第5話:俺、ガッツリ掃除はじめました。
神社の掃除は欠かせない仕事の1つだ。田舎の小さな神社じゃ、毎日大勢の参拝者が来るわけじゃない。でも、境内が汚れてたら神様に失礼だし、近所の人たちの心の拠り所が台無しだ。
「清浄が命だぞ」
って父がいつも言ってた言葉が、今は俺のモットーになってる。
最初は、掃除が苦痛でしかなかった。ほうき一本で境内を掃きまくる。落ち葉が積もった参道、社殿の周り、手水舎の近く…全部手作業。秋のピーク時は、朝から夕方までかかって、腰が痛くなる。
会社のデスクワークから帰ってきて、夕暮れにほうき持って境内をうろついてると、孤独感が半端なくて
(なんで俺がこんなこと…)
ってため息ついたりした。でも、ある日、ホームセンターでブロワーを見つけた。電動の葉っぱ吹き飛ばし機だ。試しに買ってみたら、これが革命だった。一気に掃除が楽になった。風で葉っぱを吹き飛ばして、隅に集めてから燃やす。以前は1日仕事だった掃除が、2〜3時間で終わる。達成感がすごくて、よし、終わった!って拳を握る瞬間に、すごい達成感を感じる。父が生きてたら、
「便利なもん使ってんな」
って笑ってくれたかな。ちょっと寂しいけど、俺なりに工夫してるんだって実感する。
ブロワーを使うようになってから、掃除中の気持ちも少し楽になった。最近は、孤独感をなくそうと思って、イヤホンでYouTubeを聞き流しながら作業する。掃除しながらだと画面は見れないから、基本は音楽とか、お笑い系とか、時々ワンピースの考察系チャンネルも。笑い声が漏れて、一人でクスクス笑ったりしてる。父の頃はラジオだったみたいだけど、俺は現代っ子だからね。音楽聴きながらほうき振るうと、作業がリズムに乗って、意外と楽しい。俺だけの時間みたいな感じ。
ただ、神社の木々の管理は相変わらず大変だ。特に桜の木。境内にある一本の古い桜が、俺の天敵だ。春は花が綺麗で、参拝者も喜ぶけど、散ったら地獄。花びらが絨毯みたいに積もって、掃除が追いつかない。8月から11月までは葉っぱが毎日散る。ブロワーで吹き飛ばしても、風が吹いたらまた散らばる。見てるだけなら「わー、綺麗」って気楽でいいけど、こっちは毎日ほうき持って追いかけるんだよ。イライラする。だけど、桜の落ち葉を集めて燃やすと、良い香りがするんだ。あの甘くて、ちょっと焦げた匂い。密かな楽しみで、あの香りを嗅ぐことが俺のストレス解消法だ。父もきっと同じこと思ってたのかな。桜の葉を燃やしながら、父のことを思い出して、ちょっと切なくなる。
季節ごとの作業も、俺の感情を揺さぶる。春夏秋は定期的に剪定と除草が必要だし。除草剤の散布が、神社管理で一番お金と手間がかかる。小さい神社だから境内はそんなに広くないけど、雑草はすぐ生える。夏は特にきつい。猛暑で汗だくになって、除草剤を撒く。雨が降ったら、次の日にはまた草が伸びてる。「ふざけんなよ」って呟きながら作業する。熱中症になりそうで、水筒に水をたくさん入れて、こまめに飲む。塩飴も欠かせない。最近の夏は異常だよ。午後からはもう無理。日差しが強すぎて、頭がクラクラする。
冬は好きだな。落ち葉が少なくて、草も生えない。境内がスッキリして、心も落ち着く。ただ、ヒノキの葉が散った時は絶望する。あの細かいトゲトゲの葉っぱ、掃除しにくいし、燃えにくいし。集めても風で飛んでいく。掃除した後は毎回、「風吹くなよ〜」って、空に向かって祈ってる。父の頃も同じ苦労してたんだろうな。俺はまだ新米だから、毎回ため息ついちゃう。
そんなある日、いつものようにブロワーで落ち葉を吹き飛ばしてると、近所のおばさんが参拝に来た。お賽銭を入れて手を合わせた後、俺を見てニコッと笑った。
「想太郎君、いつも境内を綺麗にしてもらってありがとうね。お陰でここに来ると、気持ちも綺麗になる気がするのよ」
俺は一瞬、言葉に詰まった。嬉しい。素直に嬉しいよ。
「いえいえ、そんな…ありがとうございます」
照れくさくて頭を掻いた。おばさんが去った後、俺は俄然やる気が出てきた。ブロワーのスイッチを入れて、残りの落ち葉を一気に片付ける。
大変だけど、こんな一言が励みになるんだよな。これからもがんばろう!




