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後編・虚数 革命のエチュード (Etude Op.10, No.12) / ショパン)
轟々(ごうごう)と…
強い重い風が吹き荒れていた。
山々がざわめき、木々が軋み、大気が濁流となる。
風が咆哮をあげている暗闇の丘に、男が立っていた…ナイルである。
スーツが風に破れるかとはためく、ネクタイが舞い踊り、黒髪が散り逆巻く…
闇夜の空には、黒々とした山塊のような暗雲が垂れ込めている。
雲は大きく深く割れながら激しく動き、胎内にはらむ雷が鈍く淡い光を発している、谷の奥のような深部の、遙か背後に隠れる…月光は銀色の境界を滲ませる。
凶事が訪れるのか。
暗闇は吹き払われ、暁が迫るのか。
その行方を知る奥深い瞳に光を沈めて、ナイルはそこに立つ…