第10話 あなたは誰?
だから攻略キャラに魔力なしはいないから攻略キャラではな・・・あれ。魔力なしいたかも?
やっぱりゲーム知識がないといたいなぁと考えながら、そう言えばと私は顔を上げた。
「ここどこ?」
そしてあなたは誰?
私の質問に、お兄さんは少し考え込むような顔をした。
「ここは最初であり、最後の森」
俺は・・・。
そう言ったところで、お兄さんは足を止めた。
「?おおおおお!」
前を向くと、回りの木より倍の大きさの木が目の前にそびえ立っていた。その木は大きさは違うけど、ユリアーナの家にあった木と似ていて、太い木の根が一面に這っていた。
口を開けて木を見ていると、お兄さんは腰を落とし、地面を蹴って木の根に飛び上がった。
お兄さんの足は軽やかで、着地した時にふわりふわりといった音がしそう。そしてあっという間に穴が空いているところにきた。
私はここから来たのかな?
するとお兄さんが穴に手を伸ばそうと穴に近づいた。
――その瞬間だった。
ゾクリとした悪寒が背中を走り抜け、冷や汗をかき、歯がガチガチと鳴るのを止められない。まるで穴に近づくなと本能がそう訴えているかのようだった。
ぽっかりと開いている穴は何も見えない深い闇。
怖い怖い怖い・・・!!
私の中が恐怖に溢れ、あまりの寒気にまるで雪の中にいるようだった。
その時。
――ぽんぽん。
恐怖に震える私を、お兄さんが安心させるような手つきで撫でて、あやすように体を揺すってくれる。私は自然と体の力が抜けて、お兄さんにもたれ掛かった。
・・・あったかいなぁ・・・。
目が覚めてから、人の冷たい視線や態度に私はだいぶ参っていたらしく、お兄さんの優しさや体温に泣きそうになる。
・・・よし!お兄さんがいれば大丈夫!怖くない!!
バッチコイ!とお兄さんの首にしがみつく。・・・いや、だっていれば大丈夫つっても怖いんだもん。
お兄さんは私がしがみついたのを確認すると穴に手を入れて、かき混ぜるように手を動かした。
「ふむ・・・これはまた遠くから来たな」
「!わかるんですか?」
かき混ぜただけなのに?
「こことお前の国は正反対の位置にある」
「マジか」
ブラジルと日本みたいな感じ?この木、そんな遠くの距離を一瞬で移動させたのか・・・。
調べ終わったのか、お兄さんは穴から手を出した。
「!?ちょ・・・手!」
「?ああ・・・すぐに再生する」
「いや、再生するって・・・」
お兄さんの手は焼けただれていて、煙まで出ていた。絶対痛いはずなのに、お兄さんの表情はピクリとも動かない。
ちょ、なんか傷押さえるものは!?とあわあわしながらポケットを探るが何も出てこない。
どうしようどうしよう!?
更に慌てる私にお兄さんは首を振った。
「気にするな。自業自得だ・・・俺はこの木の中に入れないからな」
?私は入れたのに?
どういうことだろうと考えている私をよそに、お兄さんは軽く手を振った。
「え・・・」
一瞬で傷が治った!?
信じられない気持ちでお兄さんの手を掴み、まじまじと見たけど、傷ひとつない綺麗な手だった。
もしかして、このお兄さんは・・・。
私に手を掴ませたまま、お兄さんは木から飛び降りた。これまた着地は衝撃がない。やっぱり・・・。
やっぱり、お兄さんって妖精さんなの!!!???
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
と、冗談はさておき・・・。んー・・・というか、この世界に妖精っていたっけ・・・?
そんなことを思いつつ、前を向くとお兄さんが向かう先に黒い椅子とテーブルがあった。でも、1つずつしかないので私はお兄さんの膝の上に座る形で乗せられた。
「お前の・・・」
「?」
「お前の話が聞きたい」
お兄さんが指パッチンをすると、一瞬で湯気がたつお茶と美味しそうなお菓子が出た。
「どっから出した!?」
「?魔法だ」
「わぁ~お兄さんが言うと可愛い・・・じゃない!そんな魔法あった!?」
私がお兄さんに掴みかかる勢いで聞くと、お兄さんはちょっと考え込んでから私の唇に人差し指を当て・・・。
「それは秘密、だ。なぁに秘密ってのは女だけの特権じゃないんだぜ?・・・それとも、秘密のある男は嫌いか?」
―――――――――――――――。
ボン!!と音が鳴りそうな勢いで頬が熱くなる。たぶん、今私の顔は真っ赤だろう。
なんだんだ。この色気は!?薔薇でたよ!薔薇!!
このお兄さんぶわって薔薇背負ったよ!!
そんな私を見て「ふむ。あれの真似だったが・・・使えるな」と満足げに私の頭を撫でてきた。
ほっ、本家がいるの!?まさかお兄さんより上って事はないよね?・・・ね!?
戦々恐々としていると、お兄さんは不思議そうに首を傾げた。