第四章⑤決裂
作者は悪くない、レナードのせい。
第四章⑤決裂
民衆への弾圧は当然の如く問題となった。それは対外的にギルドだけの問題にとどまらず、国政へも影響した。
「バカな!我らは民を守るために戦っていたのでではなかったのか……!」
特にレオンの嘆きは激しかった。
「死んだものの中には、我らが同胞の家族もおります。」
「それに、もともと王国へ、社会へ恨みを募らせていた貧民たちが一掃されました。」
「こんな……こんな暴虐、許されていいのか!」
「騎士団長、どちらへ?」
「宰相へ、レナードへ問答を……!」
「おやめください!レオンさんまで疑われて、最悪投獄、いや死罪も……。」
「くっ、私は王国のために戦ってきたが……レナードのために戦ってきたのではない。」
その一言に異論を差し出すものは、誰もいなかった。
帰宅する、レオン。
そこにはぼーっとしているハクトーがいた。
「ハク……。」
「お父様、私ね。お父様、私ね。お父様、私ね……。あれ、なんだったかしら。」
「ああ、ハク、お前はどうしてしまったのだ。レナード、これもやつの仕業なのか……。」
「魔石実験。もしかして、ハクが協力していていた実験って……。」
「そして被験者に……された……のか。」
レオンの表情は曇った。より一層深く。
レナード執務室。
「ふん、ローレンスめ。余計なことをしおって!」
「だが……足手纏いの貧民どもを一掃できたのは、幸いであったな。」
側近の一人が目を瞑る。
(お、俺も万が一出世コースから外れてたら……。粛清されていた……のか。)
「その……ローレンス様から公式に会談の申し入れがありました。」
「忌々しい!あやつが引き起こしておきながら、今更和平会談でもするつもりか!」
「で、ですが飲まないわけにも……。」
「わかっておる!……ちょうどいい。」
「おい、強化兵を会談の席に『護衛』として配置しておけよ!」
「そ、それは……やりすぎではありませんか?」
「ふん、王国の邪魔をするものは粛清されて当然であろう?」
そこには嫌な笑みがあった。
和平会談。ずらりと兵士が取り囲み、その中にS級強化兵士が混ざっていた。
ローレンスに随行するのは、セリアと緋水。
(随分と物々しいですね。これは最悪も考えないといけませんね。)
シュバルは兵士たちを一瞥する。
(歴戦の強者、ってほどでもないが……なんかやばいのが少し混ざってるな。さて、どうなることやら……。)
アラミスは視線を泳がせていた。
(この雰囲気、重いな。頼むから和平成立してくれ。俺は人間同士の殺し合いなんて、やりたくない。)
「宰相閣下、オーフェリギルドマスター・ローレンス=ヒルベルト、ここに参りました。」
「……うむ。」
「よくも行けしゃあしゃあと私の前に立てたものだな。」
「和平のためですから。」
軽く肩をすくめる。
宰相の副官が文書を読み始める。
「ギルドマスター・ローレンス=ヒルベルトは今日を持って、その籍を解任するものとする。なお、今後はギルドは我ら王国が直接管理・運営する。異議は認めないものとする。この度の騒動の発端は全て、ローレンス=ヒルベルトにあり、その責を問うため、投獄処分とする。以上。」
「なっ……あなたという人は!」
「おいおい、そいつはいくらなんでもひでーだろ。違法な実験してたのてめーらだろ。」
「魔法学の悪用は、許されないわ。」
「いや、お前はそれ言う資格ないだろ。」
「そんなことより……宰相さんよあんた、いくらなんでも責任を一人に押し付けすぎじゃないか?」
「罪の問題と責任の所在は同等ではありません。ご再考ください。」
「……。あんた人間に実験として魔石組み込ませたな。そして『失敗作』は野放し。で、民衆たちの意見は聞かず、弾圧。一言で言うと、クソだな。」
緋水の皆は各々の意見を述べた。
「ふん!どうやって知ったかは知らんがな。実際問題として公表したのは貴様が原因であろう!貴様が黙っていれば、民衆から死人なぞ出なかったのだぞ!」
「それは責任転嫁です。事実として、魔石実験は倫理に反する上、放たれたモンスターは深刻な問題となっていました。」
どこからともなく「カチッと」剣を鞘から抜く音が聞こえた。その無機質な音だけが、今後、何が起きるかを語っていた。
「貴様との議論など時間の無駄だ!王国の繁栄、人類の存続にはあの実験は必要不可欠なのだ。貴様のやっていることは偽善に過ぎん。いずれは王国、ひいては人類が滅ぶぞ!」
「魔族が人族を滅ぼすとも限らないでしょう!一部の強硬派の暴走かもしれませんし。少なくとも話し合いはするべきです。」
「こいつはお笑い草だ。侵略してきた連中が和平を望むわけあるまい。」
「なるほど……。つまりあなたの理論モデルに従うなら、この和平会談も『お笑い草』要するに茶番というわけですか。」
「……やれ。」
そういうとレナードを手で合図する。
「きええええええええええええい!」
突然、奇声を放つ兵士がいた。
そして、アラミスに向かって剣を向けて、突撃してきた。
してきたが……。その動きはアラミスにしてみれば緩慢に見えた。気がつけば一刀両断していた。いつもこれだ。
「くそっ!なんでこんなことに!なんで分かり合えないんだよ!」
アラミスの独り言は場にはとどまらなかった。
そしてそれから兵士たちが雪崩こみ、和平の場はすぐさま戦場と化した。
背負っていた斧で、黙って殴り倒していくバーレス。複雑な顔をしたキャシーが詠唱をする。ひたすら斬り殺していくシュバル。そして味方にバフをかけていくザービ。
戦場が鮮血に染まって、王国軍が壊滅状態になった頃。
「ば、バカな!強化兵士まで導入しているのだぞ!こんな、こんな!」
「宰相閣下、お逃げください!」
「く、くそ!覚えいてろよ、ローレンス!」
「させません!」
ローレンスの剣はレナードへ届くと思った。だが……。
ローレンスの眼前には将軍・レオン=ヴォイスが立ちはだかっていた。
「何が正しくて、何が誤りなのか、私にはもうわからん!」
「だが、立場上、こうせざるを得ないのだ!」
「あなたと殺し合うつもりはありません。少なくとも、あなたは良識を持った方だと思いますが?王国がやっていたことが正しいとお思いなのですか?」
「……もう私には……わからない……。」
その間にレナードはどこかへ去っていった。
「こうなっては我々が殺し合う必要はないですね。剣を納めましょう。」
「……すまない。」
こうして、和平は決裂。後日、王国は正式にギルドを敵対視し最悪の内乱へと向かうのであった。
続く




