なの?」

「私は帰りたいんだけど?」

「ダメよ。わたしが帰る時、麻子の帰るときよ」

「私ね、そんな千佳を殺したいんだけど?」

 中原はほがらかな笑顔を浮かべてぶっそうな事を言った。


「素敵よその笑顔。そうその殺意が私を新しい可能性へと導いてくれる。もっとよ麻子。もっと私の可能性を否定して私に新しい可能性を引き出して欲しい。わたしの知らない可能性を私に見せてちょうだい」

「なに言ってるの? そこに大きな病院があるからちょっと行ってきた方がいいんじゃない?」

「わたしは麻子に好意を抱いているわ」

「帰っていい?」


「ケーキ。いらないのかしら?」

「いらない」

「では、行きましょう」

「ちょっ、聞いてるの?」

 斎藤は麻子の手を握り、麻子の腕をぴっぱる様に歩きだした。


「麻子、わたしはあなたに好意を抱いているわ」

「何度も言わなくても知ってるわよ。いつも言ってるじゃない。私は大嫌いだけどね」

「あら、そう」


 時刻は午後六時四十七分。


 斎藤千佳と中原麻子。ふたりはリーナのスノバへと向かっていた。


「さすが金曜日の夕方。めっちゃ込んでる。どうする? 別の店にしようか?」

 到着した店内は満員で新規のお客が座れないくらい繁盛していた。


「そうね……あら?」

 斎藤は何かを発見してじっとその一点を見つめていた。


「どうしたの? あ、あれって」

「ええ。一度挨拶をしておこうかしら」

 斎藤は店内に入り店内奥のテーブルまで向かっていった。


「こんばんは。雪見さん」

 目的の場所で、斎藤はとまり声をかけたのだった。



 ◆



「俺としては急で悪いんだけど明日とかがいいけど、凪紗ちゃんはどう?」

 病院にいく日程を決めている話で、刹那くんの提案が明日どうかだった。


「明日ですか。確かに急ですね? でもなんでそんなに急ぐんですか?」

「もし予定が入ってるなら別の日でもいいんだけど。ただ、凪紗ちゃんが大丈夫とは言ってもキズは早めに診てもらっほうがいいし、もしかしたらアンブレイドバトルでの気づかない後遺症とかがあるかもしれないからさ。凪紗ちゃんはあのアンブレイドバトルが初めてでしょ? それと色付きプレート使ったしさ」

「あ、そうですね」

 ううっ……確かに後遺症とか怖いかも……


「あと、もうひとつ理由があってもうすぐ年末に入るから森羅の年内営業が終わっちゃうんだよね」

「あ、なるほど……」

 確かにそれは一理あるな。


「わかりました。そういう事なら。明日は夕方からバイトなのでそれまでならいいですよ」

 うん、別に土曜日は予定は入ってないし。バイトは夕方からだし。アイリーンも明日は予定が入ってて一緒には遊びには行けないしね。


「うんごめんね。じゃあ、明日で。学校は何時頃終わりそう?」

「あ、わたしの学校土曜日休みなんでいつでもいいですよ」

「えっ、そうなの? いいね土曜日が休みで。俺の高校なんて土曜日は授業があったんだよ」

「へぇ〜珍しいですね?」

「いやいや、土曜日が休みのほうが珍しいよ」

「えっ? そうなんですか?」

「うん、でもそのかわり土曜日は午前だけの授業で助かったけどね」

「へぇ〜」

 ちょっとだけ、刹那くんの昔話が聞けてうれしいかも。


「部活もないの?」

「はい、完全オフです」

「羨ましいよ。部活までないんだ。ホントに珍しいね」

「そうですか?」

 そんなにわたしの学校って珍しいのかなぁ?




「こんばんは。雪見さん」




 と、聞き覚えのある声が後方から耳に入る。


 この……威圧的な言葉……耳に刺さるするどい声って……もしかして……


「えっと……ど、どうも」

 振り返ると、やっぱり……生徒会長の斎藤さんだった!


「奇遇ね」

「えっと……そうですね」

「もしかして、デートの最中かしら?」

 斎藤さんはチラっと刹那くんを見る。


「えっ? えっ? その、えっとぉ……デ、デートっていうか……その……」

 しどろもどろになってわたしは刹那くんをみた。


「……相変わらずハッキリとしない返答ね。雪見さんは」

「えへへ」

 苦笑いが精一杯。そして、目線をもう一度刹那くんに戻す。


「デートじゃないよ。ちょっと病院の付き添い日程の話をしてただけだよ」

 にっこりと答える刹那くん。ううっ、そんなにはっきりとデートじゃないって……言わないでぇ


「そう、病院の付き添いの話なの。ところで私の大事な生徒をたぶらかすようなことはしてないでしょうね。せつなくんは」

 斎藤さんは片手をテーブルに着き、空いた手を腰に当てる。


「俺の名前を知ってるんだね。どこかで会った事あるっけ?」

「スマホで昨日の戦いを拝見していたわ」

「そっか。でもずいぶんとひどい言われようだけど、凪紗ちゃんをたぶらかしたりはしてないよ」

 刹那くんはそうキッパリとそう否定する。うん、だってホントに刹那くんはわたしをたぶらかしてなんてしてないもんね!


「凪紗ちゃんね……すいぶん仲がいいのね。あなた達は」

「一緒に戦った仲だからね」

「そう、なるほど確かに雪見さんが信頼するに足りうるだけのひとではあるわね」

 前屈みになりをグイっと、刹那くんの目を見る。

 そんな斎藤さんはなんでかひとり、納得してひとつ頷いた。


「どうも」

 じっと見つめる刹那くんと斎藤さん……って言うかそんなに見つめあったりしないでぇ!


「……」

「……」

 ち、近い! 斎藤さん、刹那くんに顔近づけすぎだよ!そのまま近づいたら……


「キスしちゃうよ!」

「キス?」

「ふぇ?」

 あ、あれぇ〜も、もしかして声に出ていたのかな!?


「えっと……? なんですか?」

「雪見さん。今キスと言ったのかしら?」

「そ、そんな事言いませんよぉ?」

 心の声が漏れたぁ〜!


「顔がずいぶん赤いわね? 声もうわずってる。熱でのあるのかしら。ううん違うわね」

 斎藤さんのするどい声が耳に刺さる。ううっ……ジト目が怖い……


 でもちょっとだけ、顔を近づけた斎藤さんが羨ましいかも……ううっ……


「千佳。それ以上はダメだよ」

 そうして顔を赤らめている間に、副会長の中原さんが仲裁に入ってきてくれた。


「麻子?」

「ねぇ、そろそろいい?」

「そうよ麻子。やはりあなただけよ私の行動を制する事ができるのは。私を否定できるのはあなただけ」

「なに言ってるの? それと私ね。もうケーキが食べたくてしょうがないんだけど? 私のおなかと舌は甘いものを食べる準備が出来てるんだけど?」

「あらそう。じゃあここは混んでて無理そうね? では、セブンのとなりのシュークリームでも食べましょう」

「あ〜ビハードパパね。あそこのクッキーシューはおいしいから。ふたつで」

 斉藤さんと中原さんはふたりだけで会話し進めてしまっている。


 蚊帳の外になったわたしと刹那くんは会話に介入することはできないのでとりあえず、一口コーヒーをすすった。


「では、せつなくん。わたし達はお邪魔みたいだからこれで失礼するわ。それと雪見さん、反省文の提出を忘れないでね」

「うん、じゃあね」

 と、刹那くん。


「はぁ……わかりました」

 と、わたしは気が重い返答。


 その言葉を残し斎藤さん達は引き返していった。


「ごめん刹那くん」

「ううん、謝る事ないよ。だけど生徒思いのいい生徒会長さんだね」

「そうですかって? あれ?」

 わたし、刹那くんに斎藤さんの話なんてしたっけ?


「刹那くん、わたし斎藤さんが生徒会長だって話しましたっけ?」

「ううん。話してないよ」

「じゃあ、なんで……」

「だってさっきの子は凪紗ちゃんの事を『大事な生徒』って言ってたでしょ? それってあるさ、程度立場が上のひとの言葉だし。仮にさっきのさいとうさんだっけ? が、クラス委員長でも『大事な生徒』なんてたぶん言わないよ。言うなら『わたしのクラスメイト』や『雪見さん』って言うと思うし」

「……ふぇ〜」

 刹那くんって……意外と頭の回転が早いのかも……あっ、意外って失礼かな?


「で、あの子はさっきも言ったけど『大事な生徒』って言ってた。そんな言葉が言えるのは先生か生徒会役員くらい。まぁ、ここからは俺の勘だけど、過去の経験からあの威圧的であの目つき。それで生徒会長だろうと思ったわけ」

「ふ、ふぇ〜、なんかすごい推理ですね。小さな名探偵もびっくりです」

「はは、小さな名探偵って。あの『体は子供、頭脳は大人』ってやつの?」

「はい。土曜日にやってるアニメのあれです」

「買いかぶりすぎだって。俺はあの小さな名探偵みたいに頭は良くないし洞察力もないよ」

 刹那くんは笑ってそう言うけど……『ただの生徒』って言葉だけでそれだけの考えがパッと思いつくって事は結構すごい事だと思うんだけどなぁ〜わたしは。


「ところで、さっきの『さいとうさん』は俺を名前知ってたみたいだけど、なんか話ししたの?」

「あっ、いえ……今日、生徒会に昨日のことを聞かれて……それで」

「ああ、それで俺の名前を。じゃあ、反省文ってのもアンブレイドバトルの反省文?」

「えっと……まぁ、そうですね、あはは」

 ううっ……い、言えない。理由が刹那くんと夜遅くまで一緒にいた事で反省文を書くなんて……不純異性行為だなんて言えない! 恥ずかしい!


「大変だけどがんばって書いてね。俺には応援する事しかできないけど……がんばって!」

「は、はい……」

 気が重い……原稿用紙最低でも五枚かぁ……厳しいなぁ〜


「? 凪紗ちゃん? どうしたの手で顔を覆って?」

「あっ、いや、ちょっと、恥ずかしくて……あ、そう言えば刹那くん。お父さんが心配してましたよ? 昨日は駅に着けたのかって」

 恥ずかしいから話をお父さんの話題にそらす。


「えっ? ああ、うん。凪紗ちゃんの家から出た後に偶然にピザ配達途中の中村くんに会ってね。駅まで案内してもらったよ」

「なかむらくん? あぁ〜あのピザ屋さんの」

「うんそう。一度凪紗ちゃんも会ってるはずだよ」

「強烈に覚えてます。バイクを電柱に激突させて、刹那くんの事を師匠って呼んでるアンブレイドとマテリアルプレートを持ってきたひとですよね?」

 あのインパクトはそうそう忘れられるもんじゃない。だって電柱の激突はほぼ事故に近いレベルの激突だったし衝撃的な光景だったし……でも、そのあとピンピンして走ってたし。元気よく『ししょ〜』って言ってたし。ケガもなさそうだったし、大丈夫でしょう!


「うん、まぁ、そうだけどね……できれば中村くんには師匠って呼ぶのをやめて欲しいんだよね。恥ずかしいから」

 刹那くんは心底迷惑そうに語る。


「確かに……あの人混みの中で『ししょ〜』は恥ずかしいですね」

「そうでしょ? はぁ……恥ずかしい」

「あはは。でもなんで中村さんは刹那くんの事をししょ〜って呼ぶんですか?」

「あ〜それはね、半年前くらいかな? 中村くんのピンチを俺が助けてね。それ以降はずっと師匠って呼ぶんだよね」

「へぇ〜」

 助けたかぁ〜刹那くんらしいと言うかなんというか。


 そんな刹那くんはコーヒーを一口入れて『はぁ……』と本気のため息をつく。そんな刹那くんに笑顔で答えてわたしもキャラマキを一口すすった。


 ◆


「で、今日は朝早くに起こされて、それからお父さんにこっぴどく怒られて大変でしたよ。朝ご飯も食べるの遅れたし。おかげでいつもの電車に乗り遅れるところでした」

「うん、それは大変だったね」

「救いは今日ジャージだったので着るのが楽でよかったくらいです」

「あはは、散々だったね。あっ、そうだ。制服で思い出した。凪紗ちゃんって、今日はジャージ着てるけど代わりの制服とかはないの?」

 わたしのジャージ姿を見て思い出したように刹那くんが言う。


「代わりの制服ですか? 一着あることはあるんですけど……タンスにしまったままでまだ出してないんですよね」

「そのボロボロの制服ってまだ捨ててないよね?」

「? はい、部屋で一応取ってありますけど? でももう着れないんで、捨てようかとはお母さんに話してますけど?」

「じゃあ明日荷物になって悪いけど、そのボロボロの制服を持ってきてもらえる? 森羅で新品の交換手続きをしてもらうから」

「えっ、そんな事できるんですか?」

「うん、その制服はアンブレイドバトルで破損したものだし。森羅カンパニーに申請すれば新品に交換してもらえるよ」

「ホントですか! よかった〜新しく買ってもらうところでした!」

 刹那くんの話がホントならこれは助かる。制服って結構な値段だからお父さんに迷惑かけちゃうところだった。


「昨日、凪紗ちゃんのお父さんに話そうとして忘れちゃったんだよね。ごめん」

「いいですって。お父さん刹那くんの事、気に入ったみたいだし」

「えっ? そうなの?」

「はい。怒られた後の朝食で『昨日の彼は礼儀がよくできた若者だ』とか『よく気が利く』とか刹那くんを誉める事ばっかりでした」

「へ、へぇ〜」

 うふふ、なんか最大の難所を突破したって感じ。これで刹那くんと……つ、つき合えたら……あとは、け、け、


 いや、落ち着けわたし。まだなにも始まってない。状況が変化しただけ……コーヒーでも飲んでっと。


「あつっ! ゴホ! ゴホっ!」

「凪紗ちゃん大丈夫?」

「すいません。大丈夫です……」

 あううっ……興奮ししてキャラマキを入れすぎて口が熱い……ゴホッ


「すいません……大丈夫です」

「ホントに大丈夫?」

「はい、コーヒーを口に入れすぎただけなので。えっと、じゃあ明日は制服一式を持ってきますね」

「あ、うん。お願いね」

「ゴホン。はい」

 ふぅ〜なんとか持ち直した。


「でも、あれですね。森羅カンパニーって太っ腹ですね。医療費をタダにしてくれたり、制服を無料で交換してくれたりって。いたせりつくせりって感じ」

「うん。そうだね」

「なんでなんですか?」

「戦闘のデータを取らせてもらっているからってのが名目だね」

「データ?」

「そう、昨日ジャッチメントビットで監視しているって話したでしょ? あれは同時に戦闘データも収集してるんだよ」

「戦闘データの収集ですか……なんでそんな事を?」

「弊社製品の品質向上のためっていう名目」

「……そんな事のために医療費とかを無償で負担してるんですか? 森羅は」

「うん」

「……それって本当ですか?」

「たぶんね。自分たちの製品で傷ついたり、ひとが死なれると困るから監視をしているし、それにデータを取るだけ取っておいてユーザーに何も見返りがないってのは、おかしいって事じゃないかな?」

「そうですか」

 ……たぶんこれはウソ。ユーザーはいいかもしれないけど、森羅カンパニーはデメリットしかない。データーの収集だけでそんな太っ腹ってなんか変……


 わたしは直感でなんとなくだけどそう思った。森羅カンパニーの意図はわからないけど……刹那くんはその事を知ってるのかな……? なんで森羅がそんなに太っ腹で戦闘データを取る理由が。


 それともうひとつ、『戦闘用』と『一般用』。二種類のアンブレイドがある理由がわからない。


「さて、じゃあ話もまとまったし、そろそろ帰ろうか」

「えっ? もう?」

 刹那くんはカバンからスマホを取り出し画面を見てそう言う。


「うん。もう十九時半だし。あまり遅くなると、また凪紗ちゃんのお父さんに怒られそうだからね」

「あ、そうですね……」

 もうそんな時間なんだ……残念。なんか、好きな人といると時間が早く感じるな……


「なんか時間が早く過ぎたって感じですね」

「うん、そうだね。ひとりで飲むよりかなり早く感じたよ。俺も時計を見てびっくりした」

「えへへ。そうですよね、あ! 刹那くん待ち合わせは何時にします? 決めてないですよね?」

「あっ、そう言えば……時間とか待ち合わせ場所とか決めてなかったね」

 一番大事な待ち合わせ時間と場所を決めてなかった。これを忘れると何時に待ち合わせとか、どこにいるとか

わからないよ。当たり前だけど……


「じゃあ、十時半くらいで、場所はJP妻沼駅改札でいいかな? 早い?」

「うん、その時間でいいですよ」

「わかった。じゃあ明日の十時半、妻沼駅って事で」

「はい! よろしくお願いします」

「うん、よろしくね」

 そうお互いよろしくと言い合って帰るために身支度を整える。


「あ、そうだ、凪紗ちゃんちょっと待って」

 そう制して刹那くんはスマホを再びカバンから取り出した。


「もし、迷惑じゃなかったらお互いのメールアドレスの交換をしたいんだけど、いいかな?」

「えっ!? メアド交換ですか?」

 それって……いつでも刹那くんと連絡が取れるって事だよね! そうだよね!?


「もしも遅れる時になったら凪紗ちゃんに連絡したいんだけど……迷惑かな?」

「い、迷惑じゃないでっす! 交換しましょう!」

 迷惑な訳ないじゃないですか! やったぁ〜〜〜〜〜刹那くんのアドレスゲットチャンス到来!


「それと、俺ね『こねくと』だっけ? 無料通話アプリは気疲れするからヤメたんだよね。だからお互い直アドかフリーメールアドレスを教える形になるけどそれでもいいかな?」

「も、もちろんいいでっす!」

 喜びを押さえながら、カバンからスマホを探す。


「ど、どうぞ!」

 刹那くんのスマホに自分のスマホを向ける。赤外線の準備オッケイ! さぁバッチこ〜い!


「えっと……ごめん。俺のスマホ赤外線通信機能付いてないんだよね……」

「ふぇ?」

 こ〜して、わたしは自分のスマホを刹那くんに預け、刹那くんは地道に手入力で登録したのだった。



 ◆



「この『刹那くん』って件名で『明日はよろしく』って打ってあるメールアドレスが凪紗ちゃんのメアドでいいんだよね?」

「はいそうです。じゃあ刹那くんはこの『テスト』って書いてある件名で『送信テスト』って打ってあるのが刹那くんのアドレスですね?」

 まじめな刹那くんらしいメール件名と内容だな。うん。


「うん、そう」

「わかりました。じゃあ登録っと」

「俺も登録したよっと」

 う〜、嬉しい。せ、刹那くんのメアドを教えてもらっちゃった! 嬉しいっ! 顔がニヤけちゃうよ!


「凪紗ちゃんどうしたの? 顔がニヤけてるけど?」

「えへへ、そうですかぁ〜」

「うん」

 だってぇ〜刹那くんのアドレス手には入って嬉しいんだもん! でも、そんなこと刹那くんの前では言えないけどね!


「さて、だいぶ遅くなっちゃったけど帰ろうか」

「そうですね」

 結局、刹那くんの『そろそろ帰ろうか』の言葉から約10分くらい遅れてコーヒーカップを返しスノバを出たのだった。


「……10分かぁ」

 またか、と思いつつもこの呪いとも言うべき10分に感謝したのだった。




 ◆




「もう、翠のせいで私まで先生に怒られちゃったじゃんか!」

「ごめん、奈留ごめんって」

 東山奈留はギターケースを持つ悠木翠に怒っていた。


 時刻は十九時四十七分。場所は新妻沼駅改札口。改札を出たふたりは言い合っていた。言い合っていたと言っても東山奈留は怒っていて、それをなだめる悠木翠、と言う構図だ。


「だから月曜日に直接、雪見さんか瀬尾さんに見せてもらえばいいって言ってるのに! まったく!」

「あはは……ごめんって。なんかいろいろとアトケンしたくなっちゃってさ……」

「アトケンって……なら来週検証すればいいでしょ! それがアトケンでしょ! 後で検証でしょ!」

「ううっ……そんなに怒らないで。ほ、ほら、ミスドでドーナッツおごるよ。百円キャンペーンやってるし。行こうよ」

 悠木翠はミスドのある方角を指さし、東山を誘う。


「……そ、そんな手には乗らないんだからね」

「そっか、じゃあ帰ろっか?」

「ううっ……いじわる……」

 東山の先を歩く。悠木。しかしその足は数歩で止まった。


「あれぇ、どうしたかしら奈ぁ留。もしかしてドーナッツを食べたいのかしら? 大好きなクリームたっぷりのクリーム・デ・ポンデを食べたいのかしら? そんな手に乗るのかしら? 奈ぁ留」

 悠木は目をほそめて、ぐりんと振り向く。まるで空を見上げたままの形でセミロングの髪を垂らして東山に振り向く。


「……シャフ度で振り向かないでよ」

「行くの? 行かないの?」

「……行く」

「よし、決まり。好きなのおごるよ」

 そう前置きをして東山の手を引く悠木。


「……シャフ度って首痛くないの?」

「ごめんメッチャ痛い……」

「だよね。しかもその言葉使いって物語シリーズの『五珂ヶ原みきり(いつかがはらみきり)』だよね?」

「おっ、よくわかったね!」

「わかるって」

「あはは。どう似てた?」

「似てない」

「あはは、奈留は正直だね。でも『五珂ヶ原みきり』で思い出したけど、新生徒会長ってなんとなく『五月ヶ原みきり』に似てるかも、シャフ度とか似合いそう」

「あっ、それメッチャわかるわぁ〜!」

「あと、もう少し幼かったらまどマギの『ほむほむ』にも似てるかも」

「あ〜わかる! それもメッチャわかる!」

 ふたりは『五月ヶ原みきり』と『新生徒会長』の話で盛り上がった。



「あっ、あれって雪見さんじゃない!」

 そして、ミーカドー前のエスカレーターを下る時にこちらに歩いてくるクラスメイトの姿を見つけた。


「ちょうどいいから、今みせてもらおう! お〜い、雪……モゴっ!」

 悠木は足をとめクラスメイトの雪見を呼ぼうとしたとき、後ろから東山に口を手で塞がれた。


「ちょお! なにすんのぉ〜」

 東山の手から解放された口から非難の声を発する。


「しっ! ほら、雪見さんの隣」

「へっ……あっ! あれって……雪見さんと一緒にアンブレイドバトルしたひとじゃん!」

 雪見のとなりには男のひとが居た。それは雪見とアンブレイドバトルをした神夜刹那だった。


「デ、デートかなぁ?」

 ふたりは『ベルクラフトコーヒー』横にある大きな柱の陰に隠れてふたりを見ていた。


「そういえばさ、昨日。瀬尾さんがバトル中のコネクトで言ってなかった? 付き合うとか、あのひとを好きだとか?」

「あ〜なんか言ってたかも」

「へぇ〜直で見るとけっこうカッコいいひとだね」

「うんイケメンさん」

 悠木と東山が神夜をみてそう評価した。


「うん、雪見さんって年上好きなのかなぁ〜」

「でも、見た感じそんなに年は離れていないって感じだね二、三歳くらいかな?」

「それくらいかなぁ……」

 そんなことを話していると、雪見と神夜は改札を通ってプラットホームに消えていった。


「行っちゃったね」

「そうだね」

「じゃあ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」

「……デートじゃないでしょ?」

「あはは、違うか」

 そんな他愛もない会話を交わしながら悠木と東山はミスマリアドーナッツへと向かうのだった。



 ◆



「刹那くんはなんで、コネクトをやめちゃったんですか?」

 新京連の新妻沼駅プラットホーム。わたしと刹那くんは電車を待ちながら刹那くんがコネクトをやめてしまった理由を聞いてみた。


「あ〜うん、気疲れってのもあるけどメールを読んだらすぐに返さないといけない風潮に耐えきれなくてね。あれって読むと向こうにも伝わるでしょ?」

「はい、既読ってわかります」


「そう、それ。それで『なんで返さないの?』 とかさ。『無視なの?』 とか色々と苦情っていうのかな? そういうのがメールで来てね。それが嫌で、もうこっちから一方的に『コネクトやめる!』ってメールを一斉に送信してアカウントとアイコンを削除して、それで終わらせた」

「なるほど、既読スルーってヤツですね?」

「既読スルー?」

「はい。刹那くんのようにコネクトのメールを読んで返さない行為を既読スルーって言うんですよ」

「へぇ〜」

「それで、今その『既読スルー』が結構問題になっててですね。テレビで特集として取り上げられるくらい問題でして」

「へぇ〜そうなんだ。凪紗ちゃんは大丈夫なの? その既読スルーは?」

「はい。わたし達は大丈夫です。返せない時はメッセージを開きませんから。もし開いたとしても『あとで返す』ってメールを、とりあえず送ってますから」

「なるほど。でも、それって根本的な解決ではないけれど、そういう手もあるんだね」


「まぁとりあえず何か送っておけばわたしのグループは大丈夫ですよ」

「そっか、よかった凪紗ちゃんは俺みたいに気疲れはしてないようだね」

「はい。『今の所は』と付け加えますけど」

「はは、もし、疲れたとか、もう嫌だとか感じたら即、やめた方がいいよ。無料通話は魅力的だけど、それ以上にコネクトを見たくないってなったら本末転倒だしね」

「もしそういう状況になったら刹那くんに相談しますね。『コネクトやめる』の一斉送信の方法とか」

「うん。いいよ。でも、あまりおすすめできる方法じゃないけどね」

「ふふ、確かにそうかもです」

 楽しいっ! 刹那くんとのおしゃべりってすごく楽しいな! もっとしゃべっていたいよ!



 まもなく、丸戸行きの電車が参ります。

 白線の内側に下がってお待ちください。



 刹那くんとコネクトの会話をして……楽しいくて楽しくてしょうがない会話は、電車の到着で終わりを迎えてしまった。


 ◆


「じゃあ明日ね」

「はい、明日はよろしくお願いします!」

「うん。よろしく」

「はい!」

「気をつけて帰ってね」

「はぁい」

 ドアが開きわたしは前橋駅で下車。刹那くんはそのまま電車に乗る。そうだよね……昨日はわたしを送るために降りたんだし……


 ドアが閉まりわたしは刹那くんに手をふる。刹那くんも恥ずかしそうに手を振り返してくれた。


「明日が楽しみだなぁ」

 誰にでもなくつぶやき。わたしは家路へと着いたのだった。


 ◆


「さてと、刹那くんのハンカチも洗ったし、制服もオッケ〜!」

 机に置いてあるハンカチと壁に掛けてあるガーメントバッグに入った制服を確認。明日の準備はオッケ〜。


 ただ、問題が一点ある。


「わかんない……まったくわかんない……」

 ハンカチの隣に置いてある『三枚』のマテリアルプレート。


 どれが刹那くんから借りた『加速』と『停止』でどれがお姉ちゃんの『滑走』かまったくわからない。同じ形で同じ色。唯一分かるのがわたしのペンダントにある『白い色で半透明のプレート』の『雪のスキル』だけだ。


鏡の外(こっちじゃマテリアルプレートって起動しないんだよね」

 マテリアルプレートのスイッチを入れてもマナが無いから起動しないし……ん? 不足かな? とにかくこれじゃ、スキルの確認ができないよ。


「はぁ、しょうがないから明日、刹那くんに相談しよう」

 結局、自分ではどうする事もできないので刹那くんに頼らざるを得ない。


「よし、メインだ」

 クローゼットを勢いよく開ける。


「明日着ていく服は、っと」

 クローゼットを開けて服を漁る。


「ジャージなんて着ていけないよね〜」

 ベッドにジャージを放り投げて、さらに漁る。


「パーカーなんて着ていけないし……」

 手に取ったジャージとパーカーを放る。 


「ジャージはダメだって」

 同じようにベッドに放る。


「ジャージ……ジャージ……ジャージ……パーカー……スカート……」

 四枚、五枚と放り投げる。



 十分後。



「どうしよう……かわいい服がない……」

 床に四つん這いになって落胆してしまう……


 ベッドには放り投げられた『ジャージとパーカー』の山が無惨にも築かれていた。


「わたしって……女子力ないんだ……それともJK力?」

 山盛りになったジャージを見てさらに落胆度がます……


「ううっ……やばい、これはやばい状況だよ……」

 明日着ていく服がホントにない! せっかく刹那くんとおでかけなのに……病院に行くだけだけど……


「どうしよう……どうしよう……そうだ! 涼葉さんに相談しょうかな……あ! 身近にファッションリーダーがいるじゃない!」

 スマホを取り、ファッションリーダーへと電話をかける



 呼び出し音が数回なる。



「凪紗? どうしたの?」

「アイル〜〜〜〜〜ウィ〜〜〜〜〜ン! どうしよう!」

 通話相手がでると即、声を上げる。ファッションリーダーはアイリーン。持つべきものは友! オシャレなアイリーンさんだ!


「なにそんな悲しい声だして? 何かあったの? 前も聞いたけどアイルーウィーンって誰よ? 私のこと?」

 アイリーンの疑問は無視してわたしは一番の相談を事をアイリーンに持ち出す。


「明日着ていく服がないんだよ! わたしの服ってジャージとかパーカーしかないの! かわいい服がないの! どうすればいい? 刹那くんにアピれないよ!」

「あきらめなさい」

「ええっ〜〜〜!!」

 あっさり回答が導きだしたけど……厳しい! 厳しい答えだよ! アイリーンさん!


「そこをなんとか! いいアドバイスとかない?」

「アドバイス? わたしは凪紗の私服を見る度に『ダサっ』とか『服か買いなよ』って言ってたわよね? それを無視ししてなにもしないし買わなかった凪紗が悪いわよ」

「ううっ……でもこんな事になるなんてさ〜」

「でもも、くそもないでしょ? 自分でなんとかしなさいよ」

「ううっ……そんなぁ〜」

「それじぁ聞くけど、今もってる服で一番カワイイ服ってなに?」

「えっと……せ、制服?」

「……学校の?」

「う、うん」

「……」

「待って! アイリーンさん待って! お願いだから切らないで!」

 なんとなく……いや、絶対に今、アイリーンは電話を切るつもりだった。だからそれを制止するために大きな声で電話口に叫んだ。


「……なら今から柏のビビッドでも行く? もうお店は閉まってると思うけど」

「ううっ……」

「無理なら今ある服でかわいくコーデしなさい。それが無理なら明日は逢わないことね」

「ううっ……それはイヤだ」

「じゃあ、がんばってセルフコーディネイトしてね。それじゃ切るわよ」

「ううっ、ごめん」

「謝る事じゃないでしょ……まぁ、じゃあひとつだけアドバイス」

「えっ!」

「ジャージじゃどう考えてもかわいくできないから、逆にスポーティー系かストリート系、またはボーイッシュ系で攻めなさい。ちなみに凪紗はボーイッシュ系がいいと思うわ」

「あ、ありがとうアイリーン感謝するよ!」

「いいわよ。じゃあね、がんばりなさい」

「うん」

 アイリーンが通話を終了させたのを確認して終話ボタンを押した。


「ボーイッシュ系か……」

 わたしはベッドに山積みにされているジャージを片っ端から着ては脱いで、脱いでは着てを夜遅くまで繰り返していた。


 そして、夜が明ける。刹那くんとのおでかけする土曜日が始まる。


 続く。

お久しぶりです。間宮冬弥です。


まずは、最後までこのような稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。最後まで読んでいただき本当に感謝しております。


さて、今回は番外編です。基本的に前作で書ききれなかったことや、書きたい事をこの番外編で織り込んで行こうと思っています。

なので伏線の回収などは申し訳ないですがあまり期待はしないでください。


それでは、短いあとがきではありますが、ここで失礼します。

では、次話でお会いしましょう。

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