(6)
サラサラと艶のある髪を短めに切り揃えて、ジーパンにTシャツ姿の彼……もとい彼女は都覇鎖とは違い少年というよりはカッコイイお兄さんと言った風体だ。だが感情表現というものが苦手らしくあまり笑うことも怒る事ももちろん泣く事もない。まぁ、怒らないと言うのは美徳だが笑わない点についてはあまり良い事とは言えないだろう。しかも、口数も極端に少ない為考えが読めず研究室仲間の中でも都芭璃以外とはあまり意思疎通が図れていないと言う悲しい現状があった。
「サっちん、そんな所に居たんだ。何してるの?」
都芭璃が首を傾げると
「新しいハード……」
「おっ前また容量オーバーしたのかよ。」
ポツリと漏らされた沙耶の一言に都覇鎖が笑いながら言うと
「ツッ君笑っちゃダメだよ。サっちんのPCには私達の古い論文とか関連資料のデータとか預けてるんだから。」
羅瑠が諭すように言うと
「そうだよねぇ。容量オーバーにもなるよねぇ。何せ五人分だもんねぇ。」
「そうね。一人10Gだとして、ゆうに50Gは有るかしら?」
都芭璃と由宇李が頷く。
「サっちん、それ幾つ目のハード?」
「ん……?」
都芭璃に聞かれた沙耶は再びPCの山へ潜ると
「8ッコ……」
ヒョコッと顔を出して答えた。
「すげぇじゃんか!新記録じゃねぇの?」
都覇鎖が何故か興奮したように言うと
「誰の……せい?」
沙耶が首を傾げる。都覇鎖は声を詰らせると
「おっ俺なんかより都芭璃の方がデーター量のが上なんじゃねぇの?」
そう捲くし立てた。
「確かに……仕事量もデーターの量も都芭璃が1番……」
「ほらな!」
冷静な沙耶の言葉に都覇鎖が得意げな顔をする。
「でも……」
「でも?」
「都芭璃はUSBジャラジャラ持ってる……」
「だから何だよ。」
沙耶の落ち着きすぎる話し方に対して都覇鎖は何処かイライラしている。
「あの子は……自分のデータは殆ど自分で管理してる……私のハードが重くなるのは都覇鎖と羅瑠のデータが殆ど……。」
「そうなのか?」
都覇鎖がそう言いながら都芭璃を振り返ると、
「そっそんなにいっぱいは持ってないんだな。」
目を泳がせながら答えた。
「いくつ持ってるんだよ。」
「360個なんだな。」
「じゅうぶん多いじゃねぇか!」
「えっ。みんなもそれぐらい持てるよね?」
都芭璃が不安そうに4人を見ると、全員首を振り
「せいぜい十個よ。」
由宇李がため息をついた。