第12話 名前発表
ドララララ・・・あ。これ発表の前の音ね?ドラララララララララララララ・・・ドン!!
「ノワール!!んで、あだ名はノンちゃんです!!」
どうよ!あだ名可愛いでしょ~。お兄さんは「ノワール・・・」と呟いたきり、黙った。え・・・ダメ?気に入らない?
なんでノワールにしたかっていうと、お兄さんのイメージが私の中で黒と赤だったから。
どっちがいいかなーってなって考えてたんだけど、本人に選んでもった方がいいよねって思って、じゃあ左にを選んだら黒、右を選んだら赤にちなんだ名前にしよう!って思ってお兄さんに選んでもらいました。
ノワールの意味は、前世で世界の色って本を読んだ時に、フランス語で黒のことをノワールって書いてあったからこれよくね?って感じで選んだんだけど・・・。
やっぱ色で決めちゃまずいかったかな・・・。お兄さんなんにも答えないし、どうしよう、また考え直そうかな。
すると。
ぎゅ・・・!
「お、お兄さん!?」
いきなりお兄さんに強く抱きしめられた。お兄さんはかすかに震えていて、私の首筋に顔を埋めていた。
「ノワール・・・俺の名前はノワールだ・・・!」
やがて嬉しそうな声が聞こえてきた。顔は見えないけど、また薔薇咲かせてるんだろうな・・・。へへっ。なんかこっちまで嬉しくなってきた!
「そうそう。お兄さんの名前はこれからノワールだよ!」
・・・ハッ!しまった・・・。
「すみません!ついタメ語で話してしまって・・・」
テンションが上がってつい年上の方にタメ語になっちゃったよ。反省、反省。
「構わない。むしろそれがいい」
「いやいやいや、さすがに年上の人にタメ語は・・・」
「・・・いやか・・・?」
「ぐ・・・!!」
な、なんなんだよ・・・。そんな目に負け・・・。負け・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
くっ・・・!!
「あー!わかった、わかったよ!」
「うむ。それと俺のことは愛称で呼べ」
「へーい・・・」
なんかさ・・・無表情の美形ってお得だよね。ちょっと表情出しただけでいうこと聞いちゃうよ!!
やけ酒ならぬ、やけ紅茶をしようとしてカップが空なのに気づいた。残念な気持ちになっているとおにい、じゃなかった。ノンちゃんにカップをテーブルに置けと言われ、不思議に思いながらも置く。
すると、ノンちゃんがパチン指を鳴らすと、ポットが触っていないのに持ち上がり、カップに紅茶が注がれた。
すげぇ・・・!やっぱ魔法の世界なんだ!
私も使えるのかな?
ドキドキする私にノンちゃんがそういえば、と口を開いた。
「お前の名を聞いていなかったな」
「あ、忘れてた・・・。ユリアーナって言います。ユリって呼んでね!」
まだユリアーナって呼ばれても返事できないしね!
「ユリか・・・強く美しい花だな・・・」
「強い?」
美しいはわかるけど、強いってどういうこと?
「ドラゴンとユリの話は知っているか?」
「ううん、知らない」
「ふむ・・・」
少し待てとノンちゃんが指を鳴らすと、1冊の本が現れた。
ノンちゃんに渡され本を開くけど全然読めない。文字がユリアーナの国とは違う形だ。
「ノンちゃん・・・ごめん、読めないわ」
「む。すまない・・・。では俺が読もう」
「マジか!!」
美形に読み聞かせしてもらえるなんて・・・!!
ノンちゃんはワクワクする私の前に本を開くと、「昔、昔・・・」と読み始めた。